魔王編 ㊷
・・・・朝か?
「起きたかだぞ?もう2時だぞ。よく寝ていたぞ」
・・・俺は・・パルムに斬りかかって・・。
「そうだぞ。一撃も入れられずに、クタクタで気を失ったぞ」
ベットの上で上半身を起こし、記憶を掘り起こす。
アリスは俺の横に座り、モーニングチューを頬にした。
「思い出した」
ムキに成って、怒りで剣を振るい、パルムにボロクソに言われたんだ。
だが・・・・。
「流石に、アレは堪えたな。腐っても元勇者だ」
「ああだぞ。パルムは、きっと良い勇者だったぞ」
「真の勇者は、己の信じるものを剣に託し、信念を貫く剣を振るう・・か。俺は、まだまだだ」
「ケインはケインで良いぞ」
アリスは俺の肩に、頭を預けた。
「パルムは俺を・・」
「凄いぞ。ケインの言った一言で、状況を理解して、迷子のケインを導いてくれたぞ」
「考えがまとまらない・・か。あれだけで、分かるんだな」
「同じ勇者だぞ。同じ悩みを経験してるんだぞ。同じ穴のムジナ同士だぞ」
勇者をムジナは無い。
「さぁ、起きるぞ。朝飯と昼飯とおやつの時間だぞ」
俺はアリスと、食堂に向かった。
「ケイン!聞いたぞ。パルムに、ぼろ負けだってな」
レナとセレスだ。
「さっきティナ様から聞いたわよ。格の違いを見せられたってね」
痛い所を一突きだ。
「パルムの言葉は私も聞いたが、相手が何であれ、言う事は正しい」
「ええそうね。腐ってもイカだわね」
タコだ。
「鯛だぞ」
「どうだ、後で私たちと、稽古をするか?」
「勇者の心得を得たケインの剣、見てみたいわ」
「ああ、頼むよ。稽古をつけてくれ」
「先にエネルギー補給だぞ。ガス欠だと稽古にならないぞ」
だな。すまんが飯の後で頼む。
「先に中庭で、セレスと体を温めて居よう」
「待ってるわね」
食堂に入る。アリスはキッチンで料理を始めた。
作り置きなど出さない。アリスは毎回、俺に作りたてを出してくれる。
「お待たせだぞ。天津丼だぞ」
中華屋で、中華丼と天津丼を迷って、中華丼にしたのを見ていたんだ。
「星27の天津丼だぞ」
アリスが作れば、宇宙イチ旨い。
中庭に行くと、ボロボロになっている、レナとセレスが居た。
セレスは右腕を失っていた。
「なにがあった!?」
「ああ、つい熱くなってな」
また胸がでかいだの、まな板だのでもめたのか?
「全くレナさんは、胸と同じで成長しないわ」
なんか、セレスって活躍より、壊れてる方が多くないか?
「さぁ、ケインこい!ケインの相手など、10%の戦力があれば十分だ」
世辞でも良いから、本当のことを言うな。
「ケイン、頑張るぞ。レナも壊して、二人で仲良く入院させるぞ」
今壊したら、3日後の魔王決戦に間に合わないだろう。
「あら、大丈夫よ。トーレフ達が、バラバラでも3分で直る「キカイダー01最終回の便利メカ」を作ってくれたわ」
酷いネーミングだ。
俺は剣を抜く。そしてパルムの言葉を思い出す。
俺の信じるモノ、俺の信念・・・この世界を仲間達ともに守る。皆が安心して暮らせる世界を作る。皆の笑顔が俺の正義だ。俺は剣に、想いを込めた。
!?剣が輝く。
「ケインの想いに、剣が答えたぞ。技が打てるぞ」
頭の中に「ケインスラッシュ」と浮かんだ。
これが俺の技!?
「来いケイン!お前の想い!その技を撃ってみろ!」
レナが防御の姿勢で待ち構えた。
「良し!ケインスラッシュだ!!!」
剣を縦に振るうと、軌跡から衝撃波がでる。構えるレナを襲った。
「くっ!・・ぐは!」
レナが吹き飛んだ。相当な威力。
俺の初めての技だ!
「防御の姿勢で受けてこれだ、ケイン、これは使えるぞ」
「斬撃ではなく、弾く技ね。縦に使うより、横に使った方が効果的よ」
水平に剣を振るうのか?
