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AKIRA  作者: 千路文也
プロ3年目  -進化-
426/426

426  素直な態度


 まずは信じる事が大事だとAKIRA選手は語っていた。不信感を抱いた状態で打席に立っていると、あれこれと頭の中で考えてしまい、余計な迷いが生じてしまうと。しかしながらAKIRA選手も当然迷う時もあり、それ故にバッティングは奥が深いと仰られている。果たして今シーズンはどのようにしてファンの皆様を喜ばし、良い意味で期待を裏切ってくれるのだろうか。私自身もAKIRA選手の一挙手一投足には高い関心を抱き、ひとりのファンとして応援する身だ。試合中の動作一つに彼なりのプロフェッショナル精神が現れて、思わず見惚れてしまう。AKIRA選手は他のプロ野球選手と比べてもエンターテイメント性に優れている。三振する姿すら美しく、星のようにキラキラと輝いて見える。『まずは自分のバッティングを信じる』という格言そのものが、迷いなき三振に繋がっているのかもしれない。私は直接それを本人に問うてみた。すると彼の口から、以外に思える言葉が飛び出した。


「信じてみようとするのは信じていないということだ」


 彼の一言を最初聞いて、私の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいた。


「えーと、つまり?」


 独特な言い回しが混乱を生じさせる。AKIRA選手の言葉は時に難解で、専属記者を長年務める者ですら理解に及ばないことがある。だからと言って頭をフリーズさせてはならない。そこで意思疎通を諦めてしまえば本質を見逃してしまう。恥も外聞も捨てて聞き返すのは非常に大切だと、私はAKIRA選手から教わったつもりである。


「俺は自分のバッティングを心の底から信じられない。だから信じてみようとしているが、結果的には信じられていない……ということだ」


「自分のバッティングを心の底から信じられない? では何故そうまでして信じようとするのですか?」


「得体の知れない何かを信じるのは人間の本能だよ」


 あまりにも奥が深いので、迷宮に迷い込んだのではないかと思わされる。AKIRA選手とのインタビューは一筋縄ではいかないのだ。記者の私が何も分かっていない状態では、読者に本質を伝えられない。誤った認識のまま放置する訳にもいかず、私は更に追及を入れる。


「AKIRA選手はバッティングの最中に何を考えているのですか?」


「人々と助け合って共存する道を模索している」


 私の頭は完全にフリーズした。AKIRA選手が何を伝えようとしてくれているのか、全く分からないのだ。少なくともAKIRA選手は人知を超えた能力を持ち、私にはそれが無いという事実だけ把握した。



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