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第二話:友の後ろ姿

〇〇


 そんなことが起きているとも知らずにいばらはアズサと近くにある小川に向かっていたのは釣りをするためである。アズサは女の子らしい遊びより、山の中を駆け回る方が好きだった。背伸びしながらアズサは空を見上げる。


「今日は天気がいいわね」


 気持ちよく放つアズサの言葉とは裏腹にいばらは憂慮しながら答えた。


「そうだね、魚釣れるといいんだけど」


 天気がいい日だと見通しが良くなるが魚釣りに向かないので、曇りとかになっていた方が取れやすい。


「そ、そうよね」


 いばらのはにかむ笑みにアズサは視線を背けた。それにいばらは不思議に思ったが特に気にすることはなかった。川に着くといばらは調達した網を使いそれに枝をくくりつけた。竹はよくしなるため川釣りには最適である。


「よし、釣ろうか」


「うん!」


 釣果としてヤマメを5匹つれた。ヤマメは体の側面に斑のような模様があり身がふっくらとしていた。


「おお、今日はたくさん釣れたな」


 いばらとアズサは石で作った生簀の魚を見つめた。


「すごいね」


「うん、持って帰るか、それともここで食べる?」


 いばらの提案にどこからか音が聞こえた。それはアズサのお腹の方からだった、その音にアズサは真っ赤に染めていた。それにいばらは揶揄うこともなく、そして気遣うことなく口を開く。


「そういえば、お昼まだ食べていなかったね」


「…うん」


 アズサは恥ずかしそうにうなづいた。その後いばらは父と母に教わった手捌きで枝に魚をさして火を起こす。


 持ってきた塩を塗り込み、しばらく焼くと香ばしい匂いと共に油が滴り落ちてきた。表面のパリッとした皮と味は淡白だが身がしっかりとしていた。いばらの美味しそうに食べる表情にアズサは嬉しそうに笑った。


 

 その頃、男の子達は村中を駆け回っていると一人の女子が畑を耕していた。


「なあ、いばらとアズサちゃんを見なかったか!?」


「え、いばらくんとアズサちゃん…? 少し前に見かけたけど…確かあっちの方角だから川の方じゃないかな?」


「川のほうか!?」


「そっちの方は全然探してなかった!」


 悔しそうに騒ぎ出す男の子たちを横目に女の子は目を細める。二人が川に向かったと分かるや否やそちらに向かっていった。


「行くぞ、お前ら!」


「おう!」


 まるで風のように去っていく彼らの後ろ姿を見ながら二人の情報を聞かれた同年代の女子は呆気に取られてため息をつく。


「男の子って、ほんとバカね、もう少しいばらくんみたいに落ち着きがあって欲しいけど、アズサも大変ね…」


 そういいながらも、明日はいばらと遊ぶ順番である彼女にとって些細なこことだった。


「ふふ、明日が楽しみ」


 鼻歌まじりに彼のことを想いながらせっせと土を耕した。


〇〇


 ダンがいる集まりと合流し男の子達は山の中を駆けていくと川のせせらぎが聞こえてきた。その中で威勢よく男子たちは声を掛け合う。


「よし、ここから手分けして探そう!」


「おう!」


 川は幾つにも枝分かれしており、魚をとれる穴場は村の子であれば知り尽くしている。しかしそれでもなかなか見つけることはできなかった。


「くそ、どこにいるんだよ、あの二人は!?」


 なかなか見つからないことに男の子達は苛立ちを募らせる。ダンはそれを見ながら少し冷静になりながらも考えていた。


『他になかったか、魚が釣れるところ』


 その時いばらと前に話したことを思い出した。


『この少し奥にあるところも穴場になっているらしいんだ』


 そのことを男の子達に話そうとしたが…ダンは何故か別の言葉が出た。


「夕方には帰ってくるだろう」


 ダンの言葉にそれもそうだなっと男子達は仕方ないがないと諦めて帰っていく。そして村の方に帰っていく途中でダンはいきなり声を上げた。


「あ」


「うん、どうした?」


 ダンの声に男の子たちは立ち止まる。


「忘れていた、今日はこれから親の手伝いがあるから遊べない」


「ええ!?」


「そっか、仕方ないね」


 残念そうにいう男の子達にダンは申し訳なさそうに謝るのだった。小走りでその場を立ち去ったダンはさっき行った道とは違う道に入り駆け抜けた。


 ダンは村の中で2番目に早かった。1番目はいばらである。風のように走り抜けるいばらには敵わないとダンも認めている。


 そして先ほど思い出した穴場へ向かうと案の定二人の小さな人影がり楽しそうに釣りをしていた。いばらはじっと水面に浮かぶ竹を見ていた。ダンは声をかけようとしたが声をかけるのをやめた。


 アズサは水面を見ずに隣にいるいばらをじっと見ていたからだ。その表情は村の女の子達がいばらに対してする表情に何ら変わらなかった。


『そうか…そうだったのか』


 ダンは声をかけることはなくそのまま来た道を戻って行った。


〇〇


 いばらは水面に浮かんでいる竹を見ているとガサリと音が聞こえた。その音にアズサはびくりと肩を揺らす。


「な、何!?」


 山の中である、当然獣はいるだろうが人里に降りてくることは滅多にないが恐怖と不安でサクラは動揺して体が動かなくなる。いばらは音の正体を確かめようと駆け出した。


「ちょっと見てくる」


「え、いばらくん!?」


 いきなりの離脱にアズサは困惑する。


「すぐ帰ってくるから!」


 その言葉を最後に音がなる方に向かった。そしていばらは山の中を駆けていく人影を目指した。いばらの動体視力は人並み外れていて、それをとらえることができた。そしてそれが誰なのか後ろ姿ですぐに分かった。


「あれは、ダンか?」


 先ほどの音は彼だったのか、どうして声をかけなかったのだろうか分からなかった。いばらはすぐ様元の場所に帰るとサクラを硬直していた。


「アズサちゃん!ごめん一人にして!?」


「もう、ひとりにしないでよ」


 いつもはしっかりとしている彼女は涙ぐみながら震えている姿は年相応でいばらはもう一度心を込めて謝った。


「本当にごめんね」


 いばらの言葉にアズサは少し溜飲が下がり、落ち着いた。


「うん、何だったのあれは…」


「あれは…」


 ダンのことを言おうとしたが何故か、何も言わずに去っていった彼の後ろ姿が頭から離れない。いばらは逡巡し言うのをやめた。


「風とかじゃないかな?」

間違えて投稿のボタンを押してしまいました…。

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