「ああ、その方が効果が高い。敵の接近を食い止められるし、マオのような魔法を、弾き飛ばせる」
流石レナ達だ。1回見ただけで、特性を見極めている。
「ケイン凄いぞ!ケインだけの技だぞ」
ああ。やっと俺にもだ。パルムの言葉、重い言葉だったと痛感した。
「おめでとうございます!ケインさん」
ティナ。
「来たら、ケインさんが技を出すところが見れました。剣が想いに、答えてくれるようになったんです。もう立派な勇者です」
「そうか、剣よ、よく俺の想いに答えてくれた。感謝するよ。俺は、この剣を相棒にする」
「でもケイン、それって普通の剣だぞ。勇者の剣としては役不足だぞ」
「皆のような業物でもないし、聖剣でもない。でも俺はこの剣がいい。この剣が俺の相棒だ」
「ケインさん、今こそ勇者に成る時だと思います」
そうか、覚醒薬。正確には俺はまだ、冒険者ケインだった。
「アリス、全員集めてくれ。俺は皆の前で勇者に成りたい」
「分かったぞ。夜に成るけど全員集めるぞ」
魔王討伐まであと3日だ。俺は今夜、勇者に成る。
「残念でしたわ。王都民の避難が終わった所でしたのよ」
「ケインの勇者の儀なら、国を挙げて盛大にやるイベントだぞ」
構わないさ。チームの仲間が見ていてくれれば、それでいい。
「司会のティナです!皆さんお忙しい中ようこそ!今夜は冒険者ケインさんの、勇者の儀です。ケインさん!壇上へどうぞ」
王宮の庭に、大掛かりなステージが設けられた。
相変わらず、イベントとなると気合いの入る連中だ。
アリス、アリッサ、アイリス、ターナ、マオ、レナ、セレス、ハウル、トーレフ、アズサ、ナナ、マリー、パルス、セイレーン、ルピ、ルカ・・・
アルテミスも来てくれたのか?
「みんな!やっとこの日を迎えられた。俺は今、勇者に成る!見ていてくれ!」
俺は、覚醒薬を使った。体が光に包まれた。
「冒険者ケインを、勇者ケインへ覚醒。勇者スキル1開放。勇者スキル2開放。勇者スキル3解放。勇者レベル構築中・・構築完了。勇者ステータス構築中・・構築完了。全プロセス完了」
天の声が、俺を勇者にしていく。
「おお!ケインが勇者に成ったぞ」
「パパ!勇者だよ」
「ああ、俺はこれで、名実ともに勇者ケインだ!」
皆の拍手。アルテミスから花束を受け取る。
壇上に一人一人が上がり、俺を祝福してくれた。
「ケイン、みんなに勇者スキルを見せてやるぞ」
よし、勇者スキル1!発動だ!
「勇者スキル1、勇者の持つ技を3ランクアップ。ケインスラッシュは、ケインスラッピーになりました。ケインスラッピーは、ケインスラポンになりました。ケインスラポンは、ケインスラペペロンになりました」
ケインスラペペロンだと?
「ケインスラポポロンを撃ってみるぞ!みんなに見せるぞ」
お、おう。ペペロンだけどな。
「行くぞ!ケインスラペペロンだ!・・だ!・・だ!あれ?」
「レベルが足りません。ケインスラポポロンは発動しません」
なんだと!って、ペペロンじゃないのか?ポポロンなのか?
「ケインさん、勇者レベルがマイナス200です!」
あんだと!どいう事だ!?
「はい。元からマイナスレベルのケインさんは、勇者に成ってもマイナスのままでした」
ありか?勇者スキルは?
「スキル2も3も、発動条件はレベル50です。たぶん発動しないと・・・」
なにぃぃぃぃ!!!
「何も変わらないぞ。良くも悪くもなってないぞ。悪くならなければOKだぞ」
「ですわ。婿殿は勇者に成っても、婿殿のままですわ」
「うん!パパはパパだ。変わらなくてもいいよ!」
「だね~ケインらしいよね~」
「ああ、そうだ。勇者スキルなどなくても、ケインは勇者だ。何も問題ない」
「うぷぷぷ。ハウル笑え」
「妻よ。流石に笑えない」
「ワシでも読めなんだ」
「ケイン殿らしいでござるよ」
みんな特別驚いていない。俺だけか?ビックリマンは?
「はい。ケインさんですから」
ティナの一言は、全員を納得させた。
「だがケイン、お前が勇者なのは間違いない。怒りで剣を振るうなど、許されない立場だ。勇者の名を冠に持つ重みは、理解しろ」
ああ、分かってる。昨日の事は反省してるよ。
「怒りはマイナスのエネルギーだぞ。勇者が振るう剣には、ふさわしくないぞ」
だよな。マイナスはレベルだけ・・・・・マイナス?だと・・・。
怒りはマイナス。。マイナス。。負のエネルギー。魔王は負のエネルギーの集合体だ。
「どうしたぞ?」
そうか!そうだったのか。
「アリス!分かったぞ!魔王の倒し方が!」
「だぞ?」
「魔王は負のエネルギーの集合体だ。怒りや憎しみで剣を振るえば、攻撃はマイナスのエネルギーに成る。
マイナスの力では、魔王には勝てない。プラスのエネルギーの攻撃をするんだ」
「なるほど!確かに論理的だ」
「それだわ!ケイン!それよ!」
「パパ!凄いよ!」
「だぞ。確かに私たちは、魔王を憎んでいたぞ」
「だね~。だから倒せないんだよね~」
「ああ。マリーの言葉を思い出せ。マリーと魔王が触れたらどうなるか、聞いた時だ。「対消滅しますよ」と、言っていた」
「婿殿!」
「ああ、間違いない。魔王は憎しみで攻撃してはダメだ。慈しみの心で攻撃するんだ」
「ティナだぞ!ティナの顔はだぞ?」
ティナは?…笑っている!正解だ!
