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残念世界の残念勇者   作者: XT
65/96

ループワールド・勇者ケイン編 65

「ねぇ部長。まだ?僕もう、歩くの疲れたんだけど」

「もう少しだ。この先にある教会が、奴らのアジトだ」

リリスとギルバは、天界の地方都市「バサラ」まで来ていた。


「ここだ。女神解放戦線のアジトだ」

古びた教会の前でリリスは立ち止った。

「女神解放戦線って!テロリストだよ」

ギルバは驚く。

「そうだ。世界を混沌の渦に巻き込み、世間を暗黒期と変え、新たなる秩序の元に世界を再生する。それが女神解放戦線の教え、私たちの考えと似ているだろう。今現在も、混沌をもたらす活動を続けている、現役テロ集団だ」

「私たちも落ちたね。僕、実感してきたよ」

ギルバの深いため息。リリスは中へと入る。


「うわ、床がきしむし、ほこりだらけ。掃除ってしないのかな?」

中は薄暗く、汚れきっていた。

「テロリストが雑巾がけなどしない。汚れていて当然だ。情報によると、懺悔室で、合言葉を交わす。入るぞ」

リリスは懺悔室へと入った。


「部長、狭いよ。もっと詰めてよ」

懺悔室は狭い。基本1人が座れるスペースしかない。

「無理を言うな。横の壁が抜けそうなんだ」

床もヤバそうだ。二人で入ることで、床がギシギシと、きしんだ音を立てていた。

「何をやらかしましたかな?」

正面のカーテンの向こうから、声がした。

「話がしたい。『山』だ」

少し時間が空く。

「川・・・女神解放戦線へようこそ」

「合言葉ってさ…今どきそれ?」

奥から声がする。

「横にある仮面を着けなさい。ここでは、名も顔も晒す必要はありません。着けたらついてきなさい」

横の棚には、仮面が2つ置いてあった。


「はい部長」

ギルバが1つをリリスに渡す。

「まて!私はマン派だ。仮面ライダーはいらん」

リリスのこだわりだ。

「はいはい。僕はライダーでも、マンでも良いよ」

ギルバとリリスは仮面をつけると、カーテンの奥へ行く。


奥には地下に下りる階段があった。

階段の横に立つ女。

「足元に気を付けて、ついてきなさい」

そう言うと階段を下りていく。


「中々できた組織のようだな。お互いの顔や名を知らなければ、いろいろと便利だ」

「便利と言うと?」

「逮捕されたときに、仲間の名を言えないしな、粛清の時も心が痛まんからな」

「粛清・・僕たち本当にテロリストに成るんだね」

女が立ち止まる。ドアがあった。

「入れ。ここに団長が居る」

女はドアを開けると、リリス達を先に中へと入れた。


「ようこそ、混沌と再生の女神解放戦線へ」

部屋の中には3人の仮面をつけた女神がいた。

真ん中のドラちゃん仮面の女が、リリス達に歩み寄り言った。

「私たちはテロリスト、あなた達が女神を捨てる覚悟があるか、問います」

左側のひょっとこお面の女が言う。

「私たちの活動内容を聞いてなお、女神解放戦線へ来たいと言うなら、受け入れましょう」

右側、本格的なナマハゲのお面の女。他の奴らとは、力の入れ方が明らかに違うお面だ。


「私たちの活動は、世界を混沌の渦に陥れる事。駅前のコンビニで、先週号の少年ジャンプを棚に置いています」

「なんだと!先週号だと!?」

「それ酷いよ。表紙なんか見ないで買うから、間違えて買っちゃうよ」

極悪非道だ。家で読もうと、楽しみにしていた雑誌が、前号だった時、人のメンタルダメージは、計り知れない。

流石のリリスたちも顔をしかめた。


「セブンの棚に、ファミマで買ったサンドイッチを置いてきたり、数日前に買ったおにぎり、賞味期限切れの奴を置いてきたりもします」

「なんだとぉ!」

「酷いよ!安心して買い物できなくなるよ」

女神解放戦線のテロ行為を聞いたリリス達。安心した安全な買い物が出来ない。世界は混沌の渦に巻き込む行為だ。

「あなた達は、どんな活動をしてくれるのですか?」

ドラちゃんお面の女の問いに、リリスが答えた。

