第二十話:彷徨いし者・弍
東京は夜の12時を過ぎても開いているお店も多く、チェーン店なども24時間営業をしている店の明かりが灯っている。
仕事終わりに居酒屋を梯子をするものもいれば、二次会で帰るものもいる。様々な人が行き交う大都会の東京を街中を一人の女性が連れもおらず時折スマホを見ながらてくてくと歩いていく。彼女が見ていたのは先週発売されたアイドルの新曲でそれを気分よく聞いていた。
『は〜、しみるわ』
会社の飲み会には行きたくなかったが、お世話になっている同僚の女性に誘われて断ることができなかった。飲み会はそこそこ楽しかったが、いかんせん人と話すのが苦手な自分が行くところではないと痛感した。
終電もあるということで早めに切り上げて、少し暗くなってきた気持ちを晴らすために好きなアイドルの音楽を聴きながら帰っていると一際強い風が吹いた。
「きゃあ!?」
女性の髪の毛が舞い上がり、髪の毛がほつれた。
「もう、何なの!?」
せっかくいい気分だったのに、ぶつぶつと文句を言いながらイヤホンを外して髪の毛を直していく。
ズシン
何か自然の音ではない、人工的な音が聞こえた気がした。女性はドキリとして、そこを振り返るが何もなかった。
『なんだ、何もないじゃない』
異常がないのがわかるとイヤホンを付け直した。女性は気を取り直して歩こうとした時にまた先ほどと同じ音が聞こえた。
『嘘、気のせいじゃなかったの』
歩く速度が早歩きから全速力へと変化していく。夜中の閑静な住宅街で騒音を立てたくないが気にする余裕はなかった。
「はっ、はっ、はっ」
どれだけ走ったのか分からないが、すでに女性の息は上がっていた。
「…もう、なんだったの…ここまでくれば大丈夫でしょ」
バックの中にあるスマホを取ろうとした矢先だった。肩に何かが触れた感触があった。女性は恐る恐る振り返るとそこには何かがいた。女性は恐怖と絶望であらん限りの声を出して絶叫した。
「きゃああああ!?」
〇〇
「ふふ〜ん」
糀は上機嫌な声をあげながら夜空を駆けていく。それを朝日、真澄、合歓は苦笑しながら追いかけていく。するとどこからか女性の叫び声が聞こえた。
『朝日様、今のは!?』
「ああ、現れたようだねーーこ」
朝日は前を先頭していた糀に声をかけようとしたが、声をかけることもなく目の前から消えた。あまりの速さに朝日たちは慌てて向かった。
そして辿り着くとそこには何かがいた。街灯に照らされた何かの頭の上には二本の角が生えていた。
『あれが犯人でしょうか』
その犯人の近くに女性が倒れていた。先ほどの女性の声の主だろう。
「合歓は女性の方を、僕と真澄と糀はあれを捕らえてーー」
突撃する前に朝日は真澄の方を見て、次に糀を見た。そして彼の表情がこわばっているのに気づいた。
「こう…じ?」
糀は我先に現場に着いても向こうみずに突っ込むほど、浅慮ではない。というより戦法は志郎に叩き込まれている。なので踏みとどまっていてもおかしいとは思わなかった。朝日はどうして糀が驚いているのか分からなかった。
〇〇
二本の角。そして感じた妖気に糀は固まった。初めて会ったはずなのに遠い昔に会った気がした。その時誰かと重なった気がした。
『そうだ、俺は約束したんだーーあいつと』
なにかを思い出そうとするが思い出せない。
『あいつって、誰だ?』
「ーーうじ、糀!?」
自分の名を呼ぶ声に糀はハッとする。
「今はあの妖を捕らえて女性の安否を確認しましょう!」
「う、うん、わかった」
二本の角を持った妖は朝日たちに気付き動きを止めた。朝日たちが只者ではないことに気づいたのか襲いかかってこようとはしない。
ジリジリと緊張感が走る。女性が近すぎる以上、焦りは禁物である。先に動いたのは妖だった。強靭な体躯を持った足で跳躍して、朝日たちに襲いかかる。それを捕らえたのは糀だった。
「つっかまえた!!」
ニタリと獰猛に無邪気に笑った。妖は抵抗するが糀の怪力に振り解くことができない。その隙に合歓は女性のそばにより呼吸を確認した。
『朝日様、女性は気を失っていますが大丈夫です』
「よかった、とりあえず人祓いの結界を貼らないと」
そにれ真澄は答えた。
「大丈夫です、朝日様。それはもう終わりました」
「ありがとう、真澄。あとはあの妖の確保だね」
朝日たちが糀の加勢をしようとした時だった。妖が大声をあげ、その声と共に妖気が膨れ上がった。その時に不思議なことが起きたのだ。糀は妖気が共鳴するように大きくなっていったのだ。合歓はそれをある異変に気付いた。
「朝日様、これ以上妖気が強くなれば結界が…!?」
切迫した合歓の声に朝日と真澄は驚く。このままじゃまずいと糀に呼びかける。
「糀!? その妖から離れて!」
朝日たちが呼びかけるが返事はなかった。
「糀!」
もう一度強く呼びかけるが応答はない。妖の動きを自慢の怪力で封じたが、糀が妖気を出せば出すほど妖の力は増大していった。
そしてそれと同時に感じたは先ほどの既視感だった。糀の意識はどこかへと飛んでいて朝日の声は届かなかった。
『知っている…俺は知っているんだ…』
「ぐわぁぁぁぁ!!」
糀に突然の衝動を襲いかかり妖の体を掴みながら心臓が高鳴る。抑えきれなくなった雄叫びと共に妖気が天高く登っていき、そしてその妖気の渦は結界を貫いてしまう。
「結界が!?」
朝日、真澄、合歓は結界が破られたことに唖然とした。
〇〇
結界は妖気を遮断することができる空間で、結界があるかぎり漏れ出すことはなかった。しかし一定以上の妖気で陰陽局が察知してしまった。
いきなりのけたたましい警報に夜勤をしていたスタッフは目を覚ます。モニターに出た数値を見て人々は震え上がる。
「おいおい冗談だろ!?」
「ランクはSSです! 場所は代々木公園の付近」
その警報は陰陽局にいたそこにいたリンドウ…志郎も聞いており、すぐに指示を出した。
「派遣を出します!今見回りをしているは下手に近づかないように連絡してください」
志郎はその後すぐに別室に行き、電話をかけた。発信先は藤次郎である。
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