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残念世界の残念勇者   作者: XT
11/96

魔王編 ⑪

パルスが茶を持って来た。

茶は3つだ。レナとセレス、自分の前に置く。

俺達は、眼中にないという意思表示だ。


「この手紙を見て欲しい」

レナは、魔王軍からの親書を取り出した。

パルスは、それを見ると「下らん」と、一言吐き捨てた。

「わ、わかるのか?」

レナが身を乗り出す。

「分からないお前たちの頭は、何で出来ておる?」

「頼む、教えてくれ。どんな意味があるんだ?」

セレスは一言もしゃべらない。馬鹿にされるのが、分かっているからだ。


「ああ、教えてやろう。じゃが約束じゃ。答えを聞いて納得したら帰れ。わしは、魔王討伐には協力はしない。いいな?」

「・・・ああ、わかった。魔王討伐の話はしないさ。約束する」

良いのか?だが、ここは任せてある。口を挟むわけにはいかない。

マオもターナも分かっているようだ。

任せた以上は、信じる。


ーーーーーーー親書ーーーーーーーーー

魔王軍は、魔王の復活の準備をしています。

魔王軍の魔王は、魔王軍の魔王復活を阻止するため、

王都との共闘を望みます。


魔王軍、魔王アズサより、王都女王アイリス様へ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「魔王軍は2つある。1つは魔王を復活させようとする、魔王軍。もう1つは、魔王アズサ率いる魔王軍。後者は、王都との共闘を望んで居る」

おおおおおおおおお。

偉そうだが、確かに、言われてみれば、その通りだ。頭が良いというのは伊達ではない。


「成程、流石はパルスねぇさんだ。意味が分かった」

「なら約束通り帰るんじゃ。わしは静かに余生を送りたい」

「ああ、約束だ。魔王討伐の話は無しだ。だが、妹との話なら良いだろう?二人だけで話がしたい」

レナは立ち上がり、別の部屋に向かう。

「まぁ、200年ぶりに会った妹の望みぐらいは、叶えてやるとするかのぉ。何を企んでいるかは、知らなんがな」

パルスも立ち上がり、レナの居る部屋に入り、ドアを閉める。


「ふぅ~~~気を遣うわ」

何も喋らなかったのにか?

「そうよ、この重い空気。代用品パーツに、負担が掛からないか、心配で心配で・・」

そういう気を遣うか。

「レナは~説得できるのかな~」

「あれ、頑固そう」

「無理だわ。今日は余程機嫌が良かったのよ。手紙の解読だけでも、ラッキーよ。説得なんか200年前、嫌と言うほどやったのよ」

そうか、なら期待はできないな。


「レナ、わしに次ぐ切れ者のお前が、はいそうですかと、引くとは思えん。何を企んで居る?」

「あははは。200年ぶりに会ったんだ。企みなどない。確か、ねぇさんは本が好きだったよな」

「好きじゃ。ジャンルは問わん。本なら何でも大好物じゃ」

「これを読ませてみようと思ってな」

レナはカバンから数冊の本を取り出し、パルスに渡す。

「随分と薄い本じゃな。ふむ、こっちは小説か。こっちは漫画。どちらも大好物じゃ。どれどれ。

 !!!なんとレナ!何だこの不埒な!男同士じゃと!?お前、いつからこんな・・・こんな・・・こん・・ほぉ~~おおおおお」

「まだあるぞ。読むか?]

「ああ。続きを、続きを早く出すのじゃ」

「ああ、沢山持って来た」

「全部出せ、全部だすのじゃ」


「こんなジャンルがあるとは、わし知らんかった」

「どうだい?ねぇさん。素晴らしい世界だとは、思わないかい?」

「思う‼すべてが新鮮じゃ。心が洗われる思いじゃ」

「現実で、見たいとは思わないか?」

「現実でじゃと?見たい!見てみたい!」

「今の世界では無理だ。男が足らない過ぎる。が、魔王を倒し、呪いの無くなった世界では?」

「無くなった世界では・・・?」

「男は増えて、煌めく世界が訪れる!」

「訪れるじゃと!?」

「ああ、私たちの望む世界だ!」


勢いよく扉が開いた。

「勇者(仮)、何をボサっとしておる。サクッと魔王とやらを倒しに行くぞ」

なにをやらかせば、こうなる?

