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残念世界の残念勇者   作者: XT
86/96

ループワールド・勇者ケイン編 86

「只今だ!」

「戻ったわよ」

「ワシもいるぞぉ~」

レナ、セレス、パルスの神聖化トリオが、無事魔界で汚れて帰って来た。


「よし、大丈夫」

ターナはレナの前に立ち安堵した。

「妻は拝まれるもので、拝まされる者ではない」

神聖化したレナ達の前で、拝むことを拒み、唇を噛みながら耐えたターナだが、もう大丈夫なようだ。

「あの時はよく頑張っていたぞ。目からも血が出ていたぞ」

「レナ拝むぐらいなら死を選ぶ」

自称女神だが、努力はしている。


「程よく汚れたからな」

閻魔だ。

「送るついでに、情報を持って来た」

サタンの情報だな。


「俺の送り込んだ間者が、3層第5ブロックの司令官に昇格した」

スパイって目立つとダメなんでね?

「出来る奴だからな。普通に勤めていても、周りがバカだから、どんどん昇格してしまってな、ついには司令官だ」

「でも、その地位なら逆に動きやすいぞ」

確かにだ。


「で、今回は防衛システムについての情報が手に入った。サタン城のある空間には、常時移動疎外が掛けられているが、普段は弱い阻害しかかけていないようだ」

「なら、セイレーン本体は持ち込めそうだな」

「だが、敵の侵入があれば、即時に強力な阻害になり、俺とヴィーナスが協力しても、大質量は送り込めなくなる」

援軍無しとなると、やはり城攻めは無理があるな。


「情報は助かるぞ。今の情報を加味した修正案を考えておくぞ」

アリスは、閻魔の情報をメモしていた。

「修正案だと?城攻めは諦めているのではないのか?何の修正だ?」

閻魔は不思議そうに言う。

「万が一の時のことは、常に考えているぞ。プランBやCは、必ず持っておくぞ」

アリスが棚から数冊の企画書を持ってきて、テーブルの上に置いた。


「!!なんだこれは?」

閻魔は企画書のタイトルを見て驚く。

  『天界攻略企画書』

  『パルム裏切り対策書』

  『魔王復活時の対策マニュアル』

「私たちは考えて勝つチームだぞ。万に一つの可能性にも対応できるように、プランは持っておくぞ」

可愛い顔してやることだけは、しっかりやっている。それがアリスだ。


「おい!」

閻魔が手にしたのは『閻魔暗殺作戦A案』だった。

「中を見たら、この場で殺すぞ」

笑顔が怖かった。


俺とアリスは、暇さえあれば作戦を練っていた。

洋々なケースで、戦える策を考えているのだ。


「全くお前らは、油断ならんな・・・・」

アリスは天才だ。幼少のころから、勇者の嫁に成るための英才教育を施され、アリス自身も、勇者の役に立つという使命感と、勇者への憧れから、進んで知識を身に着けて来た。

天才が惜しみない努力をして出来上がったのが、今のアリスだ。


「アリスは幼いころから、努力を惜しまぬ子だったからな」

レナは幼少のころから、アリスの師であり、よき友だった。

「そんな褒めるなだぞ。もっと褒めてもいいぞ」

どっちだ?


「あと一つ。四天王の内、二人が引退した。お前たちが倒したとの噂だが?まじか?」

1人はな。鬼奴だったか?

「・・・よく倒せたな?だが、四天王最強のウリ・・」


「あら、閻魔じゃない」

そのウリエルが来た。

「お前は!?」

今最強とか言いかけた奴だ。

「なんでお前がここに?」

ウリエルが俺たちの仲間に成ったことまでは、知らなかったようだ。


「私はアリスの仲間に成ったのよ。美味しいものを作ってくれるでしょ」

ウリエルの言葉だが、閻魔も理解できていなかった。

俺は詳しく説明する。



「なるほど・・・全くお前たちには驚かされるばかりだな」

ウリエルに関しては、俺も驚きだよ。

「だが、サタン四天王の中でも、断トツの戦力のウリエルが仲間に成ると言うのは、幸いだ。わずかでも戦える可能性が出て来た」

さっきから最強と言うが、ウリエルは同じ程度の戦力だと言っていたぞ。


「1.0も1.9も同じと言う事よ。私では二人、つまり2は相手にできない。4人の中では強くても、二人掛かりで来られたら勝てないわ」

ウリエルの言う事は正論が多い。

「ねぇアリス、美味しいものを作って頂戴」

命より食い気。ある意味、自分に正直な奴だ。



「サタンと兄弟は城から出ない。実行部隊は四天王だ。だが、そいつらを倒していけば、黒い羽を手に入れる術が無くなり、奴は城から出ざる得なくなる。そこを叩く」

「魂の嘆きは、自分と兄弟たちにも効果があるぞ。弟と妹がいると使えないぞ。倒す順番を考えれば、サタンは攻略出来るぞ」

俺たちが考えている作戦だ。


「奪いに来た時を倒すチャンスにする・・か」

「もちろん、奪われないことが一番確実だが、これも万が一のプランだ」

「ふむ。確かに戦い方も考えておくべきか・・・」



アリッサとアイリスが、飛び込んで来た。

「パパ!変な連中が攻めて来たよ」

変な?サタンの刺客か?

