魔王編 ㉒
「さてだぞ。マオ!ターナ!アリッサ!いくぞ!」
「あらほらさっさぁ~だね」
「ほいさっさ」
「みんな!いくよ!」
あのデカいのが、嵐の中の洋上の現れたら、俺たちの負けだった。
地下のドーム。しかもご丁寧に扉を開けてくれる。
風が流れ込むようにしてくれるとは、融通の利かない、ロボットらしい戦い方だ。
マオの毒、アリスのブリザードは、風の強い場所での使用には適さない。
が、扉の開いたドームの中なら、楽勝だ!
「闇魔法!毒霧だよ~」
マオはドーム内に毒霧を放つ。
「マスター、ドーム内毒霧、換気されます」
「マスター、強力換気システムを持たれています」
マオの毒霧は、敵も周知だ。当然の対策だ。
「妖精魔法!属性超強化」
「来たぞ来たぞ!行くぞ!氷魔法ブリザード!カテゴリー3だぞ!」
支援魔法で強化されたブリザードは、ドーム内を凍らせる。
換気が働いているなら、換気口は、真っ先に凍り付く。
「マスター、換気口凍結です」
「マスター、やったねです」
「後はマオだぞ。任せたぞ」
「いっくよ~~~闇魔法猛毒霧だよ~だよ~だよだよだよだよだよ~~」
撃ち放題の恩恵を、いかんなく発揮した。
ドームの中は紫一色だ。お可哀そうに。
超弩級魔道兵器の外装が、白煙を上げながら溶けていく。
分厚い装甲も、マオの毒の前では紙切れ同然。
やがて火花を散らす。内部に毒が回った証拠だ。
魔道兵器を持ち上げていた、エレベーターシャフトも、大ダメージを受ける。
超弩級魔道兵器は、大きく右に傾いた。右側のシャフトが溶けたのだ。
「いい感じに柔らかくなってきたぞ。アリッサ!〆だぞ!」
「うん!ママ行くよ!」
アリッサが構えた。
「あまたの神々よ!炎に力を与えたまえ!ゴールデンエクスプローション!!!!」
10重の魔法陣から繰り出された、金色の炎がドームの中を荒れ狂う。
熱と衝撃、そして超弩級魔道兵器の重量に耐え切れなくなった、エレベーターシャフトは倒壊した。
既に内部構造に、致命的なダメージを受けていた超弩級魔道兵器は、900m下に落下する。
「わしらの勝ちじゃ」
「決まったでござるな」
轟音と共に、基地から火柱が上がる。
大振動と衝撃波が周りを襲う。
地下の施設が誘爆を起こした。魔王軍の領地の至る所からも、火柱が上がった。
地下施設の崩壊に伴い、上にあった山々は陥没していく。
「海にも施設はあります。私たちは海の施設を破壊します。ルピ、ルカ!潜水開始です」
「はい、ねぇ様。潜水開始」
「はい、ねぇ様。地下施設索敵開始です」
セイレーンは海に潜る。程なくして水柱が上がる。海の上には渦が出来る。
海底地下施設の最後だ。
「すごい・・・かな。星を滅ぼすクラスの敵を、倒しちゃったのかな・・」
ビューティーは、驚きの表情だ。
戦いは終わった。嵐の中の決戦は・・・
俺達の勝ちだ!!