「大したことはない。私の趣味を、理解してもらっただけだ」

布教しやがった。


「次の行動じゃが、会わせたい奴が居おる。魔王との戦いに成れば、大きな戦力になるじゃろう」

「そんな奴が居るのか?この世界に」

「ああ、絶大な力じゃ。時間はあるか?今からだと1週間はかかるじゃろう」

「ないわ。今すぐ戻らないと、大変なのよ」

「実は、ここに来る途中に襲撃を受け、起動維持に必要なパーツを盗まれた。今は代替品で動いているが、あと3日ほどしか動けない」

「では時期を決めて落ち合う事にする。いずれにしても、手紙の魔王軍とも会わねばならん」

「魔王軍に~会うとなると~魔獣と戦う事になるよ~」

マオの心配はもっともだ。

「案ずるな。策はある。わしに任せて置け」

流石は戦略特化型だ。もうそこまで考えているのか?

「では、中型の船を用意てもらおうか。そして5月5日朝に、王都西海岸で会うとしよう」

俺達は、パルスと約束をすると、王都への帰路に就いた。



「ケイン!おかえりだぞ!!!」

アリスが飛びついてくる。俺の周りを駆け回る。

尻尾が、千切れんばかりに振れて居た。

一緒に、白い犬が俺に甘えてきた。

アリッサだ!こんなに元気に!

俺は、アリッサを抱きしめる。

「ただいまアリッサ」

アリッサは、俺の顔をなめ捲った。歓迎の印しだ!

「違うぞケイン、それアリッサじゃないぞ。ただの野良犬だぞ」

なんだとぉ!


「婿殿!お帰りですわ」

アイリスに抱っこされた幼女。

今度は間違いな!アリッサだ!

