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残念世界の残念勇者   作者: XT
49/96

ループワールド・勇者ケイン編 49

魔都へ来ると、ドワーフが居た。普通にアズサとお茶している。

「あらケイン、お久しぶりね」

お茶を口の運びながら、バニーガールの姿をした南の海の守護者は、俺に笑顔を振りまいた。


「ケインさん、アリスさん、アリッサさん、マオさん、そしてティナ様、よくおいでくださいました」

アズサは、ここ魔都の王、通称魔王だ。

「で?南の海の守護者が、なんでお茶なんだ?」

「暇でね~海岸で踊っていたら、声かけられて以来、まま来ては、お話してるのよ」

「最近他でも、海岸で踊るバニーガールを見たぞ」

旬だからな。


「ケインさん、ドワーフさんは物知りで、たくさんの知識を教えてもらえました」

確かに長生きだ。この宇宙誕生以来から存在してる。

「コンパクトで変身する女の子の話から、転生したスライムの話まで、実に豊富な知識です」

思い出した。アズサはアニメファンだった。

って言うか、世界の生き字引から聞くのが、アニ話かよ・・・。


「で、今日はどのようなご用件で?」

「アズサさん!朗報です!例の病が完治します」

「これを持って来たぞ。ボラギノー草だぞ。一発で治るぞ。治して欲しいかだぞ?」

アリスが悪だくみをした時の顔に成っていた。



アズサの悲鳴。勿論紳士な俺は、部屋の外に居る。

「終わったか?」

ドア越しに尋ねる。

「まだよ。今ねじ込んでる最中」

「もっといい声で泣くぞ。ほらほら奥まで入って行くぞ」

お楽しみ中だった。



「汚されました!でも、全然気になりません」

ボラギノー草の効果だ。

「これ、売ったら儲かりません?」

アズサ、いいとこに気が付いたな。でもダメらしい。

「ダメです。ボラギノー草は、効果が高すぎます。これを販売したら、医薬品メーカーさんが困ってしまいます」

と、いう事だ。地味にリアルな話だが、本音は違う。

女神が治せない痔を、治すことが許せないらしい。



俺達は、たわいもない会話で楽しんでいた。

ティナの昔話、アリスの苦労話、ドワーフの天地創造話。

この平和な時間が、突然奪われる。

「氷魔法ブリザードだぞ!」

「毒魔法!毒霧だよ!」

「爆砕!爆炎斬!」

テーブルの上に、邪神グールが現れた。

どうだ?殺ったか?

「やったぞ。そこでピクピクしてるぞ」

また世界の平和を守ってしまった。


「最近、ここ魔神殿にもグールが現れるようになりました」

「どこにでも現れるぞ。王都は移転する予定だぞ」

魔都も移転を考えるべきだな。

「皆さん!大変デス!」

ナナが部屋に飛び込んできた。

ナナは、アズサ付きの機械族オリジナル7番機。全身が魔法火器の似非アメリカンだ。

「見てくださいデス」

手にグールを持っている。機械族はグールを恐れない。

「これゴキブリではありませんデス。よく見てくださいデスデス」

グールではない?だと!


「スミマセン、私は直視できないので、ここは勇者のケインさんに」

ティナが逃げた。

「パパ!任せたよ」

娘も逃げた。

「仕方ないぞ、ここはケインが行くぞ」

嫁も逃げた。

「あら、情けないのね。ゴキブリぐらいで・・。私ちょっとお花摘みに」

守護者もダメか?


仕方ない。俺が見てやる。怖くなんかないぞ!俺は勇者だ!

行くぞ、相棒。俺は剣を抜く。


ナナは、手の平の上でひっくり返るグールを俺に見せた。

俺は剣先で慎重にグールの腹をチョンチョンして、死んでいるかを確認した・・なんだと!

「どうしたぞケイン?」

これは・・

「なにかな~」

グールの腹が開く。大きな目がある。まるで人間の目だ。

「これはクロゴキブリではないデス。魔界の生き物デス」

魔界のだと!?


「カサカサ・・・よく気が付きましたね」

誰だ!?

「いつの間にだぞ」

黒いロングコートに、黒い帽子を深々と被る男が、ドアの前に居た。


「貴方は、五木さん」

ティナ?知っているのか?

「はい。五木振さんです。天界の制度を利用して、カサカサ星から魔都へ研修に来ています」

「その研修生が、なんだぞ?」

「カサカサ・・五木振とは仮の姿」

黒ずくめの男は、ゆっくりと近づいてきた。

「いつき・・・しん・・・!!違う!こいつは、ゴキ ブリだ!」

男は顔を上げる。

「!!パパ!こいつ!顔がゴキブリだよ!」

恐らくコートの下もゴキブリの体だ。人サイズのゴキブリだ!

