第ニ十七話 王妃と雪女
実際、マリー・アントワネットという人物は、話してみると頭の回転が速く、機知に富む、なかなか愉快な人柄だった。先程のギロチン刑当日の、朝4時に死刑を宣告された裁判でも、その場に居た誰一人として、彼女の言い分を、論破できる者は居なかったらしい。
それでも無理やり死刑にしてしまったのだから、そんなのは裁判とは言えないモノだった。そんな訳で、サン・ジェルマンにとってみれば、単なる話術そのものだけに注目しても、みすみす死なせるのは惜しい人材だったのである。
また、それに以前にも、サン・ジェルマンが、宮廷にツテを探している時、彼という存在に興味を持ち、社交界で動きやすいように、色々と便宜を図ってくれたのが、彼女だったのだ。今回の彼の行動は、その時の恩返しも、兼ねているのだった。
さて、そんなこんなで、伯爵の黒いビートルは、名護屋テレビ塔の、地下駐車場に無事に戻って来た。二人がクルマから出ると、エレベーター前で、とある人物が待ち構えて居た……それは黄色いワンピースを着た、ボブカットの髪形の女性、村田京子だった。
「おかえりなさい、伯爵。ソレは一体、誰かしら?」
彼女は、開口一番にそう尋ねた。少し怒っているようだった。
「ああ、京子さん、ただいま。こちらは、かの有名な王妃、マリー・アントワネットさんです。王妃、こちらは私の内縁の妻、村田京子です。」
「こんにちは、京子さん。マリアと呼んで下さいな。」
「はじめまして、王妃。もう少し親しくなったら、そうさせて頂こうかしら……伯爵、ちょっとこちらへ。」
京子はそう言いながら、サン・ジェルマンに手招きした。
「王妃、こちらで少々お待ち下さい。」
伯爵はそう言うと、京子の近くまで行った。
「貴方、テレビ塔の地下に、ハーレムでも作るつもりなの?」
彼の左の耳たぶを掴みながら、彼女は怒気を含んだ声で、囁いた。
「いや、決してそんな事は……あ、ほら、前回は、石田三成氏をレスキューしたじゃないですか?それに私は、王妃に借りが有るのですよ。」
「ふーん、じゃあ、しょうがないわね……なんて、子どもじゃあるまいし、そう簡単に、納得出来る訳無いでしょ!」
「ああ、それはもう、ごもっともです。以後の私の行動を見て、納得して頂くしか……前から言ってますが、私の最高のパートナーは、貴女だけですから。」
「それは……分かってるわよ。ああ、もう、とにかく、自重しなさいよね?あと今後は、誰をレスキューするのかは、必ず私に相談してから、決める事!」
「はい、必ずや!」伯爵は、力強く返事をした。




