ループワールド・勇者ケイン編 81
作戦は、レナ、セレス、パルスの3人での突入。
聖なる物と化した3人は、かき消された女神の反応と同じように、気配が読まれずらい。
リリス達に悟られることなく接近できるはずだ。
「リモコン部隊!突撃だぞ」
レナ達の動きは、それぞれの目を通してモニターできていた。
俺は突入に備えパルム、ハウルと待機。
俺の持つ天空の鍵なら、ティナとシータの張った移動疎外の防壁も突破可能だ。
エクセレントも同様に、ヴィーナス、ティナと待機していた。
レナ達は、凍り付いた王宮の庭からダンジョン内に入る。
「視界良好だぞ」
「こっちも大丈夫だね~」
「良く見える」
アリスがレナ、マオがセレス、ターナがパルスをコントロールする。
ゆっくりと静かにダンジョンを下りていく。
そして最下層。パルスの目を通して、リリス達を発見した。
「あいつら王宮から、色々盗んで持ち込んでいるぞ」
冷蔵庫からTV、ゲーム、ベットや家具まである。最下層の空間は、結構豪華な部屋に成っていた。
「よし、レナとセレスに背後から取り押さえさせろ」
レナ達はリモコンだが、スペックはそのままだ。
レナの疾風や、セレスの神速は使える。
「待つぞ」
アリスからストップがかかる。
「よく見るぞ。ギルバの使っているパソコンだぞ」
奴らパソコン迄、王宮から盗み出していたのか?
「画面の方だぞ」
ギルバの使っているパソコンの画面がズームされた。
ゲーム中のようだが、アリスが言うのはチャットの方だ。
「神女神さん、それはお困りですね」
「ええ、何とか脱出したいのですが、天界の部隊に囲まれて、困っています」
「私のギルドメンバーが協力しましょう。脱出オフ会をやりましょう」
「本当ですか?悪魔さんに会えるの、嬉しいです^-^」
ギルバの奴、ゲームチャットで援軍募集していやがる。
「突入だぞ!話が纏まる前に確保だぞ。脱出オフ会を阻止するぞ」
アリスの号令で、レナとセレスが動く。
レナは疾風でリリスの後ろへ、セレスはギルバの後ろの回り込む。
「!?なに!」
背後を取られたリリスとギルバ。
「ゲート!」
ギルバはゲートを使うが、移動疎外が働きゲートは開かない。
「く!ならば神の加護だ!」
リモコンだと反応が遅くなる。背後から確保の予定だったが、向き直られリリスはレナと対峙した。
「勝ったなだぞ」
ああ。俺たちの勝ちだ。
レナと対峙したリリスは、頬を地面につけうつ伏せになり、平伏した。
聖なる物、ヴィーナスの威厳が乗り移ったレナ達の前では、何人たりと拝まずにはいられない。その影響を受けないのは、3人を改造したマリーだけだ。
「く、くそ!なんで、この私がポンコツに・・・」
気持ちでは抵抗していても、体は正直だ。
ギルバの確保は、セレスが後ろからは羽交い絞めにして、取り押さえた。
羽交い絞めにされながらも、正面に立ったパルスに、手を合わせ拝みまくっていた。
俺達もゲートで現場に行く。
「この愚か者たちが!」
エクセレントの活が飛ぶ。リリスはパルムに抑えられ、ギルバはハウルが抑え込む。
「色々やらかしてくれたぞ。きっちり罪を償うぞ」
抑えられ膝間づく二人を、見下ろすようにアリスが言う。
「はい。天界は死刑制度がありません。あり得ない位の永さの懲役刑と、重労働が待っています」
ティナに見下ろされ、悔しそうな顔のリリス。観念しているギルバ。
エクセレントが、リリスのポケットから鍵を取り、ドワーフへ渡す。
「間違いなわ。これよ!これ!」
神殿の鍵だ。奪取した。これでアイリスは助かる。
「ケインさん、母の神聖なる力のおかげで、二人を確保できました」
エクセレントはドヤ顔だ。
「はい。母も少しは役に立ちます」
ティナもアピール。よほどアリスの『嫁がせないぞ』が効いたようだ。
「ドワーフ、これを神殿に戻してくれ。俺はアイリスの様子を見に行く」
こいつらは、ヴィーナス達に任せよう。
「分かったわ」
ドワーフは神殿へと向かう。
「私たちもママの所へ行くぞ。ターナ、後は任せたぞ」
アリスはターナに、なにかを頼んだようだ。
「アイリス!」
凍り付いた部屋で、眠るように横たわるアイリス。
「ママ!」
アリスが声を掛けるが、返事はない。
「ママ!起きるぞ!目を開けるぞ!」
顔色は、生きた人の物ではない。アリスが体を揺さぶりながら、大きな声を出す。
まさか?
