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残念世界の残念勇者   作者: XT
26/96

魔王編 ㉖

食べ過ぎたアズサは、ピーの能力「三共胃腸薬」を使ってもらい、ゆっくりと休んだ。


翌朝、俺を起こしたのは衛兵だった。

「勇者様!大変です!街に魔獣が!」

「なんだと!」

俺は飛び起きる。

「どうしたぞケイン?まだ寝ていたいぞ。後5分だぞ」

「そうですわ、今婿殿の健康チェックを・・」

なんで、アイリスが俺たちのベットに居る?

「陛下!プリンセス!お急ぎください!魔獣が街に現れたのです!」

「急げ!起きないと尻尾を引き抜くぞ」

2人は目をパチっと開く。尻尾は大事らしい。

「マジかだぞ?」

「あら、大変ですわ」

俺達は、街に急いだ。


「ケイン!魔獣が現れたと聞いた」

「ケイン~~大変だよ~街で暴れたら~大変だよ~」

レナ!マオ!途中でレナとマオと合流する。

街に付くと、人だかりができていた。どうやら暴れている様子はない。

俺達が行くと、人垣に道ができる。

ハウル!?

街に来ていたのは、魔獣王ハウルと、ゆかいな仲間たち2人だった。

「勇者よ。久しいな」

股間は良くなったか?

「何しに来たぞ!ここは王都だぞ」

「心配するな。王は買い物に来ただけだ」

猛禽類?買い物だと?

「そうですな。戦う気はありません。ほれこの通り」

ミネルバは、首から下げたカードを指さし言う。

3人は、首からプラカードをぶら下げている。

「私たちは敵ではありません」

「ホープ&ピース」

「餌を与えないでください」

なんだこれは?

「見てわからんのか勇者よ。私たちに戦闘の意思がないことを示したカードだ」

魔獣王が「ホープ&ピース」だと?前後が逆だ。

それだと、タバコの宣伝かと思うだろう。


「パパ!ママ下がって!魔獣王!私が相手よ!」

「ハウル将軍、これは重大な違約です!」

アリッサとティナも来た。

「女神ティナ様、将軍は『一時様子を見る』と、仰ったはずです。今は非戦闘期間でございます」

猛禽類、また眼鏡をかけて、クィ!をやるか?

「確かに先日、聞きました。しかし、王が王都の街に足を踏み入れる等、言語道断です」

「魔獣はケダモノ・・と言う事ですな。ケダモノは、買い物すらさせては貰えぬと」

おっと、なんだその悲しそうな顔は?

「い、いえ‥そういう訳では・・」

ティナの弱い、人情で攻めたか?

「分かりました。確かに約束に反していたようだ。帰りましょう。勇者よ騒がせたな。済まなかった」

上手いなハウル。演技派だったか?これでティナは落ちた。

「待ってください!アイリス女王、ハウル王の話だけでも、聞いてあげてください」

「やられたぞ。あいつ頭も良いぞ」

ああ。只の筋肉馬鹿ではないようだな。

だが、何が狙いだ?


「そっちん王、なんの用だ?」

ターナも駆けつけて来た。

「・・い、いや・・あの・・」

ターナを恐れている。流石の魔獣王もしどろもどろだ。

「王は背広を買いに来たのですよ、ターナ様」

猛禽類!ターナ様だと?

「背広だぞ?魔獣が服を着るのかだぞ?」

「アリス様、魔獣とて文化ぐらいは身に着けております。戦いの場こそ、戦闘服の裸でございますが、獣都では、衣類を纏う者もおりますのじゃ」

ミネルバ?アリスにも様付けか?


「分かりましたわ魔獣王ハウル様。貴方達が危害を加える気が無いという事は信用します。ですが、ここは王都。行動の自由は認めますが、勇者チームを着けさせていただきますわ」

女王アイリス。この顔の時の彼女は、クィーンの名にふさわしい方だ。

「感謝する、女王アイリス殿」

深く頭を下げるハウルもまた、礼を重んじる。


「背広なら、王都青山だぞ。安くていいなら、王都デスカウントだぞ」

「王が身に着けるものは、1級品のみです。品の良い方でお願いします」

猛禽類は、丁寧な口調で言う。

「王都青山に行くぞ。紳士服だぞ。合うサイズが無いと、その場で繕ってくれるぞ」

「それは助かる。私に合う服など、早々は無いからな」

3mもある奴の服など、置いてると思うのか?

「ママゾンならあるかもだぞ」

あるのか?

