太陽と月のない時期(ヘリアカル・アポクリファ)・Ⅱ
「さて……どうするかな」
ラドゥイ家を出て、歩きながら、サルサディアは呟く。同時にある人物の言葉を思い出す。
『──許可された場所以外での術は歪みを産む。歪みがお前たちの身体に影響を及ぼすのはわかっているだろうが、あえて言っておく。大事にすることだ〝三度目の姿〟を失いたくなければー……』
それは〝現在〟の姿を与えた人物だ。
『術を使った後にかわるけど?』
術を使えば疲れることがわかっているので、アーヴィガイヌはサルサディアにそう提案してくる。
「オレらってさあ……そりゃあもう、不便だよな。錬金術師は術使っても問題ないけど、オレらは種類によっちゃあ、歪みが生まれるしさ。どおせなら、オレらもそうしてほしかった」
それが無理なことはわかっているのだ。
自分たちは世界の主の子供であり、護る者。
歪みは自身にとって、病原菌のようなもので、身体全体を蝕まれた先に待つのは──滅びだ。
つまり、それは〝元の姿〟に戻るということ。そうなることは避けたい二人だ。
『確かに不便よねえ。前みたいに別々にしてほしかったわ』
「今回に限って、一緒だもんなあ。しかも、別々になれるのが「太陽と月のない時期」の時だけって、嫌がらせかな」
三百年に一度、太陽と月が現れない時期がある。錬金術と人工生命以外のありとあらゆる生物は眠り続ける。
期間は──三日間。
その期間のことを「太陽と月のない時期」と呼ぶ。
「歩いてても場所わかんねえし、術で館主の家を探すかな」
そう言って、サルサディアは路地裏に身体を滑り込ませる。
「────……」
路地裏にはいったサルサディアは深呼吸をし、双眸を閉じた。──数瞬後、彼の足許に円が浮かぶ。円の内側には五芒星が描かれており、円の外側には文字が描かれている。
「魔法使い」が使う術の一種で、人探し用の魔方陣である。
「──よし」
閉じていた双眸を開くのと同時に魔方陣は消え、それと共に「よしじゃないだろ」という声がかかる。




