第三十話 雪村会議
「ねえ、ユリちゃん。」と話し掛ける鷹志。
「なあに?鷹志。」と返事をする由理子。
二人は今日も、亜空間レストランのバーカウンターで、朝からイチャイチャ……じゃなかった、仕事をしていた。
「あそこのテーブルで、ナニやら面白そうな事が、始まるみたいだよ。ちょっと耳を傾けてみようよ。」
「鷹志たら。盗み聞きは、マナー違反なんだぞ……って、あら、ホントだ。」
由理子も、その特殊な状況に気がついた。
それは、窓際の丸テーブルに、真田雪村、そのクローンの成雪、それをコピーしたアンドロイドのソラユキが、揃って座り、今まさに、三人で話をするところだったのだ。
どうやら話題は、"魂について"のようだった。
「成雪様は雪村様の生体コピー、私は、雪村様の人格を、コピーしてAIに搭載した、アンドロイドな訳なのですが……。」
最初に発言したのは、ソラユキだった。
「……私たちの魂……精神体……意識……ソウル?は、どうなっているのでしょうか?」
それに答えたのは、雪村だった。
「それは、難しい質問だね。まず、"魂とは何なのか"の定義づけが、やっかいだな。」
「……肉体に入っている心の事でしょ?」
成雪が事も無げに言う。
「うん、そうだね。では、心は、身体の中の、どこにあるのかな?」
雪村が問いを返す。
「ここかな?」成雪は自分の心臓辺りを、指差した。
「ここかもしれないね。」雪村は、自分の頭を指差して見せた。
「魂は、身体中を走り回る、単なる電気信号なのでしょうか?……それとも、脳に蓄積した、経験値や知識の集合体なのかも。」
ソラユキは、そんな意見を述べた。
「僕は、ソレに対する解答は持ってないけど……昔、こんな話を聞いた事が有るよ。」
そう言う雪村の話に、他の二人は耳を傾けた。
「僕らは、三次元世界の住人なんだけど、四つ目のベクトル……つまり時間の中を、自由に動ける者たちが居る所が、四次元世界。更に、別の時間軸にまで、自由に行ける者たちが居る所が、五次元世界。そして、その上にも、まだまだ高次元の世界が、有るらしいよ。」
「……へえ。」そうとしか言いようの無い成雪。
ソラユキは沈黙している。
「そして、四次元以上の高次元の存在たちは、みんな精神体……つまり、魂の状態で存在しているらしい。」と雪村は続けた。
「つまりそこは、物理的な肉体が、必要無い世界なのですね?」
ソラユキが、すかさずそう言った。
「……そういう事になるね。」
雪村が答えた。




