魔王編 ⑰
「婿喉~お帰りですわ」
アイリスとアリッサの、出迎えを受けた。
アリッサは大きくなり、12歳から15歳ぐらいの見た目となっていた。
「只今だぞ!アリッサも成長したようだぞ」
「おかえりママ!・・・パパも」
なんか、つれないな?
「アリッサ、大きくなったな!パパ嬉しいぞ」
「近寄らないで!パパ臭い!」
!!!!!
「あらあら、アリッサちゃん、パパが可哀そうですわよ。ねぇ婿殿。婿殿?」
「大変だぞ!ケインのHPが0だぞ。蘇生だぞ!」
「な、なにが起こった?あの優しいアリッサから、聞こえてはいけない言葉が聞こえたぞ」
生き返った俺の側に、アリッサはいなかった。
「思春期だぞ。一時期、パパをゴミにしか見えなくなる時期があるぞ」
「ぬぁんだとぉぉ」
「大丈夫だぞ。すぐ抜けるぞ。1週間の辛抱だぞ」
「1週間だと!俺に1週間耐えろだと!」
「婿殿、生理現象ですわ。すぐにパパ、パパと甘えてきますわ」
「無理だ。アリッサにあの態度をされたら、俺は生きていく自信がない」
「子煩悩だね~なら~私の家に~避難だよね~」
「それがいいぞ。会えば必ず、冷徹な態度で接してくるぞ。そのたびに死なれたら、困るぞ」
「マオ、私もお邪魔していいだろうか?セレスが居ないので一人なのだ」
レナもお泊り会に参加か。
「私、村に戻る。族長の仕事してくる」
ターナは帰省だ。
「では、王宮はアリスに任せて、私もマオさんのお家へ行きますわね」
なに?アイリスもか?
「ママは、マオに魔法を教えるぞ。マオも魔法使いにジョブチェンジしたんだぞ」
なるほど、アイリスが先生なら、すぐ覚えられそうだ。
俺は、アリッサの思春期が過ぎ去るまで、マオの家に泊まることにした。
「ただいまぁ~」
誰もいない部屋に入るときでも、人はこれを言う。
「ピーちゃんは~ベットに寝かせるよ~」
豪華客船を持ち上げようと、無理したピーは、未だ眠りについたままだ。
「マオって、確か金持ちだよな?」
「ん~~~そうかなぁ~」
「ははは、マオは金持ちだ。一般的にな」
「そうですわ。資産が国家予算の数十倍の人は、金持ちと呼びますわ」
その金持ちの、大事な友人のベットが、折り菓子の空き箱と言うのは…
「新聞紙も~切って引いてあるよ~」
「このぐらいしないと、お金は貯まりませんわ」
1800億Gを、サラっと流した人物と、同一なのが不思議だ。
「マオさんは、闇属性ですわね」
意外だ。おっとり系のマオには、似合わない属性だ。
「そういえばケインには、この世界の属性に関して教えてなかったな」
「属性どころか、蘇生のルールすら知らないぞ」
「あらやだ。簡単に教えますわ」
ああ、頼む。
「蘇生のルールは簡単ですわ。悪意が有るか無いかですわよ。殺したほうが、悪意を持っている場合は、蘇生は出来ませんわ」
「魔獣やダンジョンの敵は、悪意はない。互いに蘇生したいからな。敵と言うだけで、相手を憎んではいないのだ」
なるほど、この世界らしい仕組みだ。
「スポーツでも、相手を敵と称するだろう。それと同じ感覚だ」
「でも、魔王は違いますわ。魔王との戦いで死んでも、蘇生は出来ませんのよ」
魔王との戦は・・生き返れないのか。
「ああ、だから先代は、犠牲を恐れてしまったんだ」
・・・・。
「まぁ、婿殿、魔王は置いておいて、次は属性ですわ。この世界は、属性が沢山あって、把握できない程ですわ」
「ティナ様が、面白がった増やしまくったからな」
「アリスは氷属性。水属性に含まれますわ。婿殿は火ですわね。アリッサちゃんも、同じですわ」
俺は、アリッサと同じなのか!超嬉しいぞ。
「親子で同じって~珍しいよね~」
アイリスもアリスと同じだろ?氷魔法を使っていたぞ。
「あら私は、サキュバス属性ですわ」
なんだそれは?属性ですらなく、魔族だろう。
「この世界特有の属性だな」
特有って、あるんだ。
「レナさんは、まな板属性。セレスさんはエロ属性ですわよね」
まな板ってなんだ?エロは・・分かる気がするが。
「他にも沢山ありすぎて、誰も掌握出来ていないのが現状だ」
「なので、あまり気になさらずともいいですわ」
普通、RPG世界で属性と言えば、重要なファクターだが、この世界ではどうでもいい扱いなのか。
「困りましたわね。マオさんの闇属性は、魔法を覚えるのに時間がかかりますわ」
「ああ、闇属性の魔法は、強力なものばかりだからな」
「困ったよ~剣士は無理だよ~魔法が使えないと~役に立てないよね~」
闇魔法は強力なのか?
