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残念世界の残念勇者   作者: XT
14/96

魔王編 ⑭

今日は、約束の5月5日だ。

アリッサと涙の別れをすると、俺たちは海岸に向かった。

昨日レナとセレスが、先に行って合流している。

行けば、すぐ会えるはずだ。


居た、パルスだ

「待って居ったぞ」

潮干狩りの最中だった。

「ケイン、見てみて。一杯取れたわよ」

「ああ、これを肴にした枡酒は最高だ」

「ワシは磯焼で一杯じゃ」

魔王が来るまで遊んでるか?全く緊張感のない。呆れた連中だ。


「ケイン~こっちも沢山取れるよ~」

「ハマグリも居る」

っておい!お前たちまで始めたのか?

「みんな、不謹慎だぞ。私たちは魔王を倒すために、パルスの知り合いに会う為、来たんだぞ」

珍しくアリスが真面目だ。真面目だが、両手で砂を掘り出していた。


太陽が真上に来た。まだ潮干を狩っていやがる。 

「私たちが、遊んでるように見えるかだぞ?」

潮干狩りは遊びだ。

「甘いぞ、ケイン。私の思慮の深さに驚くがいいぞ。マオ!頼むぞ」

「ほいきた~いくよ~」

マオがリモコンを取り出し、スイッチを入れる。


!!砂浜に、背丈ほどの棒が、10m間隔で地面から出てくる。

先端にある赤灯が、サイレンを鳴らしながら回りだした。

さらに線路が2本、森から海まで現れる。

「さぁ気を付けるぞ。赤灯の後ろまで下がるぞ」

アリスの指示で、全員が海から上がり、赤灯の内側から出た。

「遊んでいた訳ではないぞ。潮が満ちるのを待っていたぞ」

なるほど!時間を待っていたのか?


