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残念世界の残念勇者   作者: XT
75/96

ループワールド・勇者ケイン編 75

セシルとパルムを分断し、二人を取り囲む形で、戦いは再開の合図を待つ。

「では、私が合図をするよ。戦闘開始だ!」

ノスの合図でエクセレントが動く。

「大女神の加護!突風です」

エクセレントには敵認識が備わっている。吹き飛ばされるのは俺達だけだ。


「これで仕切り直しだな。坊主」

「全くびっくりよ。前回はあっさりやられたあなた達が、こんなに強いとはね」

「ケインさんすみません。大女神として、チームメンバーとして、手抜きは出来ません。勝たせていただきます」

振出しに戻っただけだ。元々、あれで勝てるとは思ってないから、ダメージにはならない。


「行くぞケイン!本当の戦いだぞ!」

「良し!皆!作戦通りに頼む!」

「ハドロンブラスター発射!」

海中に居たセイレーンが浮上して魔道兵器を撃つ。

「セイレーンだと?」

「魔道兵器ですって?」

流石のパルム達も慌てた。セイレーンの魔道砲は、対人兵器ではないからな。

「大女神の加護!防壁です」

だが、エクセレントは落ち着いていた。

「散開だぞ!いくぞ!」

防壁に阻まれるも、一瞬パルム達の動きが止まる。これで十分だ。


「魔砲二式弾3連装填だぞ!目標固定、自動追尾。発射だぞ」

アリスが剣をエクセレントに向けた。

進化を遂げた魔砲は、発射タイミングだけでなく、敵を追う自動追尾まで装備し、更に隠し技もある。

「疾風連撃! 神風」

「神剣昇舞 一ノ舞!」

レナ、セレスが、エクセレントに向かう。

「来なさい!ランク6位!3位の力を見せてあげましょう!大女神の加護防壁広域展開です」

結構ランクを気にしているようだ。エクセレントの防壁がハウルたちの前まで広く展開された。


「精霊魔法!雷!」

「ハウル将軍!ビーストフットジャイアントキック!」

「毒魔法~猛毒霧だよ~」

ターナ、ハウル、マオはパルムに迫る。

「こざかしい!ツンドラ流星群!」

「紫炎!火炎大蛇よ!」

エクセレントに防壁を任せたパルムは攻撃に転じた。

「神の加護、防壁です!」

「見習い女神の加護 防壁です」

ティナとシータは俺たちに防壁を張る。

「ディザスターブリザードですわ」

「ミサイル攻撃デス」

「火炎斬!」

アイリス、ナナ、アリッサも攻撃に加わるが、お互いの攻撃は防壁に阻まれる。

予想通りの展開だ。


「いいぞ、思った流れだぞ。ここで新技だぞ。行くぞケイン!」

「ああ、目にもの見せてやれ!」

アリスの魔砲。凄い技が使えるようになっていた。

「休むな!撃ち続けろ!ティナとシータでは、大した防壁は張れん」

「紫炎!火炎トルネードよ!」

「大女神の加護!防壁防壁防壁です!」

エクセレントの強力な防壁に守られたパルム達は、連撃で仕掛けて来た。

ティナとシータは必死に防壁を張り続ける。


「魔砲一式弾6連装填だぞ!目標固定。発射地点設定。斉射だぞ!」

一式弾で自動追尾を使わない時に限り、氷塊の発射地点を自由に設定できる。

つまり、防壁の内側からも、敵を狙えるのだ。

「ぐは!」

「ぐはぁよ!」

「ぐはぁぁです!」

発射地点は、エクセレントの後方。後ろからアリスの魔砲弾が襲った。

一瞬防壁が消える。


「勝機だぞ!」

「時間停止魔法!時間よ止まれ!」

「大女神の加護!時間停止魔法キャンセル!」

アズサの切り札、時間停止魔法を放つが、一式弾では致命傷を与えられなかった。

すぐさま、エクセレントは対応した。

「疾風迅雷!神風!」

「神剣昇舞!二の舞!」

レナとセレスが、左右から高速でエクセレントに突進。

