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残念世界の残念勇者   作者: XT
80/96

ループワールド・勇者ケイン編 80

無い。・・・8000兆の3700乗なんてエネルギーは、どこにも無い!

方針を決めた日から、10日が過ぎた。

「銀河系の総質量×33」「ブラックホール999個分」

こんな物がカモミールにあるはずがない。


「ないぞ。ごみ箱の中から、タンスの奥まで探したぞ。見つからないぞ」

「庭を探したけど無いよ。雑草の根まで抜いて探したよ」

「私の店にはなかったね~ヒマワリの種しかないよ~」

「もともと魔都には物資はありません」

「セイレーン本体内部にもありませんでした」

「妖精族の村。ツボの中まで探した」

「妻の鼻の中にも入っていなかった」

何処を探している?

「普通は無いでござるよ。それだけの質量の物があれば、空間が持たないでござる」

早く言え!10日間無駄にしたじゃないか。



既に王都全域に、アイリスの氷魔法の影響が出ていた。

王都民には避難命令が出され、アリスが建てた海上都市「アクエリアス」へ避難していた。まもなく海も凍る。アトランへの避難を開始しなくてはならない。


俺は、アリスとアイリスの部屋へ行く。

「婿殿・・・」

アイリスは顔色は悪く、やせ細っていた。


「ママ、体調はどうかだぞ?」

「ええ、今日は落ち着いていますわ」

上半身を起こすと、アリスがカーディガンを掛ける。

「婿殿、街が凍っていますわ。国民の皆さんは・・・」

窓から見える街は、白く凍り付いていた。

「大丈夫だ。今は海上都市に避難している。体に障るから、横に成ったほうがいい」

辛そうな目で、窓の外を見ている。

「これは私の魔力の暴走ですわ」

アイリスも分かっていた。が、ループワールドの事は伏せてある。

「婿殿、アリス。私を・・・」

「ダメだぞ!」

言いかけたアイリスの言葉をアリスが制した。


「自分の体の事は分かっていますわ。皆さんにこれ以上の迷惑は・・」

女王としてのアイリスは立派だ。自害を選ぶのも当然の選択肢だ。

「俺たちに任せてくれ。今原因を探っている。もう少しだ。だから諦めるな。信じてくれ!」

俺は、何も持っていない。解決の策などない。だが、アイリスを死なせたくはない。

「・・・分かりましたわ。婿殿を信じていますわ」

アイリスは、アリスの支えられ横に成る。

「ママ、諦めるなだぞ。必ずケインが助けてくれるぞ」

アイリスは、微笑んだ。


俺とアリスは、部屋から出ようとした。

「扉が凍ってて開かないぞ」

扉の前でアリスが、悲しそうな声で言った。

ティナが神の加護を使って、王宮内を温めてくれていたが、そろそろ限界の様だ。

「これなら鍵なんか・・いらないぞ。完璧なセキュリティーだぞ」

凍り付いたドアを叩きながら、お茶らけた様に言うが、母を案ずる想いは、悲しみとなって声色に出ていた。


「俺が開けよう。下がって」

アリスを下がらせ、俺はドアの前で剣を抜き構えた。

ケインスラッシュの構えだ。

    「行くぞ!ケインスラッ・・・」

      脳裏に何かが横ぎった。


「・・・鍵?・・セキュリティー・・・膨大なエネルギー・・そうか!そうだったのか!」

      俺の頭の中に閃光が走る。

   閃きが、すべてのキーワードを1つに繋げた。

「アリス、全員を集めるんだ。ドワーフやヴィーナス達もだ」

「ケイン?・・・分かったぞ。すぐ集めるぞ」

アリスは俺の言葉で察する。

「アイリス、待っててくれ。直ぐ助けてやる」

俺はアイリスのほうを向くと、アイリスは優しく微笑んでいた。



全員が集まった。守護者たちはもちろん、ヴィーナスは、シーツを被せての参加だ。

「皆、聞いてくれ。ループワールドの原因は、リリス達だ」

俺の言葉を聞いたエクセレントは、反論した。

「ケインさん、リリス達には、そんな大胆なことはできません」

そうだ。奴ら自身が狙ってやったわけではない。


「南の神殿の鍵を取ったことで、防犯システムが作動した。この防犯システムがループワールドだ」

俺は付け加えた。

「鍵が盗まれたのと、アイリスの魔法の暴走の時期は同じだ。そして、時間がまき戻れば、鍵は元に戻る。完璧な防犯システムにも辻褄が合う」


「なるほど・・確かに辻褄は・・でも・・・」

ピーは頷きながら、一言一言を考えながら口にした。

「しかしケインさん。膨大なエネルギーの所在は説明できていません」

エクセレントも慎重だ。

「アイリスが絶命すると、一気に星は凍り付き、ループワールドが発動。だったよな?星の中心には、聖杯と起源の水がある。世界を消滅させる聖杯には、時間を撒き戻すだけの、十分なエネルギーがあるはずだ。氷が聖杯に達するとき、ループワールドが発動するんだ。アイリスはセキュリティーの媒体になってただけだ」


全員が言葉を失った。

考えが駆け巡り、言葉が出てこなかった。

「ケインさん!」

シータだ。シータが来た。

「見つけました!1200年前と、今との接点です!リリスが古文書により、聖杯と起源の水の事を知った時期と一致しました」

ビンゴだ!


「1200年前にリリスは『聖杯と起源の水、公式取扱説明書』を入手しています。西の都の図書館で貸出記録にありました」

公式取扱だと?

