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残念世界の残念勇者   作者: XT
50/96

ループワールド・勇者ケイン編 50

ーーー天界 悪だくみルームーーー

「おい、ギルバ。簡単にやられたではないか?」

目論見が狂い、慌てた様子でリリスはギルバに詰め寄った。

「やっぱさ、激安チームはダメなんだよ。もっとちゃんとしたの雇わないとさ」

予想通り、的な顔つきでポテチを口に運びながら、ギルバは答える。

「女神は、世間が思うほど高給取りではない。探せ!安くて、強くて、無名なチームを」

「無茶言うよね・・・」

ーーーーーーーーーーー

魔界闇戦隊は、ギルバの雇ったチームだった。

ギルバとリリスは、ドワーフ他、守護者と呼ばれる者達が守る「聖杯」と「起源の水」を狙っている。



ーーーノスフェラトゥ商会。会議室ーーー

「どうかね?ケイン君たちとの交流は?」

いかにも高そうなコーヒーカップを口に、ノスヘラトゥは二人に問う。

「ああ、順調だ。月2回だが、中々濃い交流をしている」

屈強な体と、力強い髭を蓄えた男、パルムは答える。

「あの子たちも強くなってきたわよ」

パルムの妻、セシル。妖艶なほどの美しさと、洗礼された動きには、品の高さが伺える。

「そうか、では、そろそろ私も会いに行くとするかな?」

「なら俺たちも同行しよう」

「いや、私だけで十分だよ。君たちは傭兵だからね。商談の場にはふさわしくないさ」

「あら残念。坊や会える機会が1回減ったわ」

「そろそろ関係を明かしても、良いのではないかね?」

「だな。機会があれば、言うさ」

「そうね。もう、頃合いよね」

ーーーーーーーーーーーー

聖剣九重を狙うノスフェラトゥ。

傭兵として雇われている、パルムとセシル。

ノスヘラトゥはケインを高く評価し、自分の仲間にしたいと考えているため、強硬な手段には出ない。

また、パルムとセシルは歴代勇者ランク3位の実力チーム。

ケインの両親である。



ーーー天界 ビーナス家ーーー

「おかぁ様、ティナが回復したようです。ケインさん達がボラギノー草を取ってきてくれました」

大女神エクセレント。ヴィーナス家長女にして、全女神の頂点より少し下に立つ者。

「そうですか。流石はケインさん達ですね」

ヴィーナス。唯一エクセレントの上に立つ者。

「魔王を倒し、ステージは進みました。なんとしても、この周回で時間を元に戻さなくては」

「今回は、多くの人を巻き込んでいます。ループワールドから抜け出さないと、被害が広がってしまいます。事は慎重に」

「はい」

ーーーーーーーーーーーーー

カモミールは、時間が繰り返されるループワールドに陥っていた。

原因は不明。

アイリスの魔法の暴走で始まり、1200年前に歴史は巻き戻され、同じ歴史を繰り返す。

ケインたちは、そのことを知らされていない。





「行くぞ!魔砲!一式弾装填だぞ!照準よし!発射だぞ!」

アリスが覚えた魔法のお披露目だ。

俺とアリッサ、アイリス、マオの前で剣を構え、魔砲を撃つ。

「もう少しだぞ」

構えたまま、魔法の発動を待つアリス。

「ママ、その構えたままの状態じゃないとダメなの?」

「そうだぞ。一度照準を付けると、発動まで動けないぞ」

既に20秒が過ぎているが、アリスは構えたままだ。


「アリス、この魔法は使えない」

アリスの前方で的役のレナが、的確な意見を出す。

「そうね・・発動まで時間がかかりすぎるわ。敵に動かれたら、意味が無いわね」

セレスも同意見だ。

「でも、これだけ発動迄に時間のかかる魔法なら、高位の魔法ですわ」

「そうだね~よほど強力な魔法だよね~」

40秒が過ぎた。まだ発動しない。

「今回は時間がかかってるぞ。試し打ちの時は、もう少し早かったぞ」

少し早くてもな…確かにこれでは使いどころが微妙だ。


「うぁ!びっくりだぞ!」

!!!気を抜いた瞬間、発動した!撃った本人も驚きだ。

剣先から、高速で雹が多数打ち出され、レナ達を襲う。が、それ程、強力ではない。

「私の雹弾のほうが、便利ですわ。即発動しますわ」

「だぞ!変な魔法だぞ。聞いてみるぞ?」

誰にだ?ティナか?

