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残念世界の残念勇者   作者: XT
12/96

魔王編 ⑫

いよいよ今日、ティナがやってくる。

王宮の庭に降臨するそうだ。

多くの人が、一目見ようと集まっていた。

時刻は深夜0時、30秒前。

綺麗な3つの月は、静かに王宮を照らしていた。


時間だ。

眩しい光に包まれ、天空に金色の扉が現れる。開く扉の中も光輝いていた。

中から出てきたのは、ティナだ!

・・・Tシャツ。デニムのパンツ。麦わら帽子。コンビニの袋。ピーチサンダル。

Tシャツには縦書きで「ざ・女神」と書かれていた。

どう見ても、海の帰りだ。が、何はともあれ、無事に女神降臨。


「ケインさん!」

真っ先に、俺に駆け寄る。

「嬉しいです!こうして、お会いできる日を、楽しみにしていました!」

手を握られる。

「はい。これ」

コインを渡された。

「お賽銭です!」

女神に拝まれた。これが天界の挨拶なのか?


俺を拝み終わると、オーバーアクションで振り返り、民衆に向かい

「私は女神ティナ!降臨を記念して、神の加護による、奇跡をお見せします!」

あ、まて。なんかすごく嫌な予感がした。

「大丈夫です。この日のために練習してきました。あの3つの月を、太陽に変えて見せます!」

嫌な予感しかしない!


「神の加護!月よ!太陽に変われです!」

!!!!!!

真ん中の月が割れた。

「ミキちゃんが割れたぞ!」

月の名前か?

「左から、ランちゃん、ミキちゃん、スーちゃんだぞ」

「もう1回です!」

早く止めないと、普通の岩塊に戻りますになるぞ。

「お~ほほほほ~ティナ様、奇跡より宴会ですわ。王宮内に用意してありますわ」

「でも、皆さんに奇跡を」

「さぁさぁ、宴会宴会。カモミールに来たら、駆け付け3杯ですわ」

アイリスに無理やり連れていかれた。

「月、保険対象外」

契約担当のターナの一言だ。アイリスが聞いたら卒倒するな。

「3つあるぞ。1つぐらい大丈夫だぞ」

アリスは楽観的だった。


「さぁ!ティナ様!歓迎の宴ですわ。王都の誇る料理を並べてみましたわ」

「まぁ!凄い!見たことのない料理も、食いしん坊なので、うれしいです。これは、初めて見ます。早速頂きますね。!!おいしい!」

「はい、娘のアリスの料理ですわ」

「あれゲテモノだぞ。庭で捕まえた虫を、叩いて適当な野菜と炒めたぞ。冗談のつもりで置いておいたぞ。いの一番で行くとは思わなかったぞ」

絶対に言うなよ。


「これは独創的形ですね。プリンでしょうか?」

どう見ても崩れたプリンだ。

「あんなの私、作ってないぞ」

「・・・わたしが・・つくったの」

アリッサが、俺の足元に来ていた。

「ケインさんとアリスさんの娘さんですね。初めまして、女神のティナです。アリッサさんは、おいくつでちゅか?」

「35日才でちゅ」

「可愛いでゅね~女神ティナは、アリッサんのプリンを頂きます」

そ言うと、一口分を皿に上品に盛る。

「美味しい!アリッサちゃんは、料理がお上手です。お代わりしちゃいますね」

今度は大胆に行った。盛られている皿ごと食らいついた。

「食いしん坊だぞ」

「待て、娘の初料理だ、俺にも食わせてくれ」

ティナの持つ皿から、プリンを奪うと口に。

『!!!』

ティナは、俺の足を踏む。

「パパも美味しいそうでちゅよ~」

・・・なんだこの味は!?

砂糖と塩を間違えている。しょっぱいぞ!

「ほら、こんなに驚いて。パパ嬉しそうでちゅよ~」

「ああ、・・・アリッサはママに似たようだな。料理が上手くなるぞ」

「えへへへ」

アリッサの嬉しそうな顔だ。


すかさず横から、アリスが水を差し出した。

「はちみつ入りだぞ。お口再生だぞ」

!?知っていたのか?

