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残念世界の残念勇者   作者: XT
51/96

ループワールド・勇者ケイン編 51

俺達は、魔王に苦しめられている世界「アトラン」に来た。

この世界を守護する女神「ルーン」の神殿だ。

人々は、ルーン像に向かい膝間ずき、祈りを捧げていた。


「ルーン!ルーンは居るか?」

共に来たリリスが、女神ルーンを呼び出す。

「リリス様」

ゲートの中から女神。ティナより背は低いが、やはり美人だ。

ルーンはリリスの前に膝間ずく。

「夜逃げをした勇者は、まだ見つからないのか?」

リリスの問いに、答えずらそうにルーンは言う。

「申し訳ありません。全力で探しましたが、いまだ行方は・・・」

「勇者が夜逃げって、教育がなってないぞ」

アリスの言葉に、ルーンはキツイ目で睨み返す。

「リリス様、この方たちは?女神である私が膝間ずいて居るのに、なぜ上から見下しているのでしょうか?」

まぁ普通の女神なら、普通に言うな。

「ルーン、この方達は、夜逃げした勇者に変わって、魔王を退治してくださる勇者チームの皆さんだ」

ルーンは立ち上がる。

「貴方達が?私が手塩に育てた勇者ですら、逃げ出したというのに?貴方たちで倒す?」

高飛車なのは、女神特有のものだ。

が、不気味な笑みをみせるアリスが、黙っているはずがない。


「ウププだぞ。手塩が逃げるはずだぞ。手伝いに来た相手に対しての、礼儀も知らない女神だぞ」

予想以上だ。

「ハウル。女神の肉、食いたくないか?」

もう一人、黙ってない奴がいた。

もはやこれは、収拾がつかないレベルの返しだ。

「貴女達!女神に対して言う言葉がそれ・・」

「よせルーン!」

リリスが止めるが、ルーンは大層お怒りだ。

「神の加護で焼き尽くしてあげます!貴女達を魔王の生贄に差し出し、世界を守ります」

「氷の魔法で凍らせてやるぞ!女神の氷漬けなら、魔王も喜んでもらってくれるぞ」

アリス!まさかここで絶対零度を使うつもりか?

「ハウル食え。私、こいつの代わりに、ここで女神遣る」

目が本気だ。


「双方!そこまで!」

!?

ゲートから、エクセレントだ。

「!?大女神エクセレント様!」

俺達を膝間ついて見ていた民衆たちは、頬を地べたに擦り付けて、床に大の字にひれ伏した。

「さらに低くなったぞ」

世間的には、この対応で正解だ。

「あなた達!なにをしているのですか?早くひれ伏しなさい!この方は、大女神中の大女神、エクセレント様です。頭が高すぎます」

民衆と同様に、頬を地べたに擦り付けたルーンが、厳しい口調で俺たちに言った。

「知ってるぞ。ティナの姉だぞ」

アリスはドヤ顔だった。


「リリス!なんてことを!魔王討伐の依頼には、最低1年の準備期間を設ける決まりです。しかも担当の許可なく行うとは、犯罪レベルです!」

エクセレントの怒りに、リリスは携帯電話のバイブレーションのごとくブルっていた。

「まぁまぁ、エクセレント様。魔王の苦しみを知る、私たちですわ」

「困ってるなら~助けてあげないとだよね~」

「そうだよ!女神は気に入らないけど、民衆は助けてあげるべきだよ」

と、メンバーが申しております。

「皆さん・・」

エクセレントは、俺たちの方に来て、小声で話し出した。


「アトランの魔王は、3000年間討伐に至っていません。強大な魔王に加え、魔王の手下、七魔将軍が率いる、3000万の魔王軍が居ます。この世界は、魔王を育てすぎました。パルム達ですら、魔王討伐を断念した世界です」

魔王+3000万か。

「そんなことだと思っていたぞ。やはりリリスは黒だぞ」

だな。魔王に俺たちを殺させるつもりか。

「でも良いぞ。ここで名を売れば、刺客も居なくなるぞ」

なるほど、俺たちの強さを示せば、簡単に刺客は雇えなくなるか?