「天界、下界、魔界が、一瞬で滅ぼせるアイテムがある。世界を作り替えようと思う」



「くそ!テロリストに危険人物扱いされた」

「僕さ、出禁って初めて食らったよ」

スケールの違いに、女神解放戦線から追い返された二人だった。

「やはり天界では、同志を募るのは無理か?」

「となると魔界、それも大手だね・・・奴らの相手はしんどいよ」

中央行バスの中で、二人は次の策を練っていた。


「ねぇ部長。僕、良いこと思いついたんだけど」

「良い案があるのか?」

「ティナをさ、抹殺しちゃおうか?」

「出来るのか?そんなことが?」

「社会的にだけどね。ヴィーナスの権力にも影響あるだろうし、いい作戦だと思うな」

「よし、それはお前に任せた。私は魔界の大物とコンタクトをとる計画を練ろう」

2人は地方都市「バサラ」を後にした。




ーーーカモミール 第4火曜日ーーーー

「ケイン、今日はパルムたちが来る日だぞ」

ああ、だが来るかな?先日アリスにオークションでやられたばかりだ。

「来るぞ。奴ら、そのぐらいでへこたれる連中じゃないぞ。早めにお昼食べちゃうぞ」

11時だが、パルムたちは13時には来るからな。早めに食うか。

「パパ!今日はアリッサが作ったよ。アリッサ特製の料理だよ」

お?娘の手料理か?パパ嬉しいな。


「これが激辛お汁粉だよ。砂糖の代わりに唐辛子が入ってるよ」

斬新だ。

「で、こっちがマグロの握り寿司だよ。ワサビの代わりにカレーを入れてみたよ」

超斬新だ。流石に聞いたことが無い。

「最後は、これだよ。トーストの間に、磯部餅を挟んでみたよ」

凄いアイディアだ。

「アリッサの発想は自由だぞ。私にもない発想だぞ」

で?食えるんだよな?

「これから実食だぞ。ラッパのマークは用意してあるぞ」

全員呼んで、苦楽を共にしよう。


「これ!美味しいです!辛さが何とも言えません」

また、辛いの食うと、下が凄い事に成るからな。

「勇者の娘よ。中々の美味だ。カレーの味しかしないが、旨い」

ケダモノの餌にはちょうどいいか?

「あら、悪くないわね。パンとお醤油、意外と合うのね」

セレスがまともな事を言った。

「混ぜることで、新しい味になるぞ。意外な組み合わせも、結構いけるぞ」

自由な発想か?確かに大事だ。

既存の形に囚われない、逆転の発想。色々な面で重要な考え方だ。が。パパは、この3つダメだ。



「ケインさん、パソコンの解析が済みました。大変なことになりました」

お?エクセレント、良いところに来たな。

エクセレントは天界で、魔王軍から提出してもらったパソコンの解析をやっていた。

「エク姉様、で?証拠は出ましたか?」

シータが訪ねると、少し困り顔でエクセレントは答えた。

「出ました。出て来たのはティナからのハッキングの後です」

「なに?」

「魔王軍のパソコンから、ティナがハッキングした形跡が出たのです」

「私ですか?私は、そんな事できません。パソコンなんか、詳しくありません」

ティナの困惑は当然だ。詳しく話してくれ。


エクセレントによると、魔王軍のマザーコンピューターにハッキングを仕掛けたのは、ティナの使っていたパソコンからだった。

また、ティナのIDやパスワードが使用されていて、証拠として残っていたらしい。

「今は、解析したグループを黙らせていますが、長くはもちません」

「ならティナのパソを調べるぞ。遠隔操作された可能性もあるぞ」

「そうですわ。ティナ様に限ってあり得ませんわ」

「はい。私ができる事ではありません。無罪です」

確かにパソでハックなんか、出来るはずもないし、ティナがこの世界を滅ぼすようなことはしない。

嵌められたと考えるべきだ。上司のリリスなら、ティナのパソに仕込むなど造作もないはずだ。


「ティナ、お前のパソコンを回収して調べてみる。少しの間、天界には戻らないように」

良い判断だ。

「ダメです!あのパソコンには触らないでください。恥ずかしいデーターが沢山入っています!」

職場のパソコンに、ナニ入れてるんだ?