「犬族だぞ、鼻は効くぞ。砂糖の匂いがしなかったぞ」

アリスは、俺の耳元で呟いた。

「ありがとうございます。でも大丈夫。神の加護を使います。神の加護!お口再生です!」

どごぉぉぉぉぉぉぉ~~~ん

「!!東棟が崩れ落ちましたわ!」

また、やらかしたようだ。

「保険対象」

ターナの言葉に、アイリスの安堵の顔も、その目からは涙が流れていた。


「月や、棟の一つや二つ。全然いいぞ。大事なものを壊さなかった、ティナ様には感謝するぞ」

何時以来の「様」付けだ?

「モノなんか、いくらでも壊して構わないぞ」

「その通りだ、形あるものは、何時か壊れる運命だ」

レナ、来たのか?

「怪しそうな奴は~いなかったよね~」

「ええ、周辺の警護をしていたのよ。偉いでしょ」

マオと、セレスも来た。

「さぁ、私たちも頂くわ。お腹減ったわ」

機械族でも、腹が減るのか?

レナは、うすら笑いを浮かべながら、説明してくれた。

「食事は人間とのコミュニケーションの、大事なファクターだからな」

なるほど、で?旨い不味いは分かるのか?

「勿論だ。味覚もある。旨い不味いだけでなく、好みもある。私は菜食系だが、セレスは肉食系だ」

「レナはサラダしか~食べないよね~」

「だから胸が無くなるぞ。肉喰わないからだぞ」

そうか、なるほどな。

「これは仕様だ!私たちは太ったりはしない」

剥きに成るところを見ると、気にはしてるようだ。


「ティナ様、こちらにお席を用意してありますわ。おかけください」

大理石の立派な椅子だ。

「あ、私は立ったままで・・・」

「ティナ様がたちっぱでは、私たちは掛けられませんわ。さっさぁ、どうぞどうぞ」

ティナは、そう言われると、少し困り顔で椅子に向かうが、椅子に置かれたクッションを見ると・・。

「!!こ、これは!?尻の穴保護クッションですね!」

違う!ドーナツクッションだ。

「皆さんも、痔なんですか?」

敢えて触れないようにしてるんだ、自分で掻きむしるな。

「なんのことですの?これは王宮ご用達、ドーナツの形のクッションですわ。美味しそうな色形。座り心地も最高ですわ」

「いえ、なんでもありません。女神が痔なんて、ありえません」

大分手遅れだ。


宴会は朝まで続いた。

ティナは大喜びだった。



「おはようございます。って、もうお昼ですね」

ティナが起きてきた。

「長旅でお疲れだったのですわ。好きなだけ、お休みに成っていて下さませ」

「ええ、でも視察も兼ねていますので、今日は女神としての、仕事をします」

「女神の仕事?だぞ?」

「はい、王都にある、女神神殿の視察です」

「ではアリス、ティナ様をご案内してくださいな」

「分かったぞ、みんなで行くぞ」

こんな流れで、俺たちは女神神殿に行くこととなった。


この世界の唯一神であるティナは、神殿に祭られている。

神殿は天界との共同運営で、派遣された天使も、ここで働いていた。

「あれ?確か、天界窓口の?」

「五代目さん!」

「今はケインです。こちらでもお仕事を?」

「はい。掛け持ちで巫女もやっています」

天使が神殿で巫女?


