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残念世界の残念勇者   作者: XT
77/96

ループワールド・勇者ケイン編 77

会議室へは、俺とアリスが入る。後ろからヴィーナスとエクセレント、ティナが続いた。

ホストの俺たちは、ヴィーナスを真ん中の席へ、エクセレントとティナは左右の席に案内する。

俺はティナの横に、アリスはエクセレントの隣に座る。

後光が眩しくないように並んだのだ。


エクセレントも凄いが、ヴィーナスのそれは、桁違いだ。

トイレに行ったアズサは、ヴィーナスの座っていた便座に向かい、ひれ伏し、祈りを捧げながら漏らしてしまったほどだ。


アズサの弁明

「便座に祈りを捧げたは初めてです。神々しくて、とても座ることはできませんでした」


ヴィーナスに長く居られると、王宮内で生活することが出来なくなる。

一日中祈りを捧げ続け、俺たちは餓死してしまうだろう。

なるべく手短に終わらせる。


続いて、ポセイドンとドワーフが入ってくる。

ヴィーナス達は立ち上がり礼をした。

ティナ曰「母が頭を下げるのは見たことが有りません。今日見れると思うと、心臓が止まりそうです」

俺達が思うより、守護者たちは偉い存在のようだ。


ポセイドンとドワーフは、真ん中を1つ開けて座った。

そこにマオが座るり、肩からピーがテーブルに下りた。

ヴィーナスの正面だ。

「ん~ピーちゃんがね~ここに座れって言うからね~」

やはりそうか・・・ピーは守護者の一人だったんだ。

なんとなく分かっていたから驚かない。


「南の海の守護者ドワーフよ」

「北の海の守護者ポセイドンだ」

「星の守護者リンクよ。どうぞお掛けなさい」

ピーはマオが呼んでた名だ。

「母が緊張しています。後光が点滅しています」

ティナが驚きの顔だ。

「ピーたちって、そんなに偉いのかだぞ?」

なんか普通に付き合ってるから、まるで気にしなかった。


「本日はお時間を頂き、感謝の言葉もありません」

緊張気味のヴィーナスが、ピーに促されて席に座った。

「今日の議題だぞ。女神からの質問、ドワーフからの依頼、ケインとティナの結納だぞ」

結納・・やっぱやるんだ。

「まずは、女神からの質問だぞ。ヴィーナス、良いぞ聞くぞ」

アリス、スゲーもう慣れたのか?。ヴィーナスを呼び捨てにしてる。


「お聞きしたいのは、ループワールドの事です」

アリス達は、ここで初めて耳にする言葉だ。

だが、今は話の腰を折るようなことはしない。

アリスを含む、ターナ、ハウル、マオから質問はない。


「私は確認してるわ。ドワーフたちの記憶からは消えてるけど」

ピーが声を出してしゃべった。

「正直、私たちにもわからないわ。なんで1200年前に時間が遡るのか?理由も原因も・・」

女神たちの思惑は外れた。守護者なら・・と考えていたようだが、ピーが知らないと言うなら、それは知らないと言う事だ。

「そうですか。正直、困りました」

ヴィーナスの落胆は、守護者に掛けていた事が伺えた。


ここでエクセレントが、みんなにループワールドについての説明をした。

勿論、アイリスの件は伏せている。

「まずは、魔王軍のギーさん。魔王軍は、時間に関する研究をしていましたか?また、ループワールドについて、ご存知はありませんか?」

エクセレントがギーに質問する。

「ギーギーギー」

「知らないそうだぞ。魔王軍は時間を戻す必要はないから、時間の研究はしていないそうだぞ」

確かにだ。魔王軍は魔王を呼び出すのが目的だ。

時間を戻しても意味はない。


続いてエクセレントは、アヤメさんに尋ねた。

「時間がまき戻される現象は、稀に確認されていました。ですが、いずれも小規模なものです。原因は主に、重力異常などの特異点が関与しています」

流石は科学の進んだ星、カッパ64星の住人だ。言っている意味がまるで分らないが、エクセレントやトーレフは頷き、納得している。


「このような大規模かつ、定期的な現象は・・ちょっと!おじい様、今はぬか漬けの話はしておりません」

近くに爺さんが居る。

アヤメさんの魂が宿る、カッパの像から爺さんの声もした。

「ワシも居るからのぉ~聞きたいことがれば・・」

無理やり出てきたようだ。

「申し訳ありません。続けます」

アヤメさんが対応したようだ。壮大な謎に挑む最中に、ぬか漬けはない。


「結論から言うと、サラ族の科学力では解明できません。が、いくつかの疑問点から、解明のヒントになるかもしれません」

アヤメさんの疑問は3つだ。

①時間移動には、膨大なエネルギーが必要となる。そのエネルギーは何処から出ているのか?

