破壊者(アナレティック)・Ⅳ
「────わかっているさ、世界の主……おれをあの檻の中に閉じ込めておきたいのは……」
ふたりが去った後、静かにレヴィは呟いた。
「──おい、アーヴィー! なんなんだ、お前とレヴィの会話。全然、わからん」
屋敷から出た途端、ローゼンクロイツはアーヴィガイヌに聞く。
「アナレティックって知ってるでしょ」
「知ってるさ」
破壊者という意味を持つ、アナレティック。
「秩序と均衡、摂理と理が崩れそうになると現れる人物だ」
テトラグラマトンの世界は何度か滅びかけた。それでも存在し続けられているのは「破壊者」がいるからだ。
錬金術師は秩序、均衡、摂理、理を維持する者。だが、彼らがどんなに頑張っても世界は滅びへと向かってしまう。それを修正するために存在するのが──「破壊者」だ。
「レヴィの〝内〟にはその「破壊者」がいるの。さっきのが〝そう〟よ」
「本当か!?」
「本当よ。あいつはあの事件のどさくさに紛れて、〝檻から逃げたの〟よ。あいつを檻に戻すのも私たちの仕事。──けど、今はあの男を〝殺す〟のが先」
アーヴィガイヌの言葉に「レヴィが破壊者……ねえ」とローゼンクロイツが呟く。
「なによ、信じないわけ」
「だってなあ……俺は一度も会ったことないし。さっきのレヴィが〝そう〟だって言われても正直なあ」
「……そういうとこ、成長しないわよね」
どういうとこだよ、とツッコミをいれるローゼンクロイツ。そこから何故か、屋敷の前で二人の口喧嘩が始まってしまった。




