425 ロングインタビューの始まり
時間の使い方次第では、日々の日常生活におけるストレスから解放されるとAKIRA選手は信じていた。これだけの圧倒的成績を残しているのに、スタート地点にさえ到達していない感覚。信じてきた自分を疑ってしまう悲しき感情。あらゆる精神的不安を抱えて、ネガティブ力を爆発させてきた。負の感情がどれだけ自分を支えたのか言うまでもないとAKIRA選手は考えていた。
だが、今シーズンを終えたAKIRA選手にネガティブな印象は無かった。まるで別人のように明るく振る舞い、チームメートを盛り上げていた。報道陣からの質問に対し「ノーコメント」だけではなく、僅かに笑みを浮かべるようになった。一体全体、AKIRA選手の身に何が起こったのか。私はインタビューを申し出た。
時は12月下旬。AKIRA選手の出生地であるニューヨークにてインタビューは行われた。某有名ホテルの一室でAKIRA選手と対面し、今シーズンに起きた感情の変化について疑問をぶつける。
──今年は野球を楽しんでプレイしていた印象でしたが、何故試合中に笑みをこぼすようになったのでしょう。
「まあそうだな……お前の言う通り、試合中に楽しいという感情が芽生えたのは紛れもない事実だ。これまでの俺には無かった特別な気持ちで、言葉で説明するのは難しい感覚も感じた。恐らくそれは、俺自身の成績が不調であったからこそ、笑いが表情として出てきたのだ。野球に悩んでいるのを相手に悟られないよう、防衛本能がポジティブに働いたと言えよう。チームメートが打ったホームランに対し、笑顔で迎えるようになったのも、全ては自分自身を守るためだ」
AKIRA選手は鋭い眼光で睨みつけながら質問に答えていた。ひとつの質問に、ここまで長々と喋るのもかなり珍しい。私は好機とばかりに次々と問いかける。




