ループワールド・勇者ケイン編 56
「マオを呼ぶぞ!」
予算が無い俺たちに、美の追求は無理だ。まずは金だ。
「はいよ~~~~」
呼んでいたのか。
「マオ、と言う訳だぞ。頼んだぞ」
と、言う訳って、まだ何も説明してないだろ。
「はいよ~確か~金に糸目はつけるな~だったよね~」
台本通りの流れだが、いまいち演出が甘い。
「ふむふむ~まずは美容院からかな~マオ美容院を~王宮内に開業するよね~」
「な!なんですって!マオ美容院って言えば、予約が取れずに15年待ちの美容院。幻の美容院だわ」
アルテミス、15年は盛りすぎだ。
「カエルでもお姫様にしてくれる、超テク理容師がいるぞ」
王子様か?キスでもするのか?
「でも、お値段が超高いですわ。1回の料金は、数千万ですわ」
「でもカエルがお姫様に成れるんだよ。それだけの価値があるよ」
上手いな、お前ら。
「どうかな~このお値段で~」
お~い、誰か来てくれ~シータが白目をむいて倒れた。
「こ、こんな額・・・」
「負けても良いのかだぞ?嫌ならやめて、ターナに女神をやってもらうぞ」
アリス、怖ぇぇぇ。
「・・・お願いします。貯金はあります。お支払いできます。姉の留守中に、姉の神殿を奪われるわけにはいきません」
「良しだぞ!良い覚悟だぞ。戦うには覚悟がいるぞ。丁度ここに、マオ美容院の割引クーポンがあるぞ。99.99999%OFFだぞ。これを使えば30円でやってもらえるぞ。ラッキーだぞ」
おい。
「お後は~エステだよね~マオ商会専属エステシャンを、王宮に呼ぶからね~」
「な!なんですって!マオエステシャンって言えば、予約が20年待ちの・・以下同文」
「エステして貰えれば、ミイラでも、クレオパトラ級になれるぞ」
「でもお値段が、数千万ですわ」
「ミイラがクレオパトラだよ!安いもんだよ」
「どうかな~このお値段で~」
「シータ、もう後には引けないぞ。美容院で巨額をつぎ込んでいるぞ」
「はい。行きます。エステ代、お支払いします」
「おや~ラッキ~だよね~お客様は10億人目の~お客様で~記念割引受けられるから~利用料が20円だよね~」
そう来たか。
「・・・これが私・・」
アリスから借りたドレスを着たシータは、鏡の前で美しくなった自分と対面した。
「素材がいいぞ。少し磨いただけだぞ」
「これで、姉の神殿は守れるでしょうか?」
「これだけ綺麗になれば、勝てるぞ。ターナなんか楽勝だぞ」
シータの初笑顔だ。
「お~ほほほ。まるで甘い」
ターナのセリフは棒読みだが、普段からなので違和感が無い。
「これを着た私に勝てるかな?」
なんだと!後光が!まるで大女神クラスだ。
「ターナ!それは、まさかだぞ。幻の、おツルちゃんの織った反物から作ったドレスだぞ?」
幻の後が長い。長い上に説明に成ってない。
「鶴の恩返しですわ。おツルちゃんが自らの羽で織ったという、幻のアイテムですわ」
なるほど、少しわかった。
「羽毛で作ったドレスだね!珍しい奴だよ」
この際、出どころとかは必要ないから、アリッサのセリフで十分だ。
「軽い。そして暖かい」
ターナはくるりと回転して見せた。
「不味いぞ、あんなレアアイテム使われたら、シータが負けちゃうぞ」
「アリスさん、私・・・」
「神殿は私の物。さらば」
ターナとハウルは戻っていく。
おーーいハウル。後光用の投光器!まぶしいから持って帰れよ。
「こうなったら金の力で戦力を買うぞ。覚悟は良いかだぞ?」
まるでネットゲームだ。
「お金の力・・・」
「躊躇するなだぞ。ティナの神殿を守るためだぞ」
「あ!はい。ご指導お願いします」
