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残念世界の残念勇者   作者: XT
83/96

ループワールド・勇者ケイン編 83

よくよく考えても、お先真っ暗だ。

ティナがエクセレントに伝えた所、帰ってきた言葉が・・

「今からでも遅くありません!鍵を外して1200年前に行きましょう。ドザーグが居る未来なら、1200年前を何度も繰り返していた方がましです」

ループワールドから抜け出せた、俺たちの努力を、軽く無駄にしたがっていた。


「もう無茶苦茶だぞ。聞けば聞くほど勝ち目がないぞ」

流石のアリスもお手上げだ。

あれからウリエルは詳しく話してくれた。


サタンの居城。サタン城の中心に、地獄の穴と言う穴があり、その最深部に『地獄の窯の蓋』、つまりドザーグが封印されている場所がある。

サタン城の守りは、強固で、落城させるのは無理。

サタンと兄弟は、穴の中に居る。封印を解くまで、表には出ない方針だそうだ。

手足となるのが四天王だが、唯一の幸いは、封印を解くのに必要なアイテムが揃って居ないと言う事だ。


黒い羽・・これが24枚。

黒い羽の刻印のある鍵。

俺達が見つけた7枚の黒い羽。そして鍵。

これを取られない限り、ドザーグの復活はない。

これらは天界に預けてある。天界なら、盗まれることはないはずだ。



ーーーーサタン城ーーーー

「ウリエルが裏切りました。勇者側に寝返りました」

ドーマがサタンに報告する。

「お兄様、だからあれほどサタン食堂の改善を進言したのに。ウリエルは食事が苦痛だと、嘆いていたのよ」

「食事など、味がすればよい。そんなことで裏切るなら、所詮は敵」

サタンの横に居る妹サタコと、弟サタオだ。

「ウリエル一人いなくとも、問題はない。下っ端を幹部に引き上げれば済むことだ。それより任務は?」

サタンは余裕だった。


「は!天空の鍵はこの通り。殺害はウリエルの妨害のため・・・」

「構わん。天空の鍵が手に入れば問題はない」

サタンは鍵を受け取ると、宝の箱の中にしまった。

「で、黒い羽はどうなっておる?」

サタンはドーマに問う。

「所在の不明だった3枚のうち、2枚を確保致しました。残りは1枚。現在捜索中です」

24枚の内、23枚の所在が明らかになっていた。

「閻魔の3枚と、天界にある7枚と鍵・・・ふふふ。時間の問題だな」

「閻魔の持つ羽は、簡単ですよね」

「天界の羽も手に入ったも同然」

妹サタコと、弟サタオは、サタンと高笑いしていた。


「サタン様、あちきは気に入らないでありんす」

鬼奴だ。

「好きにしろ。最後の一枚が手に入るまでは、お前たちに用はない」

「嬉しいでありんす。好きにさせてもらうでありんす」

鬼奴は立ち上がると、横に居たギムの襟をつかむ。

「俺もか?」

ギムは迷惑そうな顔を露骨に見せる。

「行くでありんす。わちきだけでは、ウリエルの相手はしんどいでありんすよ」

ギムは渋々ついて行く。


「ではサタン様、私は残りの1枚の捜索を」

ドーマは影の中に消えた。


「もう少しだ。あと少しで世界は俺たちの物だ」

サタンは更に大きな声を出し高笑いをしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どこから手を付けるぞ?」

アリスと作戦会議だが、まるでいい案が浮かばない。

「アリス、美味しいものが食べたいわ。美味しいものが食べられれば、思い出すこともあるわ」

命より食い気のウリエルだ。食わせれば、もしかすると・・・。

「マオ、食材の調達を頼むぞ。ウリエルに良いものを食べてもらうぞ」

アリスも分かっている。

「はいよ~高級食材ばかりだね~」

アリスの注文は、高級な食材が並んでいた。


「アリス、高級な食材なんか使わなくていいのよ。あるものを美味しく調理してくれればいいわ」

意外だった。ウリエル程の美食家なら、高級食材に食いつくはずだと思っていた。が、あえて口にする、と言う事は、本音か?

