魔王編 ⑱
マオが毒魔法を放ち、溶かした森。溶けた木々、草の中からレナが見つけたモノ。
ロボットだ。半分は溶けて機能を停止していた。レナ達をアンドロイドと言うなら、これはロボット。人の形をしてはいるが、一目で機械だと分かる。
「赤道の魔王軍だな」
レナの予想は、正解だろう。
「こんな所にまで、来ていたのですわね」
人類域に潜入していたという事か?
「でも~何しに来ていたんだろうね~」
ここから王都は遠い。俺たちの動きを見張るには、森の奥深くでは、意味がない。
「とりあえず、機械族の技師に見せよう」
レナは、溶けたロボットを担ごうとする。
「待ってください」
ティナが、止めた。そして祈りを捧げる。
「赤道の魔王軍は、私の庇護下にはありません。しかし、屍に敵も味方もありません」
機械。敵。それでもティナは、女神なのだ。
俺達は、町に戻った。
夕暮れの街は、人でにぎわっていた。
レナは、ロボットを機械技師に見せるために、王都科学研究所とやらに向かう。
「今日は~みんなが居るから~食材の買い出しだね~」
「街に来るのは、久しぶりですわ」
「私は初めてです。こんなに賑わっているんですね」
ここは商店街と言うより、市場に近い。
「あら!女王陛下!お買い物ですか?これをどうぞ。お持ちください」
「陛下!私の店のこれも」
「女王様!どうぞ持って行ってください」
アッという間に、アイリスの前には、食材の山ができる。
国民に慕われる女王陛下なのだ。
アイリスは、衛兵に貰った物を王宮の届けるように伝えると、深く頭を下げお礼をした。
その姿をティナは、微笑ましく見ていた。
アイリスが、打ち止めの札を掲げる。これは、(もう結構です)の意味らしい。
「ここは、王都で一番の賑わいを見せる場所で、私が来るといつもこうなのですわ。なので、あまり来れませ・・・あれ?ですわ」
「あれ~だよね~」
「はい。あれは、さっきのロボットさんです」
レナが持って行った、溶けたロボットではない。
動いているロボットだ。
買い物カゴを片手に、かっぽう着姿で、買い物をしていやがる。
「確保だ!!!!!」
「氷魔法‼足元凍れ!ですわ」
此方に気が付いたときには、足は凍って動きが取れない状態だ。
確保した。
アイリスが衛兵を呼ぶ。
「ぎー!ぎー!」
手足を押さえられ、動けないロボットは、それでも抵抗を止めない。
「まさか、こんなに堂々と潜入しているとはですわね」
誰も不審に思わなかったのか?
「いま~衛兵に~聞いたんだよね~機械族が~皮膚を脱いでるんだと~思ってたってさ~」
なるほど、確かに皮膚が無ければ、こんな感じだろう。
それでも不審に思わないとは、とんだ暢気者たちだ。
連絡を受けたアリスが、駆け付けてくれた。
「ケイン久しぶりだぞ。会いたかったぞ」
まだ1日たってない。
「こいつが、潜入していたロボかだぞ?」
ああ、ぎーぎー言ってるが、言葉は話せないようだ。
「今、機械族の技師の方が来ますわ。技師に見せれば、何かわかるはずですわ」
「私に任すぞ」
アリスは、ロボに近寄る。
「私は、プリンセスアリスだぞ。私の質問に答えるぞ」
「ぎーぎー!!」
答えるような仕草ではないし、言葉を理解しているようには見えない。
「そうかだぞ。抵抗するなら、考えがあるぞ」
アリスは、ロボの腹の部分にあるハッチを開ける。
「ぎーーーーぎーーーー!!」
お?嫌がってるようだ。
「ロボの共通の弱点だぞ。私に服従しないと、ここにマーキングするぞ」
パンツを脱ぐな!片足を上げるな!
