ループワールド・勇者ケイン編 74
王宮近くの海岸。パルム達は既に来ていた。
「待たせたな」
「いや、今来たところだ」
デートでの待ち合わせの時する会話。
「女神として、この戦いの見届け人をします」
ティナは参加しない。俺たちのチームには、シータが付いてくれる。
「良いのかね?君もケイン君のチームの、重要な戦力のはずだよ」
ティナはノスと並んで戦いを見る側だ。
「はい。私もパルム達には思うことが有ります。姉と袂を分けたパルムが、ケインさんのチームに入るには、少なからず蟠りもあります」
「なるほどな。分かるよ」
ノスは頷く。
「しかもその二人が私の義父、義母に成る方たちです。心境は極めて複雑です。あの二人の老後の面倒を看るのか?この戦いで見極めます」
「女神も大変だね」
ほのぼのとした会話が聞こえるが、俺たちは緊張していた。
この戦いにおいて、パルム達は手抜きなどしてはくれない。
今も俺の前で立つ二人は、勝ちますよオーラを出しまくっていた。
「さて、坊主。そろそろ始めるか?」
「ああ、こっちはいつでも良い」
奴らは強い。だが俺達にも勝機はある。最終局面でのアリスとアリッサが要だ。
「では、確認します。パルム達が負けたら、ノスフェラトゥのチームは、ケインさんのチームに吸収合併されます。良いですね」
ティナが確認する。
「ああ、それで構わないよ」
ノスは即答で返した。
「もし、万が一、ありえませんが、ケインさんが負けた時は・・・あれ?」
俺が負けた時の条件を、決めていなかった。
「私と赤ちゃんプレイよ!」
「俺と並んでおむつ交換をしてもらおう!」
ぜってーーー負けられなくなった。
「では、開始です!」
ティナの合図!行けマオ!先制攻撃は任せた!
「毒魔法~毒霧だよ~~~」
初手は強化前の魔法で攻撃だ。
「絶対防壁!周囲展開」
パルムたちの周りに防壁がドーム状に張られ、マオの毒を防ぐ。
「あら、アリスちゃんの絶対零度じゃないのね?」
初手はパルムに防壁を張らす。幾つか試しておくことが有るからだ。
「よし、作戦開始だ!行け!!!」
今度は進化した方の魔法だ。
「毒魔法~猛毒霧だよ~~」
レナ、セレスが左右に展開。ハウルが正面から突っ込んでいく。
後方に下がるナナとアズサ、ターナ、シータ。
俺の横にアリスとアリッサ、後ろにはアイリスの布陣だ。
「なに?パワーアップしているだと?」
「パルム、この毒!単体防壁では防ぎきれないわ!私に任せて!紫炎 火炎壁よ」
やはり、パワーアップしたマオの毒は、パルムの絶対防壁でも止められない。
セシルの防壁は炎の壁だ。あれがあると物理攻撃組が近寄れない。
「ディザスターブリザードですわ!」
「ブリザードだぞ!」
アリスとアイリスの氷攻撃で、火炎壁にアタック。
と、同時に地べたを凍らせた。
「馬鹿め!氷の魔法使いの俺が、氷の上に立てばパワーアップだ!」
おまえはな。
「ちょ、ちょ・・・ちょっと!!!」
後ろのセシルは立っていられない。
常にお前の近くに居るセシルは、地べたが凍ったことなどないだろう。
奴は、氷の上に慣れていないはずだ。
「おい!まさかお前?」
「ダメ、私、滑り系は一切ダメなのよ」
「氷の魔法使い妻が、氷の上で歩けもしないだと!?」
「五月蠅いわね!じゃ、あなたは炎の上を歩けるわけ?」
軽くもめだした。今だ!ハウル!レナ!セレス!
「ツンドラ魔法!氷河壁!」
正面から迫りくるハウルに対し、氷河壁を使う。
ハウルの目前に氷河が迫る。
「セシル、俺に捕まってマグマ龍を放て!」
左右から迫るレナとセレスに構わず、マグマ水蒸気爆発で、攻め込まれた体勢を立て直すつもりだ。
「分かったわ!マグマ水蒸気爆発で、体勢を立て直しましょう」
だが、それは一度見た。
「ハウル任せたぞ」
「前回の私だとは思うなよ。行くぞ!魔獣装備!アイアンビーストナックルパンチ!」
科学班は機械族のスペックアップは不可能と判断し、別の方法での強化を考え出した。
外付け装備だ。同時にハウルにも、ビースト装備をいくつか作ってくれた。
アイアンビーストナックル。ハウルの腕に装備することで、パンチ力、防御力が数段上がる、魔法を込めた科学アイテムだ。
氷河の中に、マグマ龍を突っ込ませることで起こる、マグマ水蒸気爆発は、氷河が氷の塊のままでないと意味がない。
「どうだ!氷河壁!破れたり!」
ハウルのパンチは、巨大な氷河を砕いた。
「くっ!やるな」
流石のパルムも苦笑いだ。
アリスとアイリスのブリザードで、弱った火炎壁を突破したレナとセレスが、セシルに斬りかかる。狙いはセシル。
後方からナナの重火器が火を噴く。
モビルアーマーに身を包んだナナは、多数の重火器が装備された。ミサイル群が二人に向かう。
「絶対防壁 氷鎧!」
初めて会ったハウルが、ナナ相手に見せた、体を氷で包むことで防御する技。今回は全身に氷の鎧が纏わり付く。セシルも、同様の氷鎧を纏った。
セシルに斬りかかるレナとセレス。氷鎧に阻まれ、有効打にはならないが、拙い足取りのセシルは、攻撃をもろに食らいつつ、背中合わせのハウルから、次第に距離は開いてくる。
「セシル離れるな!」
パルムが叫ぶが、パルムの相手はハウルだ。パルムも簡単には捌けない。
「ダメよパルム!こいつら振りきれない」
2人の間にスペースが出来る。
そこにナナのミサイルが着弾した。
セシル、パルムと一緒に、レナとセレス、ハウルも吹っ飛ぶ。
が、これで分断は出来た。
「見習い神の加護。回復です!」
シータがレナ達を回復する。
セシルにはアリッサとアイリス、マオ、ターナ、レナとセレス。
パルムにはアリスと俺、ハウルが付く。
勝負ありだ!
