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残念世界の残念勇者   作者: XT
58/96

ループワールド・勇者ケイン編 58

「アトランでのレンタル勇者、女神競争、そして、先日のカモミールでの女神対決。

今までの枠に拘らない取り組みは、下界より高い支持を受けています。我々女神は、下界の守護者として、できる取り組みを速やかに行う事が求められています」

リリスが16評議会で演説していた。



「シータ、王宮食費予算の承認が欲しいぞ。月8000万だぞ」

「は~い。これですと、たいして良い物が食べられませんね。月3億で承認です」

「シータ、防衛費なんだが、色々と物入りでな、3兆6400億に成ってしまった」

「は~い。対G兵器フェザー砲ですか。分かりました。でもキリの良いところで、5兆にしておきましょう。4は縁起が悪いですから」

「シータ様、王宮の交遊費予算ですわ。お祭り回数などを減らして、切り詰めて2億ですわね」

「は~い。真面目に遊びましょう。30億で承認です」

大分砕けた。

「だぞ。前は小数点以下5桁まで出していたぞ。今は億以下は切り上げだぞ。

2とか4とか6、偶数も使わないぞ。全部切り上げてるぞ」

「パパ、さっきボールペンを1ダース欲しいと言ったら、1億の予算が下りたよ」

砕けたというより、ザルになったな。


「シータ、これから仕事さぼって買い物に行くけど、一緒するかだぞ?」

「勿論です。お洋服ですか?装飾品ですか?」

「水着だぞ。来週海でイベントがあるぞ。みんなで買いに行く予定だぞ」

「行きたいです。ご一緒させてください。ちょっと貯金下ろし来ます。アリッサちゃん、そこにある未読の書類、シュレッターに入れちゃってください」

マジで怠惰させた。

「見事です」

エクセレント!?

「急に現れるなだぞ。びっくりしたぞ」

「あのシータが、よくぞここまで・・・嬉しくて涙が止まりません」

泣くほどの事か?


「良い話と悪い話があります。どちらからお聞きに成りたいですか?」

「悪い方からだぞ。美味しい所は取っておくぞ。希望は最後まで手放さないぞ」

奥さんは、こういう人だ。

「では悪い方です。議会でレンタル勇者制度と、補助女神制度が承認されそうです」

レンタル勇者って、アトランに行った俺たちのような感じか?

「そうです。魔王に勝てない勇者に変わって、強い勇者が、他の世界にレンタルされる制度です」

「補助女神制度ってなんだぞ?」

「これもレンタルと似ています。能力の低い女神の元へ、優秀な女神が補助に行きます」

これが悪い話なのか?良いような気がするけど。

「提案者はリリスです」

「!?狙いは俺達か?」

「たぶん」

そうか、リリスはギルバと共謀して、カモミールにある聖剣九重を狙っている。

ティナと俺達を分断したり、俺たちを他の世界に派遣することで、カモミールを狙いやすくすることが狙いだ。


「言い分はもっともなので、露骨に妨害は出来ません。しかし、いきなり制度を変えると混乱を招くという理由で、一部での試験導入と言う事になりそうです」

その間にリリスたちの尻尾を掴めば、奴らを逮捕出来るんだよな。

「魔界の刺客とのコンタクトは重罪です。今調査をしていますが、手口は巧妙で、検挙できるほどの証拠は手に入れていません」


「で、良い方の話だぞ。美味しくいただきたいぞ」

「ティナの事です。灯篭に豪快にダイブして頭を打ちましたが、今夜の山を乗り切れば、大丈夫だろうと言う事です」

あまり良い話ではない。

「また、今夜が山なのかだぞ?山岳地帯で人生歩んでるぞ」

「復帰時期ですが、山さえ乗り切れば、明日にも復帰できそうです」

山ってそういうモノなのか?

「当面は絶対安静状態なので、強い刺激や振動は与えないようにお願いします」

その状態で現場復帰かよ。タフだな。女神って。


エクセレントの携帯が鳴る。

胸元から携帯を取り出すエクセレント。待ち受け画面は自分のドレス姿だ。

「すみません、ちょっと失礼します。私だ。ああ、なんだと?好き勝手じゃないか?ああ、ああ、分かった。ケインさん達に相談してみる。引き延ばせ。決議の投票は避けるんだ、いいな」