各線路の上を通り、ボートが海に浮かぶ。

スワンボートと、アヒルボート。脚漕ぎボートだ。

「おい、これで行くつもりか?脚漕ぎボートで沖まで行くのか?」

「バカ言うなだぞ。これは先行小隊だぞ。見るがいいぞ!」

アリスの指さす先、森の中・・豪華客船が地面の下から、せり上がって来た。

「プリンセスアリス3世号だぞ」

マジか?超豪華客船だ。大型船舶だ。

2つの線路を使い、俺たちの前を海に向かって滑ってくる。


「まさかこうなるとは、想定外だぞ」

「予想しがたいね~」

「これは事故」

大型船が、水深50㎝の海に浮かぶはずもなく、

海に入ったところで鎮座していた。いや、これは座礁だ。


「この大きさでは、私の力では無理かも」

ピーはそう言うと、サイコキネシスで船を持ち上げようとした。

「だめ~~~~~」

流石の超能力鳥も、お手上げだ。

「ピーちゃんは~力を使い果たすと~寝ちゃうんだよね~」

001みたいだ。

ピーは、マオの手の中で眠りについた。


「先行小隊に牽引させるぞ。レナ、セレス、任せたぞ」

「ああ、プリンセススワン号発進だ!」

「プリンセスダチョウ号!発進よ!」

ダチョウなんだ・・・。アヒルかと思った。

レナとセレスが、プリンセスアリス3世号を脚漕ぎボートで牽引する。

1㎜も動かなかった。


「ワシが策を伝える!」

軍師パルスが動く。

「夏まで待てば、1年で一番海面の高い大潮の日が来る。台風とぶつかれば動くかもしれぬ」

はい、却下。

「仕方ないぞ。脱出用の救命ボートで、沖に行くぞ」

「1800億ゴールドのプロジェクト、水の泡」

ターナのため息。

「まぁまぁだよね~こんなこともあるよ~」

1800億が、こんなことで水に流された。


救命用ボート2隻に分乗し、沖に向かう。

各ボートの牽引はスワン号と、ダチョウ号だ。

陸が見えなくなると、パルスはターナに肩車をさせる。

「向こうじゃ!」

パルスの言う方向に島が見える。


小さな島だ。最大幅でも50m有るか無いか。

ヤシのような木が立ち並び、家が一軒、島の真ん中に建っていた。

海岸には、小さな埠頭があり、ボートを横づけ出来る。

「さて生きておるか?最後に会ったのは、25年ほど前じゃからなぁ」

パルスは家の扉を開ける。

「ふむ。連絡がないとは思ったが、やはりミイラ化しておったか」

袴姿のミイラが1体、部屋の中に転がっていた。


「推定死後、23年と133日13時間だな」

レナの検死結果だ。

「なに大丈夫じゃ。竜人族はタフじゃからな」

タフで済ますか?死んでるんだぞ?

「とりあえず生き返らせようかのぉ。セレス、そこのバケツに、海水を汲んできてくれるか?」

海水で生き返るだと?シーモンキーか?って、アリス!何をしている?

「マーキングだぞ。香ばしい香りがしたぞ。我慢できなかったぞ」

一応、お前ヒロインなんだから!こんな所で、シーするな。


「女王様のシーは黄金水で、プリンセスのシーはダメかだぞ?おかしいぞ!」

「言われてみればだね~」

「プリンセスシー、価値ある」

いやいや!ここでのシーは不味いだろ。

「見ろケイン!プリンセスシーで、御人が復活中だ」

ミイラの下半身が元通りだ。

「後で洗うから、このままシーで、上半身も復活させるのじゃ」

「よし、頑張るぞ」

プリンセスなら、人前でシーしたらダメ。


「ん~~~~~・・・でござる」

起き上がりやがった。

「私のシーで蘇生したぞ。私の成分70%ぐらいだぞ」

絶対言うなよ。

「パルス殿?おお!パルス殿ではないか」

「久々に来たら、干からびておったのでな、復活させたわい」

普通に会話してるところが凄い。


「こやつは、わしの知り合いでな『トーレフ』じゃ。こんななりじゃが、優秀な科学者じゃ」

竜人族。人間の体にワニの顔を持つ種族。

俺達の住む大陸とは、別の大陸に住んでいて、高度な科学技術力を有している。

が、基本怠け者。日永一日、日光浴で過ごしている種族らしい。


「お主がどうしたでござるか?こんなに大勢と一緒とは」

「実はな、魔王を退治してみようと思ってな」

「お主が?魔王?」

「そうじゃ。トーレフに力を借りたい。お主の持つ力と、お主の周りにいるやつらの力をな」

周り?

