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残念世界の残念勇者   作者: XT
64/96

ループワールド・勇者ケイン編 64

「坊主、本当にイカサマなのか?」

「坊や、教えて、お願い」

パルム達も、仲間の引退ともなれば必死だ。

「おいおい、聞いても俺の気持ちは変わらないぜ。って言うか、聞くのは野暮だ」

サバサバしてやがる。

「イカサマだぞ。私たちは不正をしたぞ」

アリスが答えた。

「だよな。絶対の自信があった。このゲームだけはイカサマが出来ないとな。

だが、見事にやられたぜ。俺の限界の上を行った訳だ」

「俺達が来た時は、坊主が1枚目のカードを選んでいた最中だ」

「でも、変な動きは無かったのよ。イカサマできないゲームのはずよ」

1人では無理だが、アリスが居れば出来るイカサマもある。


「種明かしだぞ。最初にケインに見せたカードは、ダイヤの5だぞ。でもその下に1枚ハートのA を隠していたぞ。2枚重ねていたんだぞ」

「ダブルリフト・・・か?」

ザイクは、当然知っている。マジックのテクニックだ。

「ハートAを選んだのは偶然だぞ。13でも良かったけど、ルールが分からないから、一応Aにしたぞ。

私からカードを受け取ったケインは、ダイヤの5の表と、ハートのAの裏に触ったぞ。

並べられたカードに、2枚だけケインの臭いが付いているぞ。

裏返しで並べられているから、裏に触ったハートのAの方が、匂いが強いぞ。

私がケインの肩越しに、身を乗り出したのは、臭いを確認するためだぞ」

後はアリスが俺の背中に、指先で指示を出す。

「今回のルールだと、ハートのAさえ避ければいいぞ。指示は簡単だぞ。後ろはアリッサとママが壁に成るから、私の手の動きは見れないぞ」

種を明かせば簡単な話だ。


「犬族の嗅覚・・か。打ち合わせもなしに、大したもんだぜ」

俺とアリスの仲は、前世からの関係だ。阿吽なんてものではない。

「でもアリスちゃん、カモミールは不正すると、魔獣に成っちゃうんじゃないの?」

呪いは健在だ。当然不正は魔獣落ちする対象だが。

「正当防衛だぞ。一見フェアなルールだぞ。でもザイクはケインの最弱運を知っているぞ。引けば必ずハートのAを引くぞ。先攻をケインに持たせれば100%勝ちだぞ。これはズルだぞ。だから私が不正しても呪いは発動しないぞ」

「イカサマはできないが、ケイン相手なら必勝法がある。確かに俺はズルをした。すべて見透かされていた、と言う訳だ」

ザイクは帽子を被り直す。

「勝手で悪いな。俺はギャンブラーとして、史上最低運の奴に2連敗した。

最低に負けたんだ。もう勝てる相手はいない。国に還って実家の跡を継ぐさ。じゃな。お前たちとの冒険、楽しかったぜ」

ザイクは、そう言うと部屋を出て行った。


「名を賭ける・・か。まさかこう言う意味だったとはな」

「本気だったのね。って言うか馬鹿よ。カードで負けたぐらいで引退なんて馬鹿よ」

いや、馬鹿じゃ無い。男とは拘りにしがみ付いて生きる生き物だ。

拘りが持てない奴は二流だ。ザイクは一流だったという事だ。

「うん馬鹿だぞ」

おいアリス、俺に良いセリフをぶち壊すな。


「坊主、責任をとれ」

「そうよ、うちのメンバーが引退したのよ。責任を取って頂戴」

俺が悪いのか?

「ケインはやらないぞ。勇者ケインのチームからケインが抜けたら、ただのチームだぞ。ケインはチームの顔だぞ」

「ザイクは俺のチームの大事な攻撃職だ。あいつが居ないと攻撃力が半減する」

「パルムが守る。ザイクが攻撃、私は両方。これがパルムチームのスタイルなのよ。攻撃職が居ないと困るのよ」

「ならセレスをやるぞ。攻撃職だぞ。結構強いぞ。ほぼ役立たずだから、セレスならくれてやるぞ」

セレスが泣くからやめろ。


「パルム!パパは渡さないよ。欲しいものは自分たちの足で探すんだよ」

2歳児に正論を言われた。

「お困りでしたら、王都の求人掲示板に募集広告を張りますわよ」

何て貼る?傭兵攻撃職募集、委細面談か?

