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残念世界の残念勇者   作者: XT
88/96

ループワールド・勇者ケイン編 88

選べない・・どちらかだなんて、俺には無理だ。

「ここは静かでいいわよ。世俗から完全に遮断された世界。のんびり暮らすには最適な空間」

くそ!


「ピーすまん・・・・無茶をする」

俺は頭に来た。

「いいわよケイン。好きになさい」

ピーは快く俺の我儘を聞いてくれた。


「俺の結論だ!俺には二人を選ぶ事などできない。どちらも大事だ。例え、アリスやアリッサでなく、ティナやマオ、ターナや仲間達でも、俺は選べない。だから俺もここに住む!」

「ケイン・・・愛してるぞ」

「パパ!大好きだよ」

「はい。私も住みます!」

「私もだよ~」

みんな!!


「いい決断ね。住めば都。住人同士仲よくしましょう」

ああ、仲良くしてやるさ。

「マオ!ママゾンだ」

「はいよ~来ると思っていたよね~」

「はい。マオさん、二世帯住宅でお願いします。下はアリスさん、上は私との愛の園です」


  

   「マオゾンです~宅配です」

ママゾンスゲー。天空の鍵無しで、即来やがった。

あっという間に、二世帯住宅が建つ。


   ずんずんずんずんどこと ちゃちゃちゃ♪

俺はピー経由で、策をマオに伝えていた。

住宅が建ち、庭には大きなスピーカーが4つ。

ズンドコ節が流れ出す。


「ちょ!なによ、この音楽は?」

「ずんどこ節だ。俺は常時この音楽を聴いている。これが俺のライフスタイルだ」

「いいぞ。この音楽はノリがいいぞ」

「パパ!私も好きだよ。大音量で聞くのがいいよ」

「はい。もっと大きくしてください」

「ボリュームアップだよね~」


 ずんずんずんずんどこと ちゃちゃちゃ♪

 ずんずんずんずんどこと ちゃちゃちゃ♪

「五月蠅い。ここは静かな安らぎの空間なのよ。止めて!止めなさい!」


「ダメだぞ。ライフスタイルは大事だぞ」

「はい。居住に関しては、特に取り決めはありませんでした。音楽を聴くのは、禁止されていません」

「そういう事だ。末永く近隣住民として、よろしく頼む」

「騒音は禁止よ。嫌なら出ていって!」

「あら、あなたが住めと勧めたのよ。出て行けは無いんじゃない?」

九重は静かな空間を好む。これは分かっていた。

「俺の大事なものを奪うと言うなら、お前の大事なものも奪ってやる。俺に仲間を選ばせる真似をしたことを後悔しながら、ずんどこ節を聞きやがれ」


  ずんずんずんずんどこと ちゃちゃちゃ♪

「ずんどこ節は、2時間聴くと頭から離れなくなるぞ。寝てても起きてても、エンドレスで脳内演奏されるぞ」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「寝てる時に~脳内演奏はきついよね~」

  ずんずんずんずんどこと ちゃちゃちゃ♪

「許してぇ!分かったから、早く音楽止め!」

九重、20分で音を上げる。


「分かったというのは、どういうことかだぞ?」

「はい。具体的にお願いします」

「マオさん、もう少し音量高くした方がいいかもよ」

「あと10個ほど~スピーカー発注しようかね~」

俺達の勝ちだ。こうなると、俺たちは無敵だ。


「分かった、分かった、謝るから!ケインを主と認めるし、だれも人質になんか取らない!だから早く止めて!」

グジョップだ。


「もう耳に残ってる・・・頭の中がずんどこしてる・・・」

まぁ2~3日は残るな。ざまぁみろ。

「卑劣勇者とは聞いていたけど、本当に・・なのね」

「ケイン、九重からお褒めの言葉だぞ」

「パパ!褒められたよ」

「ケインさん、凄いです。AAAの聖剣さんが褒めてくれました」

「卑劣だよね~」

お、おう。


「とりあえず私も、えげつない事をしたから、謝るわ。でも分かって欲しいの、覚悟は必要なのよ」

ああ、理解している。

俺は世界より仲間が大事だ。あんたの言う危険な人物だとも理解している。

「それは良いのよ。誰でも大事なものはある。世界より仲間が大事、素敵な事よ」

いいのか?

「貴方は正直。綺麗ごとを言う連中より好きよ」

じゃ覚悟って?


「私は理すら変える力を持つ聖剣。私を持つあなたは、世界中の勢力から狙われるわ。安らぎの日は来ないわよ」

なんだ、そんなことか?

