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残念世界の残念勇者   作者: XT
18/96

魔王編 ⑱

マオが毒魔法を放ち、溶かした森。溶けた木々、草の中からレナが見つけたモノ。

ロボットだ。半分は溶けて機能を停止していた。レナ達をアンドロイドと言うなら、これはロボット。人の形をしてはいるが、一目で機械だと分かる。


「赤道の魔王軍だな」

レナの予想は、正解だろう。

「こんな所にまで、来ていたのですわね」

人類域に潜入していたという事か?

「でも~何しに来ていたんだろうね~」

ここから王都は遠い。俺たちの動きを見張るには、森の奥深くでは、意味がない。

「とりあえず、機械族の技師に見せよう」

レナは、溶けたロボットを担ごうとする。

「待ってください」

ティナが、止めた。そして祈りを捧げる。

「赤道の魔王軍は、私の庇護下にはありません。しかし、屍に敵も味方もありません」

機械。敵。それでもティナは、女神なのだ。 



俺達は、町に戻った。

夕暮れの街は、人でにぎわっていた。

レナは、ロボットを機械技師に見せるために、王都科学研究所とやらに向かう。


「今日は~みんなが居るから~食材の買い出しだね~」

「街に来るのは、久しぶりですわ」

「私は初めてです。こんなに賑わっているんですね」

ここは商店街と言うより、市場に近い。

「あら!女王陛下!お買い物ですか?これをどうぞ。お持ちください」

「陛下!私の店のこれも」

「女王様!どうぞ持って行ってください」

アッという間に、アイリスの前には、食材の山ができる。

国民に慕われる女王陛下なのだ。

アイリスは、衛兵に貰った物を王宮の届けるように伝えると、深く頭を下げお礼をした。

その姿をティナは、微笑ましく見ていた。


アイリスが、打ち止めの札を掲げる。これは、(もう結構です)の意味らしい。

「ここは、王都で一番の賑わいを見せる場所で、私が来るといつもこうなのですわ。なので、あまり来れませ・・・あれ?ですわ」

「あれ~だよね~」

「はい。あれは、さっきのロボットさんです」

レナが持って行った、溶けたロボットではない。

動いているロボットだ。

買い物カゴを片手に、かっぽう着姿で、買い物をしていやがる。

「確保だ!!!!!」

「氷魔法‼足元凍れ!ですわ」

此方に気が付いたときには、足は凍って動きが取れない状態だ。

確保した。


アイリスが衛兵を呼ぶ。

「ぎー!ぎー!」

手足を押さえられ、動けないロボットは、それでも抵抗を止めない。

「まさか、こんなに堂々と潜入しているとはですわね」

誰も不審に思わなかったのか?

「いま~衛兵に~聞いたんだよね~機械族が~皮膚を脱いでるんだと~思ってたってさ~」

なるほど、確かに皮膚が無ければ、こんな感じだろう。

それでも不審に思わないとは、とんだ暢気者たちだ。


連絡を受けたアリスが、駆け付けてくれた。

「ケイン久しぶりだぞ。会いたかったぞ」

まだ1日たってない。

「こいつが、潜入していたロボかだぞ?」

ああ、ぎーぎー言ってるが、言葉は話せないようだ。

「今、機械族の技師の方が来ますわ。技師に見せれば、何かわかるはずですわ」

「私に任すぞ」

アリスは、ロボに近寄る。


「私は、プリンセスアリスだぞ。私の質問に答えるぞ」

「ぎーぎー!!」

答えるような仕草ではないし、言葉を理解しているようには見えない。

「そうかだぞ。抵抗するなら、考えがあるぞ」

アリスは、ロボの腹の部分にあるハッチを開ける。

「ぎーーーーぎーーーー!!」

お?嫌がってるようだ。

「ロボの共通の弱点だぞ。私に服従しないと、ここにマーキングするぞ」

パンツを脱ぐな!片足を上げるな!

