第十四話 アンドロイド1号
アンドロイド1号に対する、ジャンヌの第一印象は、概ね悪く無かった。
彼女は喜んで、「ありがとうございます。私専用のボディガードですね!」と言って、ソレを受け入れた。
ただずっと"アンドロイド1号"と呼ぶのも、些か無粋な事なので、彼女自身が、ソレに"ソラユキ"と名付けたのだった。
そんな或る日の事。
ジャンヌはソラユキを伴って、時空調査に出掛ける事にした。村田京子の好意で、黄色のビートルを借りる事が出来たのだ。
操縦については、ソラユキにインプットされたデータで可能だったから、彼女は助手席に収まった。目的地の座標は、以下の通りである。
西暦1600年10月21日の土 曜日。
時刻は10時00分
北緯35度22分
東経136度27分
「では、参ります。」
ソラユキは上品なフランス語でそう言うと、クルマを地下駐車場から出し、光学迷彩を透明モードにしながら、垂直上昇させた。
そして彼は、時空転位のボタンを押した。
目指すは、日本国岐阜県不破郡関ヶ原町。
調査対象は、"関ヶ原の戦い"である。
時空転位の出口は、関ヶ原の上空だった。
当時の火縄銃の性能では、ここまで弾丸は届かないし、ましてや弓矢など、恐るに足らず、と言ったところだった。
それに、万が一に備えて、このクルマには、電磁バリアも装備されているし、何なら迎撃機能まで、幾つか持っているのだ。
もちろん、ジャンヌは、あくまでも見学のつもりで、この現場にやって来ている。だから、危険を冒してまで、東軍、西軍、双方に近づくつもりは、サラサラ無かった……と言うのも、彼女は最近、日本の歴史について勉強しており、この関ケ原の戦いに興味を持っていたのだ。
後に、天下分け目の決戦と言われたこの戦いは、そもそも西軍に有利な陣形だった。兵力が互角だったから、普通にヤレば、西軍が勝つ戦争だったはずだ。しかし、実際に勝ったのは、東軍だった。
それは何故か?
真相を簡単に言えば、西軍内に、相次ぐ寝返り、裏切り、不戦の数々が有ったからである。小早川秀秋、脇坂安治、朽木元綱、毛利秀元らが寝返った理由は、ひとえに、石田三成の人望の無さが原因だったと、彼女は睨んでいた。
彼は武士で在りながら、厳格な官僚で在りすぎたのだ。自ら作ったルールを守ろうとするあまり、他の古参の武士たちとの、しがらみや付き合いを、ないがしろにする格好になっていた。恐らくソレが、反発の原因になったのだろう。ジャンヌはそう思った。