「ええ、私が使うブリザードも、最上位がディザスターブリザード。災害レベルのブリザードですわ。闇魔法は、初級で災害レベルの威力がありますのよ」
「覚えるのに~200年かかるよ~」
誰が覚えるんだよ。普通に生きていられないからな・・200年は。
「お・こ・ま・りですね。おねぇさんにお任せです」
ティナ!ど、どうして?
「はい。来ちゃいました」
「来ちゃいましたって!ティナ様、そんな・・・ベットの中で、ケイ夫は手招きをしましたわ」
ケイ夫って誰だ?
「脱ぎたてのパンツは温かい。アイリ子は、ゆっくりとベットに向かいますわ」
寸劇が始まった。
「ベットの端に腰かけ、横たわろうとしたときですわ!来ちゃいました。女の子の日ですわ。
こんな感じで、言われまししても!」
長い。そして分かりにくい。
「実はですね。勇者が下界で功績を上げると、担当者に特別ボーナスが出るんです」
俺が頑張ると、ティナにボーナスが出るのか?
「はい。陸の覇王は、世界を滅ぼすレベルの存在です。ケインさんは、天界的には、1度世界を救った勇者に成りました。そして担当の私には、スペシャルボーナスです」
何もしてないんだがな・・、世界を救った扱いか。
「で、頂いたボーナスで買ったのが、これです」
ポケットから取り出し、俺たちに見せた。
下界←(あの世)→天界 無期限・無制限パス
999のパスみたいだ。
「これで、いつでも下界に来られます」
「ほ、保、保健料が・・・天文学的に・・なりますわ」
「だが、女神が下界に来てて、問題ないのか?」
「1000年に一度で~大騒ぎだからね~」
「大丈夫です。部長は大喜びでした。いつでも好きな時に、行きなさいって。なんなら、下界の子に成っても良いとまで、言ってくれました」
何としても、厄介払いがしたい様だ。
「でも、このパスで来た時は、神の加護に制限が付きます。強力系は使えません。日常生活系だけしか、使えなくなります」
「あら、ティナ様、ようこそカモミールへ」
アイリスの顔に生気が戻った。
「で、以前お話しした、支援コストです。大量にあるので、マオさんには「魔法取得券」を、差し上げようと思います」
「それがあると~~魔法が使えるの~」
「はい!それもプラチナ券です。プラチナ特権で、詠唱時間なし。使用回数上限撤廃。威力倍増。お得特権満載です。マオさんに、この券を使ってもらいます」
「どんな魔法が使えるようになるか~楽しみだよ~」
マオが魔法使いになった。
広い草原。森の入り口に来た。
どんな魔法を覚えたのか、確かめるためだが、闇魔法は強力だ。
被害が出ないように、町から離れた。
「では、マオさん!魔法を、ぶっ放しちゃってください!」
マオは身構える。初めての魔法だ。
魔法使いになったマオの頭の中に、魔法が宿り、マオはそれを口にした。
「うん~行くよ~~~闇魔法!毒霧だよ~」
マオの魔法は、毒の霧だった。
紫の霧が眼前に広がり、風に乗って森の中へ。霧に触れた木々が、溶けている!?
「これ強力ですわ。広範囲攻撃ですわね」
「ああ、見ろ!岩も溶けているぞ」
毒と言うより、溶解液だ。霧は、森の奥まで到達していた。
「えへへへ~凄いの~手に入れちゃったよ~」
マオはご満悦。が、ここで風向きが変わる。
「あら?風が向かい風になりましたわ。霧が此方に流れてきません?」
「はい。霧ですから風に流されます」
「私たちには、無害だよな。仲間には・・」
「敵味方関係なく効果抜群です。逃げないと溶けちゃいます!!」
早く言え!逃げろ!撤収だ!
霧が、森の中から草原に出て来た。
風は、逃げる俺たちに向かって吹く、追い風だ。
「ティナ様!神の加護で何とかなりませんか!?」
「無理です。日常系しか使えません。ウォッシュレットとか、切れたところの出血を、止める程度の加護しかありません」
まだ、そのネタ引きずってるようだな。
アイリスが、立ち止まり振りむく。
「なら私が!氷魔法!氷壁ですわ!」
アイリスが、ふりむきざまに、右手を左から右に振ると、氷の壁が出来上がる。
霧よりも高い壁。横幅も100mほどある。
霧は、氷の壁に阻まれ、こちら側には来ない。
どうやら、助かったようだ。
「これ~使い方考えないと~全滅するよね~」
ああ、風向き次第だな。
「ターナの風繰と合わせて使うのが良いようだな」
「ですわね・・・あら?」
氷の壁に触れた毒は、表面を溶かし、紫の水となって地面に流れる。
地面が、泡を吹き出しながら溶けだした。
毒で、地面まで溶けるなんてことがあるのか!?
