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残念世界の残念勇者   作者: XT
13/96

魔王編 ⑬

ティナ降臨、二日目の朝。

よく休めたらしく、寝言で使った神の加護の事は、すっかり忘れているようだ。

王宮西棟が倒壊した。


今日のティナは、フリーだ。

ティナの希望で、先代勇者ケインの墓参りに行く。

セレスは喪服に着替え、いつもとは違う雰囲気を出していた。


先代勇者の墓は、王都英雄の丘に建てられていた。

レナ、セレス、マオ、ターナ、俺とアリス、そしてティナで訪れた。

立派な銅像が建てられている。

「ケイン様、今日は女神ティナ様も来てくださったのよ。あなたが亡くなって200年。あなたの無念と希望は、ここに居る5代目勇者様が、名前と一緒に、受け継いでくれたわ」

何時になく神妙なセレスだ。

「だから、あなたは何も心配せずに、ゆっくり休んでね」

!?銅像の目が光った?


今度はティナが、銅像の前で手を合わせる。

「ティナです。私の力不足でケイン様には、ご苦労をおかけしました」

!?銅像の目から涙だと?

「あの時、私が神の加護を、うまく使いこなせてさえいれば・・」

!?銅像の手が動き、顔の前を下から上に?なんだと!?怒りの顔に変わった?大魔神か?

「もう大丈夫です。私は神の加護を極めました」

「ケイン、こいう時は、どういう表情が良いかだぞ?」

後ろでアリスが、リモコンを操作していた。

笑う、怒る、泣く、喜ぶ、飛ぶ、光る。リモコンについていたボタンだ。

「あんたから受け継いだ名だ。俺はこの名に誓って、魔王を倒す!そして、この世界を救って見せる!」

銅像が、ケラケラ笑い出した。

「ごめんだぞ、間違えたぞ」

英雄で遊ぶな。


各々が持って来た花束が置かれる。

セレスは、立派なユリの花束。

ティナは、見たことのない奇麗な花束。天界に咲く花だそうだ。

アリスとマオも、レナも、立派な花束を置く。

ターナだけが花輪だ。本日新装開店と書かれていた。

何処のパチンコ屋から盗んできた?


墓参りが終わる。

「ケインさん、少し二人でお散歩しませんか?」

後ろで手を組み、前かがみに腰を曲げ、上目使いでの誘い。

「いいぞ、ケインを貸すぞ。遣っちゃってもいいぞ。女神を逝かせた聖剣の持ち主。旦那に箔が付くぞ」

相変わらず、寛容な奥さんだ。

「そんなんじゃありませんよ!少しお話がしたいだけです」

ティナは全否定だが、俺は満更でもなかった。


ティナは歩き出す。俺も続いた。

小高い丘の上、ティナの金色の髪が風で揺れていた。

「ケインさん?質問、有りますよね」

ティナは、後ろ向きのままで言う。

「ああ、アイリスが書庫を調べて、歴史認識の違いを知った。ティナは、世界の全てを見ていたんだろ?知ってたんだよな?」

「はい。知っていました」

「何故?みんなに真実を言わないんだ?」

「真実は自らの手で解き明かすものです。私が言った歴史が正しくても、それは人から聞いた話にすぎません」

「女神として歴史を隠したのか?戦争の事を」

「そんなことはしません。800年前の生き残りの方々が決めたことです。ある種族の方が、この世界を守るために、戦争の記憶と記録を封印したのです」

「守るために?」

「数少ない生き残りの人類には、大国や争いの記憶なんか必要ないと」

力を合わせろと言う事か?


「なら初代の勇者の事は?戦争の産物が魔王なら、初代勇者は存在しないはずだ」

「はい。その通りです。正確にはケインさんは、対魔王4代目勇者です。でも、初代勇者は存在します。戦争を終わらせるために、召還した勇者様がいます」

「それはおかしいぞ。女神は国同士の争い、戦争には加担しないはずだ」

「国同士なら・・ですね」

「!?」

「堕天使です。この世界の戦争には、天界の者が加担していました」

「!!!」

「だから私は、勇者を召還したのです。でも、この世界で戦うには、余りにも純粋で、真っ直ぐな方でした」

ティナは、思い出すのも辛いのだろう。悲しそうな目で遠くを見ていた。


「800年前のこの世界は、野蛮な世界でした。今とは逆で男性の数が多く、女性が少ないせいか、血の気が多く、力が全て、戦いで勝った者が正義。核の炎に包まれた199X年のような世界でした。

そんな世界に、勇者様は失望していました。でも、諦めず、根気よく、何とか戦争を終わらせようと、策を弄してくれました。しかし、周りは・・・」

なるほど、俺と同じなんだな。周りの評価は低く、協力は得られない。

頑張っても空回りしかしない。

「はい。そんな時に表れたのが魔王です。勇敢に立ち向かってくれましたが」

負けたのか・・・。

「はい。ですから、ケインさんが5代目と言うのは、嘘ではありません。一撃も入れられずに負けましたが、一応戦っています」

「そうか、勘繰ったりして、悪かった」

「…ケインさん、私は女神です。すべての人を幸せに導くのが使命です。しかし皆さんが、幸せになろうとしても、同じ方向を向いているとは限りません。ケインさんが、私を女神に見えなくなる時があるかもしれません。でも、信じてください。私は絶対に裏切りません」

「・・・・ティナ」

なにかを伝えたいようだが、言えないことがある?

