XIII.インテルメッツォ:束の間の日常?
XIII.インテルメッツォ:束の間の日常?
ずいぶん長く、向こうの世界に居た気がしたが、実際はたった一晩しか経っていない。寝ている間に向こうに行くことが多いようだから、やはりあれは夢の世界なのだろうか?
それはさておき、大学に行かなくてはならない。しかし、とてもじゃないがそんな気分ではなかった。取りあえず、午前中の日本語学の授業(これは大教室の授業なのでボーっとしていてもバレない)に出たが、全く集中できない。(普段から集中していないだけかもしれない)。
そこで、午後からはもうサボってしまうことにした。学食で250円のラーメンを食べ、大学の敷地を出る。
何かすることが有るわけでもないが、ヘルメスと初めて会ったあの喫茶店にもう一度行ってみることにした。記憶を頼りに、住宅街を通り、小川の脇を歩いて行く。ところが、ここら辺りに喫茶店があったはずのところをウロウロしてみても、喫茶店もカフェもなかなか見つからない。やっとのことで一つだけ小さな町の喫茶店といった趣の店を見つけたが、以前に見かけた重厚なレンガ造りの建物とは全く違う外観だった。
それでは、と思い今度は、『緑の書』を買った古本屋に行ってみようとしたが、こちらもいくら探してもさっぱり見つからない。あの時の商店街までは来ることが出来たのだが、どこを探してもそんな店はないのだ。
仕方なく大学に戻り、念のためと思って、『緑の書』で始まりの森へと移動した大学図書館の地下書庫にも行ってみる。ここでも、持ってきていた『緑の書』を試しに開いて、「扉」の描かれた頁を眺めてみたが、特に何も起こらなかった。
何だか拍子抜けした感じだが、腹が減ったので再び学食に言って400円のカツカレーを食べる。向こうの世界ではパンばかり食べているので、白いご飯にカレー、安っぽいカツという組み合わせが無性に旨く感じる。
そして、拍子抜けした思いで、大学を出るためにすっかり暗くなった構内を歩いていると、一瞬、暗い校舎の一室から暗い塊がこちらを見ているような気がした。恐ろしくなって、振り返ってよく見ることはできず、急ぎ足でひたすら下宿へ向かう。
ようやく自分の部屋について人心地つくと、気を紛らわせるために読みかけだった太宰治を読み、気が付くと眠りに落ちていた。