「旨いものを食わせるぞ。だから策を出すぞ」

こっちは、切実な本音だ。


俺達は食事にすることにした。

「肉食べたい」

「妻と同じく、私も肉料理を所望する」

ターナとハウルだ。

「これをやるぞ」

アリスは袋に入った塩を渡す。

「庭に牛を飼ってるぞ。勝手に引きちぎって、塩掛けて食べるぞ」

魔獣たちは、生きた牛を引きちぎって食べる。

「ハウル、料理任せた」

「妻よ、任せるがいい。タンを引きちぎってやろう」

さっさと出ていけ。そして牛の声が聞こえない所で料理しろ。


「わたしはさ~ヒマワリの種があればいいよね~」

「ケイン、私にはサバの缶詰を頂戴」

人がヒマワリの種で、鳥がサバの缶詰だ。


「おばぁちゃんには、私が作るよ。アリッサ特製『ホットケーキのしめ鯖サンド』だよ」

「できれば別々に頂きたいですわ」

アリッサの料理は以前から、良くない合体物が多い。


「はい。私たち女神は激辛唐辛子の激辛炒めを頂きます」

外で食え。


「坊や~ママの授乳は?」

「俺は右だ。お前は左を使え」

出ていけ。


「ケインさん!見てください。時間を止めると、麺が伸びません」

「ワンダフルです。麺がカチカチです」

貴重な時間停止魔法をそんな事に使うな。


俺とウリエル、アリスは肉じゃがとカレーを食べた。

俺の大好物だ。


ウリエルの言うように、いつ敵が来るか分からない。ウリエルでも、相手にできるのは一人だけだそうだ。こちらにウリエルが居る事を知っていれば、二人以上で来ることは確実だ。これが最後の食事に成るかもしれない。

ウリエルの言葉の重みが身に染みる。


「スパだぞ。ピザだぞ。ドリアだぞ」

色々と出て来た。

「頂くわ。あら美味しい」

スパゲッティーとピザ、ドリアを平らげるウリエル。


「天ぷら蕎麦だぞ。親子丼だぞ。お好み焼きだぞ」

また出て来た。

「頂くわ。本当に美味しい」

良く食うな。また平らげた。


「チャーハンだぞ。焼きビーフンだぞ。ペヤングだぞ」

変なのも混じっているが、それでも平らげる。

「アリス、さすがにお腹がいっぱいだわ」

見てるだけで、いっぱいに成る気がする量だ。

「いい策は出て来たかだぞ?」

「・・・・あなた達が勝てる策なんか・・」

今度の相手は、絶望的な戦力差だ。

「なら食うぞ。もっと食べると浮かんでくるかもしれないぞ」

無茶言っている。


「10ポンドステーキだぞ。食って策を出すぞ」

4k越えか?

「もう無理。お腹が一杯よ」

と言いながらも、ちゃんと食うからすごい。

「出された料理は残さず、は当然でしょ。それに食材は命なのよ。美味しく食べてあげることで、命を提供した魂に報いるのよ」

ウリエルって魔族だよな?約束を守るとか、言っていることが女神みたいだ。


「アリス、もう降参よ。お願いだからこれ以上は作らないで。戦う前に、食べ過ぎで死んでしまうわ」

10ポンドステーキを完食後、ウリエルが音を上げた。

「なら言うぞ。なんでもいいから策を言うぞ。言わないと牛の腿を丸ごと焼くぞ」

ターナから牛肉が提供されていた。

「・・・閻魔様に相談したらどうかしら?貴方たちだけでは戦えなくても、閻魔軍と共同なら、もしかするかも」

閻魔?そうだ!閻魔が居た。

「死ぬ気に成って考えれば、策は出てくるぞ」

俺は閻魔に相談しに行くことにした。俺とアリス、アリッサ、ターナ、ハウル、ティナ。前回訪問チームで魔界へと向かった。



「たのもうだぞ」

アリスが閻魔邸の門を叩く。

「はい~~」

中から愛美さんの声が聞こえた。


「ケインさん、また来てくださったんですね」

愛美さんは、快く俺たちを中に入れてくれた。

「なにしに来やがった」

横に居た閻魔には歓迎されていない。


「何で閻魔が、平日の真昼間から家に居るだぞ?職場で『地獄行き』連呼してる時間帯だぞ」

アリスが軽く食いついた。

「やかましい。今この場で貴様たちを地獄行きにしてやってもいいんだぞ」

アリッサとティナが俺の前に出た。戦闘態勢だ。

「フフフフだぞ。今日も元気だぞ」

「フハハハハ。犬娘。貴様もな」

なんだ?アリスと閻魔はハイタッチをする。


「あれから、5回ぐらい遊びに来てるぞ。閻魔とも仲良くなったぞ」

なんだと?遊びだと?1人でか?