「今はそんなこと言っている場合ではないぞ。犯罪者にされるぞ」

アリスの言うとおりだ。

「でも、あれを見られたら私は・・・」

「懺悔の時間だぞ。私たちに言うぞ。言えば楽になれるぞ」

「そうだね~ちょろっと言っちゃった方がいいよね~」

「聞いてやる言え」

「なに?ティナの秘密?待っててね!ボイスレコーダー持ってくるから」

「蜜の味ですわ。ティナ様、さぁさぁ!」

女どもが死肉に群がるハイエナのようだ。

俺は可哀そうだから聞かない。


「いたたたただぞ。ポエムは痛いぞ」

「ヌード写真もですわ」

「痔の画像とか~ないよね~」

「自撮りエロ動画満載」

「売れるかな?いい値で売れそうだね!」

聞きだされたようだ。ここでも情報管理の甘さが出た。

「ティナ、データーの公開は避けるが、遠隔の痕跡は調べてもらう。恥は一時だが、犯罪歴は生涯だ。背に腹は代えられん」

姉としても致し方なしだな。

「では、しばらくここに居て、証拠が出たら迎えに来るからな。シータ、すまんが一緒に来てくれ」

エクセレントと、シータは戻って行った。



「坊や~遊びましょ!」

今時そんな掛け声で来る奴はいない。

「パルムたちが来たぞ。茶番戦闘だぞ」

中庭に集合だ。


「この所、酷い目に会いっ放しだからな、今日は少し本気で行く」

「たまには勝たせてもらわないとね」

茶番だから、分かっていたが、手抜きしてるんだよな?

「それは坊主も同じだろう」

「お互いに手の内は、見せないようにしてるはずよ」

だよな。

「プチ本気のパルムチームだ!」

「プチでも強いわよ。覚悟しなさい!」

「待つぞ!タイムだぞ!」

アリス?

「ザイクが抜けた以上、チームじゃないぞ。パルムコンビだぞ。チームは3人からしか認めないぞ。3人以下は部ではないぞ、同好会だぞ」

変なところに食いついた。


「なにコンビって!お笑い芸人みたいじゃない。嫌よ」

「複数いればチームを名乗れる。辞書にも載ってる」

お?意外なこだわりだな。

「ダメだぞ。カモミールでは、2人はコンビかペアだぞ。法律で決めてあるぞ。違法だぞ。懲役10~20年だぞ」

そんな法律あるんだ?そして何故そんなに刑が重い?

「知らないわよ。私たちは傭兵よ。法律には縛られないわ」

「そうだ、俺たちは無法者だ。登録名に文句は言わさん」

登録してる時点で無法者ではない気がする。


「どうしてもチームを名乗りたければ、力で勝ち取るぞ」

おいおい。揉める所じゃないぞ。

「良いだろう。今日の戦い、チームをかけて戦う」

「プチは無しよ。本気で行くわ。傭兵パルムチームとして戦うわよ」

いつもの茶番が、マジ戦闘になった。

「良いぞ。望むところだぞ。不意打先制の絶対零度だぞ!!」

不意打ちか?


「永久凍土!氷河壁!」

なに?アイリスの氷壁の数十倍の氷の壁が、絶対零度を阻んだ。

「魔獣王ハウルに任せろ!氷河など砕き割ってくれる!ハウルミラクルパンチ!ぐはぁぁぁぁぁ」

なんだと?氷河を殴ったハウルの方が大ダメージだと?

「永久凍土の氷河は、鋼鉄より硬い。全力で殴れば、全身の骨は砕ける!」

くそ!なんて防御だ。


「紫炎!火炎大蛇よ!」

巨大な紫の炎のオロチが8体、俺たちを襲う。

「氷魔法‼氷壁ですわ!」

アイリスは氷壁を張るが、食い破られる。

「回避だ!氷壁では止められない!」

「逃がすか!ツンドラ流星群!」

こぶし大の氷が、矢のように飛んできた。

「く!固い。そして重い!ダメだケイン!躱しきれん!ぐはぁぁぁ」

レナ!レナの剣でもツンドラ流星群は躱せない。

「私もダメ・・ぐはぁぁぁぁ」

セレス!