「ケインはランク6位だぞ。狙われるのは当然だぞ。今までも襲撃を受けてきてるぞ」

「はい。それぐらい特に問題ありません。狙われる日々が日常です」

「私たちが守るから大丈夫だよ」

「だよね~」

「そうそう。ケインなら気にしないわ」

いまさら考えると、確かに襲撃は多いが、気にした事は無かったな。


「流石は姑息勇者ね・・心臓もぶっ飛んでいるわ」

「ケイン、また褒められたぞ」

それ、もういいから。



「さぁ、ケイン、私を腰に差しなさい。貴方を主として認めるわ」

ああ、俺も強引で済まなかった。協力頼むよ。

俺は腰に・・・・。俺の腰には愛剣、名もない剣が刺さっていた。


「その剣・・・名もない剣なのね。勇者の腰には役不足。自分を置いて、私を刺すように言っているわ」

俺の剣?意志を持っているのか?

「全ての剣、いいえ、全ての物は意志を持っている。言葉にできないだけで、物にも魂はあるのよ。あなたの剣は、来た時から私に訴えていた。主を助けてくれとね」

・・・すまん。俺はこの剣を置くことはできない。

今まで俺の腰を守って来た、大事な仲間だ。二刀刺しだ!


俺は九重を仲間にした。




「ぐはぁぁ」

大きく後ろへ吹っ飛ぶ。

アリスの魔法を九重で受け取り放ってみたが、やはりまともに打つことはできない。

「ダメだぞ。私の最弱攻撃魔法のプチブリザードですら、大けがの元だぞ」

絶対零度など使ったら、間違いなく体は四散する。

ブリザードでも生きてはいない。九重の言葉通りだ。


「切れ味には自信が無いわ。二本刺しは格好がいいから、これで敵をビビらせるぐらいなら効果があるかもね」

九重はお飾り・・と言う事だ。

プライドの高い聖剣九重が、本当に俺に協力する気があるのか?

ずんどこしたくないから、付いて来ただけではないのか?

疑うわけではないが、九重の口からお飾り効果が出ると、疑いたくなる。


「何か方法を探すぞ。全員集めて、緊急会議だぞ」

アリスは、全員から知恵を出させるため、エクセレントから、閻魔、アヤメさんまでも招集した。



「知恵を出すぞ。ケインのレベルを上げる知恵なら何でもいいぞ」

「ギーーーー」

これも呼んだんだ。

「ギーは、1200年前に戻って、レベルがマイナスにならないような人生を歩めと言っているぞ」

元も子もない。


「ケイン死ね」

「妻は勇者が死んで、転生すればいいと言っている。この場で私が引き裂いてやろうか?」

隙あらば、俺を殺したがっているハウルだ。


「私の持つアイテムの中に、転生君と言うのがあったよ。飲めば転生ができるアイテムで、超レアなアイテムだ」

盗まれて良かった。


「死んで残留思念に成れば、レベルは関係なくなります」

「豆腐の角に頭をぶつければ、転生できるぞ」

アヤメさんも閻魔も、死ぬこと以外で頼む。


「天界で色々な資料を漁りましたが、解決法はありません」

「ショックを与えてみると言うのはダメでしょうか?」

シータはお手上げ。エクセレントの案で治ったら苦労しない。



「聖剣の中にね、どんなに低いレベルでも、力を引き出してくれる、献身的な聖剣もあるの。確か、天竺と言う星の、ガンダーラと言うダンジョンにあったはずよ」

それだ!

「ただし、手に入れるための仲間は3人まで。シルクロードと言う結界の中を進んでいかないとダメなのよ」

「いいぞ。この際言ってられないぞ。私が行くぞ」

「私も行くわ。九重にケインを推した責任を持つわ」

アリスとピーが付いてきてくれる。


「後はサルだぞ」

それ、桃太郎。

「サルならレナさんが良いですわ。犬、鳥、猿が揃いますわ。私はきび団子を作る役ですわ」

だからそれ桃太郎。西遊記はサルと豚と河童。


「決まりね。ゲートは使えない決まりだから、500光年先までは宇宙船で行くのよ。苦労の先にお宝はあるわ」

却下。500光年ってどんだけ時間かかるんだ。それこそ転生している。



「マジな話、魔界の未開発地区に、ドラえもん以上の万能アイテムっが眠るとの噂もある」

「閻魔、ちゃんと話すぞ」

そっちの方が、まともそうだ。


「知っての通り、魔界はまだ約半分が未開発地域だ」

初耳だ。後のための設定だろう。

「今まで幾度か研究者が入ったが、戻ってこれたのは僅かだ。

数少ない文献の中に「お願い叶えてあげる」と言うアイテムが記載されていた。

何でも1つだけ、願いが叶う万能アイテムらしい。魔界にはレベル操作系のアイテムや魔法もあるから、マイナスのレベルをプラスにできるかもしれん」

信ぴょう性はともかく、そいつの情報はどの程度あるんだ?