②なぜ1200年前なのか?

③なぜ繰り返されるのか?


トーレフが見解を示した。

「おそらくは人為的な現象でござる。②と③の疑問から、法則性が見られるでござるよ」

!?人為的?と、すると誰が?何のために?


「なるほど、言われてみれば確かにループワールドの発動時期と、1200年前に巻き戻る規則性には、自然の物とは考えにくいですね」

ヴィーナスが頷く。


俺は一番気にしていることを聞く。

「トーレフ、①の疑問だが、必要なエネルギーは、個人の魔力で賄える程度の物なのか?」

アイリスが原因であるとすれば、答えはYESだ。

「個人でござるか?ゴマ粒一つ、過去に送ることはできないでござるよ。詳しく計算していないでござるが、カモミール全体を過去に送るとなると、銀河系の質量、全てでも足らないはずでござる。時間突破には、膨大な質量が必要でござる」

意味は分からんが、アイリス個人が原因では無いと言う事は分かった。


トーレフとアヤメさんの科学論議が続いたが、結論は出ず。

ヴィーナスも「困りました」と言うしかなかった。


膠着状態の中、ピーが口を開く。

「ヴィーナス、この件はケインに任せたのよね?」

「はい。ケインさんの望むように対応することで、同意しております」

「なら、ケインに任せなさい。私はこの周回で、初めてケインたちに力を貸しました。

本来は不干渉が原則の守護者ですが、彼らには、私たちの力を貸し与えるだけの魅力があります。友人として、また、仲間として、我々も協力はお惜しみません」

ピーの言葉を聞いたヴィーナスは、少し和らいだ様子で答えた。

「分かりました。ループワールドは、ケインさんに一任し、私たちはも全力で支援することをお約束します」

「と言う事よ。責任重大よケイン」

笑いながらのピーは、いつものピーだった。



「次だぞ。ドワーフから女神にお願いだぞ。ドワーフお願いするぞ」

なんか、アリスが一番偉そうなのは、気のせいか?

「言いにくいわ。ケイン、お願い!」

丸投げされた。


「ドワーフの不注意で、南の神殿にある鍵が盗まれた。犯人や目的など一切不明だ。天界の力で、犯人の特定と逮捕の協力をお願いしたい」

「ドワーフ様!鍵が盗まれたというのは、どういう事なのでしょう?」

エクセレントが聞き返す。

「ケイン、お願い!」

意外と根性無しだ。


「南と北の神殿の鍵が揃うと、中央神殿で扉を開けられる。聖杯と起源の水のある場所に繋がる扉だ。まだ北の神殿の鍵が無事だから、すぐにどうと言う事はない。が、鍵が無いと防犯システムが作動するらしい」

俺は手短に説明した。


「そうですか。まだ大事には至らないのは幸いです。エクセレント、ドワーフ様に協力を」

「はい。すぐに天界より、優秀な捜査官を呼びましょう。協力は惜しみません」

まさか特捜1係か?

「犯人の特定、逮捕、そして目的。ドワーフ様、我々女神にお任せください。必ず鍵は取り戻して見せましょう」

天界の捜査官はイマイチだからな・・なんか不安だ。



!!!いきなり扉が開き、セレスが飛び込んできた。

「なにやってるぞ!大事な会談の最中だぞ!」

アリスが怒鳴る。

「ケイン!大変よ!」

まぁ、これだけの相手を気にせず飛び込んでくるんだ、それなりの大事じゃないと、首が飛ぶ。

「レナさんが戻らないから、様子を見に行ったのよ。そうしたら、リリスとギルバが居たのよ!」

なんだと!


「あいつら、パルスの家で、二人を使役していたわ」

確認したのか?