ーーーーー天界の一室ーーーーーー
「ケインさん倒しちゃったよね」
「笑える勇者だ。これで、あの世界は一本道だ。私の勝ちが確定したわけだな」
「リリス部長が、このタイミングでティナを引き離すからだよ」
「まさか、こうも上手くいくとはな」
「まぁ、僕的には、楽しめたけどね。ロボットは馬鹿だから、ちょっと弄ったら、言うこと聞く聞く。楽だったよ」
「さて、私はティナを激励に行くとするか」
「ティナの奴、今頃泣いてるね」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー森の中ーーーーーーーー
「やるわね。あの子たち」
和服の美女だ。
「ああ、思っていた以上だな」
髭の屈強な男もいる。
「やり合うのが楽しみだわ」
「今回は無いさ。俺たちの仕事は、情報収集だからな」
「でも、いずれは・・よね」
「ああ、戦う時はくるだろうな」
「今から楽しみ。早く強くなった坊やと、戦いってみたいわ」
「ザイクが戻る時間だ、行くぞ」
もう一人の男、たばこのやせ男は「ザイク」と呼ばれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーー天界、ティナの実家ーーー
「ケインさんが魔王軍を倒しました。イレギラーです」
「今回のケインさんは、アクティブね。今までにないパターンだわ」
「おかぁ様、これでよかったのでしょうか?」
「それは分かりません。良かったのか?悪かったのか?私たちの知る歴史から外れました」
「私たちは何を?何をしたらいいのでしょう?」
「見守りましょう。あの子を信じて。ティナとあの子たちを信じましょう・・・・また報告をください」
「分かりました」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
至る所で、それぞれの思惑があるようだ。
翌日、俺たちは王都の港に戻る。
「むこどの!!!」
「ケイン!みんな!」
大勢の王都民と、アイリス、レナの出迎えを受けた。
「やりましたわね。とうとう!人類は・・」
涙で言葉を詰まらせるアイリス。
そうだ、800年の戦いに終止符が打たれた。
「お前ならやってくれると信じていたぞ」
レナも、大喜びだ。王都民は、拍手と歓声で俺たちを迎えてくれた。
天空が光る。ティナだ!
「ケインさん!なんてことを!?」
え?
「姉から聞きました。・・あ、待ってください。魔獣さんからも呼び出しです」
怒られたのか?ティナは、魔獣の対応に行ってしまった。
「なにか、怒られるようなこと・・したか?」
「身に覚えがあるぞ」
「アリス、何をやらかした?」
「ティナが泊りで来てた時だぞ。部屋の掃除中に、血のついたおパンツを見つけたぞ。洗ってやろうと思って、そのままパクったぞ」
「とったのか!?」
「パクっただけだぞ。ブルセラに持ち込んだら、マオしか買えない値が付いたぞ」
・・・それは怒るな。謝れな。って言うか、よく魔獣落ちしないな?
「お茶目な事は、大目に見てもらえるぞ。テヘペロで済むことはOKだぞ」
センスのある呪いだ。
「お待たせしました」
「済まないだぞ!許すぞ」
アリスの先制謝罪だ。
「おパンツは洗って返すぞ。だから許すだぞ」
「おパンツの事ではありません!」
「ブラの事かだぞ?」
お前、ブラもパクってたのか?
「魔王軍を倒したら、だれが魔王を召還するんですか!」
「あ・・・だぞ」
「あ・・・ですわ」
「あ・・・だね~」
「あ・・・じゃ」
「あ・・・でござる」
「あ」
どいう事だ?倒して不味いのか?魔王が来ないことは、良いことではないのか?
「違います!魔王が現れなければ、呪いが解呪できません!呪いをかけたのは、魔王なんですよ」
『あ』
「何か忘れてる気がしていたぞ。これだったぞ」
「わたくしもですわ。今気が付きましたわ」
「私もだね~思い出すべきだったね~」
「喉まで出かかっていた」
と、いう事はどうなるんだ?
「この世界は、ゆっくり滅びの道を歩みます」
!!!
「今は男性がいますわ。でもいずれは・・」
「男が、居なくなったら、世界が終わる時だぞ」
「近くて遠い~未来だね~」
「推定500年ぐらい先」
だが、魔王軍の攻めは、王都にまで及んでいた。
「この時期は、魔王軍は攻勢を強めます。毎回の事です。攻撃をしのぎ、魔王を倒してから、魔王軍を倒す・・これが私のシナリオでした」
「分かり切ってた事だぞ。何時からその気になったかだぞ?」
「確か、セイレーンのドックを攻められて、パルスが、次は耐えられないと、言った辺りからだな」
「ワシか?わしが悪いのか?」
「そうでござるな。パルス殿が、その気にさせたでござるかな?確か、撃って出る!とか言い出したでござるよ」
俺も言った。黙っていよう。
「パルスを国家滅亡罪で逮捕だぞ。禁固2000年だぞ」
「待て待て!まだ策はあるはずじゃ」
「そうだと良いのですが・・・」
ティナは諦めたのか?