「大賢者、答えるぞ」

よその子を連れて来るな。

  『解』

お前は天の声だ。乗せられるな。

  『魔法に関するお問い合わせ、ご意見は、天界魔法窓口、魔法カスタマーセンターまでお寄せください』

「繋がらないので有名なところだぞ」

おおむねカスタマーセンターは繋がらない。


「アリス、結論から言おう。この魔法が使わない方がいい。発動までが無防備になる上、さほど強力とは思えない」

的になったレナの意見は、もっともだ。

「そうね。それに発動待ちで構えてる姿、滑稽だったわよ」

腹に2発ほど貰い、火花が出ているセレスの、遠慮のない一言だ。

「だぞ・・・」

折角覚えた魔法だが、使ったアリスが一番分かっている。


「後はスキルで絶対零度が使えるようになったぞ。こっちは超強力だぞ」

エクセレントから貰ったスキルだな。

「ママ!私はまだ絶対火炎を使えないよ」

経験を積まないとダメなんだろう。

「私もお尻に何か突っ込めば、使えるかな?」

再度却下。ダメだ。アリッサの人生目標は、まともな女に成ることだ。


「くくく・・・うわさに聞いたカモミールの勇者チームとは、この程度の魔法しか打てぬ半端者だったとはな」

誰だ!

「我は魔界仕事人。花屋の徹」

「同じく仕事人。豆腐屋の秀」

「公務員の主水」

また刺客と言う奴らか?

「パパ!気を付けて、こいつら出来るよ」

ああ、雰囲気から油断ならない気を感じる。

「絶対零度だぞ!」

あ・・・凍った。瞬殺だ。

「ケイン、こっちのスキルは使えるぞ。でも1戦闘で2回までの制約付きだぞ」

刺客、全く眼中になしだな。



「これで2回目だね~やっぱさ~狙われてるんだよね~」

ああ。何者かが意図して、俺たちを狙っている。間違いないな。

「ティナに調べさせるぞ。ティナの仕事だぞ」

そういえば、今日は着てないな?

「ケインさん!」

ゲートが開き、中からティナの上司のリリスが出て来た。

「大変なんです。どうか助けてください」

慌てた様子だ。


「どうしたぞ?リリアン部長が、わざわざ来るとは、どういうことだぞ?ティナはどうしたぞ?」

「リリスです。ティナは今、担当世界の魔法システムのトラブルで、他の世界を見ています」

「部長さんが来ると言う事は~大事件なんだよね~」

「そうです。私の同僚が担当する世界が、滅んでしまいます」

まぁ、落ち着いて話せ。聞くから。

リリスは神妙な顔つきで話し出した。


「まもなく魔王が現れます。しかし勇者は、夜逃げしてしまいました。

このままでは、世界が滅んでしまいます。どうかケインさん達に、魔王の退治をお願いしたいのです」

「夜逃げって、とんでも勇者だぞ」

「それはお困りですわね」

「だが、俺たちの世界も、謎の敵に襲撃を受けている。助けたいのは山々だが、カモミールを開ける訳には・・・」

「それほどのお手間は取らせません。歴代7位の勇者なら、数日で済むはずです」

リリスは食い下がる。

「ケイン、数日なら、私が鍛え上げた軍で、十分持ちこたえられる」

「そうね。敵と言ってもゴキ達と、アリスに瞬殺されるレベルでしょ。鍛え抜いた軍の部隊なら、楽勝よ」

レナ達も、助けたいと考えているようだ。


「パパ、私も助けてあげたいよ」

「ですわね。魔王に苦しめられた私たちには、困っている方の気持ちがよく分かりますわ」

「そだね~助けてあげようよ~」

アリッサもアイリスも、マオも同じ気持ちだ。

「で、その魔王は強いのかだぞ?呪いはかけるかだぞ?」

「いいえ、呪いの類はありません」

「魂にケインの成分は含まれるかだぞ?」

「いいえ、ケインさんの成分は含まれません」

「よし、楽勝だぞ。引き受けても良いぞ」

奥さんも同じ考えだ。


「では、契約書にサインをお願いします。ケインさんは、勇者の貸し出しで、嫌な思いをしていますので、簡潔に書いてきました」

どれどれ?

