魔王編 ㉕
王都に戻る。
復旧が進んではいるが、王宮は手つかずだ。
アイリスは、街の復興を優先している。良い女王だ。
「婿殿~お早いお帰りで~」
アイリスの濃厚なハグを受ける。
「只今だぞ。お土産に、魔王アズサを連れて来たぞ」
「あら、やだ。公式の場になりましたわ」
エロリスから、女王アイリスへと覚醒する。
「ようこそ、王都へ。歓迎いたしますわ、魔王アズサ様」
「ありがとうございます!アイリス女王陛下」
「魔王様が、こんなにキュートな方とは、思いませんでしたわ」
「て、照れます。私はティナ様から、王都に関しては聞き及んでいました。
女王陛下は、ティナ様のお話の通り、美しくしいです!こうしてお会いできて、本当にうれしいです」
「はい。アズサさんは、小さいころから王都の話が大好きで、今では魔都一番の、王都フリークです」
「王都の事なら、何でも知っています!聞いてください!」
住人を前に豪語したな?
「良し聞くぞ。王都の街で、生の魚を売ってるのは、何軒だぞ?」
おい、魚は無いだろう。意地悪だぞ。
「3軒です!王都スーパー。王都鮮魚店、王都デパートの3軒です!」
!!!マジか?答えられるのか?
「もう一問だぞ。王都女学院の夏休みは、何時から何時までだぞ?」
「7月10日から9月3日まで。8月10日が登校日です」
!!!!何で知ってる?
「ママ、正解かだぞ?」
って出題者のOBが答えられないのか?
「ママ、私負けちゃったぞ。プリンセス敗北だぞ」
大げさだな。
「待て、まだ私が居る」
ターナ?
「私を倒してから、王都を獲ったと思うがいい」
何の戦いだ?
「昨日放送の王都アニメ『Reこの素晴らしいオーバーですがなにか?』第365話で次回予告タイトルは?」
それはずるいぞ。昨日は遭難して海の上のはずだ。ターナも知ってるだろう?
「答えは『エリリア大地に立つ!』です。王都フリークの私が、遭難ぐらいでアニメを見逃すと、思わないでください!」
なんでだぁ!?
「クッ!まさかこの私が負けるとは・・王都は持っていくがいい」
おい。王都くれたらダメだろ。
「お付きの機械族が、王都放送は受信しています!」
「?お付きだぞ?」
「はい。ここまでイカダを・・・あれ?居ませんね」
「居ませんねではない!一緒に来た奴がいたのか?」
「私にアニメを見せた後、イカダを引っ張る為、海に入ったのですが、何処に行ったのでしょう?」
知るかぁ!
「とにかく捜索ですわ。セイレーンさんにお願いして、海を探しますわ」
「軍の部隊を出させるぞ。レナ、海軍の指揮を執るぞ」
「私は千里眼で探すわね」
「拙者はポセイドンを呼ぶでござる」
どうやら魔都からは、2人で来たようだ。途中、機械族が遭難中に遭難した。
「捜索範囲は24時間で移動可能な範囲だ。機械族なら溺れることはあるまい」
レナが海軍の指揮を執る。
「マスター、バードアイで上空から探索を始めます。範囲はレナさん達の外側です」
「ねぇ様、バードアイ発進」
「ねぇ様、探査範囲確認です」
セイレーンは上空から、潮の流れを考慮に入れた範囲を探査する。
「私は、海の底を千里眼で見るわね」
ピーは沈んでいることを考え、海の底の探査だ。
「私のせいです。浮かれていました」
「大丈夫だぞ。機械族なら死ぬことは無いぞ。必ず見つかるぞ」
そうだ。そう、落ち込むな。
これだけ大規模な捜索だ。すぐ見つかるはずだ。
「パルス、今のうちに、俺たちが聞いた話を聞いてくれ。謎が謎を呼んで、また分からなくなった」
「やっとわしの出番か。機械族一の頭脳のわしが聞けば、答えはズバッと丸わかりじゃ」
俺はパルスに話す。
あれから10時間が立つが、まだ見つけたという報告は無い。
探査範囲は、すでに倍に広がっていた。アズサは、心配で海に来ていた。
「時間はかかるが範囲を広げて捜索をしている。機械族なら大丈夫だ」
落ち込み、心配をするアズサをレナが慰める。
「魚に食われたか、爆散したかもだぞ」
空気を読んでくれ・・今、口にしていい言葉ではない。
「でもおかしいわね?これだけ探しても見つからないという事は、何か見落としているのかしら?」
ピーの疑問はもっともだ。確かにおかしい。何を見落としている?