そんな感じだ。

今は追及しない方が良いな。

「わかったよ。俺は信じてる」

「はい!ありがとうございます。では、戻りましょう。あまり長く二人でいると、2R目に突入とか思われます」

1Rなら良いのかな?


「戻ったかだぞ。遅いから2R目に突入したかと、おもったぞ」

女ってすごいな。

「スミマセン、アリスさん。1Rも消化できていません。本当に、お話しタイムだけです」

「わかってるぞ、遣ったら臭いでわかるぞ」

犬族ってすごいな。

「王宮に戻るぞ。ママがお昼の用意をしてるぞ」

俺達は帰路に就いた。



「おおおおおお、かかかかか、ええええええ、りりりり・・・」

言葉にならない出向を受けた。

「ケイン、大物が来てるぞ」

「見たことのない、大物よ」

レナとセレスも、慌てるほどの大物?

「ほよ。やぁケインさん、お帰りなんだな」

あんたは確かティナの。

「おねぇちゃん!」

「ティナちんが壊した、月の修復に来たんだな」

「その節は、お世話になりました。助かりました」

「うんうんなんだなぁ。ケインさんに頼られて、うれしいかなぁ」

「むむむこここどどどのののの・・・」

大女神を前に、言葉すらままならないアイリスだった。


「OKなんだな。大体の状況は分かったかなぁ?では修復にかかるんだなぁ」

「姉は女神でも、数人しか持っていない、天地創造系の資格を持つ大女神です」

「優秀なんだ」

「はい。私は3女ですが、出がらしです。優秀なところは、姉と妹に取られて、私は・・・」

「ティナちんは、優秀なんだな。私は、天と地は作れても、人の心は作れないのかな?ティナちんみたいにはね」

ティナの良いところを、ちゃんと見ている、良い姉だ。

「では行くかな?」

顔つきが変わる。大女神の顔だ。

「あまねく神々よ、我に力を、大女神の加護!天地創造!月よ甦れ!」

!!!割れたミキちゃんと、ランちゃんが、輝く。

二つの割れた月は、青く輝く生命の星へと変貌した。

「今は恐竜時代かなぁ?あと5億年で人類誕生なんだな」

大女神すげーーー。

アッという間に天地創造しちまった。

「7日もかけるのは、下手糞の仕事なんだな」

カッコぇぇぇ。

ビューティーは、ティナと一言二言話しをする。

「では、帰るんだなぁ。ティナちんの被害が出たら、また来るかな」

「どどどうううももも・・・」

まだ、しどろもどろだ。

ビューティーは笑顔で帰って行った。

「姉は忙しい身です。でも、いつだって私の失敗の、尻ぬぐいを・・。お尻ですよ、穴まで拭いてもらってません。穴はお医者様だけです」

スルーする身にもなってくれ。


王宮の部屋に行くと、アリッサのお出迎えだ。

「パパおかえり」

「いい子してたか?」

俺は、アリッサを抱きかかえる。

「パパお仕事、おわり?」

「ごめんなさいね、アリッサちゃん。パパを取ったティナは、悪い子でちゅ」

ティナの子煩悩振りも、なかなかのものだ。

「パパ、遊んで!トランプしよう」

「・・・・よし、やるか!」

「わたちが、大統領だよ。パパは政務補佐官ね。ママが中間選挙の敵陣営だよ」

そっちか?っーか40日才児の遊びか?

「大統領ゴッコは、まだ早いぞ。普通のトランプ遊びなら良いぞ」

「うん!パパとトランプ遊びやる!」

みんなでトランプ遊びだ。

だが、俺は自他ともに認める、引き弱男。アリッサの前で、頼れるパパになるためには、策を弄して、作戦勝ちを狙う。


アリッサは、テーブルにトランプを伏せたまま広げる。

「1枚づつ取るの。一番数字の大きい人の勝ち1が一番弱くて、13が一番強いんだよ」

グハ!運任せか!最も苦手分野だ。

「これではケインの負け決定だな」

レナ、俺を甘く見るなよ。

「不味いぞ、パパの威厳が失墜の危機だぞ」

任せろアリス。俺には策がある。


マオとティナは論外だ。

アリスとターナ、アイリス、たぶんレナも並み以上だろう。

狙いはセレスだ。

セレスは、如何にも幸薄そうな顔つきをしている。

まずは最弱カードのエースが一番出にくい状況。

1番に引くことだ。

後は強運グループに引かせた後、セレスが引けば、

セレスは弱いカードが多い状況で引くことになる。

「よし、順番は俺が最初だ。セレスが最後で頼む」

「あら、私が最後なの?順番なんかどうでも良いじゃない」

甘い。甘すぎる。お前は、その甘さの前に沈むんだ。


良し俺からだ!えい!