良い内容ではないな。


「アルテミスからの連絡です。試験導入がカモミールになったとのことです」

まぁ、当然と言えば当然だ。既にレンタル実績もある。

「しかし、ここまで好き勝手にされると・・ヴィーナスとしては、意地でも妨害したくなります」

「体裁もあるぞ。別の方法でやり返せばいいぞ」

にこやかにアリスが言う。

奥さんも気が付いているようだ。逆転の一手がある。


「まず、権限を議会が持つようにしてくれ。レンタルと、補助の許可は議会が承認するだ。

そして、勇者のレンタルには、勇者の同意が必要だ。しかし、正当な理由のない場合は、断れないものとする。これを、ごり押しして欲しい」

「はい。しかしこれだけで宜しいのでしょうか?母の一言で、すべて却下もできますが」

「リリスの思惑はともかく、言ってることは正しいぞ。余り強引なことはしない方がいいぞ。ここは敵の策に乗ったうえで、後の先を取りに行くぞ」

「分かりました、この程度なら楽勝です。早速アルテミスにやらせます」



「エク姉様。いらしていたんですね」

「シータ、ご苦労だったな。明日、ティナが生きていれば復帰する」

さらっと物騒なことを言った。

「姉さまが復帰、ですか?では、私は」

「また見習い女神として、天界で四天王の雑務に励んでくれ」

「・・・あの!私、もう少しここで」

シータは戻りたくないようだ。

「しかし、神殿はティナに返さないと、それが女神のルールだ」

「くくくくく・・・大丈夫だぞ。権限はこっち側だぞ」

そうだ。敵の策を逆に利用してやる。


「カモミールの女神はシータで良いぞ。見習い故に補助が必要だぞ。優秀な女神が補助につくぞ」

「あ!」

「シータの補助にティナが付く。補助制度の有効利用だ」

「で、私たちの世界は、魔界の刺客の攻撃を受けてるぞ。今は動けないぞ」

「あ!!」

「自分たちの世界が攻撃を受けている訳だ。これは、断る正当な理由に成る」

「皆さん、悪だくみがリリスの上を行ってます」

悪だくみとか言うな。

「自分が仕掛けた攻撃で、自分の目論見が崩れるぞ。悔しがる姿が見たいぞ」

「早速手配します。制度を通されたときは、どうしようかと思いましたが、見事な返し技です」

丁度手駒がぴったりの綺麗な詰めだ。


「あの、私、ここに居ても良いのですか?」

シータは状況を知らない。

「シータ、当分はカモミールで女神として、ケインさん達の力になりなさい。補助にティナを付けるので、安心して励むといい」

「良かったぞ。当分シータと一緒だぞ」

「嬉しいよ!仲良くできるよね」

「女神が二人も。カモミールは安泰ですわ」

だな。今度こそハッピーエンドだ。



「まだ終わらない。アトランが大変」

ターナ?

「アトランがどうしただぞ」

「勇者よ、アトランで魔王を倒した後、アイテムがドロップされていたようだ」

「なんだと!」

「ハンター沢山来た」

エクセレント?どうなっている?

「今確認しています。少しお待ちください」

連絡中だった。


「魔界のアイテムなので管轄が違うため、確認が遅れてしまいました。

確かに4つのアイテムがドロップされています。内容は現在調査中です」

女神より先に情報が漏れるなんて。

「全世界放送のせいだぞ。アイテムハンターたちは、魔王の討伐よりアイテムの方を見ているぞ。迂闊だったぞ」

3000年居座った魔王だ。アイテムも強力な可能性が高い。

「速やかに回収するべきです。ケインさん!レンタルお願いします」

分かった。回収班を結成しよう。


「ママとアリッサ、レナ、セレスは残るぞ。ケインと私、マオとターナ、ハウル、セイレーンで行くぞ」

回収が目的だ。ハンターたちが居るが、大規模戦闘にはならないだろう。

妥当な人選だ。

「シータも行くぞ」

「私もですか?」

「初陣だぞ。勇者チームでの初陣だぞ」

「はい!」

アズサには待機指令を出し、俺たちはアトランへ向かった。


ーーーーノスフェラトゥーーーーー

「急に呼び出して済まなかったね」

デスクに座るノスフェラトゥ。横には秘書のレイラが立っていた。

「どうした?聖剣か?」

「先日ケイン君が倒した魔王。どうやらアイテムをドロップしていたようなんだ」

「魔王軍のお宝?あら、興味あるわね。高価なアイテムなの?」

セシルは食いついた。

「いいえ、中身は確認されていません。七魔将軍が倒された際にドロップされた模様で、現在水深300m~400mの海底に4つ確認されています」

秘書のレイラが資料を読み上げる。


「400m。きついな。深海ではゲートは使えんからな」

「潜水艇でもないと無理よ。用意できる?」

「普通なら、そうだろうね。でもケイン君達なら取って来れるとは思わないかい?」

「セイレーンか?」

「奪え。と言うの?せっかく友好を築いて居るのに?」

「彼らも、その辺りはドライだろうからね。友好には傷はつかないと思うよ。それに、遣りあってみたくないかね?」

ノスフェラトゥは、優しい笑みを浮かべていた。


「なるほどな。中身もわからないアイテムで、あんたが取りに行けと言うのも変だと思った」

「そうね、カモミールではないし、私たちもお仕事だと分かれば、お互いドライになれるわね」

「絶好の機会だと思うよ」

「ああ、この仕事受けよう」

「坊やと本気の戦い。悪くないわ。いつもの茶番には飽きていたの」

パルムとセシルが参戦した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「うぁぁぁぁだぞ。うじゃうじゃいるぞ」

