第九話 あの時のアレ
「あの時のアタシは、他の世界線から、この世界線に無理に干渉を続けたせいで、人格もカラダも、2つに分裂しちゃったみたいだったわ。」
「そんな……?」
「でも決して、物質と反物質という訳でも無かったから、再び一人のカラダに合体しても、モンダイは起きなかったという訳。」
「そう……なんだ。」
「そうじゃなかったら、今頃、この世界線は、"対消滅"で消えちゃってるって!」
「まあ、それもそうね……でも、アレは、再現可能なの?」
「ネガとポジになる事?出来ないわよ。アレはあくまでも不可抗力だ・か・ら。」
「……なるほど。」
「でも、見かけ上だけなら、500人に見えるワザは、習得済みよ?」
「何よ。そっちの方が、ヤバイんじゃないの?」
「ええ〜、そうかなあ~?」
ふふふ、と雪子が笑った。
何だかズルいな。京子は思った。雪子の過去の行いに、心配しても、ムカついても、彼女の見た目が高2の女子高生だから、全てが無邪気そうに見えて、許さざるを得なくなる……本当は私より少しだけ、年上のハズなのに。
「……ねえ。」
雪子がふと、京子の肩に手を掛ける。
「何よ……?」
京子は少しだけ、ムッとしながら、雪子を見つめ返す。
「……アナタ、今でも、雪村の事が好きなの?」
「そうよ。悪かったわねえ。妻の座こそ、弓子さんに譲ったけど……この世で一番、彼の事を愛しているのは、この私なんだからね!」
「……ありがとう。」
「えっ?」
「他意は無いわ。時間軸がズレているとは言え、私は彼の……実の姉なんだからね。」
「あ、そう。そうよね?」
ドギマギする京子。
「アナタは、その思いを胸の内に秘めて、小学校四年生の頃から、今までずっと……雪村の事を大切に守ろうとしてくれていた。」
「そ、そうよ。悪い?まるで、ストーカーよね?」
「実を言うとね……ずっと前から、お礼を言うつもりだったんだけど、ほら、お互い、中々忙しくて、チャンスが無かったじゃない?だから今、言っておきたくって……。」
「ナニ、これ?死亡フラグ?私かアナタが、近々死ぬ流れみたいな事、言わないでよ、縁起でもない……。」
「大丈夫。私もアナタも不老不死だから、その流れは、まず無いわ。この世の終わりでも、来ない限りはね?」
雪子がそう言った後、二人は無言で暫く見つめ合い、やがてエヘヘへと、悪い合った。
因みにコレは、お笑いコンビの"オードリー"のブレイクまで、後9年程待たねばならない頃の話である。