「ええ、勿論よ。でも近寄ると、加護を使われて、私も電源切られちゃうから、逃げて来たの」

まさかカモミールに潜伏していたとは・・。

「パルスの家って赤道の近くよね・・・神殿からのゲートの近くだわ」

ドワーフの言葉で犯人が特定できた。たぶんだが、盗ったはリリス達だ。


「クロエ!リリス達を見つけた!部隊を派遣・・なんだと!それでは間に合わない!ビューティーの部隊で突入する!招集してくれ!カモミールの現地地図を用意しろ。援護してくれ!」

「前回と同じ流れだぞ」

嫌な予感がしてきた。

「天界の突入部隊が慰安旅行中で使えません。私の部下も一緒について行ってしまいました。妹の部隊でリリス達を逮捕します」

ビューティーの部隊か?

「ビューティーの部隊なら、強靭な猛者の集まりです。エクセレント、今回は抜かりなく」

ヴィーナスの太鼓判なら安心か?

「任せてください。天地創造系の妹の部隊は、土木関係に特化しています。リリスの逮捕は時間の問題です」

土木系と逮捕・・・。どうすれば、そう繋がる?


「では、吉報を待っていてください」

「待つぞ。先にやることをやっておくぞ」

そうだ。万が一に備え、カモミールから出れないようにしておかないと。

「ゲートはみんなも使うから、この世界からの移動だけは阻害しておくぞ」

俺のチームも導入したいが、万一ここが狙われた時を考えると、動かすわけにはいかない。

「なるほど!名案です。おかぁ様、強力な移動疎外をお願いします」

「分かりました。神女神の加護。何人たりと、カモミールから出ることは許しません!です」

加護により、移動疎外が掛けられた。これで最悪、逃げられてもカモミール内だけだ。


「では、行ってきます」

エクセレントは、ゲートに中に消えた。



ーーーーーパルスの家ーーーーー

「これは!?」

「移動疎外だよ。部長。それもそうと強力!」

ヴィーナスの移動疎外が強力だった為、リリス達が気が付いた。

「不味い。私たちが居ることがバレた。ギルバ、すぐに例の場所に移動だ」

「ゲート!」

ーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇ、ケイン?移動疎外は良いけど、これって逃げられたら、張り続けるのよね」

ピーの一言で嫌な予感がした。

「不味いぞ。万が九千九百九十九、逃げられたら、このまま移動疎外の加護が残るぞ」

99.99%逃げられる予測か?

「そうなると、ヴィーナスも戻れないぞ」

不味い事態だ。王宮が神聖化してしまう。


「ケイン、悪い知らせよ」

ピーが言いたいことは分かってしまった。

「逃げられたわ」

だよな。


「すみません!逃げられました。と言うか、行った時にはいませんでした」

勘のいいやつらだ。

「しかし、急いでいたようで、この二人は置いていきました」

レナとパルスだ。共に感情が無い。


「エモーションシステムを止められれるわ。命令を聞くだけの人形にされてるのよ」

セレスが二人に近づき、命令する。

「サルの真似をしなさい」

レナとパルスは躊躇なく、サルの真似を始めた。

「ねぇ面白いでしょ。次はカエルの真似よ」

遊ぶな。


「逃げられたのは痛いが、これではっきりする」

俺は、レナ達に「鍵」の事を聞く。

「鍵はリリスが持っています」

感情のこもらない声でレナが答える。

「ゲートに入ったら、神殿があり、鍵を取って来たと言っていました」

やはり感情の無い普通の言葉で、パルスが言う。

「間違いないぞ。犯人はリリス達だぞ」

確定だ。



「婿殿!大変ですわ!大事件ですわ」

アイリスが飛ぶ込んできた。

「ママ!会議の最中だぞ!首が飛ぶぞ!」

いやいや、大事件だろう。どうした?

「魔界からの攻撃ですわ!大量の敵が現れましたわ」

なんだと!


窓から海を見る。

水平線に、大量の魔族が現れていた。

「緊急警報だぞ!デフコン大レッドだぞ」

警報が鳴り響く。

「パルムとセシルを呼んでくれ、ここの守りを強化する」

奴らが何者かは分からないが、例のトカゲかもしれない。

今は重要人物が集まっている。誰一人傷つける訳には行かないメンバーだ。


黒い布で覆うように、水平線は黒く染まる。

敵は急速接近してきた。

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