「エクセレント、私たちで魔王討伐はやるぞ。任せるだぞ」

奥さんには策があるようだ。


「リリス!貴様の罪は、ケインさん達の恩情で、見逃してやる!ケインさん達を拝むがいい!」

リリスに拝まれた。

「しかし、規約違反の罰で、当分の間、女神食堂でのフォークの使用は禁止だ!スパは箸で食べろ」

どこかの炎上CM動画みたいだ。


「分かりました。皆さんがやってくださるなら、お願いします。私も協力させていただきます」

大女神が手伝ってくれるなら、大助かりだ。

「ありがたいぞ。でも、勝手に手は出さないでほしいぞ。これはケインの強さを見せる戦いだぞ」

奥さん、何としてもか。まぁ言い出したら聞かないし、横に立っててもらうだけでも箔が付く。


「手塩が夜逃げ女神だぞ。魔王の資料が欲しいぞ」

「は、は、はははははははい」

力関係が構築された。もはやルーンは、アリスの下僕と化した。

「で、では、わたしはこれで」

リリスが逃げたがっていた。

「ティナに宜しく伝えるぞ。私はすべて知っているぞ」

アリスの笑顔。こえぇぇぇぇぇ。

逃げるようにリリスは去って行った。これで少しは大人しくなるか?


「こ、こ、ここここれが資料ですアリス様」

アリスにひれ伏したルーンが、資料を手渡す。相当な量だ。

「私が読もう」

レナが速読機能で資料に目を通す。

「なるほどな。パルスねぇさん、今情報を送った。策を立ててくれ」

レナから情報を受け取ると、パルスが一言。

「無理」


「相変わらず投げるのが早いぞ」

「ワシらの思考は、お前達の1億倍じゃ。超高速演算で答えを出しておる。この一瞬で、8億通りの戦術を検証したが、わしらに勝ち目などない」

ポンコツ軍師が自信満々に無理宣言だ。

「確かに3000万の軍勢は、しんどそうだぞ。でも、何とかなるぞ。私が指揮を執るぞ。全世界放送だぞ。堂々としてるぞ」

見栄えは良いな。大女神が居るからな。

「そだね~まだ時間があれば~お化粧とか~しておこうかね~」

「すっぴん美人の私、必要ない」

「私はするよ!ママと同じ顔だと区別がつかないから、名札も用意するから」

「私はエステに行く時間があれば、行きたいですわ」

流石に俺のチームだ。余裕だ。


「資料によると、魔王出現日時は決まっているようだ。現地時間で6時間後。それまでは自由行動とする。再集合は5時間30分後で良いな?」

「良いぞ。映りばえを良くしておくぞ。戦いの後のインタビューの答えも考えておくといいぞ」

よし、解散だ。

「あ、ああの」

ルーンが恐る恐る訪ねて来た。

「対魔王作戦とか、考えなくてもよろしいのでしょうか?」

「私も、魔王出現までの僅かな時間は、有効に使うべきではないかと」

ルーンとエクセレントは同じ意見だ。

「必要ないぞ、ここに来るまでに、策は立ててあるぞ」

嫁は観光マップを読みながら答えた。



「ハウル、温泉行く」

「妻よ。私は一度、着物の帯を引っ張る、アレーーーーーをやってみたい」

「良い。私もやられてみたい」


「レナよ、本屋じゃ、本屋周りをするぞ」

「ああ、ねぇさん分かっている。トーレフへの土産も買わないとな」

「腐った本を買い漁るのじゃ」


「私はエステに行きたいわ。やはり美容よね」

「良いですわね。アリッサちゃん、女を磨きに行きますわよ」

「うん!行くよ。でも機械族のセレスがエステって、効果あるの?」

「私も行くデス。体中をモミモミされるのは気持ちがいいデス」


セイレーンたちは、違う星の海が興味あると、海に潜っている。

各自それぞれが、好きなことをして過ごした。

俺とアリスとマオ、アズサは、街の料理店へ来た。

「この店だぞ。観光マップによると、この星の最高級料理店だぞ」

良し食うぞ。腹が減ってはだ。


「坊主!こっちだこっち!」

何でパルムが居る?