「もう一度状況の確認だ。最後に見た時の事を教えてくれないか」
「序盤から白熱した展開で、予断は許しません。作画も力が入った名シーンの連続でした」
いや、アニメの話ではない。
「私がアニメを見終わると、「もう少しで王都よ」と言って、イカダから海に入りました。イカダに付けたロープを体に結わくと・・・」
ロープだ!イカダに、くっ付いたままだ!
「レナ!イカダを引き上げるぞ!」
クレーンでイカダが吊り上げられる。
イカダに結わかれたロープの先に、機械族がぶら下がっていた。
「ナナ!ナナではないか!」
イカダを引き上げる船の上で、レナが叫ぶ。
「ナナをご存知ですか!?」
「私の妹だ。400年前の戦いで、魔王に叩きのめされ、海に沈んで以来、行方知れずだった」
「ナナはレナ様の妹!?」
「そうだ。聞いていないのか?」
「メモリがどうのこうので、記憶がバカになったと言っていました。あ!そうです!時折「胸が無い」と言う言葉を懐かしく感じる、と言っていました」
「作業員!イカダをそのまま海に投棄しろ!」
おい。
「レナさん!この機械族は、電池が切れただけのようです」
ナナを引き上げた作業員が、レナに伝えた。
「デッキにあげてくれ!誰か魔道電池を」
ナナがデッキに引き上げられた。
ナナはソバカス巨乳、アメリカ人タイプだ。
レナは、手早くハッチを開けると電池を交換した。
ナナが目覚める。
「ナナ!私だ!レナだ!分かるか?」
「oh!ミラクル貧乳デスね。抉れてます~うぷぷデスね」
喋り方もアメリカンスタイルのジャパンニーズだ。
「・・間違いなく、こいつはナナだ」
レナは、怒りを抑えながら言う。
「ナナ!」
アズサが駆け寄り抱き着いた。
「アズサ!ひどいデス。私ヘルプしました!」
「ごめん!すっかり忘れていました!」
「oh!アズサデス。アズサなら忘れて当然デス」
分かりあえる仲か。
「ケイン、連れて来たぞ、ミーちゃんケーちゃんだぞ。肛門医よりは役に立つぞ」
「ミーです、頭の中を拝見しますね」
「ケーです。痛かったら手を上げてくださいね」
機械族の感情のプロだ。感情も記憶も変わらんだろう。
「NO!ミーはお医者嫌いデス!」
「ああ、私は知っているさ。お前の姉だからな。だからハッチは開けっぱなしだ」
レナはナナの電源を落とす。
黒ずんだ笑顔でレナの顔が笑っていた。
パルスが答えを出したようだ。王都食堂に一同が集まる。
「わしの完璧な答えの前に、ティナ様に質問じゃ。貰った答えで、最後のピースを嵌め、より完璧な答えとなすじゃろう」
「はい。お答えできることは、真実をお話しします」
「サラ族は、まだ生きておるよな?生き残りがおるじゃろ」
そうか!その可能性があったか。流石はパルスだ。
「・・・いいえ。サラ族の方は、魔王を封印する際に全滅しました。生き残りはいません」
「なんじゃと!?・・・ダメじゃケイン。根底から崩れおった。もう、わしには分からん」
くその役にも立たないやつだ。
セレスとトーレフが居ない事に気が付いた。
「トーレフ、ナナを探しに出たまま」
なら、そのうち戻るよな。
「セレスは船だぞ。ブリッジで、舵と戦っていたぞ。剣を抜いて『あなたなんか、怖くないから!かかって来なさい!』って、叫んでいたぞ」
後でミーちゃん、ケーちゃんな。要修理だ。
「では。こんな場ですが、両国の発展と平和を祈って、乾杯ですわ」
「乾杯だぞ!」
「乾杯よ!」
「乾杯だね~」
「完敗」
ターナは、まだ敗北を引きずっていた。気のせいか?ティナの元気がない。
「しかし、王都は凄いです!魔都は狭く、建物もボロボロです」
「今は、再建中ですわ。まだ王宮も手つかずですわよ」