「はっはっは・・・お主も変わったでござるな。拙者が干からびて、23年と133日13時間。時は人を変えるでござるか」

レナすげーーーー。

「お断りでござるよ。拙者と貴殿を繋ぐモノは、世捨て人だったはずでござろう。この世界に、何の価値も見出せぬ者同士、故の縁でござった」

「・・・・。そうじゃったな。済まなんだ。無理にとは言わん。言わんが、わしの妹の話を聞いてから、答えを貰ええんかのぉ」

「妹殿でござるか?」

「妹のレナです。少し向こうの部屋でお話を」

レナとトーレフは、隣の部屋に入って行った。


「腐は、女の子限定だぞ」

「あれは女じゃ。竜人族では、美人らしいからのぉ」

「なんだとぉ!!」

「向こうから見れば、私たちだって異形だわ」

まぁ確かにそうだが・・・拙者とか言うのが女か・・・。


ドアが開く。

「何をしているでござるか!魔王とやらを倒しに行くでござる」

布教成功だ。

「魔王を倒すのに、必要な人材を紹介するでござるよ」

「例の3人組じゃな?」

「そうでござる。戦力大幅にアップでござる。が、3人のうち、2人は戦力外かもでござる。拙者が干からびる前に、機能を停止してると聞いたでござるよ」

「機能?機械族なのか?」

「まさか?13番機なのか?」

レナとセレスが身を乗り出す。

「そうじゃ、ワシらの妹じゃ。オリジナル13番機、セイレーン。そして支援機の2人。魔道兵器にして、幻の艦隊と呼ばれる存在じゃ」

「パルスねぇさん、ご存じだったの?」

セレスの疑問はもっともだ。前回会った時は、なにも聞いていない。

「わしらの制作者が残したUSBメモリーじゃ」

パルスは、ポケットから取り出して見せた。

「必要な時が来たら、読みこめと命じられておったが、今まで埃をかぶっておった」

今迄どれだけ、やる気が無かったんだよ・・・


「海の覇王セイレーンに関する情報と、セレスの情報じゃ」

「私の?」

「オリジナル12番機は、なぜ精子保存機能が無いか?自由意思なのか?が、それはセイレーンに会ってからじゃ」

「では、呼んでみるでござるよ。みんなが居ると、来てもらえるか?でござるがな」

「ワシですら、会ってはくれぬからのぉ」

パルスも会ったことが無いのか?

「会うのは拙者だけでござる。初めて会った時に、支援機の子の故障を直してあげたでござるよ。それ以来、拙者には懐いていたでござる」

そうか、・・俺たちも居るし、心配だな。

「じゃが、隠れていても同じじゃ。騙すような真似をするより、全員で会ったほうが良い」

確かにだ。後からぞろぞろ出てきたら、だまし討ちしたようなものだ。

「では、埠頭に行くでござる」


「やっホーーーーーで、ござる」

なんだそれは?海だぞ。

「合言葉でござるよ。これなら、間違いで拙者以外が呼び出すことはないでござる」

一理ある。確かに海で「ヤッホーーー」と叫ぶ奴はいない。

「・・・・やはり来ないでござるか」

誰も来ない。警戒されているのか、3人とも壊れていて動けないのか?


少し時間が過ぎる。

「トーレフ様」

後ろから、声が。岸壁に腰かけた少女。

!?セレスと同じ顔だ。

「おお!セイレーン!動けるようになっていたかでござる」

セイレーン!あれが魔道兵器なのか?

