第十五話 レスキュー?
上空から俯瞰すると、両軍の動きが良く分かる。確かに小早川がいつまでもグズグズしていた。西軍の動きにまとまりが無く、対して東軍のソレにはムダが無かった。
ジャンヌ・ダルクは戦士で、戦略家でもある。
だから、眼下の軍団の動きを観察する事が、実に楽しかったのだ。
(敬虔なるキリスト教徒として、ひょっとして私、おかしいのかしら?)
戦争を見る事が楽しいと感じてしまう自分に、ふと、違和感を感じる。
これまでは、そんな自分の内面に、疑問など感じなかったのに……。
恐らくコレも、あの由理子の影響だろう。
彼女の心は、イエス様に次ぐほど、慈愛に満ち溢れている。
そのうち「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ。」って言いかねないな。
ジャンヌはそう思って、クスッと笑ってしまった。
関ヶ原の闘いの総所要時間は、意外と短い。
だいたい8時から14時までの間に、カタがついたと言われている。
気がつくと、敗走して行く石田三成と、その取り巻きたちが見えた。
ジャンヌは、その西軍の首謀者の行方が、何となく気になり、ソラユキに、それを追うよう指示をした。
どうやら三成は、伊吹山方面を目指しているようだ。
しかし、それよりも気になるモノが、彼女の視界に入って来た。
彼女の黄色いビートルと、三成一行の間に、よく見慣れた、と或る物体が割って入ったのだ。それは、黒いワーゲンビートルだった。
「まさかあれは……サン・ジェルマン伯爵の?」
「恐らく、そうですね。」
それまで黙っていたソラユキが、突然、喋り出した。
「映像分析によると、99.9999%一致しています。」
「何故……ここに?」
「恐らく理由は……。」
彼が答えるより先に、目の前で動きが有った。
上空を飛びながら、ゆっくりと近づいた黒いビートルから、アームが伸び、馬上の石田三成を、掴み上げてしまったのだ。
他の従者たちが、あっけに取られて見守る中、やがて彼は、黒いビートルに連れ込まれ……しばらくしてまた、同様の格好で出て来たのだ!
彼はまた、アームで下に降ろされると、あれよあれよと言う間に、先程の馬の上に、キッチリ戻されてしまった。そして、何事も無かったかのように、その黒いビートルは、その場から去って行ったのである。
地上に残された石田三成の一団は、口々に「ご無事でしたか?」とか「今のは、一体何だったんだ?」とか言い合っている。
史実によれば、この後、割りと直ぐに、石田三成は東軍に捕まり、後日、処刑される事になっていた。




