ループワールド・勇者ケイン編 57
「青コーナー!天界所属、115ポンド1/2見習い女神シータぁぁぁ」
王都民、魔獣民が集められた、ここ神殿前の大広場では、シータとターナの女神対決が始まろうとしていた。
「赤コーナー!カモミール所属、116ポンド1/4勇者チームぅぅターナぁぁぁぁぁ」
レフリーは、女神に大きな影響力と権限を持つ、エクセレントだ。
互いにガウンを着てリングに上がる。
ターナのセコンドは、ハウル。
シータのセコンドには、俺とアリスが付く。
「いいか?お互いに美と英知、品格と好感度で、正々堂々と戦うんだ。凶器の使用とバッティングは禁止だ」
エクセレントがリング中央で、二人に説明する。
「解説は、私セイレーンとルピ、ルカです。いよいよ始まりました。女神対決。勝者が、ここカモミールの神殿を手にします。悲願の女神となれるか?ターナさん。姉の神殿を守り切れるのか?シータ様。両雄、譲れない戦いです。さぁゴングです!」
「ここでシータがターナに勝って、大規模宴会をするぞ。美味しいものに対する考え方も変えてやるぞ。旨いものの味を叩き込むぞ」
良いな。シータが来てから、一番豪華なおかずが、シシャモの尻尾だった。
良い策だアリス。
「まぁ既に、宴会の準備も出来ているぞ。超豪華だぞ」
さっさと終わらせて、宴会をやろう。
「さぁ、シータ様。ガウンを脱ぎます!
おおおおおお!!これは眩しいです。目のセンサーが焼き焦げそうな位の後光です」
「マオブランド特製の女神専用勝負服だぞ。今のシータは大女神クラスの見た目があるぞ」
「皆さん、シータ様が凄い美しさ」
「皆さん、シータ様から溢れんばかりの信頼感です」
「解説のルピ、ルカも、大絶賛です。これは勝負ありか?
続いてターナさんが、ガウンを脱ぎ・・・おおおおおおお、これまたすごい後光です。まるでターナさんが女神のようです。拝みたい欲求が押し寄せます」
『!?』
「ターナの奴、本気で勝ちに来てるぞ。作戦と違うぞ」
「私が、ただ負けると思うか?」
リング上のターナの目が、語っている。
「なにバカやってるぞ。作戦通りに負けるぞ」
リング下から、アリスが目で訴える。
「嫌。私女神に成る」
「女神は、アトランでなるぞ。ティナの神殿を奪うつもりかだぞ」
「今の私、ティナにも勝てる」
激しい攻防が繰り広げられていた。
「おかしいぞ、ターナの衣装は、ツルさん衣装のはずだぞ」
「明らかにあれは、女神専用の衣装だ。色々な加護が付いている。どんな動きでも、パンツは見えない加護。絶対ずれ落ちない肩紐の加護。汗でシルエットが変わらない加護。あれは女神専用衣装だ」
「ここで、1R目の集計がなされます。王都民、魔獣民の方は、青か赤のカードを上げてください。青シータ様、赤はターナ様です」
「不味いぞケイン!セイレーンもターナに様を付けたぞ。ターナのメガ魅力が上回ってるぞ」
メガ魅力か、上手い表現だ。
「王都野鳥の会の皆さん、カウントをお願いします」
「おかしいぞ、確かにターナの魅力は凄いぞ。でもあの衣装は何処から手に入れたんだぞ?」
「買ったんじゃないか?」
「ないぞ。女神専用勝負衣装は、読み方が分からない位の値が付くぞ」
だとしたら?どうやって?