生まれてから6日目だ。もう2歳児ぐらいに成っている。

まだ顔に犬っぽさは残るが、人間の目、口。

「アリッサだよな?」

「ぱぱ!アリッサだよ」

!!!!わが子だ!我が子との初会話だ。

俺は、アリッサとの、再会を楽しんだ。

レナ達も、アリッサを取り囲み、「可愛い可愛いと」と、褒めたたえていた。



「婿殿、幾つか報告がありますわ」

アイリスの顔は女王の物だった。

「1つ。歴史認識についての、情報がまとまりましたわ。

 2つ。天界から書類が来ていますわ。

 3つ。アリッサの事ですわ。どれからお聞きになります?」

「アリッサ~」

「だと思ったぞ。ケインなら間違いなく、アリッサからだぞ」

当然だ。我が子に関する報告は、何を差し置いてもだ。


「ケイン、アリッサと戦うぞ」

「!?戦えだと?6日児だぞ。見た目は2歳児だが」

「婿殿、説明より、ご自分の目で、見たほうが良いですわ」

「ぱぱ、おねがいちまちゅ」

アリッサは両足で立ち、おもちゃの剣を抜き、一礼をした。

「よし、パパが相手だ。どこからでもかかってこい!」

「いくよ、ぱぱ!魔法剣!火斬!」

「グハぁぁぁぁぁ!!!!」


「蘇生したぞ。もう大丈夫だぞ」

俺は、子供用のプールの中で意識を取り戻した。

「ティナ様から頂いた、命の泉の水ですわ」

「確か今、アリッサと・・・」

「ぱぱ、ごめんね」

アリッサが横で泣いていた。

「婿殿、アリッサちゃんは、レベル400の魔法剣士ですわ」

「な、なんだとぉ!!!レベル400だと!?セレスと同じだと!6日児が!?」

「ケイン、私は剣士のレベル400よ。上級職の魔法剣士のレベル400とは、比べ物にならないわ」

「この世界で、勇者に次ぐ上級職は、魔法剣士だぞ」

「アリッサが、その魔法剣士だというのか?」

「魔法剣士は努力では成れませんわ。生まれ持った才。アリッサちゃんは、生まれながらにして魔法剣士ですわ」

「それって、凄い事なんだよな?」

「祝賀会3回分ですわ」

「前回と同規模か?凄いな!」

「ぱぱ、いたくなかった?」

俺は、アリッサの頭に手を置き、笑顔で答える。

「痛くなんかないさ。アリッサの凄さに、嬉しさが溢れ出しているところだ」

「ぱぱ、うれしい?」

「ああ、すごいぞアリッサ。パパもママも、こんなに嬉しいことはない」

アリッサの顔に笑顔が戻る。

アリッサは、この世界を救う力となるかもしれない。

自分の未来を掴む力を持って、生まれて来たんだ。



「次の話がだ、どんな話を聞いても、感動しそうにないな」

「大丈夫だぞ。感動するような話じゃないぞ。 次は、天界から来た書類の話だぞ」

「婿殿、これを見てくださいな」

ウぁ。細かい字で、しかもこれは天界文字だ。

「尻の下においても壊れない、何とかルーペで見ないと、見えないぞ」

「見えたところで、この文字は読めないだろう」

用紙にびっしりと読めない文字が、1文字約0.3mで書かれていた。

一番下の署名、捺印だけが、俺たちの言葉だ。


「天界窓口の天使様に、読んでいただきましわ」

「ぶっちゃけると、同意書だぞ。女神が来て、どんな被害が出ても、天界は保証しない、って内容だぞ」

「どんな被害って‥。女神だぞ、被害なんか出すわけないだろう」

「細かく書かれているのは、被害の一覧ですわ。洪水を起こしただの、海を割ったのだのから、花瓶を割るとか、机に傷をつけるに至るまで。事細かですわ」

「中には便座を汚す、なんてのもあるぞ。石をパンに変えるのは、食品衛生法違反らしいぞ。とにかく一切の苦情と賠償は、受け付けないという事だぞ」

「保険の窓口も書いてありましたわ」

「なんとなく悪意を感じるな。保険、一応相談してみたほうが良いのか?」


「はい。こちらは天界保険、お客様加入窓口です」

「あのですわ。今度女神様がいらっしゃるので、保険に入ろうかと思いますの」

「女神降臨保険ですね。ご案内します。1日滞在で30ゴールドです。物損から、人的被害に至るまで、幅広く保険の対象としております」

「30ゴールドなら、一応は加入しておくぞ。3日で90なら、安心を買うぞ」

「はい、ではご契約ですね。降臨される女神さまのお名前から、宜しいでしょうか?」

「ティナ様ですわ」

「・・・・。申し訳ありません。今ご案内した保険の、加入条件を満たしておりません。

ティナ様損害賠償保険を、ご案内いたします。1日滞在で9000万ゴールドです」

「なんだと!30万倍ってどういう事だ!」

「更に、世界を破壊した際の、天地創造やり直し、人類再生などの場合は、保険の対象外となります」

「あいつ、魔王かだぞ」

「2億7千万は、とても払えませんわ。半年分の国家予算ですわ。大祝賀会が270回開けますわ」

「とりあえず保留だ。流石に保険の額がでかすぎる」


「どうします婿殿?」

「イメージしてたティナと、現実のティナに大きな差があるようだ」

「そういえば、部屋の壁に、脱ドジっ子女神って紙に書いて貼ってあったぞ」

「ああ、リリスも、あのドジっ子女神と言っていたな」

「ドジのレベルが、私たちとは、違うような気がしますわ」

「そうだぞ。世界を滅ぼすレベルだぞ」

「流石に困ったな」


「どうしたの~みんなで頭抱えて~頭髪マッサージかな~」

「毛根刺激」

ターナとマオだ。

「実は、あれこれこうだぞ」

「3億かぁ~私出すよ~」

「!?」

「マオ金持ち」

「マオ、3億ってわかるかだぞ?3億は、1ゴールドが3億あることだぞ」

「たぶん~あるよね~ターナ~」

「楽勝。200回加入できる」

「なんだとぉ!」


ピーが、色々な世界で投資をやって、マオの資産を増やしまくってるらしい。

「超能力の悪用だぞ」

いや、微妙だ。能力はスキルだ。投資スキルと考えれば、問題ない。

「ティナ様に~気分よく来てもらいたいよね~」

マオは大金持ちだったと知った。

アイリスはマオの出資で、ティナ損害賠償保険グレード(1日1億ゴールド)に、加入した。


3つ目は、歴史認識の違いだ。

アイリスが、書庫の記録をまとめた内容だ。


今までは、800年前に、突然『魔王』は攻めてきて、3つの呪いをかけた。と認識していた。が、違うようだ。

800年前以前、人類は戦いに明け暮れていた。

領土をめぐり、北と南、東の3つの大国の戦い。

東の大国の生み出した兵器、それが『魔王』だったのだ。


『魔王』が、呪いをかけた。これは、史実通りのようだ。

魔獣落ちの呪いは、敵味方関係なく、人々を魔獣に変えた。

『魔王』は暴走したのだ。

魔獣落ちと『魔王』の攻撃、人類は、たった数日で衰退していった。


だが、こんな時代に、魔獣落ちしなかった人間はいたのか?

誰が魔王を封印したのか?

魔王が兵器だとしたら、国同士の戦いに、女神は関与しない。と、いう事は、初代勇者は存在しないはず。

ティナは俺を、5代目だと言った。

新たな謎が残った。。


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