「はい。ママゾンさんは、無い物を探す方が大変です。女神用品も充実しています」

流石はママゾンだ。


ハウルたち3人を取り囲むように、俺たちは街を歩いた。

道の両脇では、美人民たちが口々にする。

「魔獣よ・・怖そうな口」

「ガオーって開けて、噛みついたらブンブン振り回すのね」

「でも、あの胸板。よくない?」

「股間にぶらぶらしてるわ!」

よく見てやがる。毛で隠れているが基本裸だ。


「スミマセン!寝坊して騒ぎに気が付きませんでした」

「私もよく寝たデス」

アズサとナナだ。騒ぎを聞きつけて来た。

「あれが魔獣王ですね。流石に貫禄があります」

「股間にも興味津々デス」

「ああ、だが油断するな。俺はアレに一撃でやられた」

「ケイン様が!?あの股間の一物にですか!?」

いや、股間は忘れて。

「・・・・それもアリか?」

レナ。何を真面目な顔してる?


「ここが王都青山だぞ。中に入って、好きなのを選ぶぞ」

「感謝するプリンセスよ」

魔獣たちは中に入る。

事前に連絡を入れたおかげで、店員は至って普通の対応だ。

「では、お客様、採寸を致します」

女性店員が、ハウルの胸囲を図ろうと、メジャーを巻き付ける・・が、手の長さより胸囲のほうが長い。

抱き着く形になる。胸がハウルに押し当てられた。

「お、おい・・ちょっと、胸が・・」

魔獣王、意外にもシャイ。


「申し訳ありません、このサイズですと、当店には在庫がありません。オーダーメイドとなりますと、お値段が、こちらです」

提示された値段を見た3人。

目とは、本当に飛び出るものだと分かった。


がっくり肩を落とす3人。今更だが、3匹か?

「予算オーバーだぞ。おそらく桁が違ったぞ」

ああ、オーダーメイドは高いからな。

「騒がせたな。帰る」

力ない一言に、マオが助け舟を出す。

「陛下が~プレゼントするってさぁ~」

アイリスも、マオの一言で気が付いたようだ。ここで恩を売れば・・・と。

「そうですわ!魔獣王ハウル様。王都に来た記念に、私がプレゼントいたしますわ」

一瞬、顔が明るくなるが。

「そう言う訳にもいかん。我らはまだ敵同士だ」

直ぐ将軍の顔に戻る。だが、この交渉はアイリスの勝ちだ。格の違いだ。王としての格が違う。

「あら、残念ですわ。敵とか味方とか関係ないですわ。王都に来た記念ですわ。ねぇ婿殿」

俺に振る。俺はやられた本人だ。俺が「うん」と言えば、相手は引けなくなる。

アイリスの勝ちだ。

「ああ、必要だから欲しかったんだろう?女王陛下自らの申し出だ。断るのは失礼だぞ」

「しかし・・」

ハウルは困惑状態だ。アイリスが決めに行く。

「わたくしの申し出では、受け取れぬと?仰います?」

「決まったぞ。絡めとったぞ」

「流石女王だ。もう逃げられんな」

ああ。格の違いだ。

「い、いや!とんでもない。ありがたく頂戴させていただきます」

ハウル陥落。これで2連勝か?


「店員さん、お金に糸目は付けませんわ。最高級の品を差し上げてくださいな。請求書はマオ様宛で」

この顔の時のクィーンは、抜け目もない。


白の背広だと?意外にもガタイが良いから、似合うのが悔しい。

「ケインも着るぞ、負けたらダメだぞ」

なんの戦いだ?

「あいつカッコいいぞ。ケインも白の背広で立ち向かうぞ」

ダメだ、男の俺から見ても、いい男だ。丸で勝てない。

「そんなことないぞ!ケインの方が100倍カッコいいはずだぞ」

ラブビジョンだ。

「そうよ!パパのほうが・・・」

何故言葉が途切れる?

「ごめんパパ!探したけど、言葉が出てこなかった」

正直な娘だ。


ハウルは気に入ったようだ。アイリスに礼を言うと、ターナの前に来た。

「ターナよ、ワシ、いや私と結婚しろ」

!?なんだと?