ゲートを使い、アリスがエクセレントの後方に表れる。

それに気付き、振り返るエクセレント。アリスが切り札を放つ。

「絶対零度だぞ!」

「大女神の加護!防壁です!」

エクセレントはアリスの絶対零度を防ぐために、自分の前にだけ防壁を張った。

「セシル、エクセレントの援護だ!」

パルムが叫ぶが、足元にツタが絡みつく。

ターナの精霊魔法だ。パルムとセシルの足には、大地から延びるツタが絡みつき動きが取れない。

「もう一発だぞ!絶対零度2連撃だぞ!」

「私があげたスキルで、私を倒せると思わない事です!!」

エクセレントの防壁は、アリスの絶対零度2連撃を阻む。

防壁から漏れる白い冷気が、霧のようにエクセレントを覆う。冷気で、エクセレントの髪は凍り付き、頬は白くなる。

「どうです。私の勝ちです!」

アリスの切り札に耐えきったエクセレントが叫んだ。


「前に気が行ってしまいましたね」

「私達の勝ちよ」

エクセレントの首筋に2本の剣が。

レナとセレスだ。

防壁に集中したエクセレントの後ろから回り込み、首筋に剣を当てていた。

パルムとセシルの動きを止めたターナの魔法、アリスの絶対零度2連発での陽動が功を制す。

「大女神様に刃を使わせないでください」

「降伏してね」

レナとセレスの言葉に、エクセレントは体から力を抜いた。

「私の負けです・・・」

エクセレントはリタイアだ。


「やられた。だがこれでアリスは打ち止めだ。脅威ではない」

「作戦実行よ。ここで決めましょう」

エクセレントを失ったパルム達は、かねてから決めていた策に出る。

「数で押し切れ!分断させるんだ!」

俺の掛け声で、全員が一斉にパルム達に向かう。


「坊主、ここまでよくやった。だがお前たちの最大の弱点は、坊主の弱さだ」

「そして坊やがいなければ、烏合の衆」

パルムが剣を抜き、半身に構える。

「あの技は?」

「パルムスラッシュ!スーパー!」

パルムが剣を水平に振るうと、みんなは吹き飛ばされる。俺だけは飛ばされないが、その場に尻もちを付き倒れ込んだ。

「俺のケインスラッシュだと?」

後方に居たティナとシータ迄、吹き飛ばされた。パワーが違う。

「違うのは、パワーだけではないぞ」

「飛ばす相手、飛ばさない相手を選べるのよ」

倒れた俺に、パルムとセシルは一瞬で近づき、剣を突き付けていた。


「この形に成れば、俺たちの勝ちだ」

「坊やの周りには、誰も居ないわ」

パルムは真っ直ぐ俺を見ているが、セシルは周りを気にしてキョロキョロしていた。

アリスを警戒しているのだ。ゲートから出て来た時の対応も考慮しいる。あるかもしれないと、3発目の絶対零度にも対応しているあたりが流石だ。

「お前の周りには、常にアリスが居る」

「そうそう仲がいいわ。絶対零度を持つアリスちゃんが居たら、こんな近くには来れないわよね」

アリスはエクセレントを攻撃するため、俺からだいぶ離れていた。

「近くに居たら、しがみ付いてでも坊やの側にいたでしょうね」

「お前自身に攻撃力はない。ゆえに俺たちの勝ちだ。負けを認めろ坊主」

パルムの剣は、俺の喉元に迫った。


「確かに、俺は弱い。それでも俺たちの勝ちだ!」

「なんだと?」

この状況での俺の勝利宣言。パルムも意外な顔に成る。

「パルム・・・バカ嫁が居ないわ」

「なんだと?」

周囲を見渡すセシルが、アリスが居ない事に気が付く。

俺は上空から落ちてくるアリスを確認すると、口元に笑みが浮かぶ。

「俺たちの勝ちだ」

「上か!?」

俺の目線が、一瞬上に行った事をパルムは見逃さなかった。

ピーから飛び降りたアリスが、上空から落ちてくる。


「絶対防壁!直上多重展開!!」

「惜しかったわね坊や。少し詰めが甘かったわ」


   『俺の親は、思ったより素直だな』


