第二話 剣と剣
「参ります!」
礼儀正しく、声高らかに宣言すると、カグヤは女王に斬りかかった。
左下から右上に向けて逆袈裟がけに斬り上げ、即座に逆の軌道で斬り下げる。
所謂、燕返しだ。女王はその素早い剣撃を、正眼の構えから、難なく受け流す。
カグヤはそのまま片足立ちで、クルリと時計回りに一回転すると、その勢いを剣に乗せて、女王の胴体に水平に斬りつける。中国の剣劇でよく見かけるやつだ。ただ、並みの速さではない。しかし、女王はそれにも対応し、苦も無く自らの剣で打ち返す。
女王の剣圧で、カグヤは身体ごと後方へ飛ばされてしまった。
改めて冷静に考えてみれば、女王の身長は2m以上。対してカグヤはというと、1m60cm弱しか無かった。二人の体格差は歴然だ。ただ、そんなカグヤも、鳥族の成人年齢に達すれば、身長2mに届くのだが、それはまだまだ先の話なのである。
それでも過去には、"牛若丸と弁慶"という例も有る。"柔よく剛を制す"とも言う。だから戦闘における優位性は、対格差だけが全てではないと、カグヤは信じていた。ただし、体格と戦闘センスと本能を兼ね備えた、あの宮本武蔵様は、ニンゲンでありながら別格だけれど……ふと、悲しい思い出がカグヤの胸の中に蘇った。
女王は、そんなカグヤの剣の勢いが鈍るのを、見逃さなかった。
彼女は、すかさず素早いモーションで、上段から斬り下ろす。
カグヤは後ろへ跳んでソレを避けたが、女王は更に一歩進んで、中断突きで追いかける。
攻勢にまわった女王の剣撃を受けながら、中庭の壁際まで追い詰められたカグヤは、その壁を蹴って三角跳びを実行し、空中を回転して女王の後ろに着地した。そして再度跳び上がり、振り返った女王に空中の上段から斬りかかる。
女王は剣を水平にしてカグヤの剣撃を凌ぐと、まだ着地前のカグヤの左脇を薙ぎ払った。
カグヤはかろうじて剣を逆さまにして立てて、ソレを受ける。そしてやはり、身体ごと、中庭の右端まで吹っ飛ばされてしまった。
ゴロゴロ転がりながら、回転レシーブの要領で片膝を着いて、急いで体勢を立て直すカグヤ。
しかし女王は、中庭の中央で剣を青眼に構えたまま、追って来ない。
「……あ〜あ、ヤメた、ヤメた!」
突然カグヤは言い出した。
彼女は立ち上がりながら、膝の埃を払う。
「どうしたの……もうイイの?」
女王が尋ねる。
「だって、私は全力でやっているのに、貴女はチカラの10分の1も出していないんだもの。残念ながら、私が貴女に勝てる見込みはゼロだわ。」
すっかり落胆したように、カグヤは言った。