「集計結果の発表だ。青シータ16000P 赤ターナさん38000P」
「不味いぞ、想定外の差だぞ。っていうか負けることはシナリオにないぞ」
「大丈夫なのか?あと2Rで巻き返せるんだよな?」
シータが戻ってきた。俯きながら、まるで元気がない。
「やっぱり私では・・・」
「違うぞシータ、あれは衣装の差だぞ。衣装についたパフ効果の差が出たんだぞ」
「あの衣装、エク姉の勝負ドレスです。あんなの着られたら、私では勝てません」
「なんだと!なんでエクセレントが裏切るんだ?」
「ちょっと聞いてくるぞ」
アリスがリングに上がり、エクセレントの元へ行く。
「おっと?アリスさん、レフリーのエクセレント様に詰め寄ります。獲得ポイントに不服でも有るのでしょうか?」
「どういう事だぞ?なんでターナに衣装を貸すぞ?」
「え?いや、ターナさんが必要だから、と言うので、私はてっきりアリスさんの指示だと‥違うんですか?」
赤コーナーのターナが、どや顔でこっちを見ていた。
「やられたぞ。ターナの策に嵌っちまったぞ・・・私のミスだぞ。ターナには、目いっぱい着飾るように指示したぞ。逆手に取られたぞ」
「どうする?策はないのか?」
「保険的に用意したやつを使うぞ。でも微妙だぞ。1Rの差が大きすぎるぞ」
アリスは、カバンからネックレスと腕輪を出して、シータに渡す。
「2R目は、仕草と表情の魅力勝負だぞ。これは可愛さを5000%UPするネックレスと、眩さが5000%UPする腕輪だぞ。これで対抗するぞ」
「昨日教わった、可愛らしい動きと、表情をすれば良いんですね」
「ああ、ターナは笑顔が苦手だぞ。基本可愛い系キャラじゃないぞ。魅力勝負は可愛いいシータが有利だぞ。ここで挽回するぞ」
シータは頷き、リングサイドから出ていく。
「第2Rです。1Rでは立っている姿が美しく、品格のある女神と言うテーマが問われました。結果24000Pの差をつけて、ターナ様が勝利しました。第2Rは仕草と表情、魅力が問われます。シータ様の巻き返しはあるのでしょうか?」
「皆さん、ターナは表情筋が未発達」
「皆さん、ターナは、仕草が単調」
「解説のルピ、ルカは、シータ様有利との予想です。そのシータ様、リングの上を回転しながら移動、小首を傾げた笑顔がまぶしい!会場から拍手!これは期待できます」
「巻き返せるぞ。完璧な笑顔だぞ」
ああ、可愛かった。あの不愛想な女神が、ここまでの笑顔を作るとは。
「さぁターナ様の滅多に見られない笑顔、これは楽しみ・・・・え?
送り出そうとした、セコンドのハウルさんの爪が、ターナさんのドレスの肩口に引っ掛かり、そのままドレスを切り裂いてしまいました!白の下着が、切り裂かれたドレスの間からチラ見えです」
「私の勝負ドレスがぁ!」
エクセレントの悲鳴より、その場にヘタレ込んで、肌を隠したターナの方が、インパクトがある。
「キャ・・テヘ」
棒読みだが、破壊力抜群だ!
「やられたぞ!あいつら、わざとだぞ!」
アリスの叫びは、会場の歓喜にかき消された。
「第2Rの採点です!青シータ16000P 赤ターナさん38000P」
「カモミールが女社会だから、この数字で助かったぞ。ターナに入れたのは魔獣の男たちだぞ」
で?逆転はあるのか?
「ケイン、タオル投げ入れてもいいかだぞ?」
流石のアリスもお手上げだ。
「私の勝負ドレス・・」
落ち込むエクセレント、意気消沈のアリス。
不味い。不味すぎる。トータルでシータは32000Pだ。ターナは76000P。差は44000Pもある。
全体が54000人だ。この差は絶望的だ。
「アリスさん、せっかく色々助けていただいたのに・・私」
「どうするぞ?潔く負けを認めて、降参するかだぞ?」
「いいえ。第3Rは、私の女神としての考えを聞いて頂く戦いです。たとえ負けたとしても、姉から教わった考えを、皆さん伝えられれば・・」
良し!行ってこい。負けは後で考えればいい。今は想いをぶつけてこい。
「そうだぞ。それがいいぞ。・・・私はショックで寝込みそうだぞ」
今回はターナにしてやられた。仲のいい友人だが、ターナなら遣りかねない・・・予想はできたはずだ。アリスのショックもわかる。
「最終ラウンドです!44000Pのビハインド!大逆転はあるのか?シータ様の女神としてのお言葉です」