凄い数のハンターたちだ。海を埋め尽くしている。

アイテムは水深400m程の所に有るらしい。装備なしでは無理だから、動けないでいるようだ。

「アトランへのルートを遮断しましたが、私の力では防壁が弱くて、大量に入られてしまいました」

ルーンがベソをかきながら報告した。

  「君たちは不法入国です。直ちに退去してください」

アトランの防衛隊が、ハンターたちの周りで退去を訴えるが、だれも聞き入れない。


ハンターとは、勇者不在のチームが殆どだ。

依頼を受けて動く奴ら、独自に宝物やアイテムを手に入れては売りさばく奴ら。

無許可で成れる上、自分ルールで動ける。

国や女神のお抱えチームとは違い、一般的には無法者の集まりだ。


「どうするぞケイン?セイレーンを潜らせるにしても、あいつら邪魔だぞ」

だな。遠くから潜らせて、波が立たないように取りに行かせるか?

「アリス絶対零度で凍らせる」

いやいや。それじゃ可哀そうだ。

「ターナ様の作戦に賛成です。問題ありません。彼らは法を犯しています。撤退命令にも従っていません」

「女神様にしては~過激だね~」

ルーンも過激だ。ターナを信心するから、影響を受けている。

「のんびりしてると、潜水艇を用意されちゃうぞ」

だな。


海の表面が白くなる。冷気だ。アリス?

「違うぞ、私じゃないぞ」

海上に居たハンターたちが凍り付いた。

「ケイン!あれ!」

ターナが、岬を指さす。ハウルとセシルだ。俺達を見ていた。

「あいつらも、お宝狙いだぞ」

ああ、そのようだな。

「これは一戦~避けられそうにないよね~」

「ケイン、戦力が足らないわ。正面からは無理よ」

マオとピーも分かっていた。

今回はカモミールで第2、第4火曜日にやっている、茶番戦闘ではない。

奴らはプロとして仕事で来ている。本気の戦闘になる。


「セイレーンを潜らせてアイテムを回収させるぞ」

だがセイレーンは攻撃できない。パルムたちを敵と認識が出来ないからな。

「撃てる奴を呼ぶ」

ん?

「マジンターナ!ゴーーーー」

台地が揺れた!神殿が崩れる!中からターナ像が歩き出す!

魔道エンジン搭載。守護神!マジンターナだ!


「ターナ殿!出撃するなら言うでござるよ。危なくスタッフが神殿の下敷きでござる」

発進通路の確保はしなかったんだ?

駆け付けたトーレフが、ターナに文句を言うが、ターナは聞いてはいない。

「行けマジンターナ!敵を倒せ」

まだ頭部が完成していない。今回は乗り込まず地上からリモコン操作に成る。

マジンターナはハウルたちに向かって、ミサイル攻撃を始めた。


「ちょっとあれ!巨大ロボよ!巨大ロボ!」

セシルは目を輝かせていた。

「落ち着け。ミサイルを避けるぞ」

「キャーキャー!巨大ロボよ!!」

どうやら、巨大ロボに目が無い様だ。

「絶対防壁!展開だ」

ミサイル攻撃を防壁で凌ぐ。

「マジンターナおっぱいミサイル」

大型のミサイルがハウルたちを襲う。

「くそ!デカいな。絶対防壁!多重展開!耐えろ!」

大型のミサイル攻撃も堪えられた。

「おい、紫炎竜だ!奴を攻撃しろ」

「何で?なんで私が巨大ロボと戦わないといけないの?」

「くそ!こうなったセシルは使えん!氷弾!」


氷の塊が高速でマジンターナに当る。

ガン!ガン!と音を立てるが、装甲は傷一つない。

「当然でござる。物理攻撃には滅法強いでござるよ」

トーレフがドヤ顔をしたような気がする。ワニの表情は分からない。

「それって、魔法には滅法弱いって落ちじゃないかだぞ?」

「各種魔法耐性付けてる」

マジか?使えるんでね?


マジンターナビーム!マジンターナハリケーン!マジンターナファイヤー!

連撃で、ハウルたちは防戦一方だ。

「これって、もしかすると、もしかするぞ」

ああ、奴らを追い詰めている。攻撃が来ない。一撃でも当たれば倒せるぞ。

「打ち止めでござる」

なに?

「燃料切れた。もう動かない」

こんな落ちかよ。


「マスター、ケインさん、アイテム4つ回収しました。これより浮上します」

セイレーンから回収完了の報告が来た。

「やはり私たちで戦うしかないぞ」

ああ、魔王を倒した俺達だ。やすやす負けはしない。全力で行くぞ。

「ケイン~作戦お願いだよね~」

「シータとルーンは後方待機!支援してくれ。アリス、いきなり行くぞ。絶対零度だ。マオは毒霧で奴らの動きを封じるんだ」

「分かったぞ開始直後にぶっ放すぞ」

「了解だよね~」


ハウルたちと本気の戦いが始まる。

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