勝ったな。
「ああだぞ」
「マオ!マオは居るかだぞ!」
「はいよ~お呼びとあらば即参上だよね~」
「マオブランドのドレスが欲しいぞ。宝石類もだぞ」
「マオブランドのドレス、宝石ですって!色んな特殊効果が織り込まれた、超高級ブランドよ。大陸が買えちゃうほど高価なのよ」
アルテミスの言葉通り、マオブランドの宝石、衣類は、格別に高価だ。
「マオブランド店を~オープンさせるよね~」
「よし、シータ、これで勝てるぞ。マオブランドなら、ツルブランドに負けないぞ」
「あ、はい」
「王宮の1階に~オープンさせたよ~」
はや。
「当然だぞ、2日前には改装が済んでいるぞ」
くどいようだが、これはアリスのシナリオだ。すべて用意された出来レースだ。
「ううう‥流石にマオブランドは凄いですわ。見てるだけでレベルが上がりますわ」
店内は光に包まれていた。輝く商品を見ているだけでレベルが上がる。
「ケインは外に出てるぞ!マイナスレベルが、さらに低くなるぞ」
俺のレベルはマイナス360だ。今、マイナス380になった。外で待ってる。
「さぁ、とくとご覧あれだよね~当ブランド自信の一品は~こちらだよ~」
『美しさ3000%UP 清楚感5000%UP 好感度7000%UP 女神ランク+15(期間限定)効果付き、女神専用フリーサイズ、勝負ドレス』
「これ、私が欲しいわ。女神ランク+15よ。私も大女神に成れるわよ」
「マオの勧めだぞ。これを着てみるぞ」
「はい。試着します」
外に出ている俺は、中から聞こえる声しか聞こえない。
「着てみました…どうでしょうか?」
「うぉぉぉだぞ。眩しくて直視できないぞ」
「ですわ!まるでエクセレント様ですわ」
「太陽観測用メガネが無いと、見えないよ」
「いい感じだよね~サイズもぴったりだよ~」
「よし、これにするぞ。マオ、幾らだぞ?」
「ほい~毎度だよね~お値段はこちらだよ~」
30000000000000000円
「丸が多すぎて読めないぞ」
「こ、こんなお金・・わたし・・」
「マオ、この裏地の此処、少し解れてるぞ」
「あら、本当ですわ。裏側とは言え、これはブランドの価値が下がりますわ」
「そうだよ!安くして」
「あらららだよね~10円でいいよ~」
「買った!私が買ったわ!これは私のモノよ!」
「アルテミス、何マジになってるぞ。目が血走ってるぞ」
「後は宝石だぞ。宝石を付けることで、戦力大幅アップだぞ」
「ほいほい~宝石は向こうだよ~ワゴンに載ってるのは、お買い得だよ~」
「効果の付いた宝石を選ぶぞ。これなんかいいぞ」
『信頼感1500%UP 女神専用指輪』
「これも良いですわ。魅力的ですわ」
『優越感2000%UP ナルシスト用腕輪』
「私、これがいいと思うよ」
『存在感5000%UP 影の薄い人用ネックレス」
「私、信頼感UPにします。少しでも頼られる女神に成りたい・・」
「まいどぉ~50000000000円だよね~」
「また、丸が一杯だぞ。マオ、少し安くするぞ」
「ん~~~~~じゃ5円でいいよ~」
「パパが居ないと突っ込む人がいないから、困るよ」
「ですわ・・・」
お?出て来たか。箱を持ってるから、買い物はできたようだな。
「どうだ?良いのは買えたか?」
「ばっちりだぞ。これでターナに勝てるぞ」
俺達は夜を迎える。
「シータ、少し作戦を考えるぞ。電気使うぞ」
「あ、はい。冷房もどうぞ。お夜食が必要ですね」
大分柔軟になったな。成功じゃね?
「まだだぞ。まだ普通のレベルだぞ。これから、怠惰の道を歩ませるぞ」
いや、これで良くね?