「それがですわ・・勇者と戦わせろと、大勢が来ていますわ」

また鍵の情報が漏れたのか?

「とりあえず行ってみるぞ」

俺達は、庭に出た。


随分大勢が来ているが、とりあえず即戦闘に成るような状況ではない。

と、言うか、綺麗な列を作って並んでいる。

「なるほどだぞ。どこぞのバカが『カモミールの勇者を倒すと、賞金100万Gプレゼントキャンペーン』を始めたそうだぞ。挑戦券のナンバー順に並んでるぞ」

アリスが列に並んでいる奴から、話を聞いてきた。

まったく何処のバカだ?迷惑な話だ。


「婿殿、挑戦券を持った方たちが、挑戦させろと騒いでいますわ」

「パパ、どう見ても強そうな奴はいないよ。倒しちゃえばいいよ」

とは言ってもな。この手の奴らはキリが無いからな。

「いいぞ。100万Gでは、見合わない事を教えてやるぞ。徹底的に痛めつけて返すぞ」

それも手か?数が多いから、俺達も何チームかに分かれて戦おう。



「マオとターナとハウルがAチーム。王宮の西を使うぞ。パルムとセシルとアリッサはBチーム、東側だぞ。レナとセレスとナナはCチームで、北側だぞ」

アリスがチーム分けして対戦場所を指定した。


「対戦受付はこちらです。対戦相手を選んで、対戦料をお支払いください」

ティナとシータが受付担当だ。

誘導係はアズサ。現在リキャストタイム中で役に立たないから、パルスと雑用係だ。

アイリスは閻魔と王宮待機。

俺とアリス、ウリエルはSチーム。スペシャルチームと言う事で、高額な対戦料を取ることにした。



「吾輩はアムである」

「吾輩はイムである」

「吾輩はエムである」

変なのが来た。俺達との対戦料は100万Gだ。万が一、勝てても手元には何も残らない。

損得勘定が出来ない連中だ。


「ウムはどうしたぞ?4人できても良いぞ」

人数制限はない。3人でも4人でもOKだ。

「ウムなんて奴は、いないのである」

「吾輩たちは3兄弟なのである」

「魔界最強の兄弟なのである」

アム、イムの次が、なんでエムなんだ?


「まぁ良いぞ。対戦料さえもらえれば、相手するぞ」

よし、袋叩きだ。

「まずは長男の吾輩から相手なのである」

纏めて3人来ても良いぞ。

「イム兄さん1人で十分なのである」

「イム兄さんは無敵なのである」

・・・ちょっと待て。イム兄さんだと?長男はアムじゃないのか?

「アムは次男なのである」

イム、アム、エムの順か?親は何を考えた?


「勇者覚悟である。吾輩の魔法‼レベル劣化である!」

レベル劣化だと?

「吾輩の魔法は、どれだけの高レベル者でも、等しくレベル1にしてしまう恐ろしい魔法なのである。お前達は既にレベル1なのである」

「この魔法厄介だぞ。ケイン・・私、力が出ないぞ。任せたぞ」

「あら、困ったわね。私も技が撃てないわ」

おお!確かにレベル1に成っている。久々のプラスレベルだ。力が漲って来た。

「これで吾輩の勝ちなのである。100万Gは頂きなのである。大儲けなのである」

「ケインスラッシュ!!」

「ぐはぁぁぁぁぁなのである」


「兄の仇を取るのである。吾輩の魔法は、時を止める魔法なのである」

なんだと!?アズサと同じ魔法なのか?流石に不味いぞ。

「どうだである?」

なにがだ?

「今、時を止めたのである」

「気が付かなかったぞ。これは不味いぞ」

「時を止めている間は、私たちも無防備よ。アリス、不味いわ」

だが連射はできないはずだ。

「もう一度止めるのである」

できるのか!?

「どうだである?」

???

「もしかして、時を止めると、お前も止まるのかだぞ?」

「当然である。吾輩の時も止まるのである」

使えねぇ。

「ブリザードだぞ!」

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁなのである」


「兄たちの仇を取るのである。吾輩の魔法は究極魔法である。全てを吸い込む、闇の珠を作るのである」

落ちが見えた。俺たちの勝ちだ。

「それって自分から飲み込まれるパターンだぞ」

「ぐはぁぁぁぁぁぁなのである」

予想通りだ。自分の作った闇の珠に飲み込まれた。

こいつらは何がしたかったんだ?