「皆さん、私はまだ見習に女神です。姉たちのように世界に貢献することはできません。でも、自分でできる事を全力でやって、少しでも世界を良くしたいと思っています」
模範解答だが、心のこもった良い言葉だ。会場からは惜しみの無い拍手が送られた。
「最後にターナ様のお言葉です。既に余裕か?お顔からは、薄っすら笑みも浮かべています。ターナさんどうぞ!」
「信仰するなら、金をくれ」
会場が凍り付いた。
「え?」
「やらかしたぞ」
「やらかしたな」
「えええええ。女神が信者に金品要求です。あり得ません!倫理観の高い私は、こんなこと許せません」
「皆さん、シータ様に未来を」
「皆さん、シータ様に投票をです」
「ルピ、ルカも怒っています。皆さん、投票をどうぞ!」
「青シータ53999P 赤ターナさん1P 最終Pはシータ85999P ターナさん76001P シータの勝ちです!。よって女神神殿は、ティナ様が戻るまでシータ神殿とします」
「チッ!」
ターナの舌打ちが聞こえた。悔しがると言う事は、本気で勝ちに来ていたんだな。
「アリスさん、勝ちました!私、姉の神殿を守れました!」
「当然だぞ。私がバックについた時点で勝ち確定だぞ」
握ってるタオル、隠せよ。
「婿殿!アリス!シータ様!やりましたわ。これは祝賀会ですわね」
「当然だぞ、シータのお祝いだぞ」
「ママ!準備にかかるね」
「あ、あの。祝賀会は物が残らないので、お金は・・・」
「良いか?シータ。お金は貯めるものじゃないぞ。使うものだぞ。預金とかしてる間、眠ってるお金は、読まなくなったエロ本と同じ価値しかないぞ。只そこにあると言うだけだぞ。お金は使って初めて価値が出るぞ」
「そうだよ。祝賀会は嬉しいからやるんだよ。嬉しいにお金を払うんだよ」
「・・・なるほど。確かにそうです。その通りです」
「なら、パーーーーっとやるぞ!」
「はい。パーーーーーっとやってください」
相変わらず乗せるのが上手いな。
「シータ。いい笑顔が出来るようになったじゃないか」
「エク姉様。はい。お金を使うって楽しいです」
「そうか。無駄と思える事でも、実は大事なこともある。金は天下の回り物だ。ヴィーナスの一族は、宵越しの金は持たない。浪費こそ美学だ」
「分かります。私も貯金止めます。定期は解約です。これからは、お洋服や宝石に注ぎ込みます」
「完璧だぞ。完璧な女神に育ったぞ」
良かったのか?悪かったのか?
「エク姉様、このドレス、着てください」
シータは女神の勝負ドレスを、エクセレントに渡した。
「良いのか?シータ。こんな高価なものを」
「はい。私にはまだ早すぎます。エク姉様のドレスは破けてしまいました。代わりにしてください」
やはりいい子だ。
「良し!呑んで食って飲みまくるぞ!大祝賀会の開始だぞ!」
超豪華だ。思わず涙が出る。アズサの気持ちがよく分かった。
「シータ、これ食べるぞ。伊勢海老のチリソース煮だぞ」
「おいしい!」
「これも食べるぞ。フグだぞ。フグ刺しだぞ」
「なんて美味しい!」
「もっと行くぞ。キャビアのてんこ盛りだぞ」
「信じられない美味しさです!」
「これも行っとくぞ」
「・・・げ・・・なんですか、これ?」
「庭に生えていた草のスープだぞ。私たちの、昼ご飯のおかずだぞ」
「・・・・・こんなケチ臭いもの、食べちゃダメですね」
「だぞ」
よし、食事も何とかなりそうだ。
「良く聞くぞ。一生に食べる食事の回数は決まってるぞ。後何回しか食事ができない、と毎日考えながら、人は生きているぞ。1回1回を大事に、悔いの残らないように食べないと、成仏できなくなるぞ」
「私‥皆さんに酷いことを・・」
「分かればいいぞ。予算は何とかなるぞ。足らなければ来年度分から引っ張ってくるぞ。来年が足らなくなったら、再来年分を使えばいいぞ」
「そうですわ。破綻するのは相当先ですわ。何とかなりますわ」
「ママ!私に負債を残してもいいよ。私も子供に残してあげるから」
まぁ、マオが居るから、財政はザルでも安泰だ。
だよな?
「そだね~お金使う事で~みんなが幸せになるんだから~使うよね~」
またまたハッピーエンドだ。
では無かった。今回の一件が、思わぬ事件へと発展した。