「パパ!ママ!アズサ様の泊まるところだけでも、取り急ぎ建築したら?」
アリッサ、いいことを言うな。
「分かったぞ。王宮の庭に、離れを建築させるぞ」
「私は!お構いなく!」
「そうはいきませんわ。魔都の代表の方にテントは失礼ですわ。アリス、すぐ手配を」
「はいだぞママ!ちょっと行って来るぞ。マオも行くぞ」
「はいな~」
金の力にモノを言わせるつもりだな。
「アズサ様、私たちは、魔王を倒さねばなりません。どのようの魔王を呼び出すか?お考えはありません事?」
「今の手掛かりは、サラ族と考えています。サラ族について調べることが、唯一の手掛かりではないでしょうか?」
「ですわね。ティナ様のご意見は?いかがですか?」
「・・・私は・・それでいいと思います。唯一の手掛かりです」
なんか、変だ。気のせいか?
「では、皆さん、方針が決まりました。私たちは、最優先でサラ族に関する情報を収集します」
「了解だよ!おばぁちゃん!」
「ああ、手掛かりを見つけないとな」
「敗北・・わたしが・・」
ターナ、いつまで引きずってる?
アリスが戻った。獄中3姉妹も連れて来た。
「アズサ様!」
そうだった、お前たちは魔都から来たんだった。
「あなた達は!・・・どなたでしたか!?」
「魔都先鋭部隊の「ローズ」ですよ」
「同じく「シルビア」です」
「同じく「たんぽぽ」ですけどぉ」
「ああ!第160使節団の!よく無事でした!」
こいつらが来たから、俺たちは魔都を敵でないと知った。
意外と役に立つ連中だし、今があるのは、こいつらのおかげカモだな。
「早速ですが、ローズは魔王軍を脱退したいと思いますの」
「私もです」
「私も良いですか?」
おい、大将を前に、何を言い出す?
「魔王様には忠誠を誓った身。ですが王都の勇者様には、食事をごちそうになった恩があります」
「飯は忠誠より重い」
「王都のご飯美味しくて~」
おいおい・・・・
「なるほど!わかりました」
わかるんか?
「食事の恩は命で返せ!これは魔王軍の軍規にもある言葉です。ですが優秀なあなた達に抜けられては、大打撃です。魔王軍、王都派遣戦士の地位で如何でしょうか?」
なるほど、さすがにトップに立つだけの事はある。判断が早く、的確だ。
「私たちは、このまま王都で食事をしても良いと?」
「飯が食えるなら、何処にでも行く!」
「また美味しい、ご飯が食べられます」
「皆さんは優秀ですわ。こちらとしても大助かりですわよ」
助けられたこともあるし、いい戦力になった。
食事が出て来た。
王都食堂なので、大したものは出ない。
パン。リブステーキ。サラダ、コーヒーだ。が、「おお!」と、アズサは声を上げる。
「いや、お恥ずかしいです。卑しいと思われても仕方ありません。美味しそうな料理に、思わず声が出てしまいました」
「喜んでいただけて、何よりだぞ」
「そうですわ。さぁ食べましょう」
「頂きます!美味しい!涙が出そうです」
「皆さん!聞いてください」
ティナが立ち上がる。
「魔都の方達は、500年を結界の中だけで過ごしました。結界の上に建てられた魔都は、まだ4世代です。田畑は少なく、周りは魔獣域です。海は海王が住み、食糧が・・・」
訴えるティナの言葉の途中で、アズサが割って入る。
「ティナ様、良いのです。500年間、ティナ様が食料などの援助をしてくださったから、祖先は生き延びられました。貧乏は苦痛ではありません。苦しい時を共有したからこそのキズナも出来ました」
アズサ・・若いができた人物だ。
「私は女神です。殺生のできない私が提供できるのは、野菜とか果物だけでした。動物の肉は、女神には扱えません」
今、目の前にある、皿の上に乗ってる肉は?