「これ、プロポーズだぞ」

ターナは意外にも冷静だ、表情一つ変えてはいない。

「お前は強い。私は強い奴が好きだ。お前を妻にしてやろう」

無言のターナにハウルは続けた。

「だめだぞ。言い方が高飛車だぞ。あれではターナは、うんとは言わないぞ」

「自分の立場を重んじてるんだね~これじゃ~ターナは~うんとは言わないよね~」

ああ、ダメなプロポーズの代表例だ。


「そうか、お前は強いのが好きか?」

「ああ!そうとも。私は魔獣王!我が伴侶は強くなくては務まらぬ」

ターナはアズサの横に行く。

「私、これに完敗。私より強い」

「!!!なんだとぉ!」

魔獣王、それは俺専用のセリフだ。使うな。

「私より強い奴に求愛しろ」

「・・いや、その、だな」

「お前は私が強いから求愛した。なら私より強いアズサが適任」

アズサは困って声も出せない。

「魔獣王、口から出た音に真実などない」

言い返したのか?俺に言った言葉を。


ハウルは、突然ターナに抱き着いた。

そして、耳元で一言呟く。ターナは、相変わらずの無表情だ。

「許可貰う」

ターナは、俺の前に来る。

「ケイン、私、嫁に行く。いいか?」

ターナ・・・。

「ターナが良いと思う相手なら、俺は賛成するよ」

「うん」

ターナの笑顔。こいつ嬉しかったのか?

「魔獣相手でも、結婚は女の子の夢だぞ」

「意外とお似合いかもですわ」

「美女と~魔獣だね~」


「ハウル聞け!嫁に成ってやるから約束守れ。私を悲しませない事。出来るか?」

ターナはハウルの前に行くと、条件を付けた。

が、ターナの勝ちだ。既にハウルは顔がにやけている。

「魔獣王ハウルの名に懸けて、俺はターナを悲しませたりはしない!」

ターナの嫁ぎ先が決まった。


ターナを右の肩に乗せたハウルは、俺の前に来た。

「俺は、貴様を信用してはいない、いて!」

ターナがパンチを食らわせた。

「俺は、貴様を信じている。魔王を呼び出せ、そして勝て!勇者よ」

ああ、任せろ。

「私たちは、サラ族に関して調べているぞ。800年前に居た種族だぞ。何か知らないかだぞ?」

アリス、ナイスだ。

「サラ族ですか?申し訳ありませんが、我らの歴史には、聞かない名ですなぁ」

ミネルバなら、なんとなく期待したんだが、知らないか。

「最近までケダモノしていましたからな」

今でも獣だろ?

「いや、まて。確か北に遺跡があったはず。800年前の戦いで滅んだ国だ」

確かか?

「ああ、我らは興味が無いから、入った者はいないはずだ」

「婿殿!」

ああ、ありがたい情報だ。800年前の北の大国の遺跡なら、何かわかるはずだ。

ターナはハウルの頭をナデナデしていた。ハウルは嬉しそうだった。


「では、勇者よ。また会おう」

「ああ、ターナを泣かせてみろ。俺が噛み切ってやるからな」

「それも・・・アリか?」

だからレナ。想像するな。

「魔獣王の名に誓った。泣かせることはしない」

そういうとハウルは振り返る。森に戻っていく。

「ターナ、好きな時に戻ってくるぞ」

「必ず来てね~」

ターナは笑顔で手を振っていた。


まさかの急展開だが、ターナはあれでよかったのか?

政略結婚ぽくなってしまったがな。

「ターナは、気に入らない相手と結婚などしない。ケイン、それはお前もよくわかっているはずだ」

そうだな。

「以外と気に入ってたぞ。ターナはライオンが好きだぞ」

ティナ?

いつもなら真っ先に、神の祝福とか言い出すティナが、大人しい。

「スミマセン、ちょっと長く下界に居すぎたようです。いったん戻ります」

ティナは、そそくさに天界に帰って行った。やはり何かおかしい。


俺達は方針が決まっいた。北の地に赴き、北の大国の遺跡を調べることになる。

遠征メンバーは、アリス、マオ、レナ、セレス、アズサ、ナナだ。

アイリスとアリッサはお留守番だ。

トーレフがまだ戻らない。セイレーンが探しているが、ポセイドンと共に行方不明なのだ。何かがあっても、アリッサとアイリスなら、対応できるはずだ。


出発の日の朝、猛禽類が来た。

「魔獣王より、道案内を任されました」

なるほど、北の大国と言えば、たぶん広い。

そこで一つの遺跡を探すとなると、大変な作業だ。

「助かるぞ。私はプリンセスアリスだぞ。ケインの嫁だぞ」

「私はマオだよ~」

「ピーよ」

「アズサです。魔王軍で魔王をやってます」

「ケインと、他2名だ」

「慈悲深い魔獣王に感謝してください。私の事はグリス様と、呼んでください」

高飛車な態度が気に入らないから、猛禽類と呼ぼう。


あれからティナは連絡が無い。心配だ。尻が悪化していないと良いが。

俺達は王都を離れ、人類域の外、魔獣域にある北の大国跡地へ向かった。

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