「ぎぎぎぎ」

抵抗が無くなった。言葉は分からないが、恐怖は理解したようだ。


「質問だぞ!お前の名前と、所属を言えだぞ」

「ぎーぎー」

「名前が、ぎーだぞ。所属は、ぎーだぞ。ケイン、吐かせたぞ」

うん。大したものだ。ついでに、お前の好感度について聞いて見ろ。

「お前、私の事をどう思ってるかだぞ?答えるぞ」

「ぎー」

「私の好感度も、ぎーだぞ。こいつ!ぎーしか言わないぞ!」

やっと気が付いたようだ。


「婿殿、技師の方が来ましたわ」

あれ?この前の先生と。看護師さん。

「また会いましたね勇者様」

美女医と、レナ達にパーツを提供してくれた二人だ。

看護師の二人は、俺の両脇に来て、腕に抱き着く。

「私ミーです」

右側の子だ。

「私は、ケーです」

左側の子だ。

「こいつは、ギーだぞ」

なんの張り合いだ?

「って言うか、接近禁止令はどうしたぞ?」

「この二人は、レナとセレスの恩人だ。大目に見てやってくれ」

「そうかだぞ。ケインが言うなら、大目に見るぞ。30秒だぞ。30秒は、このままでいいぞ」

30秒後、アリスは二人を引き離し、俺の横に居座った。


「これは我々とは、タイプが全く違う形の機械です」

「自立型なのですか?意志は持っていますの?」

「プログラムを解析しないと、ですが、意思の有無は調べられます。機械族の感情システムに関する、スペシャリストの二人です。ミーちゃん、ケーちゃん、お願いします」

この二人は、単なる看護師ではなかったのか。

感情のプロ。出来る子たちのようだ。

「はい、先生」

「任せてください」

2人がロボの傍に行く。


「ここが、あなたの電脳ですね」

赤毛のミーちゃんが、ロボの頭を開く。

「ここに、私の余剰冷却水を流し込みます」

茶毛のケーちゃんが、パンツを脱ぐ。

アリスと同じ手法かぁぁぁぁぁ!!!


「先生、わかりました」

いつくかの拷問を見た。

「先生、解析できました」

何度か、シーをしていた。

「感情はありません。が、自己防衛プログラムは備わっているようです」

「自立型ではありません。複雑なプログラムで動いているわけではないようです」

結果だけ聞くと、プロフェッショナルだが・・・。


「ぎーぎー・・ぎーー・・お・・まえ・・」

!?

こいつ言語を!?

「これは驚いた。私たちの言語を解析し、自分でプログラムし直したという事か」

ミーちゃん、ケーちゃんも驚きの表情だ。

「おまえたち・・ぜんめつ。せんにゅうし・・しゅうげきのとき・・・じん・・るい・・チヨロい・・まもなく・・だ」

こいつら、襲撃計画を立てているというのか?

森に居たロボットは、襲撃兵?

「警戒警報ですわ!王都全域に警戒警報で・・・」

地面が揺れる!大きな爆発音だ。

北の方角で煙が上がった。


人込みの市場は、混乱する。

アリスとアイリスは、民衆にシェルターに避難するように指示を出す。

!!!!

5体のロボットが飛び跳ねた。潜入していたギーの仲間か?

狙いは、俺達のようだ。

「婿殿下がって!」

アリスとアイリスが、俺の前に出る。

「氷魔法ブリザードだぞ」

「氷魔法!氷弾ですわ!」

空中に居たロボットに向かって、魔法を撃つ。

「婿殿、今のうちに早く王宮へ」

「ティナもマオも、急ぐぞ」

5体のロボットは撃退した。アリス達に続き、俺たちは王宮に向かう。



「女王陛下、北の門が破られました。大量のロボットが、なだれ込んできています」

衛兵が、アイリスに報告する。

さっきの爆音は、門を破壊された音だった。

「不味いぞ。王都は、こんな襲撃に備えてないぞ」

「狙いは婿殿ですわ。婿殿を守る戦いですわ」

くそ!俺は戦力が無い。足手まといの勇者だ。

「みなさん!後ろです!」

ティナが、後ろを振り返り叫ぶ。

!!!もう、追いついてきた。

「団体さんの~到着だよね~」

なんて数だ?200、いや500は居る。後ろが、黒いロボットで埋め尽くされていた。


「婿殿、ここは、私とアリスで止めますわ。婿殿は王宮へ」

バカ言うな。あの数を止められるものか。

「この世界は、ケインが居ないと救えないぞ。これを、私だと思って大事にするぞ」

アリスは、自分の尻尾を俺に渡す。

「これ?着脱できたのか?」

「痛いぞ。お尻が痛いぞ。形見だから引き千切ったぞ。痛くて、意識が遠のきそうだぞ」

戦う前に大ダメージだ。


「行きますわよアリス!王族の意地、見せますわよ」

「行くぞママ!尻尾の仇だぞ。プリンセスの花道、見せてやるぞ」

だめだ!よせ!

