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残念世界の残念勇者   作者: XT
85/96

ループワールド・勇者ケイン編 85

「科学班の出番でござるな」

俺達は科学班に2つの依頼を持って来た。

1つ。黒い羽と鍵を安全に保管する方法。

2つ。万が一、サタン城に攻め入るとなった時のために、セイレーン本体の強化。


「保管法は何とかなりますよ。異次元ポケットを開発しますよ。異次元に保管ですよ」

俺達の元に、黒い羽は7枚ある。1か所に固めておく必要はない。

ばらばらで保管した方が安全だ。

焼却案も出たが、破壊したり、焼却した際にトラップが仕込んである可能性もある。7枚をバラバラで保管することにした。


「セイレーンの強化でござるが、目的に合わせる強化が良いでござる」

今回は、氷床下3000mにある、氷底湖での戦いだ。

湖の上でも活動できるんだったよな?

「行けます!下に水さえあれば、魔道システムは作動します。氷でもOKです」

セイレーンは海の覇王として製作された、海洋兵器だ。

「みず、うみ。ですから。海の覇王は活動可能なんです」

繊細で無頓着なのがセイレーンなのだ。


「陸の上では、飛ぶことぐらいしか出来なくなるでござるが、湖の上なら問題ないでござるよ。今研究開発中のシステムは、魔道カートリッジでござる」

それ某宇宙戦艦のパクリか?

「6連魔道砲とか言い出すかだぞ?」

「魔道エネルギーを、カートリッジに詰め込んで、短時間で魔道砲への充電を可能としたシステムでござる」

パクリだ。

「でも問題は山積でござる。アニメみたいにはいかないでござる」

なにを言い出す。


「後は先制攻撃だぞ。今度の敵は強大だぞ。先制攻撃は必須だぞ」

1激貰うと命取りになりかねない相手だ。

「申し訳ありません。私の倫理システムは、どうしても、敵と認識できない相手には攻撃が出来ません」

と、言う割には最近、軽くぶっ放している気がするが。

「お任せください。私たちに良いアイデアがります」

「ねぇ様の感情システムを停止すれば、いう事を聞くだけの人形になります」

ルピとルカだが、それっていいのか?


「試してみるぞ。セイレーン、ハッチを開けるぞ。感情システムを止めてみるぞ」

「嫌です!ロボハラで訴えます。マスターは鬼ですか?」

まぁ当然だ。

「試しにだぞ。何事も経験だぞ」

「嫌です!絶対にダメです!」

無理にとは言えないな。


「ねぇ様、痛くありません。寝ているのと同じです」

「ねぇ様、怖くありません。怖さも感じられない状態です」

いつもは、ルピとルカは、姉想いなのだが・・。

「私たちは兵器です。兵器として求められるスペックは、発揮するのが使命です」

「初激が撃てなくて勝てないのなら、撃てる案を出すべきです」

意外と真面目だった。面白がっていた訳ではないようだ。


「分かったぞ、嫌なら無理にとは言わないぞ。機械族には人権があるぞ。無視すれば犯罪だぞ」

ほ~アリスが真っ直ぐ下がるとはな。

「でも取引なら出来るぞ。ケインを一日貸し出すぞ。それで1回システム停止試験だぞ。どうだぞ?」

俺を餌にした。


「え?一日貸し出しって・・それって、あの、あの・・」

耳まで真っ赤だ。言いたいことは分かる。

「それはセイレーン次第だぞ。上手く口説けば、あんなことや、こんなことまでケインはしてくれるぞ」

本当に乗せるの上手いな。

「あんな!こんな!でも・・・」

悩むセイレーンにルピとルカは追い打ちをかける。


「ねぇ様、ケインさんに、あんなことや、こんなことをしてもらう機会など、もうありません」

「ねぇ様、マスターは無理やりでも試験をやる方です。ここは美味しい思いをするべきです」

この二人、いつも無感情だが、言う時は言う。


「分かりました。試験に応じます」

アリスがニンマリとした。

「初撃が撃てるか撃てないかでは、作戦が全く変わるぞ。このテストは、重要だぞ」

その笑い方は、絶対楽しむつもりだ。


「ではケイン、早速セイレーンとデートだぞ」

マジでやるんだ。

「行くところまで行っても良いぞ。忘れられない快楽を覚えさすぞ」

行くところまで行くように指示したこの方は、俺の奥さんです。


「今から24時間、ケインさんは、私だけのパートナーです」

目が燃えている。

「ネトゲーで鍛えた経験値を、今こそ発揮する時です」

「ねぇ様、壁ドンです」

「ねぇ様、ツンデレです」

よくわからない鍛え方をしていないか?