「そうだぞ。ケインが寝てる間に来ていたぞ」

「アリスさんから、お料理を教えてもらっていました。父も美味しい料理が食べられて、大喜びです」

愛美さんの言葉で理解できた。

「まぁ、上がれ。愛美、茶と羊羹だ」

羊羹だと?最高級のおもてなしだ。



前回着た時とは、比べ物にならない歓迎ぶりで席に着く。

「だいたいのことは知っている。奴らの城に送り込んである間者から、サタンの動きは、報告を受けている」

アリスの交流のおかげで話が早い。

「ああ、俺達も攻められた。天空の鍵を奪われ殺されかけた」

俺は一連の流れを話した。

閻魔は腕を組み、目をつぶる。


「結論から言うと、サタンには勝てない。奴のスキル『魂の嘆き』は、防御不可能な上に、奴の居城は、攻略不可能だ」

いきなりどん詰まりだ。

「黒い羽を守り。ドザーグの復活を阻止するしか手立てはない」

閻魔でもか?となれば、策は黒い羽の死守だな。


「ワシが手元に3枚。お前たちの7枚は、天界に預けてあれば、大丈夫だ。サタンは、ドザーグを操るために『魂鷲掴み』のスキルは温存する。

『魂の嘆き』は、500年に一度きりの大技だから、わしと天界、両方を同時に倒すことは出来ん」

なるほど、鍵もあるし、復活の阻止なら容易だな。


「だが、サタンが魂の嘆きを使えば、ワシらも只では済むまい。魔界の勢力図が大きく変わるのは間違いないな」

魂の嘆きか。。。厄介だな。



閻魔の話だ。

「サタン城は、氷床下3000mの氷底湖の中にある島に建てられている。

※氷底湖とは、厚い氷の下にある湖の事で、地球だと南極のボストーク湖。木星の衛星、エウロパにも存在があるとされている。


城から湖の岸までは、最低でも3000km。氷底湖の見晴らしのよさから、奇襲攻撃は使えない。

城は5角形の形で、1層、2層、3層、4層に分かれ、それぞれが強力な防壁で守られている。

各層の間は5㎞ほどあり、1層から中心の地獄の穴までは、約30kmもある、巨大な建造物に成っている。


1層と2層が侵入者を撃退する攻撃塔。防壁の内側からでも外部を攻撃できる。

3層が司令塔と居住区画。

4層は地獄の穴を守る防御塔だ。


氷底湖の空間は、移動疎外が掛けられているため、容易に入ることはできない。

入れたとしても、強力な攻撃力を持ち、防壁に阻まれた城は難攻不落だ。


サタンを倒すには、城から引きずり出し、嘆きの声を使う前に倒すしか、方法が無い」

やはりどう考えても、きつい戦いになりそうだ。

羽を守ることを、考えた方がいい。


「話は済んだかだぞ?料理が出来たぞ」

俺が閻魔と話をしている間、アリスとアリッサ、ティナは、愛美さんと台所で料理をしていた。

「おお!また旨そうなカレーが出て来たな。俺の好物だ」

閻魔が目を輝かせながら言った。

「はい。力作です。天界、下界、魔界で、初の合同合作です」

歴史的快挙だ。


「ティナは、辛くしたがるぞ。愛美は、甘くしたがるぞ。アリッサは、あり得ない組み合わせの食材を混ぜたがるぞ。まとめるのが大変だったぞ」

で、結果はカレーか?何カレーだ?

「激甘辛ビーンズカレーだぞ」

「はい。私は辛さ担当です」

「私は甘味を担当しました」

「コーヒー豆と納豆て合うよね」

確かにビーンズだが、味の想像が出来ない。


「う!旨い!!!!!」

まじか?なら、俺も一口・・・ぐはぁ!

   『ケインは未知なるものを口にして、大量の経験値を手に入れた。レベルはマイナス1800まで下がった』

とんでもない食い物だ。レベルが一気に3倍も下がった。

・・・待てよ。これ、使えないか?


「送り込んである間者に、サタン食堂で作業させられないか?」

「ケイン!それいいぞ」

「パパ!卑怯なことを考えさせたら、勇者ランク1位だよ」

「ケイン、天才」

「流石は勇者だ」

「はい。よくそんな姑息なこと考え付くものです」

「ワシは驚きより呆れた」

「ケインさん、素敵です」

酷評の高さは、効果の高さだ。

アリス、普通にある食材で作れる、バイオウェポンのレシピを考えてくれ。


ウリエルの話から、サタン食堂は、大した料理が出ていない。

と、いう事は、力を入れていない証拠だ。どうでも良いと思う所は、セキュリテーも脆弱なはず。

アリスの考えるレシピを、サタン食堂で出せば、大打撃を与えられる。

攻める時に、敵が弱体化していれば、難攻不落の城も落とせるはずだ。


「クックック・・考えるぞ。面白くなりそうだぞ」

奥さんの顔が、例の顔付きに変わった。



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