俺は、マオとティナに引きずられ、二人から引き離された。

「ケイン~わかってよ~この世界は~ケインが必要なんだよ~」

「そうです、お二人の気持ちを無駄にしたら、いけません」

くそぉ~アリス!アイリス!

ロボットは、二人の前に迫っていた。

2人は魔法を放つが、数で押し切られるのは明白だ。



「魔法剣技!火炎竜!」

!?俺たちの上を、炎の龍が?


炎の龍は、ロボットに襲い掛かる。ロボットを噛み砕き破壊し、溶かす。

「パパ、ママ!おばぁちゃん!」

アリス?いや・・アリッサだ。

アリスと瓜二つ、背丈、体格、髪形。

アリスより引き締まった、精悍な顔つきが、わずかな違いだ。

「アリッサが来てくれたぞ。形勢逆転だぞ。でも尻が痛いぞ」

「アリッサちゃんは、レベル500の魔法剣士ですわ。 助かりましたわ!婿殿!」

アリッサの持つ剣、あれって・・・

「炎の剣だぞ。攻撃力倍増だぞ」

俺のために、みんなが探し出してくれた聖剣だ。

アリッサは使いこなしているのか?


「パパたちは私が守る!。いくよ!炎の剣!」

アリッサは、アリス達の前に立つと、剣を振るい上げた。

「魔法剣技!爆炎トルネード!」

炎の竜巻が、敵を一気に粉砕する。

「ママ!パパを連れて逃げて。敵は門から押し寄せてる。こんなもんじぁない。数千よ」

「アリッサを置いては、逃げられないぞ」

「私は大丈夫。奥義がある。でも、パパ達が居ると打てないの。味方まで巻き込んじゃう。私はまだ、敵認識を覚えてないから。だから早く逃げて」

「敵認識?」

「敵だけに効果のある攻撃ですわ。超高度なスキルですわ」

敵・・敵認識・・!!閃いた!


「ティナ!ママゾンだ。敵認識のスキルを買ってくれ」

「は、はい。でも超高価です。皆さんの分は買えません」

「構わない。二人分で十分だ」

「はい!分かりました」

正面の敵をなぎ倒すアリッサ。

だが数が多い。アリッサの攻撃を避け、左右から突破された。

俺達の横から敵が迫る。


風が舞う。レナか!?

「喰った食事の分だけ、恩がある」

右の敵を、一瞬で薙ぎ払う。焼きそば女!!

「暗黒竜よ!闇を食らえ!」

左の敵を、闇で食らう。お好み焼き女!

「えっと、支援魔法!属性強化」

たこ焼き娘!

魔都から来た、獄中3姉妹だ!


「さぁ、早く。貴方の策を」

「勇者の力、見せてもらおう」

「何時も美味しいお食事、ありがとうございます」

くそ~~~善行は施すものだ。よし、見せてやる。俺の戦いをな!


「ケインさん、チケットです!」

「良し!アリッサ!、マオ!このチケットを使え!敵認識スキルだ!」

「パパ、わかった」

「私で良いの~使うよ~返せないよ~」

「アリス!アイリス!北の城門を凍らせろ!敵の侵入を許すな!」

「はいですわ!ここからだと、少し遠いですわね。アリス!力を合わせますわ」

「おおだぞ!任せとけだぞ」

再び、母娘の共演だ!

