第十三話 伯爵の発明品
その日も雪子は、暇を持て余して、亜空間レストランに来ていた。彼女がアイスレモンティーをチビチビやりながら、マッタリとしていると、エレベータで上がって来たサン・ジェルマン伯爵に、声を掛けられた。
「ああ、雪子さん、ちょうど良かった。お暇でしたら、ちょっと地下のラボまで、つき合ってもらえます?見ていただきたいモノが、有るのですが。」
「いいけど、また京子さんに、睨まれたりしないかしら?私はもう彼女との間に、波風立てたくないのよ。」
「それでしたら、問題有りません。今日はしばらく、買い物から戻らないはずですから。」
「それならいいけど……出来るだけ手短にしてね?」
そう言いつつ、まんざらでも無い雪子。
彼女は早速、いそいそと、伯爵と共にエレーベーターに乗り込むと、地下へと向かった。
「是非、雪子さんの御意見を、頂きたいのですよ。」
地下のラボへと続く廊下を歩きながら、伯爵が言う。
自分の意見を聞きたい?……彼女はもう既に、嫌な予感がしていた。
ラボの前にたどり着くと、入り口の自動ドアが開いた。
部屋の中央正面に、高さ2m程の、透明なケースが鎮座していた。
雪子は、何故かデジャヴを感じた。
そして思い出したのだ。(あっ、あの時と同じだ。)
透明なケースの中に入って居たのは、雪村ソックリの人物だった。
ただ頭髪が金髪だ。覚醒しているのか、瞼が開いて青い瞳が見える。
つまり、雪村を白人に作り替えたような者が、そこに存在して居たのだ。
雪子のデジャヴの正体は、以前、カグヤ・イシュタルのために、伯爵が作った、雪村のクローンの成雪を見た事があるからだった。
「伯爵、アナタ、まさか、また……!?」
「ああ、違うんですよ。コレはね……。」
「……何よ?」
「……雪村君ソックリに作った、アンドロイドなんですよ。」
「……!?」
「ご本人が、自然に年齢を重ねる事を、選択されたので、若い状態の彼を、保存する狙いもあるのですが……。」
「……ですが?」
「ほら、彼は何故か、我がチームの女性から、多くの支持を得ているでしょ?だから、アンドロイドで賄えば、みんなでシェア出来るかなって……因みにコレは、白人型モデルで、ジャンヌさんに貸し出すつもりなんですが。」
「……アナタが元々、マッドサイエンティストだったって事を、すっかり忘れていたわ。」雪子は、半ば呆れ返りながら、そう言った。「まあ、いいんじゃない?むしろ、ナイスアイデアかもしれないわね。」
こうして、このアンドロイド1号は、ジャンヌ・ダルクに貸し出される事になったのである。




