ループワールド・勇者ケイン編 84
俺達は王宮の戻って来た。
アリスが大量の魔界の食材を持ち帰り、バイオウェポンの研究をする。
「おかえりなさいアリス。お腹が減ったわ。美味しいものを作って頂戴」
ウリエルの出迎えだが、また食う気だ。
「いいぞ。魔界の食材をもらったから、何か作ってみるぞ」
アリスは快く引き受けた。
「ケインさん!大変です!」
エクセレントだ。
「リリス達が脱走しました!」
なんだと!?
「なにやってるぞ?そんな事では、ケインは婿に行かせられないぞ」
アリスが呆れた様子で言う。
「おねぇ様!!直ぐに捜査を!」
ティナが叫ぶ。
「ああ、分かっている。全女神を動員して、探し出してやる。女神は一般市民も含め、全員出動だ!」
一般市民まで巻き込むのか?
「婿殿!大変ですわ!」
こっちもか?
「サタンの手下ですわ!2人来ましたわ!」
なんだと!?
「もう来たのかだぞ?気の早い連中だぞ。ウリエル頼むぞ」
「最後にアリスの魔界料理が食べたかったわ。それが心残りね」
「勝ったら、いくらでも作るぞ。だから生きて帰ってくるぞ」
ウリエルは力なく微笑んだ。
「俺達も出るぞ!敵が2人なら可能性はある!」
幸いメンバーは揃っている。今なら戦える・・かもしれない。
俺達は、王宮の庭に出た。
「ギムと鬼奴ね。ギムはともかく、鬼奴は嫌な相手だわ」
アリスの絶対零度を、モノともしなかったウリエルが呟く。
「裏切り者のウリエル、お仕置きをしにきたでありんす」
「俺は仕方なく来た」
やる気満々の鬼奴と、やる気のない態度のギム。
「そう?暇なのね。いいわ相手に成るわ。どちらか来なさい」
ウリエルは、2人の戦力は同じ程度だと言っていた。
1人は任せて、もう1人を俺達全員で戦う。
数で押し切ってやる。
「ちぇ・・仕方ねーな。俺がやるか」
動かない鬼奴を見て、ギムが前に出た。
「鬼奴の舞は、見てはダメよ」
ウリエルは、そう言うと、ギムの方に歩きだした。
「ツンドラ氷河!」
パルムが先手を打つ。
「絶対零度だぞ!」
アリス続く。・・・が、パルムの氷河を片手で止め、アリスの絶対零度を受けきる。
「なにかしたでありんすか?」
まるで効果が無い。
「爆炎!火炎斬よ!」
「毒魔法!猛毒霧だよ~」
「火炎竜!」
アリッサ、マオ、セシルの攻撃。
「この魔法、裾が捲れるでありんす。Hはダメでありんす」
爆風で着物の裾が捲れあがった。慌てた様子で前を抑える鬼奴。
ダメージにはなっていない。
「怪光線よ」
「妖精魔法雷」
「こそぼいでありんす」
くそ!!
攻撃がまるで通用しない。
攻撃で乱れた胸元を直しながら、なにも無いように歩を進め、俺たちの近くまで来た。
「私の悪魔魔法を受けるでありんす。狂気の舞でありんす」
これは見てはダメだ。
ウリエルから警告されている。目線を反らせ!
「無駄でありんす。見ないようにしても、見てしまうのが狂気の舞。そして見た者は、仲間同士で殺し合うのでありんす」
なんだと!?