・・・・エース・・・しかも最弱ハート。

「期待を裏切らないぞ。私は8だぞ」

「ケインは予約席に座れたようだな。私は10だ」

「私11」

「13だね~」

「アリッサ12だぁ」

「わたくしは、9ですわ」

「はい。わたしも13です」

・・・くそ、予想は的中なんだ。

「あら、みんな良いカードね。わたし3だわ」

ぐはぁぁぁぁ俺の負けだ。予想は正しくても、引きの悪さがどうにもならん。

その後10連敗した。すべてエースを引きまくった。


「ぱぱ、よわいの?」

「ああ、済まないアリッサ。パパは勝負運がないんだ。一番弱いカードのエースしか引けない。弱いパパでごめんな」

「・・・パパ弱くない!」

アリッサが部屋を出て行ってしまった。

「例えゲームでも、俺は、アリッサの期待に応えられないのか・・」

「ケイン、大丈夫だぞ。アリッサはいい子だぞ。分かってくれるぞ」

「そうですわ。まだ子供ですわ。大人になれば」

「ああ・・・・」

親とはこんなにも、子供の一挙一動が堪えるものなのか。

俺の親は・・・。


アリッサが戻ってきた。

「もう一度!こっちのトランプでやるの」

「そのトランプ、天界公認のいかさま防止加護の付いたトランプですね」

あるんだ?

「はい。カードに印や魔法による加工ができない仕様です」

「はい!またパパから。1枚引くの!」

「ああ、引くよ。いかさま防止か、なら間違いなくエースだ。えい」

!?2だと?

「ほら、パパ!エース以外も引ける!」

「ほう、アリッサの愛の力か?次は私だな」

アリッサは持っていたカードをポケットに。

「レナはいいの!2を引いたパパの勝ち」

が、滑って床に落とした。表がえったカードは全て2だった。

「52枚全部2だぞ」

「ぱぱ・・・・」

くそ!抱きしめてやる。こんな可愛い娘、抱きしめずにはいられない。

が、ティナに先を越された。


「アリッサちゃんの想いは、必ず届きます」

ティナは、自分の首にかかっていたネックレスを外すと、アリッサの首に付けた。

「このネックレスは『想い想われのネックレス』です。アリッサちゃんを想う人。アリッサちゃんが想う人。お互いの想いが強いほど、想いは現実となります」

「パパに2を引いて欲しいと、アリッサが想うと?」

「・・・それは、パパに頑張ってもらいましょうね」

結局は俺が、か。

「女神が身に着けているモノは、高価だぞ」

「ですわ、あのTシャツも、町で大人気ですわ」

「良いのか?マジ高そうだ」

「はい。これは母が、女神になった記念に、と下さったものです」

「余計ダメだろ」

「いいえ。私はこれをアリッサちゃんに持っていて貰いたい。そう思いました。母は分かってくれる系の方です」

「ヤフオクにあげたら、とんでもない値が付くぞ」

「天罰ですよ」

「はい・・・だぞ」

こうしてアリッサは、想い想われのネックレスを頂いた。


「なぁ、アリッサ、なんで2だぞ?13なら最強だぞ」

「ダメ!パパにいきなり13なんか引かせたら、ショックで死んじゃう」

たぶん死ぬ。

「階段は一歩づづ登るんだよ」

くそぉ~~~可愛すぎる。今度こそ抱きしめて・・・

「偉いですわ~~~健気さに、もう泣けてきましたわ」

今度は、アイリスに先を越された。が、アリッサは空気の読める子だ。

自分からアイリスを離れ、俺の所で両手を広げた。

抱きしめた!渾身の!魂の!ハグだぁぁぁ!!!

・・・気のせいか?アリッサが、俺の尻を撫でまわした?



ティナの帰る時間が近づく。

「本当にお世話になりました」

「いえいえですわ。月も無事ですわ。西、東棟も保険で新品すわ」

「また来るぞ。ティナ様降臨を待ってるぞ」

「はい。必ず来ます」

「また、フォロー頼むな」

「はい。頑張ります!。では時間ですので、最後に盛大な奇跡を!」

「さぁさぁ、お帰りはあちらですわ。また来てくださいな」

「でも奇跡を・・・」

「さようならですわ~~~」

良い流れの中の別れだったんだが、露骨に追い返した。


次はパルスとの約束だな。

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