「提供できるたんぱく質が、大豆でした」
扱えないが、フォークとナイフで切るのは良いんだ?
「あ、すみません、私レアはダメなので、はい。女神ですから、血はちょっと・・ミリアムでお願いします。皆さんに、肉を食べていただきたかったです」
ウエイトレスさんに、皿を渡しながら言うか?
「ティナ様!任せてください!このステーキと言う肉の塊を食べて、魔王アズサは、祖先の無念を晴らします」
「お~い、お代わりだぞ。晴らすと言ってる皿に、もう肉が無いぞ」
出来る子だが、やはりこの世界の住人だった。
ナナが戻る。
「レナ、久しぶりですデス。ミーの記憶は甦りましたデス」
カーボーイハット、開発コンセプトはエセアメリカ人だ。
「ナナ、400年ぶりだな。無事でよかった」
「レナもデス。私心配していました。夜も眠れない位心配したデス」
嘘だ。メモリがバカになって、完全に忘れていたはずだ。
「紹介しよう。オリジナル7番機のナナだ。高性能な対人戦闘システムを搭載している」
ナナが手を見せる。指先から銃口が飛び出す。
「私と握手するのは、勇気がいりますデス」
「うぉ!かっこいい」
ターナが蘇った。
「肘と膝には、ミサイルが搭載されてるデス」
004だな。
「ナナは、この世界では珍しく、短時間だが飛行可能だ」
空中戦もできるのか?
「短時間デス。高度2mを7秒間だけデス。777m飛行できますデス」
地味な飛行機能だ。だが1秒で111m移動できるのは武器だ。
「私が疾風を使えば、1秒で112mは移動できる。ジャンプすれば778mは飛べるがな」
「空気抵抗のない体は、羨ましいデス」
自分の胸。巨乳を下から持ち上げ、目線はレナの胸に置きナナは言う。
「・・・貴様、何が言いたい?」
「ノー。400年ぶりデス。レナの乳が無いとは言いませんデス」
明らかに挑発している。
「貴様!表に出ろ!400年前の決着をつけてやる!」
「OK。面白いデス!その抉れた胸に墓標を立ててあげますデス」
「こら、止めるぞ!今は王都と魔都の懇親会だぞ」
「構わん、遣らせておけ。昔からこの二人はこうじゃ」
パルスは落ち着いていた。いつも、こうなのか?
「ああ、会えば必ず、胸があるとかないとかでな」
2人は表に出て行った。
サラ族の情報だが、どこから手を付けていいモノか?
「魔都には、サラ族の写真が残っています。幾つかの文献もあります」
アズサのステーキは、お代わり3皿目に突入していた。
「王都には何も残っていませんわ」
「ティナ、以前に話してたよな。誰が戦争の記憶を封印したか?サラ族なのか?戦争の記憶を封印したのは?」
「はい。そうです。サラ族の方は、戦争の記憶は必要ないと」
「そうか、やはりサラ族か。分かった」
やはりティナは、なにかを隠している。
サラ族は、魔王を封印した際に滅んでいる。
そのサラ族が、戦争の記憶を封印できるはずがない。
理由は分からんが、嘘を付いているのは間違いない。