「なんか、頬が引きつってる気がするぞ」
「あまりの嬉しさに、ひきつって居るんだ。間違いならティナは、口笛を吹いて、明後日の方向を見るはずだ」
とうとう、俺は答えに辿り着いた。
これで魔王は倒せる!
「宴会ですわ!前祝いですわ!」
「良し!遣るかだぞ。もし全滅してもいいように、残りの予算は全部つぎ込むぞ!」
「パパ!ママ!私もお酒飲んでいい?」
「いいぞ。全滅したら、もう飲めないぞ。今のうちに飲んでおくぞ。パパも許可するぞ」
お。おう。全滅前提かよ。
「よし!魔王討伐まであと3日だ。飲みまくるか!」
「私は脱ぎまくるわ!」
「ワシも、たまには参加じゃ」
勝ち方が分かった俺たちは、大宴会に突入した。
「惜しい」
ターナが一言呟いた。
魔王討伐まで、あと2日だ。
「私がアリスだぞ」
「私もアリスだぞ」
ヨッパが二人だ。
「パパ!どっちがママだか、分からないよね!?」
今、分かった。
「婿殿!私の飲みっぷりと脱ぎっぷり、見てくださいな」
「ケイン!私も負けてないからね。服だけでなく皮膚も脱いだから」
アイリスはスッパ。
セレスは、下半身外骨格状態のロボだ。余りエロくない。
「セイレーン、聞いてくれ。わしだって活躍したい」
「パルスさんは頑張ってます。お家で一生懸命引き籠っていました」
パルスは、酔うと泣き上戸。
セイレーンが慰めに成って無い言葉で、慰めている。
「アズサ、ナナ!なんで無駄を出すんですか?食べ物を無駄にしたら駄目ですよ。ナナもそこに座りなさい」
お寿司のエビの尻尾を捨てたとして、酔ったマリーは、アズサとナナに説教中だ。
みんなが、それぞれ楽しんでいた。
他の戦いとは違う。魔王との戦いは、死んでも蘇生が出来ない。
考えたくはないが、万が一・・・これが最後の宴会に成るかもしれない。
ーーーー王宮の庭から、少し離れた森の中、ターナ、ティナ、アルテミスーーーー
「ターナさん、魔王の倒し方、気が付いたんですか?」
「私じゃない。村の人」
「ケインさんには?」
「教えられない。私が気が付いたのと違う。名もない村人Aだから」
「何でケインは気が付かないのかしら?」
「アルテミスさん、ケインさんは、頭が良すぎるから、考えすぎているんです」
「過ぎたるは・・・なのね」
「ティナ達、戦いに参加?」
「私たちは、女神なので戦えません。防御系、支援系の加護なら使えます」
「なら、私も女神に成る。知った以上戦えない」
「分かりました。ターナさんの美しさは、女神の域です。当日は、女神ターナとして登録します。ハウルさんは、ターナさんのペットで登録します。良いですか?」
「OK。支援魔法で援護する」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宴会は、翌日の昼まで続いた。
俺は、アリスと二人で、人魚族の村へ行く。村は閑散としていた。
「あら、ケインさん」
アヤメさんが気が付いてくれた。
「ここで生活するのも、あと僅かです。立つ鳥、後を濁さずです」
・・・・。
「気になさる必要はありません。私たちは800年前に死んでいるのですから」
と、言われてもな。山彦さんんは、ケロっと言うが・・・
「そうだぞ、こうして話をしているぞ。それが居なくなるんだぞ。悲しいのが当たり前だぞ」
「私たちが、思念体に成ってまで見届けたかったこと。それは、魔王の最後です」
「魔王が倒せるような心の温かさと、優しさがあれば、この世界は私たちが望んだ世界です」
・・やはり、憎しみで戦わない事だったんだ。
「おお!勇者、来ておったのか」
部屋から爺さんが顔を出した。
「上がれ、上がれ。アヤメ、羊羹と茶じゃ」
随分上機嫌だ。毒キノコでも食ったか?
「編集が下手だぞ。ここで続くだぞ」