「戦闘態勢だ!」


「カサカサ・・我が眷属たちが、貴様たちの情報を収集した」

こいつの眷属?グールはこいつが!?

「いくら駆除しても減らないわけだぞ」

「なら~こいつを倒せばだよね~」

ああ、こいつさえ倒せばグールの脅威から世界を救える。


「気を付けるぞ。進化したゴキブリは強いぞ。漫画で読んだぞ」

「その話は、さっきドワーフさんから聞きました。こっちも虫になりますか?」

「カサカサ・・貴様たちの情報を全て手に入れた、我に勝てると思うのか?」

俺たちを前に堂々とした態度。こいつできる。

「ケインさん、こいつはレインボーコックローチです。魔界闇戦隊の一員で、主に情報収集が担当です」

ティナ!知っているのか?

「パパ!ティナがネットで調べてくれたよ!」

おい。

「はい。闇戦隊のHPに載っています」

HPだと!?


「カサカサ・・我ら闇戦隊。存在は闇の中。裏の仕事引き受けます」

「存在が闇で、HP公開かだぞ?」

「カサカサ・・経営上の理由でやもなく」

なにが経営上だ!闇なら闇らしく闇に潜んでいろ!


どうする?捕まえて目的を聞き出すか?

「アズサ!時間停止魔法だ!捕獲する」

「分かりました!時間停止魔法‼時よ止まれ!」

世界がセピア色に変わった。アズサの時間停止魔法だ。レインボーコックローチも停止した。

「今のうちだ!縛り上げろ」

「私嫌だぞ、触りたくないぞ」

「私もだよね~」

「はい。触りたくありません」

「ごめんね!近寄りたくもないよ!」

俺も嫌だ。

「時間切れです。時が動き出します」

また無駄打ちしてしまった。意外と使えない時間停止魔法だ。


「ズサズサ・・魔界闇戦隊、モモイロヤスデ参上」

「ヌルヌル・・同じく闇戦隊、金色ナメクジ見参」

変なのが増えた。

「カサカサ・・援軍が間に合った以上、お前たちに勝ち目はない」

「ズサズサ・・抵抗は無意味だ」

「ヌルヌル・・むだむだむだむだ!」

グールにヤスデ、ナメクジ。負ける気はしないが、相手にはしたくない連中だ。


「ケインさん!HPによると、敵はこの3人だけです」

「パパ!魔界サイトによると、闇戦隊の業界ランクは2199位だよ。全体は2200しかないよ」

弱小零細戦隊だ。


「私に任せるデス!フィンガーマシンがデス!」

ナナの指先はマシンガンに成っている。弾は魔法弾だが、実弾と同様の効果がある。

「ヌルヌル・・粘液防御」

ダメだ!マシンガンの弾が粘液に跳ね返された。

「なら、ミサイルパンチデス!」

ナナの右腕が肩から離れ、ミサイルのように敵に向かう。

「ズサズサ・・ヤスデ真剣白刃取」

ミサイルパンチが、白刃取されただと!手が多いから楽に止められるんだ。


「ケイン、こいつら出来るぞ」

ああ、見た目で判断していたが、ここは真面目にやらないと、ヤバそうだ。

「本気で行くぞ!」

アリスの顔つきがマジになった。

「来るぞ!セイレーーン!だぞ」

海が盛り上がり、黒い球体、魔道兵器セイレーンが現れる。


「新シーズン初の出番です!ルピ、ルカ!気合いを入れていきますよ」

機械族オリジナル13番機で、魔道兵器セイレーンの制御装置。

セレスと同じ姿をする、セイレーンだ。

「はい、ねぇ様。最初が肝心です」

「はい、ねぇ様。第一印象の好感度は、なかなか下がりません」

ルピとルカ、セイレーンの支援機だ。


「セイレーン!こいつらを焼き払うぞ!ハドロンブラスターだぞ!」

いきなり最大兵器か?