「ダメだぞ。ケインと殺し合なんかしたくないぞ」
ハウルが俺の側に来た。
「勇者よ。俺の意思とは関係ないことだから許せ」
俺を殺す気満々だ。
後ろ襟を直し、裾を整える。
花魁の姿の鬼奴は、見てくれにも気を遣う。
「では、行くでありんす。お覚悟を」
両手に扇を持った腕を、左右に大きく広げた。
ヤバい!が、いいことを思いついた。
「アイリス!最初で最後の出番だ!聖剣を使え!」
「はいですわ!まさかの出番ですわよ!エロ牙ちゃん!」
アイリスが聖剣エロ牙を抜く。
「脱衣斬ですわ!」
鬼奴に向けて振り抜いた。
鬼奴、両手を左右に広げたまま、モロだしスッパ。
脱衣斬は、敵の着ている物だけを切り裂く、エロ牙の攻撃だ。
本人の防御力がどれだけ高くても、衣類までは防御していない。
来るのが分かっていないと、避けることのできない攻撃なのだ。
一瞬、起こったことを理解できない鬼奴だが、自分の裸を見て叫ぶ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁでありんす!!!」
左右の手を胸と股間に当て、しゃがみこむ。
「今だぞ!タコ殴りだぞ!」
アリスの号令で、全員が襲い掛かる。
「いた、いたた、痛いでありんす。ちょ待つでありんす。痛、痛、待つでありんす。待つでありんす」
魔法には耐性があったが、物理耐性は低い様だ。
「待たないぞ。このままタコ殴りだぞ。顔も保護対象にしないぞ」
女相手でも容赦ない。
「女を裸にひん剥いて、寄ってたかってタコ殴りかよ・・ひでぇ勇者チームだな」
ギムが戦いの手を止めて呟いた。
「あら、そう?でも、あの子たちに殺す気はないわ」
殺すなら、剣で一突きしている。
「まぁそうだが、あれを勇者がやるか?」
嫌悪感で言っているわけではない。
「面白いチームだわ。どお?ギムも来てみない?料理は美味しいし、アットホームよ」
この戦い、ギムは本気で戦っていた訳ではない。
自身の意思で来た訳ではないし、元とは言え仲間だったウリエルと、本気でぶつかるのには気が引けていた。
相手に選んだのも、ウリエル相手なら躱し合えると思っていたからだ。それを分かっていたウリエルも、適当に相手をしていただけだった。
「さてと、そろそろ帰るか。降参だ!俺たちの負けだ」
ギムは、手を上げて叫んだ。
「堪忍でありんす。許すでありんす。降参でありんす」
鬼奴も泣きながら訴える。これだけの人数に囲まれて殴られるのは、恐怖でしかない。十分恐怖は植え付けただろう。
「よし、降参したぞ。私たちの勝ちだぞ」
「ママ、スマホで動画撮影しておいたよ。真っ裸も撮れてるよ」
「女神は人を殴れません。私も撮影班でした」
動画まで取ってたのか?
「鬼だな・・お前ら。血は何色だ?」
ギムが俺たちの横に来た。殺気はない。
「今日は女の子の日です!見てくださいこのパンツを!赤です」
アズサ・・ごはんの時に、時間停止魔法を使い、リキャストタイム中につき、戦力外宣告を受けていたため、ストレスがたまっていた。
いきなり赤いシミのついたパンツを脱ぐ、暴挙に出る。
「お、おう。血は赤だな・・・」
目を反らしながらギムは、鬼奴の横へ座る。
「俺たちの負けだ。いいか?」
鬼奴は泣きながら頷く。
ティナは王宮からシーツを持ってきて、ギムに渡した。
ギムは礼を言うと受け取り、鬼奴に掛けてやる。
本気で殴っていた訳ではないから、傷にはなっていない。
声で効果音を付け叩く程度だが、恐怖を与えるには、十分すぎる演出だった。
「もう、二度と私たちに戦いを挑まないと約束するぞ」
アリスが紙とペンを渡し、誓約書を書かせた。
「もし違反したら、この動画を全世界に拡散させるぞ」
鬼の所業だ。
「・・・絶対許さないでありんす」
鬼奴は唇を噛みながら、小声で呟く。が、俺達には聞こえなかった。
「さぁ、戻るぞ」
ギムに支えられ、立ち上がる鬼奴だが、空を見てギョッとする。
空には、とんでもない数の女神たちが居た。
率いるのはエクセレントだ。
「なるほど、お前たちに手を出すと、女神が許さない、と言う訳か?」
たぶん、リリスの捜査のための部隊だが、勝手に都合よく解釈してくれたようだ。
「そうだぞ。ケインは女神の旦那に成る男だぞ。ケインに手を出すと言う事は、天界を敵に回すと言う事だぞ」
アリスも分かっているはずだが、勘違いを利用した。
鬼奴は真っ青だ。女神は基本、戦闘をしないが、戦えば魔族同等の力はある。
流石の鬼奴も、これだけの数の女神の相手はできない。
2人は戻って行った。俺たちの勝ちだ。
「驚いたわ。まさかあの鬼奴に勝つなんてね。アリスお祝いに美味しいものを食べましょう」
鬼奴は明らかに殺意を見せていたが、ギムと言う男は、違った。
サタンと四天王、一枚岩ではないようだ。
「ケインさん、見てください!この数で捜索をすれば、リリスなど、たちどころに逮捕です」
それ一般市民の女神も入ってるんだよな?