「うぉ!」
股間が掴まれた。
「婿殿~~~~お腹がすきましたわ~婿殿の此処から栄養補給ですわ」
布団から延びた手が、俺の股間を鷲掴みしていた。
「ママ!!!」
やつれてはいたが、確かにアイリスだ。この行動は、元気な時のアイリスの行動だ。
氷が解けていく。
魔法で作られた氷は、解けても水にはならない。空気中に霧のように消えて行った。南の神殿の防犯システムが止まった証拠だ!
「おばぁちゃん!」
「義母様!」
アリッサとティナも来た。
俺達は、抱き合い喜びを伝え合った。
「母がリリス達を連行します」
ああ、俺たちは会いたくないから、後は任せよう。
「もう、あいつらの顔を見ることはないぞ」
だな。思えば、俺がこの世界に来てすぐに、どヘマをしてからの付き合いだった。最初は理解のある上司だと思っていたが、まさかの凶悪犯だったとは。
「はい。私も騙されていました」
ティナとしては複雑なところだ。信用し、慕っていた上司の裏切りだ。
「もう、上は信用できません。16評議会議長として、私が女神のトップに立ちます。自分なら信用できます」
エクセレントがトップじゃないのか?
「はい。私が部長をやります」
ティナのトップとは、部長が最上位の様だ。
「アリス、ごめん。どじった」
ターナとハウル、マオも来てくれたが、ターナがアリスに謝った。
「妻は悪くない。相手が金を要求してきたのだ。妻が金を出すことなどありえん」
ゲームチャットの相手か?
「恐らく聖杯と起源の水の情報が洩れてるぞ。誰に漏れたか、ギルバのふりして、チャットで調べるつもりだったぞ」
で、ターナがギルバの代わりにチャットしたんだな。
「『お金を出せ』って話になったらさ~口調がさ~変わったんで~警戒されたんだよね~」
これはアリスの人選ミスだな。
「まぁ、仕方ないぞ。天界で取り調べさせるぞ。ティナ、済まないけどエクセレントに、最優先で調べるように言ってほしいぞ」
「はい、わかりました。シータと行ってきます」
話をしている間も、アイリスは俺の股間をモミモミしていた。
「元気になりましたわ!」
「ママ復活だぞ!」
「おばぁちゃん!良かった!一応、各国の知り合いには連絡しておいたよ。口座には、お香典がたくさん集まってるよ」
快気祝いで、貰っておこう。
「よし、ママの復活祝いに祭りをやるぞ。今日は記念日にするぞ」
世界の時間がまき戻る、ループワールドの危機は去った。
今度こそ平和な世界だ。
2か月後。
ドワーフ、ポセイドン、ピーは、今まで通りの付き合いとなる。
ピーはマオの側にいることを選び、ポセイドンはトーレフの島を載せて海を彷徨う。
ドワーフはアズサとアニメ談議の日々。
復活したアイリスは、女王として、俺のチームのメンバーとして活躍する事を選ぶ。
マオと手を組んだノスは、事業拡大に大忙しだ。
懲りずに新しい美人秘書を雇うあたり、まるで懲りていないかった。
パルムとセシルは、王宮に住みながら、エクセレントからの指示で、勇者としての活動を再開した。アリッサをパルムのチームに入れ、修行させている。
ターナはアトランで女神をやっていた。
レナ達は、魔界で土の中だ。魔界の邪悪な土の中に埋めることで、中和させる作戦だ。閻魔に頼んで、適当な所に埋めてもらったが、もうすぐ帰ってくる予定だ。
俺達は平和な時を過ごしていた。
「ケイン、行くぞ。美味しいお弁当を持ったぞ」
「はい。今日はハイキングの日です。お天気も良好です」
平和な時に勇者は不要だ。俺は日々、遊んで暮らしていた。
やっと掴んだ平和な時間を堪能していた。
今日までは・・・・。