「ぎぎぎぎ」
抵抗が無くなった。言葉は分からないが、恐怖は理解したようだ。
「質問だぞ!お前の名前と、所属を言えだぞ」
「ぎーぎー」
「名前が、ぎーだぞ。所属は、ぎーだぞ。ケイン、吐かせたぞ」
うん。大したものだ。ついでに、お前の好感度について聞いて見ろ。
「お前、私の事をどう思ってるかだぞ?答えるぞ」
「ぎー」
「私の好感度も、ぎーだぞ。こいつ!ぎーしか言わないぞ!」
やっと気が付いたようだ。
「婿殿、技師の方が来ましたわ」
あれ?この前の先生と。看護師さん。
「また会いましたね勇者様」
美女医と、レナ達にパーツを提供してくれた二人だ。
看護師の二人は、俺の両脇に来て、腕に抱き着く。
「私ミーです」
右側の子だ。
「私は、ケーです」
左側の子だ。
「こいつは、ギーだぞ」
なんの張り合いだ?
「って言うか、接近禁止令はどうしたぞ?」
「この二人は、レナとセレスの恩人だ。大目に見てやってくれ」
「そうかだぞ。ケインが言うなら、大目に見るぞ。30秒だぞ。30秒は、このままでいいぞ」
30秒後、アリスは二人を引き離し、俺の横に居座った。
「これは我々とは、タイプが全く違う形の機械です」
「自立型なのですか?意志は持っていますの?」
「プログラムを解析しないと、ですが、意思の有無は調べられます。機械族の感情システムに関する、スペシャリストの二人です。ミーちゃん、ケーちゃん、お願いします」
この二人は、単なる看護師ではなかったのか。
感情のプロ。出来る子たちのようだ。
「はい、先生」
「任せてください」
2人がロボの傍に行く。
「ここが、あなたの電脳ですね」
赤毛のミーちゃんが、ロボの頭を開く。
「ここに、私の余剰冷却水を流し込みます」
茶毛のケーちゃんが、パンツを脱ぐ。
アリスと同じ手法かぁぁぁぁぁ!!!
「先生、わかりました」
いつくかの拷問を見た。
「先生、解析できました」
何度か、シーをしていた。
「感情はありません。が、自己防衛プログラムは備わっているようです」
「自立型ではありません。複雑なプログラムで動いているわけではないようです」
結果だけ聞くと、プロフェッショナルだが・・・。
「ぎーぎー・・ぎーー・・お・・まえ・・」
!?
こいつ言語を!?
「これは驚いた。私たちの言語を解析し、自分でプログラムし直したという事か」
ミーちゃん、ケーちゃんも驚きの表情だ。
「おまえたち・・ぜんめつ。せんにゅうし・・しゅうげきのとき・・・じん・・るい・・チヨロい・・まもなく・・だ」
こいつら、襲撃計画を立てているというのか?
森に居たロボットは、襲撃兵?
「警戒警報ですわ!王都全域に警戒警報で・・・」
地面が揺れる!大きな爆発音だ。
北の方角で煙が上がった。
人込みの市場は、混乱する。
アリスとアイリスは、民衆にシェルターに避難するように指示を出す。
!!!!
5体のロボットが飛び跳ねた。潜入していたギーの仲間か?
狙いは、俺達のようだ。
「婿殿下がって!」
アリスとアイリスが、俺の前に出る。
「氷魔法ブリザードだぞ」
「氷魔法!氷弾ですわ!」
空中に居たロボットに向かって、魔法を撃つ。
「婿殿、今のうちに早く王宮へ」
「ティナもマオも、急ぐぞ」
5体のロボットは撃退した。アリス達に続き、俺たちは王宮に向かう。
「女王陛下、北の門が破られました。大量のロボットが、なだれ込んできています」
衛兵が、アイリスに報告する。
さっきの爆音は、門を破壊された音だった。
「不味いぞ。王都は、こんな襲撃に備えてないぞ」
「狙いは婿殿ですわ。婿殿を守る戦いですわ」
くそ!俺は戦力が無い。足手まといの勇者だ。
「みなさん!後ろです!」
ティナが、後ろを振り返り叫ぶ。
!!!もう、追いついてきた。
「団体さんの~到着だよね~」
なんて数だ?200、いや500は居る。後ろが、黒いロボットで埋め尽くされていた。
「婿殿、ここは、私とアリスで止めますわ。婿殿は王宮へ」
バカ言うな。あの数を止められるものか。
「この世界は、ケインが居ないと救えないぞ。これを、私だと思って大事にするぞ」
アリスは、自分の尻尾を俺に渡す。
「これ?着脱できたのか?」
「痛いぞ。お尻が痛いぞ。形見だから引き千切ったぞ。痛くて、意識が遠のきそうだぞ」
戦う前に大ダメージだ。
「行きますわよアリス!王族の意地、見せますわよ」
「行くぞママ!尻尾の仇だぞ。プリンセスの花道、見せてやるぞ」
だめだ!よせ!