「ええ、物量なので、公務員はもちろん、スーパーや本屋の店員まで入っています」
「多ければいいと言うモノでもないぞ。で?なんでカモミールに来たぞ?」
そうだ、いいタイミングだが、なんでここなんだ?
「リリスの潜伏先はカモミールと見ました。土地勘がある場所が潜伏先です」
流石に此処には来ないと思うけどな。
「期待して待っていてください!」
目が生き生きとしていた。だから何も言わなかった。
いまさらリリス達にできる事はない。放っておいても痛手にはならないから、好きにやらせよう。
ーーーー魔界ーーーー
「ギム・・・あちきは引退するでありんす。国に帰ってキュウリを作るでありんす」
シーツにくるまった鬼奴は、大量の女神にビビってしまった。
「奴らと女神が仲良しなのは有名だからな。下手に攻めると女神の仕返しがあるのは間違いないな」
「ウリエルが裏切るのも分かるでありんす・・・」
震えていた。もうケインたちを攻撃する気はなかった。
「分かった。退職処理はしておく。どうせ負けて帰ればお仕置きだ。報告は俺がしておく。国に帰って、平穏に暮らすんだな」
サタン四天王は、ニ天皇になった。
ーーーーーーーーーーー
ーーーサタン城ーーーー
「おや?貴方だけですか?鬼奴はどうしました?」
ギムが戻り、ドーマが鬼奴がいないことを問う。
「奴は引退した」
「負けたというのか?ギム?まさか下界の勇者ごときに?」
サタンも穏やかではない。
「押していたんだがなぁ。大量の女神が現れた。あれは3000は居たな」
ギムの言葉に、サタコとサタオは驚く。
「3000ですって?」
「何で女神が?」
「なるほど、確かカモミールの勇者は、ヴィーナスと懇意と聞いています。恐らくはヴィーナスの手の者達でしょう」
ドーマも勘違いに参加。
「もう一つ情報をやろう。あの勇者は女神の旦那だそうだ」
「それで女神が黙っていないと言う訳か」
サタンも勘違いチームに入った。
「兄さま、今は天界と揉めている場合ではありません」
「兄上、カモミールは無視しましょう」
流れ的には、当然こうなるし、負けて戻ったギムにとっても都合がいい。
「そうだな。カモミールの勇者が、聖杯を使って邪魔をするのを警戒したが、鍵が無くては聖杯は手に入らん。カモミールはスルーの方針だ」
「では、カモミールの勇者たちの抹殺は、なしと言う事で?」
ドーマが確認する。
「だが、楽はさせない。俺達は相手にしないがな。俺たちは」
サタンは、何か企んだようだ。
「いずれ天界にある、黒い羽と鍵を手に入れねばならないが、それをやるのは閻魔だ。
我らが天界と遣り合う事はない。不要な争いは避け。安全に確実に世界を手に入れよう」
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サタンの口から出た閻魔の名前。サタンと閻魔の関係とは?




