第三話 約束
「貴女も剣から出す炎を封印して、純粋な剣のチカラだけで頑張っていたのでは?」
女王が尋ねる。
「だって、貴女も毒を使わないじゃないの。」
カグヤが、女王の必殺技に言及した。
「あ〜あ。私コレでも、故郷の星では純粋な剣技で最強だったのよ?すっかりプライドがズタズタだわ。」
「ソレは、申し訳無い事をしたね。」
「認めたくないけど、上には上が居るって事よね?」
「そうだな。私ごときの強さ、古代エジプトの神々の中では、むしろ下の下だからな。」
「……どいつもこいつも、バケモノたちなのね。やってられないわ。貴女の強さは認める。でも、私の父にした所業は許せない。いつかまた、私が今より強くなったら、相手をしてもらうわよ。」
「イイですとも。いつでもいらして下さい。最優先で受け付けますよ。」
「それまでに、ヘンなヤツに殺されたりしたら、許さないわよ?」
「ええ、肝に銘じておきましょう。」
「じゃあ、またね。今日のところは帰るわ。」
「お気をつけて。」
「ふんっ!」
最後には、まるで、ツンデレヒロインのような遣り取りをして、カグヤは帰って行った。
しばらくすると、ウアジェト女王は、中庭の端の木陰を睨みながら声を掛けた。
「いつまでソコに、隠れているおつもりですか?」
「なんだ。バレていたのか。」と、別の声。
「貴女の殺気も、彼女のソレと変わらず、ダダ漏れですからね。」
「そういうモノを隠すの、苦手なのよ。」
そう言いながら、姿を現したのは、今日も冬物のセーラー服を着た永遠の17歳、真田雪子だった。
「何してたんですか?」
「いや、ちょっと見学をね。でも感心したよ。」
「何にですか?」
「貴女のフェアプレー精神に。」
「……そうですか。」
「鳥族の小娘の言い分など、聞きもせずに、門前払いするかと思ってたよ。」
「私も案外、面倒見がイイ方なんでね。」
「ご褒美に、今日から私が、これまでの主義を曲げて、ヘビを好きだと公言する事にしようか?」
「それは……光栄な事ですな。」
「爬虫類族にも、色々居るのだな。」
「私はいつでも、惑星ガイア・ファースト……つまり地球の事を第一に考えているだけですよ。」
「……そうか。そのスタンスにケチをつける程、私も無粋では無いよ。」
「それは良かった。」
「これからも、よろしく頼む。」
「こちらこそ。」
そのまま帰りかけた雪子が、ふと立ち止まって振り返った。
「ああ、そうそう、最後に一つだけ……イイかな?」
「……何なりと、どうぞ。」
「徳川家康の影武者を、何度も作って送り込んでいたのは……貴女だよね?」(第28巻 参照)
「……ええ、そうですとも。日本に平和な時代を作るため、彼の政治力に賭けてみたかったんです。そのためには、彼に死んでもらう訳にはいかなかったので。」
「……ありがとう。その回答が聞きたかったんだ。じゃあ、また、そのうちに。」
笑顔でそう言い残し、雪子も腕のデバイスを使って、その場から一瞬で姿を消した。
「ええ、また逢いましょう。」
一人残された地下の女王が、もう誰も居ない中庭で呟いた。
その日、地上の雪子たちの世界では、西暦2000年1月1日を迎えていたのだった……。