「分かりました!パワーアップしたハドロンブラスターをお見舞いします」

「ねぇ様。敵認識が出来ません」

「ねぇ様。攻撃不可です」

セイレーンは倫理観が高く、敵と認識しない相手は、攻撃が出来ない。

1撃貰うか、説得される、誤作動を起こす等が無いと、攻撃不可なのだ。


「相変わらず使えないぞ。ならポセイドンだぞ!」

ポセイドン、ドワーフ同様に、北の海を守護する守護者。

普段はトーレフの住む家を背に乗せて、海を漂っている、巨大な亀だ。

「ポセイドン!だぞ!・・・こないぞ」

「基本守護者は、この世界に関与しないが鉄則なので、戦に呼んでも来ないわよ」

同僚のドワーフの説明だ。

「使えない連中だぞ」

「なら私が呼ぶよ~ピーちゃん!カムヒヤ!だよ~」

ピーちゃん。マオの友達の鳥さん。神の加護に似た万能魔法を使いこなし、マオの財産を投資で増やしまくっている。

「あとね~マオ商会の経理部長だよね~」

だそうだ。

「マオごめんね。今大暴落に巻き込まれて、手が離せないのよ。そっちは任せたから」

と言うテレパシーが、みんなの頭の中に届いた。


後、トーレフと言う、竜人族の科学者と、マリーと言う、サラ族の残した、正のエネルギーの集合体が居る。

どちらも科学班で開発から修理を担当した、頼れる連中だ。


「パパ!モブキャラ紹介は済んだ?」

ああ、後は・・・パルスだが、まぁいいか。

「登場人物が多くて困るぞ。紹介編が長くて大変だぞ」

「だよね~なんか話が進まないしさ~」

「はい。これでやっと本編が進められます」

「私って、紹介があったのですが、モブだったんですか?」

「主役はケインだぞ。ヒロインが私だぞ。後はモブだぞ」

酷い。


「カサカサ・・もういいか?」

ああ、済まなかった。

「お待たせだぞ。お前の相手はケインだぞ。私は金色さんの相手をするぞ」

「はい。私は女神なので後方支援します」

「私はヤスデさんだよね~」

「パパ!私はママとナメクジに塩掛けてるね」

「時間停止魔法を使い切った私は、役に立たないので、ナナとお茶しています」

「守護者的には手が出せないから、私もお茶グループ」

くそ!結局グールの相手は俺か?


「行くぞグール!ケインスラッシュ!」

俺の唯一の技、ケインスラッシュ。

剣から出る衝撃波で、敵を弾き飛ばす。

「カサカサ・・ぐは!」

効果ありだ!

「いっくよ~毒魔法!毒シャワーだよ!」

毒シャワー、マオの持つ杖の先から毒液が噴出する。

「ズサズサ・・ぐはぁ!」

大ダメージだ。

「行くぞ!氷魔法ブリザードだぞ!」

「魔法剣!爆炎斬よ!」

「ヌルヌル・・ぐはぁぁ!」

特大ダメージだ。この世界の法則として「ぐは」の後の「ぁ」が多いほど、ダメージは大きなものとなる。


が、決め手がない。敵は3体とも健在だ。

「カサカサ・・貴様たちの攻撃は、この程度か?」

「ズサズサ・・たわいもない」

「ヌルヌル・・ぐふふふふふ」

くそ!流石は魔界の闇戦隊だ。どうする?


「ねぇケイン、ボラギノー草だけど、少し貰って・・・」

アルテミスだ。ゲートから、敵のド真ん中に出て来てしまった。

「ひぃ!」

前に等身大グール。横にはヤスデとナメクジ。

顔色が一気に蒼くなった。

「神の加護・・パルスよ!!!」

滅びの呪文が飛び出した。魔都は爆炎に包まれた。



「苦しい戦いだったぞ」

ああ、ティナが咄嗟に防御加護を使ってくれなければ、最終回を待たずに終わっていたな。

「魔界って~やっぱ強いんだね~」

「はい。元々は戦闘種族の世界です。基本性能が違います」

「パパ、ママ!魔界から来た敵と戦えるようにレベル上げだよ」

「私も、さらなる強い魔法を覚えるため、魔王として恥じぬ精進します」

何時から魔界と戦う事に?

「はい。魔界闇戦隊は、誰かに雇われた刺客です。誰かが私たちを狙っているのは間違いありません」

「狙われる覚えはないぞ」

いや、あるか。

「天界の何者かが、この世界を狙っている。この世界にある聖剣九重をな」

俺達の戦いは終わっていなかった。

俺達はこの世界を守る。そして、平和な世界を取り戻して見せる。

敵が天界だろうと、魔界だろうと、俺たちは九重を守り切る!!

「そして、聖杯と起源の水もね」

ドワーフ?何か言ったか?

「いえ・・べつに」


こうして新たな敵の出現により、俺たちの戦いが始まった。


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