太陽と月のない時期(ヘリアカル・アポクリファ)・Ⅲ
「……いちいちうるせーよ、ローゼン」
いつの間にか立っていたローゼンクロイツなサルサディアは言う。
「術はなるべく使うなって言われてるんだろ」
「歪みが生まれてないから、問題ねえよ」
そういうことを言ってるんじゃないとローゼンクロイツが呟くのとサルサディアがふらつくのが同時だった。
「ほらな、疲れるのがわかってて、使うからそうなるんだ」
「……」
無言で睨み、サルサディアからアーヴィガイヌへと入れ替わる。
「……あまり、サーディアをイジメないでよね」
「可愛がってるんだ」
溜め息を吐いて言うアーヴィガイヌにローゼンクロイツは、彼のことをよく知っている人間が見れば、胡散臭いと思うような笑顔で答える。
あえて、ローゼンクロイツの答えを流し、館主の所に行くから、一緒に来てよねと言うと「一応、聞くが、俺がここに現れなかったら、どうしてた?」と問うてくる。
「愚問って知ってる?」
「……勝手に侵入して、勝手に持っていくつもりだったのか」
ローゼンクロイツの言葉にアーヴィガイヌはそれはそれは満面の笑顔だ。おい、コラというローゼンクロイツの突っ込みを無視して歩き出すアーヴィガイヌの後を彼は息を吐いてから、着いて行った。
手元にある本を読みながら、レヴィはくすりと笑う。途中まではちゃんと読んでいたのだか、中断したのだ。その理由はアーヴィガイヌとローゼンクロイツのやりとりを〝視て〟いたことにある。
「……タブラ・スマラグディーナですか?」
レヴィによって造られた人工生命の中で最年長の孔雀石で造られたヴィレナという名の青年は訊く。




