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第二十四話:彷徨いし者・陸


〇〇


 ひとまず何事もなく昨日の出来事から1日が過ぎ、朝日、真澄、藤次郎、香散見、合歓と、志郎もそれに参加した。会議はWeb会議サービスのツールを使って行われた。


 念話では会話をすることはできるが、誰がどのタイミングで話すが分からないというデメリットがある、それとたまにはお互いに顔を見て話をすることもしておきたいと志郎の提案によりこの形になったのだった。内容は糀の暴走についてである。


「…糀はいなくて大丈夫かな?」


 それを聞いたのは朝日だった。


「そうですね…その時の変化も聞きたいのですが、何が理由で暴走したのかわかりませんし」


 志郎の考えに朝日はうなづいた。何がきっかけで感情的になり暴走したのか。


「あの化け物と対面した時におかしくなった…」


 合歓はしっかりとした声音で告げた。


「やっぱりあの化け物に何かありそうですね」


 真澄もそれに同意した。


「その化け物って今どうなっているんですか?」

 

 朝日は疑問に思ったことを口に出した。


「化け物は陰陽局が捕らえ、地下牢にぶち込みました」


 表情は優しげだが、言葉の端々に志郎の怒りが見え隠れする。それに朝日たちは気づいていた。


「そ、そうだったんだ」


「今は睡眠剤で眠らされている状態です、そちらに運ぶのは難しいので一度陰陽局にきてもらえないでしょうか?」


「そうだね、時間はどうしようか?」


「そうですね、時間は0時で」


「うん、わかった」


 そう言って、志郎はテレビ電話を切って退室した。会議が終わり、朝日たちは陰陽局にいく準備をするために早めに夕食をとることになった。


 休みをとりながら深夜になった。陰陽局にいくことになったのは朝日、真澄、香散見に藤次郎だった。留守番となったのは合歓である。姉と違い大人しくうなづいた。


「気をつけて」


 それに朝日が答えた。


「うん、合歓さんも何かあったら連絡してください」


「はい」


 朝日たちは夜の闇に紛れて移動した。陰陽局は深夜になると昼のスタッフのもの達と違って夜勤勤めをするスタッフと交代するようになっている。


 妖怪は夜に活発になるため昼よりスタッフが多いぐらいである。壺井と志郎は正面入り口から入るとたくさんの視線を浴びるだろうと裏口を教えてもらった。藤次郎を先頭にかけていくと玄関先に二人の人影が見えた。



「皆さん、こんばんわ」


 明るく出迎えたのは壺井だった。鬼族の妖気で倒れて休養していたと話は聞いていたが、もう復帰していいのかと朝日は心配になる。


「桐枝さん、体調は大丈夫ですか?」


 朝日の心配そうな声に桐枝は少し驚き嬉しそうに笑った。


「これぐらいでしたらすぐに治りますよ、ご心配をおかけしました」


 壺井の元気そうな笑いに朝日は嬉しそうに笑った。お面をしているため壺井には分からなかったが雰囲気でわかった。


「それでは中をご案内します、ここはまだ人目があるので」


「はい」


 朝日、真澄、藤次郎は壺井と志郎を先頭についていった。向かっていくのはどこかと思いきやエレベーターだった。


 全員が乗ったことを確認した壺井はカードを差し込むと下のボタンが出てきた。壺井はB5階のボタンを押した。初めて見たボタンに朝日と真澄たちはギョッとする。


「え、ここ地下があるんですか!?」


 朝日は驚きの声を上げた。


「ふふ、はい、ここは地下五階まであります。昨日の妖はそこに収容されています」


 昔、陰陽局には何度か足を運んだことがあるがこんなところができているとは予想外だった。わずか1分で地下5階につきドアが開くとなかなか広々としており、地下とは思えないような広さだった。


 壺井と志郎はあるドアの前に立ち、横にある端末にカードをかざした。


「ここですね」


 開くとそこにはあの妖が巨大な檻の中に拘束されていた。その檻の中に大きなものが静かに横たわっていた。


「寝ている?」


「はい、強制的に眠らさせています」


「そうなんですね」


 壺井は志郎を見てうなづいた。


「それではどうしてここまで来ていただいたのか、どうしてあの馬鹿…糀が暴走することになったのか調べてみましょう」


 糀に対して嫌味たっぷりに話す志郎に朝日は口元をひくつかせた。家族である息子に怪我を負わせて、娘に襲い掛かろうとしたのだ。それが不可抗力であっても。


「まずはこの妖を起こしましょう」


「う、うん」


「対戦者をどうされますか?」


「私がしてもいいかな?」


 藤次郎もしたい気持ちがあったが糀から負わされた傷が治るまでは安静にしていなければならないので、香散見が手をあげて立候補しようとするが、それを制止したのは、


「私がしましょう」


 志郎の有無を言わせない穏やかに笑う表情に娘の香散見も父の様子に大人しく手を下ろし、その表情を見てしまった朝日は糀がいなくてよかったと心から思った。


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