「城門凍結ですわ!氷魔法‼氷壁ですわ!」

「氷魔法‼ブリザードだぞ!」

アイリスが、え?って顔で、アリスを見る。なんでブリザードなの?って、顔だ。

「・・・ごめんだぞ。まだ、ブリザードしか覚えてないぞ」

「氷魔法‼氷壁ですわ、ですわ、ですわ~はぁはぁはぁ~ですわぁぁぁ」

アイリス、渾身の連発で北の城門を凍結させた。


アリッサと、お好み焼き女が敵を倒す。

焼きそば女が、俺たちを守る。

たこ焼き娘が、支援魔法で、全員の戦力を強化する。敵は、完全に止めた。

「マオ!毒霧だ!王都を毒の霧で覆いつくせ!」

敵認識がある。敵だけに効果が出る。一網打尽だ!

「はいよ~いっくよ~~~闇魔法!毒霧だよ~~だよ~~おまけのだよ~」

毒の霧は、王都全体を覆う。敵は溶けて動けなくなっていった。

「アリッサ!城壁の外の敵に、奥義だ!」

「うんパパ!外の敵を倒してくる」


王都への侵入は阻止した。そして、王都内の敵も殲滅。

あとは、城壁の外に残る数千の敵。

「ここで奥義を使っても、街には被害出ない。敵認識が、街を守ってくれる」

そうだ、思いっきりやれ!アリッサ!

城壁の上に立ち、剣を高々と突き上げる

「炎の神よ。炎の聖霊よ。我が魂に破滅の炎を!エクスプロージョン!」

それか?奥義はパクリか?


5重の魔法陣が天に表れ、轟音と共に地上は炎に包まれた。

数千の敵は、溶ける間もなく蒸発する。

「俺たちの勝ちだ!!」

「皆さん、すごいです。世界に深刻なダメージを与えるクラスの敵を、倒しちゃいました!」

「そうだぞ、私たちは強いぞ」

「そうですわ、今回の勇者チームは、最強ですわ」

「ふっ!飯の恩、少しは返せたようだ」

「私たちにかかれば、こんな敵、物の数ではないわね」

「美味しい食事が食べられれば、力が出せます」

何時から獄中3姉妹もチームに入った?


「パパ、お願い。肩を貸して。魔力の消耗が激しいくて・・」

アリッサ!エクスプロージョンは撃つと動けなくなる。これは常識だ。

俺は肩を貸す。俺の体に持たれながら、アリッサは立ち上がった。

「パパ、臭いよ」

「ああ、パパの匂いだ」

「・・・うん」

アリッサは、俺の胸に顔を預けた。

ハッピーエンドだ!



「まだだぞ!ティナ様、お願いだぞ。尻尾を生やして欲しいぞ」

アリスは、引っこ抜いた尻尾の跡を出して、ティナに頼む。

「任せてください!お尻系は得意中の得意です」

嫌な予感しかしない。

「保険、入ってませんわ」

「危険な~香りだね~」

「神の加護!尻尾よ生えてこい!です」

お?

「あら、生えてきましたわ」

「生えて来たね~」

「上手くいったかだぞ?私の尻尾?生えてきたかだぞ?」

ああ、生えてきた。

「やったぞ、20%の勝ちを引いたぞ」

9本。

「え?だぞ?・・だぞだぞだぞ!2,4,6,8,9!9本あるぞ!」

「・・・えっとぉ~大サービスです!900%増量キャンペーン中です」

「いらんサービスだぞ!妖狐に成ってるぞ!九尾の犬だぞ」

みんなが笑顔だ。

この笑顔を、お俺は守る。この世界も、この笑顔もだ。



ーーーー天界、2人の会話ーーーーー

「マシン軍の攻撃、やっぱり失敗ですね。だから僕、言ったじゃないですか。無理だって」

「あわよくば、ティナ諸共と考えたが、虫が良すぎたようだな」

「あの坊や、結構やりますよ。僕的には、好きなタイプかな?」

「焦る必要はない。ティナは下界に降りる機会も増えるだろう。殺るチャンスは、いくらでもある。それに魔王は倒せない。河童族が生き残っていたのには驚いたが、たかが50人程度では、封印も出来ん。私たちの勝ちは、揺るがないさ」

「リリス部長の、800年越しの計画、いよいよ大詰めですね」

「聖杯と、起源の水が手に入れば、全世界は、私たちのものだ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

リリスは悪い子だった。


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