「本来なら、この身を、人前に晒すことはありませんが、おねぇさま方には、お詫びをしたくて」

「やはり、君が犯人だったのか」

「私たちからパーツを抜き取ったのは、貴女なのね」

レナとセレスだ。

以前襲われてパーツを奪われた。

「はい。私の妹、支援機がやったことです」

セイレーンは、岸壁に座りながら答えた。

その下半身は、魚の物だ。セイレーンは人魚形態をしていた。


セイレーンは、説明をした。

24年前に、自分のパーツは壊れ動けなくなる。

支援機の一人がパーツを、自分に付けてくれた。が、規格が合わず、すぐにまた壊れてしまった。

もう一人の支援機が、オリジナルを探していて、23年ぶりに見つけたのがレナとセレスだった。

支援機のした事とは言え、責任は自分にある。

きちんと謝り、罪を償って許して欲しかったと言う。


セイレーンは、海の中に置いてあった松葉杖を取り出し、

器用に立ち上がり、俺たちの前に来る。

「これは拙者の発明した、二足歩行支援機でござる」

松葉杖だ。

「なるほど、そういう理由があったのか」

「そんなに謝られては、怒れなくなるわ」

「妹の行為は、機械族にとって、命を奪うに等しい行為です。謝って許される事ではありません。どうぞ、罪をお与えください」

セレスと同じ顔、同じ声。違うのは下半身だけだ。

「とは言われてもな」

「そうよ・・仕方なかった・・わけよね」

2人とも、怒る気はない様だ。

「そう言う訳には!わたしの気がすみま・・・」

身を乗り出し、体はバランスを崩す。

俺の方に倒れ掛かって来た。

「危ない!!!」

俺は、抱えるように下になり、セイレーンと倒れ込んだ。


倒れ込んだ時、セイレーンの腰に手を当てた。たまたまメンテナンスハッチの開放スィッチを押してしまった。

俺の目の前に、開かれた胸の中が曝け出されいた。

「無礼者!!」

俺は、左頬に衝撃を覚える。ビンタされたようだ。

「あなたは敵です!わたしのシステムに侵入を試みました」

「何を馬鹿なこと言うぞ!」

アリスが大声で怒鳴る。

「ケインは、君を助けようとしただけだ!」

レナも否定してくれた。

「落ち着くのじゃ、セイレーン、今のはどう見ても、ケインは倒れた君を・・・」

「いいえ、こいつは私のハッチを開けました。私を破壊するつもりに違いありません」

とんだ誤解だ。

俺も否定したが聞く耳を持たない。


アリスが、横たわるセイレーンに、ビンタを食らわす。

「ケインのお返しだぞ」

マオとターナがアリスを止める。

怒りがタブーのこの世界で、今アリスは危険な状態だ。

顔は無表情だが、怒りは明らかだ。

「トーレフ様、この二人は私にとって敵です。攻撃します」

右手を高々と上げる。海が盛り上がり、黒い球体が現れた。

「これがセイレーンの本体じゃな?」

パルスが見上げながら、驚きの表情に成る。

直径が30mはある黒い球体。魔道兵器セイレーンだ。


「本体の武器システムを起動します。ルピ、ルカ、攻撃命令です。目標は、この男と女」

「ダメでござる、命令を中止するでござる」

黒い球体が唸りを上げる。

「私と同型機なら」

セレスが、セイレーンに後ろから抱き着き、

ヘソに指を突っ込んだ。

「はれれれれれ~~~」

セイレーンが脱力する。

「ねぇ様、攻撃準備完了」

「ねぇ様、発射命令待ちです」

セイレーンから女の子の声が聞こえた。

「セレス!セイレーンに、攻撃の中止を命じるのじゃ」

「え?私?」

「いいから早くせい!」

「分かったわよ。攻撃中止よ!中止!」

「命令を確認」

「攻撃中止です」

唸りは止まり、魔道兵器は海の上にとどまった。

「なんか、相当ヤバかったな」

「こいつ、ケインをひっぱたいたぞ。パパにもぶたれた事ないのにだぞ」

何故、俺がしらんパパを知ってる?

「とりあえず電源は切った。が。起こすとなると、また荒れそうだな」

だな・・・。

パルスがおもいのほか、困り顔だった。


セイレーンをベットに寝かせた。

俺達はベットの周りで、パルスの話を聞く。


セイレーンは、オリジナル13番機として、極秘に作られた存在だった。

製造計画は、オリジナル制作当初からあった。

が、高い攻撃力に疑問を持ったオチャ博士は、セイレーンにセイフティーを掛けた。それが高い倫理観だ。

自らが攻撃を受け、敵と認識しなければ、攻撃することが出来ない。

先制攻撃など、もってのほかなのだ。

しかし、万が一の時も考えていた。それが同型機、セレスだ。

セレスは自由意思。好き勝手な攻撃ができる。

でも、セレスには制御装置は無い。武器や機能の起動はできない。

支援機に、命令が出来るだけなのだ。


「セレスとセイレーンは、互いに自分の足らない物を、持ち合っていたという事か」

「セイレーンは、敵対攻撃が無ければ、攻撃は出来ん。セレスは、本体の制御装置がない。兵器として、互いに不完全じゃ」

「それがオチャ博士の意思よね?」

「兵器なら人型である必要はない。博士は、兵器として機能して欲しくなかったのだ。魔道兵器は、後の人類に、判断を委ねたのかもしれんな」

「判断?どう委ねたんだ」

「この二人が後の世で、協力的であるような世界。その世界なら、平和目的で使えるという事でござろう」

「わ、私と?」

「制御装置は、下半身にあるでござるよ。同型機のセレス殿と、セイレーン殿は、下半身の交換が可能でござる」

「とりあえず、すぐ交換じゃ。起きて暴れられたら敵わんからな」

トーレフが、左右の手に工具を持つ。

「レナ、セレスを拘束じゃ」

「すまんな。これも夢の世界の為だ」

「ちょ!、待って、心の準備が」

「痛くも痒くもないでござる。気が付けば終わってるでござるよ」

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ」

セレスの断末魔の声が聞こえた。


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