「くくくくく・・・甘いぞ。ケインに質素なものを食わせた恨みは、まだ晴らしていないぞ」
思い出した。これは反撃だった。
「シータ様、お買い物はいかがでした?」
「ハイ・・あの‥初めてこんな高価なものを買いました。母や姉から頂いたことはありましたが、自分で買うのは初めてでした」
来た時の、ぼさぼさ髪と不愛想さは、影もない。
基本良い子なんだ。
ぶっ飛んだ姉たちの居る環境が、反面教師になって、堅物になったようだな。
「買い物は楽しいぞ」
「でも浪費は・・」
「浪費ではないぞ。買い物をする時間は楽しく過ごせるぞ。それも価値の一部だぞ。それに買い物は物が残るぞ。今、役に立たなくても、安くて徳だと思ったときは、爆買いするぞ」
「ああ、確かに。買い物の時間も、価格の一部なんですね」
一理ある。アリスの凄い所は、めちゃくちゃな割に、理に適っているところだ。
「こんばんわだね~特別商品を持って来たよ~」
マオとピーが来た。
「ケイン、聞いたわよ。思いっきりサービスするからね」
ピーからのテレパシーが届いた。
「売れ残りだけどさ~格安でいかがかな~」
ワゴンに乗せられた多数の皿。皿の上には宝石やイヤリングなど、多数の装飾品が、1個ずつ乗せられていた。
「無地の皿は1皿100円だよね~絵皿は200円かな~金の皿は500円だね~」
回転ずしか?
「中々安いぞ。シータ欲しいのがあれば買うぞ」
「でも、さっき一杯買ったから、私は」
「マオさん!これ1人何枚って制限あるの?」
「ないよ~好きなだけいいよ~」
「私も良いですわね?買いますわ!こんなお得、逃がしませんわ」
「私も欲しいよ!買うよ!お小遣い放出だよ」
まぁ、この安さなら、好きなだけ買うと良い。
「ほらシータ、ケダモノが群がって来たぞ。早く買わないと無くなるぞ」
「でも・・・」
「宝石は消えてなくならないぞ。資産として残るぞ。持ってて損はないぞ」
「あ、そっか。資産として残りますね。買います!」
食いついた。いや、食いつかせたと言うべきだ。
ワゴンの皿は、あっという間に消え失せる。
アルテミスが鬼の形相で、皿を取りまくっていた。
まぁ、宝石とは言え、しょせんは石だ。砥石と大して変わらん。
俺から見れば、金の皿1枚500円でも高い気がする。
「ケイン、何考えてるの?金の皿、他で買えば500万よ」
なんだと!?あの小さな石が500万だと?
「男って駄目よね・・」
鳥さんに呆れられた。
「マオ、お変わりだぞ。お変わりはないかだぞ?」
「あるよ~何がいいかな?ここからは注文販売だよ~」
「私ダイヤモンド!大粒で!」
アルテミス、目的を忘れるなよ。
「ヘイ~お待ちだよね~。ダイヤ大粒1皿~ちょい高いから下駄で出すよ~」
「板さん!私にも大粒ルビー2皿」
「はいよ~。今日は削りたてのサファイヤがお得だよ~」
「私もサファイヤ2色盛を1皿だぞ」
「マオさん、私には玄武岩1皿お願い」
回転寿司だ。
「さぁ、シータも頼むぞ。好きなのを頼んで大いに買うぞ」
「はい。では、ダイヤでお願いします。それと、ルビーとオパールも。全部大粒で」
出遅れていたシータの横にも、皿が積み重なる。
アリスの皿を見ると、同じものを注文したり、楽しそうに買い物をしていた。
これで浪費も覚えたはずだ。買うことの楽しさを覚えれば、金使いも荒くなっていく。
欲しいモノを我慢できなくなる。
今まで抑えて来た物欲が崩れれば、他も必然的に緩くなる。
これで立派な女神だ。
立派・・・だよな。