「次の相手は僕チンなのだ」

もっと変なのが来た。俗にいうスライムだ。

「ケイン、気を付けるぞ。昨今のスライムは最強だぞ」

僕チンとか言う段階で、楽勝だ。

「僕チンは転生したスライムなのだ。つおいのだ」

なんだと!?転生したスライムだと!?

「転生してもスライムだった件なのだ」

それって前世もスライムだったという事か?

「その通りなのだ」

ウリエルが指を鳴らす。スライムは細切れに成った。

まぁ、俺たちの勝ちだ。

ウリエルの魔法は、空気を操る魔法。かまいたちの様だ。


「ケインさん、受付業務終了です。後は倒すだけです」

ティナとシータが来た。

「どう見ても、雑魚キャラ連中でした。皆さん楽勝です」

シータの報告だ。

程なくして戦いは、俺達の全勝で終わった。

「結構儲かった」

ターナはご機嫌だ。

「後は閻魔に、割が合わない、との噂を流してもらえばいいぞ」

だな。その辺は閻魔に頼もう。



「ほぉ、やるな。流石は勇者、と言う所か?」

ギム!?

「俺も持っているんだが、相手をして貰おうか」

手に持った挑戦券をヒラヒラさせながら、歩み寄って来た。

目つきが前回来た時とは違う。


「ギム、本気なのね」

ウリエルが前に出た。

「お前が付くほどの相手か、この目で確かめたくなった」

間違いなく本気だ。本気の目だ。

「なら私が相手よ。今度は手抜きはしないわよ」

ウリエルの目も本気の目だった。

「いや、お前では意味がない。勇者、お前が相手だ」

俺を指名だと?


「待ちなさい!どこのどいつだか知らないけれど、我らがリーダーのケインを指名とは、頭に乗らないで!私が相手よ」

セレスが剣を抜く。セレスはギムを知らない。

「レナさん、ここは私が行くわ」

「ああ、任せよう」

先を越された感があり、レナはセレスに譲った。

「確かにいきなりは、虫がいいか。いいだろう。先に相手をしてやる」

ギムも剣を抜く。


「私は神剣使いのセレス!貴様も名を名乗りなさい」

対峙したセレスが言う。

「俺は剣士ギム。剣士同士、正々堂々と遣り合おう」

セレスが、えっ?という顔をした。

「どうした?」

「正々堂々ですって!?無理を言わないで!私たちのチームに、そんな言葉は無いわ」

ギムの背後には、いつの間にかアリスとターナが回り込んで、魔法を撃つ態勢に入っていた。


「お、おまえら・・・」

背後のアリスとターナに気が付いたギムは、呆れたように言う。

「1対1とは言ってないぞ」

「油断大敵」

更にパルムとセシルは、後方に下がり、中距離攻撃に備えている。アリッサも一緒だった。


「マジか?お前ら勇者チームだよな?」

「私たちは、綺麗ごとで戦わないぞ。ケインを守るためなら何でもやるぞ」

「私たちは汚い。でも私は綺麗」

ギムは呆れていた。そして剣を収め、またやる気のない目に戻った。


「あら?やらないの?」

ウリエルが問う。

「ああ、余り大事には出来ない訳があってな」

訳だと?

「サタンは、カモミールの勇者抹殺を中止した。天界を相手にしたくないから、カモミールは放っておくことにした・・・かしら?」

「・・・流石はウリエルだ。その通りだよ」

おお!

「ついでに言えば、キャンペーンはサタンの仕業だ」

やはりサタンの奴が。


「もう一度誘うわ。私たちの所に来て。貴方もサタンに忠義などないでしょ」

ギムは振り向くと、ゲートを開いた。

「サタンには忠義はない。が、お前たちにもな」

ギムは、右手を振りながら、ゲートに消えた。



 『またまた、全員のレベルが上がった。アリッサはスキル絶対高温を使えるようになった。

  マオの毒魔法は最終形態、即死毒へと進化した。

  アリスの魔砲は最終形態へと進化した。

  ケインのレベルは、マイナス2199まで下がった』

天の声だ。アリッサが遂に絶対高温を使えるようになった。

これでまた、戦いの幅が広がった。

・・俺のレベルは、もう、どうでも良い・・。


閻魔は魔界に戻り、俺たちと戦いうのが100万Gでは、割に合わないことを広めてくれると言う。

俺達は、サタンが黒い羽を集めるのを阻止する作戦を考えなくてはならない。

サタンと戦う可能性も0ではない。万が一の時を考えたピーから進言が来た。

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