「坊やたちの雄姿を、拝みに来たのよ」

「TVでは伝わらないものがあるからな。やはり生で見た方がいい」

「生は良いわよ」

セシルも居た。


「相変わらず情報が早いぞ。ソースはエクセレントかだぞ?」

「聞くな。情報元は教えられん」

「まぁ良いじゃない。ここのお料理、美味しいわよ」

はぐらかされたか。まぁ教えてもらえるとは思ってないがな。

「さぁ食うか。ウェイトレスさん、メニューにあるの全部だ」

相変わらず大人注文だな。

「前祝いに私がおごるわ」


料理が出て来た。凄まじい量だ。当然テーブルには並びきらない。

床に並べてある。

「せめて隣のテーブルを使ってほしいぞ。床はないと思うぞ」

「歩くとき~気を付けないとだね~」

それぞれの世界には、それぞれの文化があるからな。

時に信じられないこともアリだ。

ウェイトレスは、空になった皿をかたずけては、床から新しい皿をテーブルに置いていた。

この世界には、ワゴンと言うものが無いのか?


アズサが目を丸くしながらアリスに尋ねた。

「これ!なんという料理ですか?信じられないほど美味しいです」

「それは、ふかひれスープだぞ」

「ふかひれ…では、こっちは?」

「それは、カルボナーラと言うスパゲッティだぞ」

「カルボ・・この赤みがあるのは?」

「お赤飯だぞ。って、ここ何屋だぞ?」

和洋折衷。なんでもあるな。これなんかイナゴの佃煮だ。


「この世界は、細かいことを気にしない世界なのよ」

「カモミールも気にしない大らかさがあるが、ここは徹底している。

100年ごとに魔王に攻められていても、ルーン様ルーン様ってな。みんな神頼みで、自分たちで何とかしようとしない世界だ」

「だから、断ったのかだぞ?」

パルムは箸をおいた。

「人に頼るのは、自分にはできない事だけだ」

「そうよ。自分の道は自分で切り開くのよ。切り開いてもらってばかりでは、人は成長しないわ」

「なるほど!確かにそうです。私も同じ意見です」

だな。だが考え方は人それぞれだ。

「魔王の相手は、勇者の仕事だ。それを放棄したのは良いのか?」

「放棄したのはエクセレントだ」

なに?

「私たちはやると言ったのよ。でもエクセレントがね、今は必要ではないと、私たちを止めたのよ」

どういう事だ?

「分からん。答えを聞く前に、俺たちは袂を分かちあったからな」

「ケイン、どいう事かだぞ?」

俺にもわからん。どちらかが嘘を言ってる。

俺には、パルムが嘘を付く理由が思い当たらない。

が、エクセレントが嘘を言う必要性も・・・ないはずだ。

またエクセレントの疑惑の行動だ。が、今は問い詰める時期ではない。

保留!


「坊主、魔王は倒せそうか?」

またその質問か。

「今回はアリスが作戦参謀だ。アリスに任せてある」

「魔王は強敵よ。3000万の軍勢も侮れない。私たちは近くに居るからね」

「援軍を求めるのは恥ではない。いざと言うときは声をかけろ」

何時も助けてくれるな。

「実はな、坊主、いやケイン、お前は…」

「さぁ!残りも食べましょう!味変で辛くしてみたわ」

って、おい!セシル。その黒い唐辛子って、まさか?

「悪魔の辛さよ。さぁ召し上がれ~~」

パルムが何か言いかけた。少し気になったが、パルムは話を続けなかった。


「ケイン、そろそろ魔王退治の時間だぞ」

行くか?

「おおだよね~」

「アズサ!行きます」

俺達はパルムと別れた。皆の待つ集合場所へ向かう。

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