「ちょっと待っていてください。着替えてきます」

セイレーンは走りながら奥へと消えた。

「ケイン、いやなら無理にとは言わないぞ。でもケインが嫌がるようなことには、たぶんならないぞ」

いまさら、止めますと言ったら、セイレーンは自殺する。

「ねぇ様の、一生に一度の想いでの日です」

「ねぇ様のメモリに、輝かしい一日を刻み込む日です」

ほら、この二人からも分かる。

止めるとは言えない。

「大丈夫だ。任せろ」

奥さん公認のデートだ。まぁ行くところまで行くことはないだろう。



「お待たせしました。勝負衣装に勝負下着をつけてきました」

水色のロングワンピース。腰には大きなリボンのアクセント。麦わら帽子をかぶり、可愛い花模様のピートサンダル。

「可愛ですよ。渚の女の子ですよ」

「イカすでござるよ。ケイン殿も悩殺されるでござる」

確かに可愛い。あの格好で迫られたら、ヤバい。

ヤバいが、みんな忘れているようだ。明日はクリスマス、今日はイブだ。

渚の女の子は季節違いだ。



「ではケインさん、エスコートをお願いします。どこに連れて行ってくださいますか?お任せします」

・・・よく考えたら、デートって初めてだった。

アリスとは、運命の出会いから即結婚。ターナとは、突然合体。ティナとは婚約したが、事前のプロセスは殆どクリアしていない。交際経験値が致命的に不足している。

デートって何すればいいんだ?


・・・とりあえずは、知識で対応だ。

お茶→食事→映画→ショッピング→食事→解散。

映画の部分は、遊園地等でも対応可能。


「じゃ、街に出てお茶でもするか?」

「クライマックスに向けて、徐々にモチベーションを高めるには、出だしとしていい選択です」

クライマックスとは、おそらく、アレの事だ。

兵器として、戦略型思考のセイレーンは、俺には任せますと言ってはいるが、既に詰めまで読んでいる可能性もある。

「では、街に出ましょう」

俺とセイレーンは、王都の街に向かった。


「ブラボーキングから、中央指令室どうぞだぞ」

「中央指令室ピーよ。王都内の全監視システム起動OKよ」

「ブラボ~マオからブラボ~キングだよね~各部隊配置完了だよ~」

「こちらクィーンですわ。ティナ様の足止め準備OKですわ」

「街に行くかだぞ?警戒が必要な日だぞ」

アリス達が、闇で動き出す。

彼女たちが、ケインとセイレーンのデートをスルーするはずが無かった。



「王都に喫茶店?あったか?」

「マオクドナルド王都1号店があります。ファミリーマオートの飲食スペースでもコーヒーがいただけます」

雰囲気ないが、まぁいいか。



「ギー」

漬物屋に居たんじゃないのか?

「ギーギー」

アリスが居ないと、会話にならん。

「これは勇者様、マオクドナルドへようこそ。店長のドナルコです。この子は、魔王軍から移民してきた子で、当店でアルバイトリーダーをしております」

「ギーギーギー」

あのギーとは別の魔王軍か。名前が無いと不便だな。


「はい。ではコーヒー二つをホットでお願いします」

「ギーギー」

「いえ、結構です」

「ギーギーギー」

セイレーンは会話に成っているが、分かるのか?

「機械同士ですから、プロトコルが合えば会話できます。笑顔0円と、お持ち帰り0円はいかがですかと言われましたが、どうしますか?」

お持ち帰りも0円?

「王都では男性は優遇されます。女性店員のお持ち帰りは、どのお店でも0円です」

このギーは女性設定だったのか?


「私、店長もお持ち帰りの対象となっております。如何でしょう?」

暫く忘れていたが、カモミールは女性社会。男は宝。

街に来るとき、殆どアリスが一緒だから、今まで言い寄られることはなかったが、アリス不在だと、こうしたアピールが来る。

今も、俺の後ろには、長い行列が出来ていた。俺と同じ店に入るためだ。


店で飲むのは、落ち着かない。

「テイクアウトに変更だ」

「ギー!」

「喜んで!今、自分をラッピングしてきます」

ギーと店長が自分をテイクだと勘違いした。

「ケインさん!後ろの方たちから、高発情反応を感知しました。ケダモノレベルの発情反応です」

ヤバい。アリスが居ないと、俺はフリー扱いに成る。接近禁止令なんか、忘れ去られた設定だ。

暴動が起こる。


「やっぱりこうなったぞ。ブラボーターナ、救助だぞ」

「了解。ハウル行け」


「勇者様!私もお持ち帰りを!」

「私も如何ですか?食べごろですよ」

「王都高校のJKです。旬です」

ズボンをはぎ取られた!ピンチだ!