「精霊魔法 弱っちい奴パフ」

「毒魔法毒霧だよ~」

「魔法剣!爆烈斬!」

「ディザスターブリザードですわ!」

「絶対零度だぞ!」

マジの全力、全員攻撃だ!

「行くぞセシル!夫婦共同作業で止めだ。氷河壁!」

俺達の全力攻撃は、氷河壁に阻まれる。まるで歯が立たない。

「いくわ!紫炎!マグマ龍よ!」

パルムの作った氷河に、セシルのマグマ龍が突っ込んだ。

氷と炎が、マグマ水蒸気爆発を起こした。

氷河は爆散する。高温の水蒸気と、氷の塊が俺たちを襲う。

軽く全滅だ!



戦いに参加していないティナが、俺たちを蘇生してくれた。

「どうだ?坊主。これが傭兵パルムチームの力だ」

「痛かったわよね。ごめんなさいね」

これが本気のパルム。戦い方が違う。まるで歯が立たない。

「びっくりだぞ。戦いにすらならないぞ」

「あたたた~手も足も出ないね~」

「子供と大人」

まさかここまでの差があるとは。


「俺たちの勝ちだ!セシルと二人でパルムチームだ」

「約束だからいいわよね」

ぐうの音も出ない。

「完敗だぞ。超絶完敗だぞ。チームを名乗ってくださいだぞ」

流石のアリスも、無条件降伏だ。

「では、また次回だな」

「次は気楽にやりましょうね。坊や、またね」

平然と帰って行った。


「まさか、これ程とは思わなかったぞ。力が抜けたぞ・・・」

ああ、予想のはるか外だ。間違っても勝てん。

「ママ、パパ、元気出して!強くなればいいんだよ!まだまだ私たちは強くなれるよ」

落ち込む俺たちを、アリッサが励ましてくれた。

「そうだ、俺たちは強さを知った。この敗北は無駄ではない」

「そうだぞ。壁の厚さは覚えたぞ。壁の高さも知ったぞ。後は乗り越えるだけだぞ」

「そうだね~頑張ろうよ~」

「強くなる。私女神に成って強くなる」

「妻よ、魔獣王として、恥じぬ強さを手に入れることを誓おう」

「そうですわ。目標が出来ましたわ。私たちは、更なるステージを目指しますわ」

「はい。私も女神として、皆さんの役に立てるように努力します」

良し!俺たちの戦いは、まだまだ続く。皆でレベルアップだ!

「ケイン、盛り上がっているところ済まないが、私たち機械族はスペック以上の力は出せん。今ので限界だ」

「そうそう。努力で強くなれないのよ。なので、みんなで頑張ってね」

お。おう。なぜ今それを言う。せっかく盛り上がったのに・・・。


「反省会はやめておくぞ。すべて反省に成るぞ。お茶会にするぞ」

賛成だ。後ろを振り向ても仕方ない。

「はい。前だけ見て生きましょう。でも、前を見る前に、お花畑で大きな菊の花を摘んできます。お腹の中で花束が溜まりまくって居ます」

そこまで解説居るか?隠語の意味がないぞ。

「奥の女神用は清掃中だぞ。手前のプリンセス専用厠を使うぞ」

「はい。返せませんが、お借りします」

ティナがトイレに行った。


「私はお茶を入れてくるぞ」

「ママ!私ココア。お子様だから甘目でね」

「私は~ヒマワリ茶だね~」

「いいぞ、注文を受けるぞ」

アリスは全員の注文をメモに書き込んだ。

「私たちは、セキュリティーのチェックをして来る」

「また来るわ。お茶はその時にね」

レナとセレスが出て行った。ケロッとしているが、今回の敗北は、あいつらなりにショックを受けているはずだ。


「全員そのまま!動かないで!私たちは天界特捜1係。ティナの身柄を確保します!」

なんだ?

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