「ご苦労様です。確か5級天使の「ルル」さんですね」

「はい!ルルです。ティナ様、ご降臨ご苦労様です」

「凄く綺麗で、掃除も行き届いてます。良い管理をしてくださって、ありがとうございます」

「この世界の方は、信仰心にあつく、毎日ティナ様の像を、磨いてくださってます。ティナ様護符や、ティナ様人形の売れ行きも上々です」

「ティナ人形?」

「これです。可愛いですよ~」

おお、なるほど。

ティナを2頭身にデフォルト化した人形だ。

名札に、何か書いてある・・・無邪気なデストロイヤー女神ティナ。

「これは?」

「はい。私の二つ名です。女神女学園の頃のあだ名が、そのまま二つ名になりました」

その頃からなのか・・・。


「今日も大勢の参拝の方が、ほら、沢山のお賽銭を」

ルルが、女神ティナ像の前に置かれた、賽銭箱を指さす。

「女神の力の源は、信仰心とお賽銭、グッツの売り上げです。カモミールは、私に大きな力と、営業成績を与えてくれています」

「今回の降臨で、売り上げ増は確実です」

「はい。部長にも販促してくるように言われています。此処で奇跡を見せれば、売り上げ倍増。ボーナスも倍増です」

「待て待て、今は、、、そうだな、おみくじでも引こう」

俺は目についた、おみくじで、話を逸らす。

「ナイスだね~またやらかしたら~女王泣いちゃうからね~」

「危機一時回避」

おう、俺の機転だ。


「私のおみくじは、一部では、よく当たると噂されています」

「一部だぞ?」

「はい。当たった人から、当たるねと言われてます」

まぁ、当然だ。

「では、私から引いてみます。女神の幸運見せて差し上げましょう!えい!」

おおおおお、大吉だ。流石は女神。

「でも、恋愛運は『シーズン4まで待ちましょう』になってるぞ」

だからなんだ、そのシーズンって。

「健康運も~イマイチだよね~『切れたら大変』だよ~」

ピンポイントか?すごいな。


俺はっと。

「最強最悪グレート大凶・・・なんだこれは?信者を減らしたいのか?」

「ウぁ、初めて見ました。あるとは聞いていましたが・・」

祭られている女神すら驚きのようだ。

「でも、恋愛運は良いぞ『絶好調。最高の妻をめとるでしょう』だぞ」

アリスの事だな。

「待ち人も~『320日後に表れます』だよね~」

魔王の事か?待ち人扱いなんだ。

「勝負運最悪『マイナス200億ポイント。勝てる相手が居ません』」

勇者として致命的でね?

「ケインさん、おみくじなんか、当たるもひゃっけ、外れるもひゃっけです。気にしないで大丈夫です」

販売元が信用性を全否定した。って言うか、信じられない精度だな。


「ケインさん、これ撮って良いですか?」

ルルちゃんは、俺の引いたおみくじを写真にとる。

「こんなのを撮っても・・・」

「ティナ様が担当する勇者様の引いたおみくじっと。天界インスタにあげました」

あるんだ・・天界にも。

「うぁ~~~もう3万いいねが付いてます」

何処が良いんだか?

「まだまだ伸びます…すごいです」

「歴史の教科書に載るかもしれません。今だ、引いた人は居ないんですから」

逆なら良かったんだがな。

「最高最強ミラクル大吉とか~でたよ~」

マオも凄いのを引いた。

「ウぁ。初めて見ました。あるとは聞いていましたが・・」

祭られている女神すら驚きのようだ。

ってデジャブ。

「流石はマオだぞ。でも恋愛運は『未知の世界』だぞ」

「勝負運『199億ポイント』・・ケインの勝ち」

マオの運の良さより、俺の運の悪さの方が勝っていた。


「ケインさん大変です!私のコスト口座に、大量の振り込みが」

どういう事だ?

「はい、書き込みが付いてます。

(こんな不幸な勇者の守護、大変ですね)

(まさか、これを引いた勇者の担当とは、絶望しないでガンバ)

(次は良いことありますよ。少ないですが使ってください)

天界の皆さんからの、同情支援のコストです」

「凄いですね・・同情票が、ティナ様の口座になだれ込んでます」

喜んでいいのか?俺は喜ぶべきなのか?


「皆さん、聞いてください。丸々1回分の、魔王討伐予算に匹敵するコストが集まりました。これで皆さんに、超強力な「スキル」を付与できます」

とんだクラウドファンディングだ。

「なんにしても、ケインのおかげだぞ」

「そうだね~ケインの不幸が無ければ~こうはならないよね~」

「不幸転じて福となす」

物は言いようだが、確かに実にはなりそうだ。

ここは素直に喜ぼう。


王宮に戻ると、すっかり日が暮れていた。

アイリスは、宴会の準備を終えて出迎えてくれた。

ティナは宴会のお礼にと、神の加護を使い、2つ目の月「ランちゃん」を破壊する。

「いいぞ、一つや二つと言ったぞ。でも、三つめは死守するぞ。スーちゃんは死守するぞ」

「神の、と言いかけたら、これで殴りますわ」

ゴルフのクラブだ。それはよせ、シャレにならん。


連日の宴会は、深夜まで続く。

ティナは、大いに食べ、大いに楽しんでいた。

あれだけ食べて、尻は大丈夫なのか?

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