アリスは絶対零度を放つことなく地面に激突した。

「ぶひゃ!いたたたた。私アリッサだよ!おじいちゃん、おばぁちゃん、ごめんね」

空に居たのはアリッサだ。同じ格好だから、区別がつかなかっただろう。

「なんだと!!!」

直上に張った防壁が無駄となった。

「パルム・・・下・・下よ」

既に膝まで凍り付いていたことに、セシルが気が付く。

「地下か!?」

腿まで凍り付いていた。もう逃げられない。アリスは地面の下にゲートで移動していたのだ。

「俺達を分断して、俺に止めを刺すときは、必ずこの状況だと思っていたよ。

俺がアリスについて行かなかったのは、お前たちに、この状況を作ってもらうためだ。俺に近づき、勝ちを確信した時、必ず隙が出来る」

胸まで凍ったパルムとセシル。当然俺も首以外は凍り付いた。


「やられたわ。あなた自身が囮だったのね。私たちは気が付かなかった・・・親は子に超えられていくもの。この気分、悪くないわね」

「ああ、見事だケイン。俺たちの負けだ。わが生涯に一片の悔いなし!」

「俺の勝ち・・ぐはぁぁぁぁぁ」

「ぐはぁぁぁぁぁ」

「ぐはぁぁぁぁぁよ」

俺達は完全に凍り付いた。


「ぷはぁ~だぞ」

地面から頭を出したアリス。

「上手くいったようだぞ。私たちの勝ちだぞ。でもパルム達の凍った姿、かっこいいぞ」

パルムは右手を天に突き伸ばし、左手はセシルの右手を握っていた。

「アリス!」

レナ、セレス、ナナが駆け寄る。

続いてハウル、ターナ、アリッサ、マオ、ピー、アイリス、アズサ。

ティナとシータも来た。

パチパチパチ。手を打つ音共に、ノスフェラトゥとエクセントも近寄る。


「見事だったよ。私の負けだ」

「それはケインに言うぞ。この作戦はケインが考えた策だぞ」

女神たちが、ケインたち3人を蘇生した。


パルムが俺の頭に手の平を乗せ、グリングリン撫でまわす。

「強いな」

「ああ、あんた達の子だからな」

「坊や・・・」

セシルが言葉を詰まらせる。

「ケイン君、私の負けだ。見事な勝利だよ」

ノスが右手を差し出した。

「ありがとう。共に未来を創ろう」

「ああ、この不条理な要求に、君たちは私を裏切らなかった。君の言う強さがあれば裏切られることはない。その言葉、信用しよう」

俺はノスと強く手を握り合った。


「宴会ですわ!超が付く宴会ですわ!」

「やるぞ!カモミール始まって以来の大宴会だぞ!」

「はい。やりましょう!飲んで歌って踊りまくりましょう」

「いいね~派手にやろうかね~」

「魔獣たちも呼ぶ」

「よし、大陸上げての大宴会だ!」

宴会は7日7晩続いた。最後まで飲み続けていたのはターナだった。



大宴会から数日後。

「おはよう」「おはようございます」

王宮に住むことに成ったパルムとセシル。

「おはようですわ。今日もいい天気ですわ」

アイリスが朝食の準備をしていた。

「坊主たちは、まだ寝てるのか?」

「パパ達ならさっき出かけたよ。ドワーフが助けて欲しいって、連絡が来たんだ」

「あら、坊やは居ないのね」

「婿殿は忙しい方ですわ。さぁ、今日はフレンチトーストですわ。アリッサちゃん、棚からお皿を出してくださないな」

「いいよ。人数分で良いね・・・あれ?おばぁちゃん、魔法使ったの?お皿、凍ってるよ」

「???。使いませんわ。凍らせる必要はないですわ」

「おかしいね?なんで凍ってるんだろう?」


ーーー天界ーーーー

「始まってしまいましたね」

「はい。アイリスさんの魔法の暴走です。後30日後に、世界は1200年前に戻ってしまいます」

「ケインさんと会いましょう。すぐ準備を」

「はい」

ーーーーーーーーー

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