第二十九話 先輩と後輩
その3名を見送った後、サン・ジェルマンは、ジャンヌの方に向き直ると、こう依頼した。
「ジャンヌさん、ご覧のように、彼女は貴女に心酔しているようなので、今後は是非、貴女から色々と、このアジトだけでなく、この世界での過ごし方など、教えてあげて下さい。」
「はい、もちろんです。」ジャンヌは快諾した。
「ジャンヌ、先輩になったね?」
カグヤが少し冷やかし気味に囁く。
「はい、頑張ります!」ジャンヌは生真面目にそう答えた。
さて、ゲストフロアに降りた3名は、無事に王妃用のゲストルームまでたどり着いた。鷹志が代表して、彼女に室内を案内しつつ、ここでの生活について、いつものように、軽く説明しておいた。王妃は要所要所で質問をしながら、熱心に彼の話に耳を傾けていた。
「……まあ、ざっとそんな感じです。」
彼が最後にそう言うと、王妃も最後の質問をした。
「最後に一つ、よろしいかしら?」
「ええ、もちろん、どうぞ。」
「先程の、ジャンヌ・ダルク様も、こちらで、寝泊まりをされているの?」
「はい、そうですよ。因みに他にも、歴史上の偉人が沢山みえますので、いずれまた、ご紹介しますよ。」
「わあ……楽しみね。」
彼女は確か、37歳だった筈だが、喋りは上品で在りながら、どこか無邪気で天真爛漫なものを、鷹志に感じさせた。
(何て素敵なんだ。喋り方まで、魅力的なんて。)
彼はそう思ったが、直ぐに、隣で自分を睨んでいる、由理子の視線に気がついた。
「じゃあ、後でまた、伯爵から正式に案内されますから、それまでこちらの部屋で、どうぞお寛ぎ下さい……その他の質問もその時に。」
「ありがとう。助かったわ……ええっと、タカシさん?」
「はいそうです。覚えて頂いて光栄です。では、いずれまた、王妃。」
話をそこで切り上げ、由理子と共に、彼はその部屋を退出した。
「もう、鷹志ったら、話、長いわよ。」
エレベーターに乗ってからも、まだ彼女は不満げだった。
「まあ、まあ。ユリちゃんだって、もしも、大好きな歴史上の偉人に出会ったら、テンション上がるでしょ?」
「私は、別に……歴史に興味なんか無いもの。」
彼女は、可愛く頬を膨らませながら、そう言った。
(鷹志は何にも分かってない……貴方より素敵なオトコが、この世に居る訳ないじゃないの!)
赤いウイッグが逆立つくらい、由理子のイライラは、倍増するのであった。