「まさか分断されるとはな」
「不味いわね。数に押された戦いは苦手だわ」
どうだ?負けを認めるか?
「今なら優しく向かい入れるぞ」
奴らの強さは、パルムの防御と、セシルの攻撃がかみ合う事だ。
常に二人は近くに居る。パルムの防御の届く範囲で、セシルが攻撃をするためだ。
分断すれば、脅威ではない。
「フフフフ。坊主、これで勝ったつもりか?」
「そうよ、あなた達は、私たちがチームだと言う事を忘れたようね」
だよな・・これで勝てたら楽だったんだがな。
「タイムだ!」
なに?
「はい。パルムチームからタイムの要請です。タイムを認めます」
マジか?
「タイムなら仕方ないぞ。ケイン、ここは水分補給だぞ」
アリなんだな?
「彼らにタイムを使わせるとは、やはりケイン君たちは凄いね」
「はい。ここ迄一方的に押すとは、私も予想していませんでした」
なんか損した気分だ。
「相撲の水入れみたいなものだぞ。攻撃中はダメだぞ。双方の攻撃が止まって、なんかを言い合うタイミングなら、1回タイムが取れるぞ。再開は同じポジションからに成るから、そんなに損ではないぞ」
ルールなら仕方ないが、同じポジションなら、なんでタイムを取ったんだ?
「ちょっと!なんで私が・・・」
ゲートから出てきたパルムが連れて来たのは、エクセレントだ。
「これで3人ね。私たちのチームは3人なのよ」
「こいつが居れば、俺も撃って出れるからな」
大女神を引っ張ってきやがった。
「ダメだぞ。それは反則だぞ。元メンだぞ」
当然、抗議はする。
「それについては、私から説明しよう。彼らは勇者チームを解散したわけではないんだよ」
ノスが出てきて説明を始める。
「一時休止、だったよね。公式には」
一時休止だと?
「ああ、俺たちは、勇者活動を休止した。世間が勝手に解散と勘違いしていただけだ」
「そうなのよ坊や。でも傭兵であることには変わらないわ」
そんな気もしていたんだ。ティナを助けるために、ノスに頼んだ時も、パルムとエクセレントとの連携が早かった。
「と、いう事なので、一応私がここに居るのは、ルール違反にはならないのです」
エクセレントが済まなそうに言う。
「審判のティナの判断だ。ティナに任せた」
俺達が決める事ではない。ティナに任せよう。
「ククク・・ケインの予想通りの流れだぞ」
笑うなバレる。
あいつらが何を考えたかは知らないが、エクセレントを入れることで、奴らは弱体化する。
パルムとセシルが攻撃に回り、エクセレントが防御担当のなるのは、簡単に予想できる。
だが、エクセレントが戦い慣れしていないはずだ。
お前たちは、お荷物を抱えながら戦う事に成る。分断させるのが楽になる。
ザイク>実は高戦力のノス>魔族だった秘書レイラ>エクセレントの順に警戒していたが、最弱ならOKだ。
「面白くないから、姉の参加は認めません!」
なんだと?
「おい、何を言い出すぞ?」
「はい。私にも隠していました。ティナはぷんぷんです」
「審判が私情を挟んで来たぞ」
頬っぺた膨らませて可愛いな。
「異議を申し出よう。ルール上の問題はないはずだね」
「ルール以前の問題です。ルールは今の戦いの物ですが、姉が私に言わなかったのは800年前からです」
無茶苦茶だ。
「いいぞ、認めるぞ。私たちが認めればOKだぞ」
アリスが決めた。
「アリスさん!」
ティナ、まぁいいから。エクセレントが出てくるのは織り込み済みだ。
それに、その方が戦いやすくなる。
「ケインさん・・・なに言っているんですか?姉は戦い大好き女神です。とんでもない戦力です」
なに?
だが、パルムは自分が撃って出れると言っていたぞ。エクセレントが守りだろ。
「姉は守りながら戦えます。パルムたち以上の力の持ち主です」
聞いてない。
「いいぞ、エクセレントごと凍らせるぞ。ケインの策なら、問題ないぞ」
「・・・分かりました。私も参加します。守りは姉には及びませんが任せてください」
ティナも参加に成った。
俺達はもう一度作戦の確認をすると、元居た位置に戻る。
お互いが位置確認をして納得する。
エクセレントは、セシルの後方からスタートだ。
仕切り直しで戦い再開!




