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第二十一話:彷徨いし者・参


 藤次郎と香散見は人ではないが、人間と同じく睡眠をとっていた。しかし突然の強力な妖気の出現に二人は目を覚ます。


「…兄さん、これは」


 部屋を出て起きてきた香散見に廊下で藤次郎に会い話しかける。


「香散見、起きたか…この妖気は糀さんの妖気か…何かあったのか」


 藤次郎が電話をかけようとスマホを手に取った時だった。スマホが着信を知らせる。

この深夜に自分のスマホに電話をかけてくるのは自分の家族しかいない。藤次郎はすぐに出た。


「父さん、この妖気は…!」


「ああ、あのバカが暴走したらしい、私は止めに行きたいが動くことができない…藤次郎行けますか?」


「はい、行けます」


 息子からの即答に志郎は別の言葉が出そうになったが、口を開いた。


「…けがには気をつけてください。あいつが本気になれば馬鹿力ですから」


「分かりました、肝に銘じます」


 そう言って二人は会話を終えた。


「ということだから香散見行ってくる」


 ポスっと胸に軽い衝撃があり、藤次郎はなんだと見下ろすと妹が抱きついていた。


「気をつけてね、お兄ちゃん」


 声の様子から心配と不安が伝わってくる。なんにせよ相手は自分よりも遥かに永くを生きている。それも父と同等かそれ以上の大妖怪である。香散見の頭を藤次郎はなるべく優しく撫でてあげた。


「ああ、行ってくる」


「聖子さんにも連絡した方がいいかな?」


 香散見の提案に藤次郎は一瞬考え口を開いた。もしものことを考えてである。


「そうだな、頼めるか?」


「任せて」


 場所は志郎から送られたメールのURLに添付されていたのを確認した。時間帯も深夜のため大声を出せないので念話で妹の元気のいい声を後ろに藤次郎は現地に向かった。兄が去っていく姿を香散見はずっと見つめていた。


〇〇


 結界が壊され朝日、真澄、合歓が取った次の行動は救護だった。


「真澄、その女性をもっと遠くに、近くに陰陽局の人が来ているはずだから」


「分かりました」


 真澄は朝日の言葉に反論しようとするが彼の声に何もいうことができなかった。真澄は女性を優しく支えて素早い速さでその場をさった。


 朝日と合歓と糀を化け物から目を離さない。会話をする余裕もなかった。先に動いたのは糀に拘束されていた妖だった。


「ぐわぁぁ」


 妖は唸り声を上げながら糀に抵抗するが、彼の力が強すぎてもはや抵抗になっていなかった。朝日は違和感を感じた。糀も暴走しているはずなのに、妖に攻撃をしようとはしなかった。その時だった。糸が切れたように妖が苦しみ出した。


「ぐ、ぐああぁぁぁ」


 妖はそれを最後にパタリと倒れた。朝日と合歓は一体どういうことかと呆然とするばかり。


『死んだのか、いや気を失った? 一体、何が』


 合歓はなんとか自分の知識で事態を収集しようとするが情報が少なすぎて頭の中がスッキリとしない。すると何かぶつぶつとした独り言が聞こえた。それは仁王立ちしている糀からである。



「ーろしてやる、ころしてやる」



 それは普段の糀から聞いたこともないような怨嗟を含んだ声だった。次の瞬間、糀が目の前から消えた。それに朝日が先に気づいた。




「合歓、後ろだ!!」



〇〇


 合歓は襲われる瞬間、昔の糀を思い出した。初めて会ったのがまだ東京と呼ばれたまだ新しい明治時代の時だった。


「君が志郎の娘さん、僕、糀っていうんだ 仲良くしてね」


 大きな体を丸めて、私が手を握りやすいようにしゃがみ込み、満面の笑顔を向けた。

合歓はこんなにも太陽のように笑顔を似合う人はいないと子供ながらに思ったものだ。その先入観が思い出が合歓の手足が動きを縛ってしまった。



「糀…にい」


 

 普段は無表情の表面が悲しく歪んだ。衝撃が来ると思い合歓は目を瞑った。しかし待てども衝撃が襲って来なかった。


 恐る恐る目を開けるとそこには見慣れた人物がいた。力強い腕と体躯に誰なのかすぐにわかった。


「…兄さん」


 そこには眉間に皺を寄せた藤次郎がいた。


「合歓…大丈夫か?」


 心配そうに聞く声に合歓は答えた。


「うん、大丈夫だよ」


「そうか、少し離れていてくれないか」


 糀の手を藤次郎が掴んでいた。ミシミシと骨が軋む鈍い音に合歓は二人の邪魔にならないように距離を取った。


〇〇


 合歓が糀に攻撃されると思うや否や、朝日はいきなりの藤次郎の出現に驚いた。藤次郎は朝日に話しかける。


「朝日様…っ」


「藤次郎くん!?」


「少し離れた方がいいかもしれません…っ、すみませんが結界の貼り直しをお願いします」


「わかった!」


 朝日と真澄と合歓は結界を貼りに向かった。藤次郎と糀は二人っきりになり、彼に向かい話しかけた。


「糀兄さん、少し手荒いですが許してください」


 藤次郎は息を整えて力を込めた。糀はそれに気づいたのか、藤次郎の腕を振り切った。


「ふ〜」


「全く暴走しているはずなのに、カンが鋭いですね」


 藤次郎は独り言を呟いた。その時何かが聞こえた。それは糀の口からである。


「…ろしてやる ころしてやる ころしてやる」


 それを聞いた藤次郎は一瞬止まる。


『そうか…』


 冷静な妹がどうして躊躇したのかわかった。普段の糀を知っているものでなければきっと同一人物だと分からないだろう。


「糀さん、お相手をよろしくお願いします」


 その言葉を皮切りに、糀が藤次郎に襲いかかった。そして激闘が始まる。


〇〇


 朝日と真澄と合歓はズシンという重い音を聞きながら着々と結界を張っていく。


『真澄、合歓、こっちは終わったよ』


『朝日様、こちらも終わりました、合歓さんは?』


『はい、私もこちらは終わりました』


「わかった、合流しよう」


 朝日は最初は早歩きだったが、嫌な予感がして走っていた。それは先ほどまで激しい音がしていたはずなのに急に静かになったからだ。


 真澄と合歓は合流して公園内に向かった。そこはもう公園という原型はとどめておらず荒地と化していた。その光景に二人は呆然となった。


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