「ちょっと待ってろ。オーナーを呼んでくる」

「ノスの財力で、坊やをゲットして見せるわ」

俺を金銭トレードするつもりか?

「良いぞ受けて立つぞ。マオを呼んでくるぞ。オークションだぞ」

マオVSノスヘラトゥ、代理金銭戦争になりそうだ。


「ママ!ダメだよ!パパが取られちゃうよ」

「そうですわ。婿殿をオークションで取り合うなんて、ダメですわよ」

「え?だぞ?えええええええ!!!だぞだぞだぞ!」

今、気が付いたのか。

「やっと隙を見せたな」

「受けて立つと言ったわよ。もう逃げられないわよ」

うまく乗せられた。アリスには珍しいミスだ。



「これは驚いたな。アリス君が凡ミスをするとは、正直、思っていなかったよ」

パルムが開いたゲートから、ノスフェラトゥが出て来た。

「やられたぞ。慢心したぞ。奥さん失格だぞ。腹を切って詫びるぞ。先立つ不孝を許すぞ」

まてまて、大事にはならない。マオが居るんだ。

「ママ!介錯は私がするよ。スパっと切り落としてみせるよ!見ててね」

される側は見れないし、ママの首を跳ねちゃダメだ。

「婿殿の言う通りですわ!アリス、腹を切るのは、婿殿が取られてからですわ」

「そうだぞ。今はケインを守るぞ。マオなら、楽勝だぞ。私の首は安泰だぞ。考えてみれば大事件じゃないぞ。オークションの準備にかかるぞ。ケインは、マオを呼んでくるぞ」

立ち直りの速さもアリスだ。準備のため、部屋を出て行った。



「ケイン君、残念だがマオ君は、お留守だよ」

なに?

「まさか、ノスフェラトゥ!貴様、マオを!」

マオが拉致された?俺達は身構えた。

「おいおい、勘違いしないでほしいな。マオ君はレイラ君と商談中だよ。

勿論、同意の上での話さ。今頃は高級なヒマワリの種の話で、盛り上がっているだろうね」

くっ!やられた。手際がいい。最初から計画していたのか?


「どうやら運も、俺たちにあるようだな」

「ええ、マオちゃんが居ないとなると、勝算ありね」

くそ!とぼけやがって。

「不味いですわ。マオさんが居ないとなると・・・」

「不味いよ!マオさんが居ないと、お金が積めないよ」

「王宮の金をかき集めるんだ!シータが出した予算なら使える」

大盤振る舞いの予算が数兆円はある。

「私の貯金もあるよ!3億あるから使っていいよ!」

アリッサ、無駄使いしないで貯めていたんだな。

「婿殿!私のへそくりが2019円ありますわ」

一国の女王のへそくりが?2019円?