「私には、どうしていいか?今回ばかりは・・・」
何時になく弱気だ。
横からリリスが割り込んだ。
「いやぁ!ケインさん!凄い活躍ですね」
こっちは上機嫌だ。
「世界を滅ぼすレベルの兵器6つと、星を滅ぼすレベルの兵器1つ。これは、10回世界を救った、に相当する功績です。前回分と合わせると、11回は、優秀勇者ランク歴代7位ですよ」
「部長。。今はその話は・・・」
「ティナ!君もだよ!特別ボーナス10回分支給だよ」
「ええええ!!!マジですか!」
・・・元気になった。
「しかもだ!魔王討伐まで、下界に長期滞在許可まで下りた。下界での永住権も申請中だ」
リリスが嬉しいのは、そっちか?
「本当ですか!業務扱いですよね!」
「当然だティナ。出張費だって腐るほど出る」
「ありがとうございました!ケインさん、魔王討伐、急がなくてもよくなりました」
結構現金な奴だ。
「ティナが長居したらママが死ぬぞ。保険料が天文学的な数字に成るぞ」
「あら、ティナ様、それは良かったですわ。是非いらしてくださいね」
余りの事に、気がふれたようだ。
「婿殿、なにを言いますの?わたくしは、心からティナ様をお迎えいたしますわ」
「実はなケイン、さっきの地震で、王都の建物は全て倒壊した。勿論、王宮も跡形もなくだ。女王陛下はこれ以上壊されるものがないので、ティナ様の滞在に気を使う必要がなくなったのだ」
「何も怖いものは、ありませんわ」
アイリスの目は据わっていた。
「とにかくじゃ!まだ希望はあるはずじゃ。過去の歴史を調べて、魔王を呼び出す方法を探すのじゃ!」
お前は、禁固2000年だろう?
「魔王軍の施設跡を調べれば、何かわかるかもだぞ」
「全部燃えた」
「コンピューターにデーターが残ってるかもだぞ」
「全部~溶かしたからね~」
「友達なら、嘘でも希望のある答えをするぞ!」
「ねぇケイン、あの手紙よ」
ぴー!?あの手紙って?
「魔王軍の親書よ」
ああ、あれか?あれが?
魔王軍は、魔王の復活の準備をしています。
魔王軍の魔王は、魔王軍の魔王復活を阻止するため、
王都との共闘を望みます。
魔王軍、魔王アズサより、王都女王アイリス様へ
「これがどうした?」
「復活を阻止とあるわ。魔王アズサは、阻止しても策があるんじゃない?」
!!!
「なんと!確かに言われればそうじゃ!カモミールの者なら、誰しもが魔王を倒すと考えておるが、アズサは阻止と言っておる」
みんなで忘れていたがな。
「ケイン!魔都へ行くぞ。阻止した後の事を聞きに行くぞ」
ああ、いこう!まだ終わりではない。この世界を救う策はある。
「待ってください。魔獣王ハウルさんが、こちらに向かったとのことです」
ティナ?どういう事だ?
「今回の件です。魔獣さん達も、呪いに苦しんでいます。ハウルさんは、魔王討伐を条件に、人類の保護を約束してくださったんです」
「魔王を呼び出せなくなったことで、ケインに真意を聞くつもりかだぞ?」
「はい。間もなく到着すると思います」
「忘れていました・・と、答えたら?」
「はい。食い殺されます」
またピンチだ。最近ピンチの連続だ。
「どうするぞ?ケイン」
パルスを戦犯として差し出すか?
「こまったね~話の通じる相手だと良いけどね~」
戦う訳には行かない。何とか誤魔化す。
「魔獣、冗談通じない。一本気」
俺の華麗な洒落が通じないのは痛いな。
「パパの姑息な策で、時間稼ぎよ」
何時からパパは姑息になった?
「拙者は、取り急ぎセレス殿の修理をしに帰るでござるよ」
逃げる気か?