 『カモミール勇者チームは、魔王との1戦の後に、好きな時カモミールへ戻れる(勝敗不問)。また、魔王が出現しない時は、自己判断で戻れる』

「これなら大丈夫だぞ。サインするぞ」

ああ、OKだ。俺に気を使った、良い契約書だ。

アリスが代表でサインをした。

「では、準備にはどのくらいかかるでしょうか?」

「3時間もあれば十分だぞ。勇者チームは強制参加だぞ。商店街の会合とか、寒いは理由に成らないぞ」

リリスは、手続きがあると戻って行った。

・・・またティナの居ない時か。


「良し!チームを招集してくるぞ」

俺とアリスはゲートを使って、アズサ達、ターナとハウル、引き籠り策士を呼びに行く。


「なぁアリス。去年の魔王軍との戦闘の時に・・」

「気が付いてるぞケイン。またティナが居ないぞ。魔王軍の時は、ティナはリリスに頼まれて出張中だったぞ。今回は、他の世界の魔法システムトラブルだぞ。偶然にしては出来すぎだぞ」

分かってて食いついたのか?

「天界の敵を見定めるためだぞ」

俺達の居ないカモミールに、攻めてくるつもりだよな。

「大丈夫だぞ。勇者チーム以外のツワモノを用意しておくぞ」

流石は俺の奥さんだ。先まで読めている。


「ケイン、今度は何?」

ターナとハウルだ。

ターナは妖精族の族長にして、魔獣王ハウルの妻。

女神ほど美しく、信頼できる仲間だ。

「勇者よ、わしらはイチャイチャ強化月間で忙しいのだ」

ライオンの顔と、熊の体を持つ魔獣王ハウル。

魔獣族3万人の頂点に君臨する、物理的な強さは半端なしの男。

「他世界で魔王退治だぞ。イチャイチャは帰ってきてからするぞ」


「分かりました!魔王アズサ!一命にかけて魔王を退治します」

「OKデス!他世界の魔王がどの程度強いか、興味ありデス」

「よし、後はセイレーンだぞ」

セイレーンも連れて行くのか?

「リリスは強さの部分を伏せているぞ。強いのか?と言う、私の質問をスルーしたぞ。全戦力を持って行った方がいいぞ」

確かにだ。奥さんがまた燃えているが、なにやら企んでいる顔に成っているのは、気のせいだろうか?



久々に勇者チーム全員が揃った。

魔王討伐以来だ。

「よし、説明するぞ!今回の対魔王戦は、全世界にリアルタイム放送するぞ」

なに?

「マオ放送局をキー局に、全宇宙規模だぞ」

って、俺たちの戦いを全世界が見るのか?

「そうだぞ。ケインが気にしてる、姑息勇者の汚名を晴らすぞ」

より姑息になりそうな気がするんだがな?

「今回はマジだぞ。ギャグなしで勝つぞ」

マジか?俺たちにできるのか?

「策は私が立てたぞ。任せるぞ」

パルスは、いらないな。


こうして俺たちは、他世界の魔王との戦いのため、カモミールを離れた。

リリスが敵なら、この間に何か仕掛けてくるはずだ。

アリスが王都へ、ポセイドンと嫌がるドワーフを配置した。

基本世界に関与しない守護者たちを、どうやって説得したかは、謎のままだ。

魔都は、強力な軍が居るから、大丈夫だろうし、何かがあればゲートで戻れる。

取り合えず、他世界の魔王とやらを退治してやる。


ーーーーー天界 悪だくみルームーーーーー

「はっはっは!やっぱり奴ら馬鹿だ。まんまと引っかかったぞ」

高笑いするリリス。

「良い作戦ですね!流石は部長。お金かけて危ない橋を渡るより、確実だね」

ギルバも大絶賛だ。

「あいつらの相手は、3000年間倒せない魔王だ。しかも、魔王の軍勢は3000万は居る。刺客に頼らずとも、魔王と軍勢があいつらを殺してくれるという寸法だ」

「僕的には、高みの見物が出来てうれしいね」

「ああ、ご丁寧に全世界放送と言う事だ。TVを見ながらケインたちの最後を楽しもう」

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