「まるでない。どこにあるか?どうやれば手に入るか?名前と効果以外は分かっていない」

はい、却下。今から探していられるか。


「ダメだぞ。即効性が欲しいぞ。寝て起きたらケインのレベルはプラスだった的な速度が欲しいぞ」

全員黙り込んだ。それがあれば苦労はしていない。


「全く情けないぞ。ここには天界のトップや、魔界の大物。守護者と聖剣の代表格が揃っているぞ。なのに、男一人のレベルを上げることもできないぞ」

アリスがすごく偉そうだ。

「レベルシステムは、この世界全体の根幹に係る仕様だから・・・。創造主以外は、動かせないのよ」

ドワーフが申し訳なさそうに言う。


結局会議は成果無しに終わる。致し方のないことだ。

俺なりに努力はしてみよう。


帰り際の閻魔から、閻魔祭に誘われた。閻魔域の建国祭で、毎年年末に行われる。閻魔域最大のお祭りは、鬼族やう魔族も来るらしい。

お祭り大好きカモミールの住人は、喜んで参加を決めた。


俺達は明日から、忘れていたクリスマスイベントを、3日遅れでカモミールで開く。閻魔際にも参加だ。

帰ってくると、行く年くる年イベントから、お正月イベントに突入。


今日は12月27日。この後のイベントは、目白押しだ。

クリスマスイベント。

魔界、閻魔祭。

行く年くる年イベント。

お正月イベント。

世界を守る戦いをしている暇はない。



「ねぇケイン、忙しくなりそうだから、一度、聖剣の里に戻りたいの」

ああ、構わない。戻るならパルムから鍵を借りてこないと。

この会話の時、初めて九重は、俺が鍵を2つ持っていない事を知ったという。

天空の鍵はピーが管理している。そのピーが一緒なので、確認を怠ったらしい。


「リンクに騙されたわ」

とは言え、ピーのセキュリティーで、鍵はいつでも手元に戻せる。

騙したとまではいかないと思う。

「リンク・・変わったわね。昔は規則に厳しく、お堅い代名詞。こんな裏技を使う事は無かったのよ」

俺達色に染まったという事か?


「とにかく一度聖剣の里で、私のパソコンから、定期宅配や、視聴契約なんかを止めて置かないと。無駄にお金が掛かっちゃうわ」

なんか地味にリアルな話だな。

「聖剣の里はね、何処までも続く草原で生産物は無し。定期的に物資が来ないと、お茶も飲めないわ」

ママゾンか?

「そうそう。便利よ。早いのはママゾンね。物が豊富なのがマオ宅配。レアものならノス商会よ」

聞いた名前が並んでいた。

とりあえず、連絡を取るのは守護者経由だから、ピーを呼ぼう。



ピーたちが来てくれた。

「どのサービスを停止したいの?」

「ピーちゃんに~任せておけば~全部やってくれるよ~」

九重は理解できていない。


マオはマオ商会の社長で、ノス商会とも合併した。

ピーは会計担当だ。

「ママゾンも飲み込んで、今はマオゾンなのよ」

まじか?ママゾンが来た時のあれは、誤字ではなかったのか?恐らく気が付く人はいない。


「定期宅配顧客様だったんだね~これ上げるよね~」

マオは九重に『マオゾン商品120%ダウン券』をあげた。

「買った商品の価格から120%ダウンよ」

120%って?

「100万Gの物を買うと~無料+20万G分のポイントが付くんだよね~」

「今100兆G上げちゃうキャンペーン中なの。優良顧客に配っているの」

ティナが眼の色変えそうだな。


「リンクが会計?あなた本当に変わったわね」

「そお?1200年を繰り返す世界で、何度もみんなを見ていたからかしら?」

やはり俺たちに染まっていた。

「貴女が世界の理を変える力があるように、ケインは守護者を変える力があるのよ。貴女も変わるわよ」

ピーはケラケラ笑いながら言う。


「なら私が、ずんどこ節を好きなるのかしら。ずんずんずんずんどこチャチャチャ♪まぁ、それも悪くないわね」

俺を理解しようとしてくれているのが分かる。

九重は俺を受け入れてくれていた。疑った俺は馬鹿だ。俺に力を貸してくれる存在だと、確信した。


恒例の決戦前イベント編に突入だ。



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