第二十話 杞憂では無い
「でも、もし、あの悪魔と呼ばれる、タチの悪い四次元人どもが、或る一つの時間軸の座標を狙って、集団で攻めてきたら……。」
「成る程、ソレは、やっかいな感じね。考えてみたら、あいつら今までは、単発的な単独犯だったから、潰し易かったのよねえ。」
「正直な話、不安の元となる、座標がはっきりしていれば、今すぐにでも、飛んで行きたい気分ですよ。」
「解ったわ……そうだ。サン・ジェルマンズに連絡を取ってみたら?」
「ああ、私の同位体で出来たグループですか。そうですね。やってみましょう。」
サン・ジェルマンズとは、他時間軸の11名のサン・ジェルマンたちが、集合して活動しているグループである。
伯爵は、直ぐに地下駐車場まで降りると、黒いワーゲンビートルの運転席に乗り込んだ。ソコに、並行宇宙と繋がる、特殊な通信機器が有るのだ。
コチラから発信すると、すぐに正和のサン・ジェルマンと繋がった。彼は「そろそろ連絡が来る頃だと、思ってましたよ。」と言った。そして、目指すべき座標を教えてくれたのだ。ソレはかなり未来の数値だった。
更に彼は、「コレは、我々サン・ジェルマンの中の、一人のミスが招いた危機だから、我々で解決したい。」とも言った。昭和のサン・ジェルマンも、その見解に賛同した。
彼はそのまま、殆ど衝動的に、黒いビートルのエンジンを始動させ、目標の座標を入力すると、地下駐車場から出発したのである。(大丈夫だ。こんな事も有ろうかと、必要な機材は全て、トランクに詰めてある。)彼は自分自身に、そう言い聞かせた。
たった今、エレベーターの扉から出て来た京子は、ソレを見送る事になり、「ああ、一歩遅かったか……。」と呟いた。そして囁くように「必ず無事に、帰って来なさいよね?」と、付け加えた。
「なあんだ。一緒に行かなかったんだ?」
その時、駐車場の柱の陰から、そんな声がした。
「貴方、私のストーカーなの?それとも彼の……かしら?」
京子がそう答えると、柱のこちら側に、真田雪子が出て来た。
「心配じゃないの?」
「彼の意思を尊重したまでの事よ。誘いたければ、私を誘ってから、出発するはずですもの。」
「ふ~ん、そうなんだね。」
「何よ?」
「いやあ……たまたまアタシ、あの黒いビートルに、時空発信機を付けておいたのよねえ。でも、貴方には、そんな情報、有難迷惑だったみたいねえ?」
「ちょっと、待ちなさいよ。」
「なあに、知りたいの?彼が何時の何処に行ったのか?ついでに言うと、アタシ、黒猫のバステト嬢に、連絡を取る方法も知っているのよ。つまり、"アシ"も調達可能なの。」
雪子はそう言うと、ニヤリと笑った。
「まったく、アンタって人は……油断も隙も無いわね。呆れるわ。」
「……ふふふ。で、どうするの?」
「さて……どうしようかしらねえ。」