俺は、マオとティナに引きずられ、二人から引き離された。
「ケイン~わかってよ~この世界は~ケインが必要なんだよ~」
「そうです、お二人の気持ちを無駄にしたら、いけません」
くそぉ~アリス!アイリス!
ロボットは、二人の前に迫っていた。
2人は魔法を放つが、数で押し切られるのは明白だ。
「魔法剣技!火炎竜!」
!?俺たちの上を、炎の龍が?
炎の龍は、ロボットに襲い掛かる。ロボットを噛み砕き破壊し、溶かす。
「パパ、ママ!おばぁちゃん!」
アリス?いや・・アリッサだ。
アリスと瓜二つ、背丈、体格、髪形。
アリスより引き締まった、精悍な顔つきが、わずかな違いだ。
「アリッサが来てくれたぞ。形勢逆転だぞ。でも尻が痛いぞ」
「アリッサちゃんは、レベル500の魔法剣士ですわ。 助かりましたわ!婿殿!」
アリッサの持つ剣、あれって・・・
「炎の剣だぞ。攻撃力倍増だぞ」
俺のために、みんなが探し出してくれた聖剣だ。
アリッサは使いこなしているのか?
「パパたちは私が守る!。いくよ!炎の剣!」
アリッサは、アリス達の前に立つと、剣を振るい上げた。
「魔法剣技!爆炎トルネード!」
炎の竜巻が、敵を一気に粉砕する。
「ママ!パパを連れて逃げて。敵は門から押し寄せてる。こんなもんじぁない。数千よ」
「アリッサを置いては、逃げられないぞ」
「私は大丈夫。奥義がある。でも、パパ達が居ると打てないの。味方まで巻き込んじゃう。私はまだ、敵認識を覚えてないから。だから早く逃げて」
「敵認識?」
「敵だけに効果のある攻撃ですわ。超高度なスキルですわ」
敵・・敵認識・・!!閃いた!
「ティナ!ママゾンだ。敵認識のスキルを買ってくれ」
「は、はい。でも超高価です。皆さんの分は買えません」
「構わない。二人分で十分だ」
「はい!分かりました」
正面の敵をなぎ倒すアリッサ。
だが数が多い。アリッサの攻撃を避け、左右から突破された。
俺達の横から敵が迫る。
風が舞う。レナか!?
「喰った食事の分だけ、恩がある」
右の敵を、一瞬で薙ぎ払う。焼きそば女!!
「暗黒竜よ!闇を食らえ!」
左の敵を、闇で食らう。お好み焼き女!
「えっと、支援魔法!属性強化」
たこ焼き娘!
魔都から来た、獄中3姉妹だ!
「さぁ、早く。貴方の策を」
「勇者の力、見せてもらおう」
「何時も美味しいお食事、ありがとうございます」
くそ~~~善行は施すものだ。よし、見せてやる。俺の戦いをな!
「ケインさん、チケットです!」
「良し!アリッサ!、マオ!このチケットを使え!敵認識スキルだ!」
「パパ、わかった」
「私で良いの~使うよ~返せないよ~」
「アリス!アイリス!北の城門を凍らせろ!敵の侵入を許すな!」
「はいですわ!ここからだと、少し遠いですわね。アリス!力を合わせますわ」
「おおだぞ!任せとけだぞ」
再び、母娘の共演だ!