「国民の血税ですわ!1円抜くにも心が痛みましたわ!」

良い女王だが、なぜかダメ臭がする。


「良し、準備出来たぞ」

アリスが、大きな箱を持って戻って来た。

「アリス、マオさんが居ませんわ。この勝負は私たちだけですわ」

「ママ、介錯してあげるからね」

アリスに状況を説明する。マオを上手く外されたことも伝えた。

「大丈夫だぞ。私には策があるぞ。2重の策だぞ。任せるぞ。だからアリッサは素振りを止めるぞ」

負けを覚悟したアリッサは、首を跳ねる練習をしていた。


「では、王宮オークションを開催するぞ。まずはこれだぞ」

アリスが箱から取り出したのは、パンツだ。

「プリンセスの使用済みパンツだぞ。かなりの高額だぞ。500万からスタートだぞ」

ノスフェラトゥ、パルム、セシル、さすがに唖然としていた。

「アリス君?」

ノスフェラトゥは、困惑の様子を隠せなかった。

「金持ちが目の前に居るぞ。不用品を金に換えるぞ。しかも敵の戦力が削げる、2重の効果だぞ」

まさか2重の策って・・・

「ママ!素振り初めていいかな?」


「おかしいぞ、なんで売れないぞ。プリンセスだぞ、飛ぶように売れるはずだぞ」

俺達は買わないし、ノスフェラトゥだって値を付ける訳が無い。

「箱ごと行くぞ。200枚はあるぞ。1箱5000円からだぞ」

泣きながらの、叩き売りになった。

「パルム、見てられないわ。雑巾にするから、落札してあげましょう」

同情されてる。

「ダメだ。相手はあのアリスだ。この先に、どんな卑怯な策が待ち構えているかもわからん」

パンツに策などない。

「私の経験から、使用済みと言う所が危ないね。ここはスルーの一手だよ」

仕様済みパンツが異常に警戒されていた。


「もう只で良いぞ!持っていくぞ。帰りのお土産にするぞ。ラッピングして渡してやるぞ」

あ、切れた。

「次はケイン行くぞ。50円からだぞ」

パンツより安い。

「やっと本命だね。私は5兆円、積むよ」

俺に5兆だと?

「高くはないよ。歴代6位。しかもパルムたちに勝ち、魔王を3体も倒した君ならね」

ノスヘラトゥは余裕だ。

「不味いですわ。王宮の権利書と、予算など合わせても5兆しかありませんわ」

「大丈夫だよ!体も温まって来たよ。スパっと行けるよ」

アリッサは、首を跳ねるつもりだ。


「びっくりしたぞ。私のパンツも買わないノスフェラトゥが、5兆だぞ」

パンツと同列かよ。

「なら私は500兆ほど積むぞ」

!?

「アリス君、それは反則だよ。君のお金で500兆円あるのかね?」

ノスフェラトゥは、余裕のままアリスに返した。

「ないぞ、マオの金だぞ」

「なら認められないよ。同意書でもあれば別だがね」

「同意書もないぞ。そんなのいらないぞ。これを見るぞ。マオの天界銀行のキャッシュカードだぞ。私が使って良いと、預かっているぞ。マオの現金は全て天界銀行だぞ。腐るほどあるぞ」

なんだと!?


「!!君はそのカードを使えるというのかね?暗証番号は知っているのかね?」

ノスフェラトゥの慌てた姿、初めて見た。

「勿論だぞ。いつも使ってるぞ。このカードでパンツも買ってるぞ。暗証番号は知ってるけど、秘密だぞ」

使ってるのかよ!

「過去の話をよく読むぞ」


ーーーーーーーーー

ふんだんって言うが、王都の税収って、そんなにあるのか?

「婿殿、優秀な女王は、やりくりも上手ですわ」

「マオの固定資産税だぞ。足らない時は適当な理由で請求すると、いくらでも払ってくれるぞ」

「私のキャッシュカードは~アリスが持ってるよね~いつも自由に使ってるよね~」

「とりあえず、秘密基地建設費用だぞ。マオ、呼吸税を払うぞ。息してると税がかかるぞ」

「あいよ~3兆ほど払うよね~」

1個人のお財布が国を支えていた。

ーーーーーーーーー


「私とマオの友情は、お金より重いぞ」

確かに、そんな会話があった。

「だが他人のカードだ。認める訳には行かない」

「そうよ、本当はカードを預かっているだけじゃないの?」

パルムとセシルは食いついてきた。


「衛兵!ここにATMを持ってくるのですわ」

アイリスが、衛兵に命じた。

この場でカードを使えば、アリスが預かっている証拠となる。

「いや、その必要はないよ。私の負けだよ」

ノスフェラトゥは、セリから降りることを宣言する。

「ノス!」

「ちょっと!」

パルムとセシルは、納得がいかない様子だ。


「ここはカモミールだよ。嘘はつけないし、友人とは言え、勝手にカードを使えば犯罪さ。犯罪は魔獣落ちだからね。アリス君は、マオ君から運用を任されているという事だよ」

流石はノスフェラトゥ。その通りだ。

「私の資産は全額でも、マオ君の預金額には届かないからね。勝負は決した。残念だが、諦めるべきだ」

引き際も良いな。


悔しがるパルムとセシル。

ノスは俺の近くへ来た。

「今回は、私の負けだ。でも諦めないよ。私はケイン君が気に入ってしまったからね。今度は正々堂々と来るとしょう」

アリスから手渡された、ラッピングされた袋を持って、3人は帰って行った。



「危なかったぞ。ケイン、済まなかったぞ。私のミスだったぞ」

「ですわ!アリス、少し気を付けなくてはいけませんわ」

「そうだよママ!首を切り落とし損ねたよ」

全く油断ならない連中だ。

だが、大事にならないでよかった。

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