氷壁は倒壊し、大地に穴が広がる。
今度は、溶けながら広がる穴が、俺たちを襲う。
「この毒は、物理的な毒ではありません。魔法の効果が続く限り、弱まることがない毒です」
解説は良い。今は対策だ。解決策だ。
「マオさん、魔法の効果は、消えそうですか?」
「ん~~~手ごたえ十分かな~」
当分消えそうにない!
「コストを使って、中級魔法を購入します」
ティナの手に、タブレットが現れた。
「ママゾンプライムに接続・・・走りながらだと、上手くクリックできません!」
「レナさん!ティナ様を、お姫様抱っこですわ!」
レナはお姫様抱っこをした。
「接続完了。パスワードは「ボラギノール」っと。INできました!」
パスワードは口にしたら駄目。
「闇魔法のカテゴリーから、浄化魔法っと。コスト払いを選択して、お急ぎ便、ポイントは貯める。完了です!」
ティナの前に、チケットが現れる。
ママゾンプライムお急ぎ便すげーーーーー。
「マオさん、これを使ってください」
ティナから手渡さたチケットを、マオが使う。
俺達のすぐ後ろまで迫っている穴。
マオは走りながら魔法を使う。
「闇魔法~毒浄化だよ~」
紫の光が、穴の拡大を止めた。今度こそ助かったようだ。
「怖かったですわ。迫りくる穴が、アレほど怖いとは・・」
なら、自分の穴で、俺を襲うのはやめてくれよな。
「みんな~ごめんね~私のせいだよね~」
マオが、謝ることではない。
「そうだ。マオは悪くはない」
「そうです!私が着いて居ながら・・・もっと慎重にやるべきでした」
「ですわね・・わたくしも、師として反省ですわ」
だが、これでマオは、とんでもない魔法を手に入れたわけだ。
「ええ・・・マオさんで、よかったですわ。アリスなら、面白がって撃ちまくりますわ」
ああ‥なんとなく、わかる気がする。
「随分と大きな穴だ。湖になりそうだな」
「はい、ここは(マオ湖)と、名付けましょう」
「では水が必要ですわね。氷魔法‼氷塊ですわ!ですわ!ですわ!」
3連発で、穴は氷の塊で一杯になった。
氷が解ければ、立派な湖、マオ湖の完成だ。
森の被害も大きい。
「樹さん~ごめんね~・・草さんも、虫さんも・・ごめんだよね~」
マオは優しい。魔法で溶かしてしまった草木に謝っていた。
「大丈夫だマオ。ターナに頼んで、再生してもらおう」
「はい。私が戻り次第、神の加護で・・」
「はい、はい。ターナさんにお任せですわ」
余程、怖いらしい。ここは、はっきり言っておいた方がいいな。
「なぁ、ティナ。神の加護の失敗ってあるだろ?」
「はい。実は私・・自分がドジっ子なのか?と思う時があります」
余り自覚症状はなしなのか?
「たまに失敗はしますが、被害なんか出てませんよね?」
「個人が保険の銘柄に成る位ですわ」
アイリスが小声で囁く。
「でも、天界での成功率は高い方だと思います」
「高いってどのくらいだ?」
「99%です。殆ど成功しています。最近の失敗では、実家の屋根を吹き飛ばしたのが最後です」
99%か、悪くない数字だ。
「それって~日に何回ぐらい使うのかな~」
「1日ですか?食事や洗濯、お掃除に、おトイレでの使用。
めんどくさい時は、歩く時にも使うので、50~100回ぐらいです」
前言丸々撤回だ。日に1回は、惨事を起こしてやがる。
「でも、下界に来ると、なぜか成功率が下がります。80%ぐらです」
5回に1回やられたんじゃ、たまらないぞ。
「たぶん重力とか、酸素濃度が関係しているんだと思います。それと方角ですね。下界は鬼門の方角になります」
相当、適当な言い訳だ。
「ティナ様、申し訳ありませんが、カモミールが破壊されると困りますわ。神の加護は、控えていただきたいですわ」
「やはり、私・・そうだったんですね。自分では気が付いて居ませんでした。自重するようにします。せめて50%ぐらいまで上げてから・・・」
おい。80%ってのは、成功率じゃないのか?失敗率か?
「魔王だな」
「魔王だね~」
「みなさんまで・・」
マオたちに言われたのが、きつかったようだ。
ティナは少し、俯き加減だ。
「ティナ、人にきつく言われることで、人は成長するんだ。嫌な思いをして、悲しさと悔しさが、人を大きくしてくれる。面と向かって言って貰えるのは、相手の好意だ」
「なるほど、確かにそうです。ケインさん、私頑張ります!皆さんの、良い女神に成るため、努力します。成功率を上げて見せます!」
ティナは、いい女神だ。
「ケイン!これを見てくれ!」
レナが、森の奥で何かを見つけたようだ。