「セイレーンが、いつの間にか帰ったぞ」
逃げたな。
「ケインさん、王宮跡にハウルさんが待っています」
もう来たのか?行くしかないようだな。
王宮の崩れた跡地。
3人の魔獣を前に、後ろには50の魔獣が、隊列を組んで待ち構えていた。
「グリスよ、人類と言う奴は、がれきの中で暮らしているのか?」
前に居る3人。
中央に居る、クマの体にライオンの顔を持つ、魔獣王ハウルが口にする。
「これは地震による被害だと、報告を受けております」
右隣にいる魔獣、鷲の顔と羽、体はハウルと同じで熊。
グリスが答えた。
二人とも立派なガタイをしていた。
左に居るのは、キツネの顔に毛むくじゃらの体。年老いた小柄な魔獣だ。
「ハウル王、来たようでございます」
「うむ。では、あいさつと行くか」
ハウルは1歩前に出る。
「我は魔獣王ハウル‼3万の魔獣の王である!」
グリスが前に出る。
「我はハウル王の僕、グリス!」
小柄な狐顔も前に出た。
「魔獣軍参謀のミネルバじゃ」
「後ろは、魔獣軍先鋭50名だ!」
ハウルが締める。
「俺は勇者ケインだ!」
「アリスだぞ。奥さんだぞ」
「ターナ」
「マオだよね~」
「アイリスですわ。女王陛下ですわ」
「アリッサ!パパの娘よ!」
『以下モブキャラだ!』
俺が締めた。レナが必死に訴えていたが無視だ。
「私は女神ティナです。この度の会談を、正式な話し合いの場として、開催することを許します」
ティナは、話し合いにしてくれようとしている。
「ティナ様、あなたの事は信用しております。だが、私は勇者を信じてはおりません」
ハウルが言うと、ミネルバが続けた。
「こたびの件、説明頂けますかな?勇者殿」
やはり魔王軍を倒した事か?正直に答えたら、食い殺される・・よな?
「この件に関しては、私の判断です!私がケインさんに、お願い・・」
ティナの言葉が終わらない内に、グリスが口を挟んだ。
「ティナ様には聞いておりません。魔獣王は、勇者の口から答えを求めておられます」
猛禽類らしい鋭い目つきで、俺を睨んでやがる。
「どうした勇者?まさか、忘れていましたとか言うのではあるまいな?」
ハウル!感も良いのか?流石は獣だ。が、ここは得意の策で煙に巻いてやる。
「俺の方針だ。被害は最小限に抑えて勝つ。お前たちも見てただろ。 俺たちの戦いを。俺たちの戦力をな!」
「ならば、策はあると申されますかな?」
「勿論だ。この後、魔王を呼び出す手配に入る」
「口の出す音に、真実など求めぬわ。勇者よ、ならばその力、わしに見せてみろ」
ハウルは3歩前に出た。
「ダメです!魔獣王ハウル!話し合いの場と、言ったはずです。それにここは王都、人類域です!約束があります!」
約束?
「ティナ様のたっての頼みとして、聞き入れた約束だ。魔獣は人類を滅ぼさない。人類域には、手を出さんとな。お前が魔王を倒す、これが条件だ」
やはりティナが魔獣を押さえていたのか?
「まだ魔王の復活の道が、断たれた訳ではありません。召還の方法を模索しています。約束は有効のはずです」
「ティナ様、今のお言葉は、現時点では策は無い、と仰っておられますぞ」
くっ!パルスより、狐の爺のほうが利口だ。
ティナの一言で、ほぼバレた。
「勇者よ。わしに、お前の力とやらを見せてみろ。わしが認める力の持ち主であるなら、ティナ様の顔に免じ、信用をしてやる。
策が有ろうと、無かろうと、力ある者ならば、世界は救えるはずだ」
くそ!理にかなってる。見せるしかないのか?俺の力を?
「ダメだぞケイン。あれと戦ったら10秒もたないで死ぬぞ」
だが、ここで引くわけには・・。
「どうした?勇者?怯えたか?なに、勝てとは言わん。お前にそんな期待はしてはいない。わしが納得する力を見せれば、いいだけの事だ」
くそ!完全になめられてる。ここは策を弄して、粘り勝ちを狙うしかない。
「ダメだぞケイン、10秒後には、お別れだぞ」
「ケイン~だめだよ~」
男には、引けない時があるんだ。
「2秒じゃな。わしの予想では2秒後に、はいサヨナラじゃ」
「拙者、見てられないでござるよ」
くそ、少しは俺を信用しろ。華麗に逃げながら、評価を上げてやる。
俺的な作戦は、こうだ。
わしのパンチを躱すとは、貴様、なかなかやるな?
ふっ!ハエの止まったパンチなど、目をつぶっていても避けられるぞ。
こんな感じにして、俺の勝ちだ。
「ケイン!ぼさっとするなだぞ!もう始まってるぞ!」
「え?・・グハぁぁぁぁぁぁ」
なにが起こった?なんで、皆は逆立ちしてる?
何で、パルスがはしゃいでいる?
何で、体が動かない?声が出せない?
・・・皆が逆立ちしているのではない・・・俺が、倒れて居る?遣られたのか?




