第二十八話 聖女と王妃
その後、三人はエレベーターで、亜空間レストランまで上がって来た。
ちょうどそこでは、鍛錬を終えたカグヤとジャンヌが、中央のテーブルに陣取り、ティータイムを楽しんでいた。バーカウンターの中では、由理子と鷹志が、片付けをしていた。
「ああ、伯爵。お帰りなさい。レスキューの首尾はいかがでしたか?」
サン・ジェルマンの姿を見た鷹志が、カウンターから声を掛けて来た。
つまり彼は、伯爵がどこで何をして来たのか、知っている訳だ。
京子はまた、伯爵を睨みつけた。
伯爵はまた、冷や汗をかいてしまった。
マリー・アントワネットにとっては、目に飛び込んでくる全てのモノが、珍しかったが、キョロキョロしていたその視線が、ある一点に集中した。
彼女の見つめる先には、お茶を飲んでいるジャンヌの姿が有った。
ジャンヌもそれに気づき、眼を上げて、王妃を見つめた。
その瞬間、聖女と王妃の視線が絡み合った。
「……もしや、貴女は、聖女ジャンヌ・ダルク様!?」
「いかにも、私はジャンヌ・ダルクですけど……?」
一体どこに、そんな元気が残っていたのか。マリー・アントワネットは、アッと言う間に、小走りでテーブルに駆け寄り、ジャンヌ・ダルクの側に跪いた。
「私、貴女様の伝記を、何度も読みましたの。まさか、直にお会いできるなんて!ここはやはり、天国なのでしょうか?どうぞ私を、マリアとお呼び下さいませ。」
「は、はあ。それは……どうも。」
ドギマギするジャンヌ。
「王妃。ここは天国では無く、未来のレストランですよ。」
笑顔で訂正する、サン・ジェルマン。
そんな、賑やかな様子に誘われて、カウンターから、由理子と鷹志が出て来た。
「うわああ、豪華ツーショットですねえ!」
珍しく興奮気味の鷹志。歴史好きな彼には、堪らないシーンだった。
「鷹志……ちょっと喜び過ぎなんじゃない?」
他のオンナに鼻の下を伸ばす彼に、穏やかではない気分の由理子。
「そうだ。鷹志君、王妃を専用のゲストルームに、ご案内して下さい。」
そこで伯爵が、思いついたように、そう言った。
「ハイ。喜んで。」
鷹志は、まるで居酒屋の定員のような、返事の仕方をした。
「私もついて行きます!」
プリプリしながら、由理子がすかさずそう言った。
そんな訳で、3名は連れ立って、エレベーターに乗り、地下のゲストフロアまで、降りて行ったのである。