「静まれ!静まれ!」

「道を開けろ!プリンセスアリスの命で、勇者ケインを回収する」

ターナとハウルだ。

「これが命令書だ!」

ハウルが命令書を掲げると、俺の周りにいた女性たちは、下がった。

法を犯すことの無い世界、カモミール。

王族の命令は絶対なのだ。


俺はハウルの小脇に抱えられ、この場を後にした。

ズボンの回収はしてくれないターナだった。



「ケイン、やっぱり一人で街に行くと、危険だぞ。普段ならともかく、今は時期が悪いぞ」

確かに・・・今日はクリスマスイブだ。

女の子がロマンスに燃える日だった。

「ケインさん、街でのデートは諦めます。モチベーションを上げるのは、砂浜にしましょう」

「私たちが周りを固めておくぞ。心置きなく砂浜デートをするぞ」

俺とセイレーンは、王宮近くの浜辺に向かった。


「ブラボーキングから、各員だぞ。ケインは予定通り砂浜に向かったぞ。各員、作戦行動に移れだぞ」

「ブラボーマオ了解だよね~」

「ブラボーパルムチーム了解だ」

「ブラボーアズサ了解しました」

「ブラボー支援機了解です」

「中央指令室よりキングへ。王宮周辺の海岸線に立ち入り規制したわ」

アリス達が動く。



冬の冷たい風が、海から吹き付ける。

麦わら帽子でワンピースの女の子が、気持ちよさそうに、その風を受けていた。

曇天の空から舞う、白い粉雪が頬で溶ける。


砂浜に置かれた丸いテーブルとチェア。ピーチパラソル。

椅子に座る俺には、トロピカルジュースが運ばれてきた。

「息子よ、うまくやれよ」

執事のスタイルのパルムだ。

「海の定番、かき氷よ」

セシルはメイド服だ。

無理やり夏の海を再現していた。


「ケインさん、海って気持ちがいいですね」

セイレーンは水着に着替えている!?

黒子の服に身を包んだアズサとナナが、着替えさせたんだ。


「ケインさん、泳ぎましょう!」

いや待て、今の水温、いくつだ?

「ほら、泳いでる人がいるから大丈夫です」

セイレーンの指さす沖を、ハウルが泳いでいた。


セイレーンは俺の手を取って、海に向かって走り出す。

マジで泳ぐつもりか?この寒い、雪の舞う中で寒中水泳だと!?

「私は耐寒仕様です。マイナス60度の海でも泳げます」

俺は標準仕様だ。マイナスの海では1分と持たない。


踏ん張って抵抗した。

いきなり俺が止まったことで、セイレーンはバランスを崩し、二人は重なるように倒れ込む。


ザ、お約束。

このような状況で男女が転んだ場合、必ず男が上になり、女性は下。

男性の手、または顔は、女性の胸に乗る。

これが、ザ、お約束なのだ。


「ケ・・ケインさん・・」

俺の手はセイレーンの胸に、顔はふれあいう距離。

そして、俺はズボンを履いていないパンツ姿。


「ここが勝負何処だぞ!暖かくしてやるぞ」

「行くよママ!火炎斬プチ!」

「絶対防壁!海風完全遮断だ!」


セイレーンと肌が触れ合う。寒さは感じない。

「ケインさん・・来てください」

セイレーンは顔を赤く染め、目をつぶった。男は、この状況で引く訳には行かない。俺は腹決めた。

セイレーンにキスを・・・・あれ?


「ねぇ様、機能停止です」

「ねぇ様、感極まって落ちました」

ルピとルカが、セイレーンを覗き込んだ。ブレーカーが落ちたようだ。


「やはり落ちたかだぞ?」

ブラボーキングが現れた。

「再起動は待つぞ。これをメモリに差し込むぞ。バーチャルHデーターだぞ。ケインと愛し合った記憶が埋め込まれるぞ」

それってインチキ?

「記憶って怖いぞ。機械族はデータが全てだぞ。こうしたデーターを植え付けるだけで、実際体験した気に成るぞ。反則だけど今回はこれで満足してもらうぞ」

これが狙いだったのか?

「人格を止められるのは機械族には恐怖だぞ。でも試験は必要だぞ。美味しい思いをしながら落ちるのが幸せだぞ」

「記憶があれば、ねぇさまは生きてゆけます」

「キスで落ちるねぇさまに、最後までは無理です」

ルピとルカは、アリスの策に協力した様だ。


「このままオート攻撃の試験をするぞ」

なんかアリスの掌の上で、コロコロされていた気分だった。

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