「城門凍結ですわ!氷魔法‼氷壁ですわ!」
「氷魔法‼ブリザードだぞ!」
アイリスが、え?って顔で、アリスを見る。なんでブリザードなの?って、顔だ。
「・・・ごめんだぞ。まだ、ブリザードしか覚えてないぞ」
「氷魔法‼氷壁ですわ、ですわ、ですわ~はぁはぁはぁ~ですわぁぁぁ」
アイリス、渾身の連発で北の城門を凍結させた。
アリッサと、お好み焼き女が敵を倒す。
焼きそば女が、俺たちを守る。
たこ焼き娘が、支援魔法で、全員の戦力を強化する。敵は、完全に止めた。
「マオ!毒霧だ!王都を毒の霧で覆いつくせ!」
敵認識がある。敵だけに効果が出る。一網打尽だ!
「はいよ~いっくよ~~~闇魔法!毒霧だよ~~だよ~~おまけのだよ~」
毒の霧は、王都全体を覆う。敵は溶けて動けなくなっていった。
「アリッサ!城壁の外の敵に、奥義だ!」
「うんパパ!外の敵を倒してくる」
王都への侵入は阻止した。そして、王都内の敵も殲滅。
あとは、城壁の外に残る数千の敵。
「ここで奥義を使っても、街には被害出ない。敵認識が、街を守ってくれる」
そうだ、思いっきりやれ!アリッサ!
城壁の上に立ち、剣を高々と突き上げる
「炎の神よ。炎の聖霊よ。我が魂に破滅の炎を!エクスプロージョン!」
それか?奥義はパクリか?
5重の魔法陣が天に表れ、轟音と共に地上は炎に包まれた。
数千の敵は、溶ける間もなく蒸発する。
「俺たちの勝ちだ!!」
「皆さん、すごいです。世界に深刻なダメージを与えるクラスの敵を、倒しちゃいました!」
「そうだぞ、私たちは強いぞ」
「そうですわ、今回の勇者チームは、最強ですわ」
「ふっ!飯の恩、少しは返せたようだ」
「私たちにかかれば、こんな敵、物の数ではないわね」
「美味しい食事が食べられれば、力が出せます」
何時から獄中3姉妹もチームに入った?
「パパ、お願い。肩を貸して。魔力の消耗が激しいくて・・」
アリッサ!エクスプロージョンは撃つと動けなくなる。これは常識だ。
俺は肩を貸す。俺の体に持たれながら、アリッサは立ち上がった。
「パパ、臭いよ」
「ああ、パパの匂いだ」
「・・・うん」
アリッサは、俺の胸に顔を預けた。
ハッピーエンドだ!
「まだだぞ!ティナ様、お願いだぞ。尻尾を生やして欲しいぞ」
アリスは、引っこ抜いた尻尾の跡を出して、ティナに頼む。
「任せてください!お尻系は得意中の得意です」
嫌な予感しかしない。
「保険、入ってませんわ」
「危険な~香りだね~」
「神の加護!尻尾よ生えてこい!です」
お?
「あら、生えてきましたわ」
「生えて来たね~」
「上手くいったかだぞ?私の尻尾?生えてきたかだぞ?」
ああ、生えてきた。
「やったぞ、20%の勝ちを引いたぞ」
9本。
「え?だぞ?・・だぞだぞだぞ!2,4,6,8,9!9本あるぞ!」
「・・・えっとぉ~大サービスです!900%増量キャンペーン中です」
「いらんサービスだぞ!妖狐に成ってるぞ!九尾の犬だぞ」
みんなが笑顔だ。
この笑顔を、お俺は守る。この世界も、この笑顔もだ。
ーーーー天界、2人の会話ーーーーー
「マシン軍の攻撃、やっぱり失敗ですね。だから僕、言ったじゃないですか。無理だって」
「あわよくば、ティナ諸共と考えたが、虫が良すぎたようだな」
「あの坊や、結構やりますよ。僕的には、好きなタイプかな?」
「焦る必要はない。ティナは下界に降りる機会も増えるだろう。殺るチャンスは、いくらでもある。それに魔王は倒せない。河童族が生き残っていたのには驚いたが、たかが50人程度では、封印も出来ん。私たちの勝ちは、揺るがないさ」
「リリス部長の、800年越しの計画、いよいよ大詰めですね」
「聖杯と、起源の水が手に入れば、全世界は、私たちのものだ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
リリスは悪い子だった。




