第十八話 カグヤ・イシュタル
一方その頃、カグヤは成雪を伴って、里帰りのために、惑星ニビルに向かっていた。
以前、隕石の襲来から守るために、真田雪村によって、ケプラー星系まで跳ばされたその星は、今日も何事も無く、平和に輝いていた。
サンジェルマン伯爵が、運転手を買って出てくれたので、黒いビートルの後部座席で、若い二人は仲良く並んで座っていた。
そもそも、こんな芸当の出来る、地球の乗り物は、コレだけなのだ。別の手段を選びたいなら、他の並行世界の、犬族か猫族に、頼むしかないのである。
やがてクルマは、彼女の実家の玄関前に着陸した。
「おかえり、カグヤ。それに成雪さんも。伯爵様も、遠路遥々ありがとうございます。さあ、みんな上がってちょうだい。」
カグヤの母は、そう言って出迎えてくれた。
応接間に通され、皆でソファに座って、和気あいあいと、お茶を飲んでいるうちに、突然カグヤが泣き出した。
「お母様、お父様が……。」
あんな事があれば、情緒不安定にもなるだろう。
「……ええ、知っているわ。少し前に、月面基地から連絡が有ったの。残念な事をしたわね。」
「……この度は、ご愁傷様です。」
サン・ジェルマンは、地球流のお悔やみを述べた。
「ありがとうございます。しかし彼も、研究が本業とはいえ、我が戦闘民族の一員。闘いで命を落とすのは、むしろ本望かと。」
「……そうですか。」
それ以上は、何も言えない伯爵。
「でもやっぱり私、悔しいわ。今回の事件の原因を作ったアイツを……許せない!」
ブルブル震えながら、カグヤはそう言った。
「今後の事は、アナタ自身が納得出来るように、なさい。」
彼女の母はそう言った。
成雪は、ソレを黙って見ていた。
帰還シークエンスの途中、伯爵はカグヤに尋ねる。
「相手はあの、ウアジェト女王なんですよね?」
「そうです。実はもう、挨拶がてら、一戦交えたのですけど……全く歯が立ちませんでした。」
「そうですか……。」
「てすから、これからも、毎日欠かさず、鍛錬を積み重ねます!そして、いつかきっと……!」
「まあ、私の口出しするような事では、ありませんね。」
サン・ジェルマンは、少し寂しそうに、そう言った。
成雪はまたしても、黙っていた。しかし、心の中では(ボクがいつも、彼女の側についていてやろう。そして、どんな事でも、サポートしよう。)そんな風に思っていたのである。