「聖杯と起源の水は、使われることが前提となっているアイテムよ。文献は、世界各地にばら撒いてあるわ」

ピーは当然にように言う。

「確かにだぞ。誰も知らなければ、探しようが無いぞ」

それはそうだが・・・。

「リリスは、貸出期間を過ぎても返却していませんでした」

シータ・・良く調べたな?


「これで決まりですね。ループワールドは、リリスが南の神殿から、鍵を盗んだことで発動しました。なら鍵を元に戻せば?」

シーツの中からヴィーナスの声がした。

「防犯システムは止まるわ。鍵を取り返せば、ループワールドは回避される」

ドワーフの言葉は、俺たちに方針を決めさせた。

「リリスの逮捕が最優先だ!」



「既に3回、エー大陸全体の捜査が済んでいます。が、リリス達は見つかりません」

北と南から、天界の捜査官が、徹底的に調べていたが、天界の捜査官は、今一つ信頼できない。

「また、後光感知装置にて、女神の反応を調べましたが、見つかりません」

女神なら必ず反応する、と言う優れものらしいが、天界の機器は、今一つ当てにならない。


「竜人族の大陸に、逃げた可能性はないのかだぞ?」

カモミールには2つの大陸がある。俺たちの住むエー大陸と、竜人族の住む、エトランタ大陸だ。

「ないでござるよ。エトランタはゲート阻害システムを使っているでござる。ゲートが繋がるなら、拙者はとっくに戻っているでござる」

トーレフの言葉はもっともだ。


なら、奴らはエー大陸のどこかに居ると言う事だ。

「でも、女神の反応が無いぞ。女神を止めたかだぞ?」

「それもありません。堕天したり、引退すれば、女神名簿から名が消えます。リリス達の名は、女神名簿に残っています」

となると、答えは一つか。

「そうだね~」

「居場所は一つ」

「だぞ」

既にマオやターナ、アリス、俺のチームメンバーは、リリス達の潜伏先を絞り込んでいた。


「ヴィーナスは天界に戻るぞ。移動疎外の防壁は、このままだぞ」

リリス達は王宮付近に居るはずだ。

「母は必要ではないと?」

エクセレントは分かっていなかった。

「ああ、ヴィーナスの女神としての反応が強すぎるんだ。後光が強すぎるから、周辺に居る女神の後光が、かき消されている可能性が高い」

「わたしが居るせいでしたか?」

ヴィーナスが気が付く。


「ヴィーナス達が悪いぞ。リリス達を放置して、毎回ループワールドが発動したぞ。今は、居場所の特定も邪魔しているぞ」

随分はっきり言ったが、アリスとしては、母親の殺害まで考えていた相手が、原因を放置していた訳だ。一言あっても仕方ない所だ。

「こんな無能な家へ、ケインを嫁がせるわけにはいかないぞ」

嫁が、俺の嫁ぎ先を否定した。


「おかぁ様!こんな無能ぶりを見せたら、ケインさんのお嫁さんから、結婚の許可がもらえません!」

ティナが焦った。

「いや!ケインさん、これは・・・」

エクセレントも焦った。

「なんという事でしょう・・歴史再現のため、リリス達放置がループワールド・・」

シーツの上からでも動揺がわかる。ヴィーナスの後光は点滅していた。


「そうよ、あなた達が、あいつらを放置したせいで、私は鍵を盗まれたのよ」

ドワーフが言うが、それはお前が悪い。

「毎回・・盗まれていたんだな」

ポセイドンが呟く。

「驚いたわ。まさか貴女の所の防犯システムのせいだったとはね」

ピーもあきれた様子で呟く。


「兎に角、今はママを助けるぞ。保証は後でゆっくり話し合うぞ」

保証させるんだ?

「勿論です。この不手際の保証は必ず致します」

「交渉は私がする。任せて」

ターナが出て来た。

「私も同席するわ」

ピーもか?

「私も同席しよう。法的に詳しい者も必要だろうからね」

ノス迄その気か?

これはたっぷりと、搾り取られるな。


「ケインさん、これだけ寒いと、熱源で探せますよ」

マリーの案だ。

「王宮の周り限定なら、セイレーンの本体から、熱源を探るでござるよ。いくら女神でも、寒さ対策はしているはずでござる」

よし、その策で探してくれ。

「今度は逃がさないぞ。エクセレンはダメだぞ。ケインが指揮を執るぞ」

流石に遠慮なしだ。はっきり言う。

「はい。おねぇ様ではダメです。私の結婚が掛かっています。ケインさんにお願いします」

ティナも容赦ない。


「ケインさん、お願いします。リリスを捕まえてください」

ヴィーナスも同意した。エクセレントは膝を抱えていじけていたが、もう時間もない。ここは確実に捕まえるために、俺が指揮を執る。


「ケインさん、西ダンジョン内に、熱源反応アリ。地下30mです」

西ダンジョンと言うと、以前攻略した王宮の庭にあるダンジョンだ。

「地下30mだと、最下部だぞ。今は魔物が居ないから、隠れ家に最適だったぞ」

よし、場所の特定が出来た。

「ヴィーナスの移動疎外はそのままにして、西ダンジョン周辺にも、疎外をかける。奴らは慎重だ。こちらの動きに気を付けているだろうから、弱い阻害で構わない。ゲートで逃げられないければいい」

「なら私とシータで張ります。私たちなら気が付かれないはずです」

「突入は・・・」

「私に名誉挽回の機会をください!」

エクセレントだ。

「ここは慎重にやりたい。レナ達を使おう。エクセレントは待機で、逮捕を頼む」

可哀そうだから、美味しい所を任せることにした。

「トーレフ、レナ達をリモートコントロールで動くようにしてくれ。神の加護対策も頼む」

準備は直ぐできる。用意ができ次第、レナ達を突入させる。


ループワールドに終止符をうつぞ!

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